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混血の放浪者 4-5
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語り終えたデム老は、解き放たれたポータルへとやおら顔を向けた。すでに解放されたその門は低い音を立て、その機能を維持している。咲き誇った花は美しく、しかしどこか弱々しかった。
「きゃつはあの中じゃ……既に、あの者が植えた『悪意』によって浸食されておる……あれはわしの身を苗床として成長していった……どうやら大きく成ってしまったようじゃのう」
崩壊の兆しは、放浪者は感じ取っていた。ポータルが開いたことにより、聖域は汚され、荒れた大地の領域は既にこの村に侵入してしまった、あの中にある何かが、それを手助けしている事は間違いないだろう。
「あの中に『叢生の珠玉』が安置されているのか、ナジカの庭園に……ハッバンの目的は初めから、それだったのか」
「大自然神から分かたれた権能の一部は、この大地を清く自然に還していったにすぎん……。だがきゃつはそれを利用したのじゃ……。長い年月を経て、その力は違う方向へと成っていった」
理解を求め、放浪者はデム老に顔を向けた。老人は、大きく頷き。
「……そうであり、そうではない……。なるほど、デム。あなたは珠玉の『意志』そのものであったか」
「……さようじゃ。かつてのわしから、その力は分かたれこの地を納めておった。その力は正しき者によって導かれていった……はじめは古きエルフ達、その後は…ナジカの使者によってな……」
「ネイジャスは……自然そのもののバランスを良しとする。しかしあなたは……ダヤンを救った、この村を……何故だ?」
老人は苦しそうに呻いた、それは自分でも分からないとでも言うかのような笑い声だった。
「定命者は、時として愚かにも、バランスを壊し奪うものじゃ。しかし……そこに肩入れしたわしは、もはや、かつてのわしとは違う者に成ったのかもしれんな。何故そうしたか……? さぁてな……、思い出したのかもしれん」
「……何をだ?」
「……ぬくもりじゃ、生けるものが持ち与える、。そしてあの娘が人の身であった頃。かつて、わしにもたらした……満ち足りた記憶をな。……フフッ、よもや……、写しであるわしがそれを思い出すとはな」
「それを、我らは……思い出という」
デム老は、腑に落ちたように息を吐ききった。その納得は、薄れゆく意識の中で深く老人を落ち着かせた。
「羇旅神の剣士よ、感謝するぞ……わしは、かつてのわしよりも。おぬしらを深く知る事が出来た……」
「思い出か……なるほど、実に……あたたかい……よきことばよ……」
老人の姿は、蜃気楼のように揺らめき薄らいでいった。初めからそこには何もなかったかのように、景色に溶け合い。そしてそこには、初めからなにもなかったのだ。
「旦那。なんだか知らねえが……もう良いようだな」
「あぁ……待たせたな」
「まったく、待ちぼうけには慣れてるけどよ。怖気づいちまったかと思ったぜ」
シェイガンは立ち上がる放浪者に並び、ポータルを前にして見上げた。
「でも、その顔はどうやら違うみたいだな」
「あぁ……、託されたのだ」
すいっと、シェイガンの視線が放浪者に向けられた。
「何をだ……?」
「――『憧憬』を」
「なるほどねェ。それじゃあ……そいつを、落っことさないようにしなきゃな」
二人の意は決した。ポータルの口に揃って飛び込み、そしてその景色は一瞬にして村の風景を後ろに置き去りにした。
「きゃつはあの中じゃ……既に、あの者が植えた『悪意』によって浸食されておる……あれはわしの身を苗床として成長していった……どうやら大きく成ってしまったようじゃのう」
崩壊の兆しは、放浪者は感じ取っていた。ポータルが開いたことにより、聖域は汚され、荒れた大地の領域は既にこの村に侵入してしまった、あの中にある何かが、それを手助けしている事は間違いないだろう。
「あの中に『叢生の珠玉』が安置されているのか、ナジカの庭園に……ハッバンの目的は初めから、それだったのか」
「大自然神から分かたれた権能の一部は、この大地を清く自然に還していったにすぎん……。だがきゃつはそれを利用したのじゃ……。長い年月を経て、その力は違う方向へと成っていった」
理解を求め、放浪者はデム老に顔を向けた。老人は、大きく頷き。
「……そうであり、そうではない……。なるほど、デム。あなたは珠玉の『意志』そのものであったか」
「……さようじゃ。かつてのわしから、その力は分かたれこの地を納めておった。その力は正しき者によって導かれていった……はじめは古きエルフ達、その後は…ナジカの使者によってな……」
「ネイジャスは……自然そのもののバランスを良しとする。しかしあなたは……ダヤンを救った、この村を……何故だ?」
老人は苦しそうに呻いた、それは自分でも分からないとでも言うかのような笑い声だった。
「定命者は、時として愚かにも、バランスを壊し奪うものじゃ。しかし……そこに肩入れしたわしは、もはや、かつてのわしとは違う者に成ったのかもしれんな。何故そうしたか……? さぁてな……、思い出したのかもしれん」
「……何をだ?」
「……ぬくもりじゃ、生けるものが持ち与える、。そしてあの娘が人の身であった頃。かつて、わしにもたらした……満ち足りた記憶をな。……フフッ、よもや……、写しであるわしがそれを思い出すとはな」
「それを、我らは……思い出という」
デム老は、腑に落ちたように息を吐ききった。その納得は、薄れゆく意識の中で深く老人を落ち着かせた。
「羇旅神の剣士よ、感謝するぞ……わしは、かつてのわしよりも。おぬしらを深く知る事が出来た……」
「思い出か……なるほど、実に……あたたかい……よきことばよ……」
老人の姿は、蜃気楼のように揺らめき薄らいでいった。初めからそこには何もなかったかのように、景色に溶け合い。そしてそこには、初めからなにもなかったのだ。
「旦那。なんだか知らねえが……もう良いようだな」
「あぁ……待たせたな」
「まったく、待ちぼうけには慣れてるけどよ。怖気づいちまったかと思ったぜ」
シェイガンは立ち上がる放浪者に並び、ポータルを前にして見上げた。
「でも、その顔はどうやら違うみたいだな」
「あぁ……、託されたのだ」
すいっと、シェイガンの視線が放浪者に向けられた。
「何をだ……?」
「――『憧憬』を」
「なるほどねェ。それじゃあ……そいつを、落っことさないようにしなきゃな」
二人の意は決した。ポータルの口に揃って飛び込み、そしてその景色は一瞬にして村の風景を後ろに置き去りにした。
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