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運命を操る者

241.最後に到着する場所

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 お互いの近況報告で目的は果たしたことを告げると、驚いた顔をしながらも『良かったな』と二人が労ってくれた。
 ただ、面倒になりそうなので身内以外にはラヴィーネと血がつながっていることは伏せている。

 で、ラッドとイワンの近況は相変わらずのようで安心した。
 王になるための勉強を毎日これでもかといった感じで詰め込み、イワンはさらに強くなるための訓練を欠かしておらず、同年代では一番になっているようだ。
 事件らしい事件も無く、平和だってさ。

 「それでもお前には勝てないんだろうとは思うけどな」
 「謙虚になったなあイワン。ランクはいくつだ?」
 「41だな。ラッド様は40でしたっけ?」
 「稽古をする暇があんまり無くてね」

 俺達の歳なら20台後半でいいところなのでかなり腕は上げていると見ていい。この二年弱、二人とも研鑽をしっかり積んでいると思うと感心する。
 
 「……お前は?」
 「73になった、かな?」
 「おかしいだろ……まあ、将軍の孫というならそれも頷けるけど」
 「いや、アルの場合は命がけの実戦が大きかったからだよ。戦争なんて考えたくないけど僕も戦える王にならないとね。シェリシンダ王国へ行けば恐らく同じくらいの時期に即位するんじゃないかな?」
 「俺が王様ねえ……」
 「羨ましい。あの子もめちゃくちゃ可愛いし。痛っ!?」

 イワンが母さんと談笑するリンカを見て鼻の下を伸ばしたので鼻をつまんでやる。
 欲深いと思わば思え。リンカは誰にも渡すつもりはないのだ。

 「ちぇ、少しくらいいいじゃねえか。それでここにはいつまで滞在するんだ?」
 「手紙はもう届いているはずだから近いうちにはってところかな?」
 「それまでにパーティを開きたいかな。ミーア先生とか喜ぶと思うよ」
 「あー、先生には会いたいかも」
 
 とまあ、近況の報告をし合ってからしばらく昔話に花を咲かせていると、イワンがお時間ですと言って城へ戻って行った。
 特別に時間をもらって出てきただけらしく、肩を竦めながらラッドは馬車へ。イワンは秘書に近いな。

 そんな屋敷での生活は父さんと母さん、それと双子に引き止められて七日ほど過ごすことになった。
 父さんの親父さん、ルーナ達の祖父母とウチの祖父母が顔合わせをしたり、ラッドが急遽用意したパーティに参加したりとゆっくりする暇は無かったけど、後のことを考えずに楽しむことができたのは平和になった証拠かとも思う。

 「ルーナも行くぅぅぅぅ!!」
 「学校があるんだろ? そんなに遠くないし休みの日にでもくればいいじゃないか」
 「ううー……」
 「また遊ぼう? ね? ほらクリーガーもまた来るって」
 「うぉふ!」
 「……うん! 絶対だよ?」
 「ペロとペラもまたね!」
 「ブルベェェ!」

 ウチの屋敷に来ていた時もだが、リンカは双子の信頼を勝ち取っていたので、俺の言うことも彼女の言うこともよく聞く。
 それに家が近いのは事実なのでルーナも納得して頷いていた。ルークは結構マイペースな男の子に育った気がする。クリーガーよりもラクダが好きそうなので探究心は強いと思う。
 ペロ達に乗って遊びに行けばいいだろう。

 そして一路、執着地点でるシェリシンダ王国へと進むみ、魔物とは戦ったものの大森林で野盗に会うことも無く規定通りに到着することが出来た。

 「こんにちは、イークンベル王国のアルフェンですけど……覚えていますか?」
 「おお! エリベール様の婚約者ではありませんか! もちろん顔も名前も覚えておりますぞ! 近く、戻ってくるという話も聞いております。ささ、お通りください」
 「いいの? 俺以外にもいっぱいいるけど」
 「問題はありませんよ。この国を救ってくれた英雄に疑いはかけにくいですしな! はっはっは!」
 「英雄、か」
 「どうしたのアル?」
 「いや、なんでもないよ。行こうか」

 ご先祖であるラヴィーネがそう呼ばれ、利用されて潰されたことは記憶に新しい。
 血筋と思えばイルネースの力が無くてももしかしたら強くなれていたのかもしれない。
 それと同時にあまり力を行使すると同じ過ちを繰り返すのではと思い背筋が寒くなる。最後に「一国の王女」という形を取ったのも力だけではなく権力も大事だと考えていたのかもしれないな……。もう、彼女の国は無いのだが。

 そして俺達は謁見の間……ではなく、応接間へと通される。
 
 「アル……!!」
 「ああ、よくぞ無事で……」
 「た、ただいま戻りました……!?」

 部屋に入った瞬間、エリベールに抱きつかれびっくりする俺。二人とも涙目になっていたので、きちんと無事が確認できたことで安堵したようだ。
 そこで爺さん達が一歩前へ出てディアンネス様へ頭を下げた。

 「お初にお目にかかる。私はアルフェンの祖父、アルベール=ゼグライト」
 「わたくしは妻のバーチェルです」
 「こちらからご挨拶すべきでしたのに申し訳ありません。話は伺っております。私はこの国の女王、ディアンネス=イオネ=ウトゥルン。アルには随分助けられました」
 「結果的とは思っているけど……」
 「もう、まだそんなことを言っているの? わたくしは娘のエリベールです!」
 
 お互いの自己紹介をする中、エリベールがリンカを見て口を開く。
 
 「ええっと、あなたは……?」
 「わ、私はリンカと申しますエリベール様!」
 「アルの手紙には書かれていなかったけれど……」
 「それは俺が直接エリベールに話したかったからだ。エリベールは婚約者だけど、彼女も俺の恋人として連れて来た。それを許可してもらえる――」
 「まあ! あなたもアルの? もちろんいいですわ! 子どもはたくさん欲しいもの。それにアルを放っておく女の子は居ないと思っていたし?」
 「え、ええ!?」

 途中まで話したところでエリベールは察したようですぐに目を輝かせてリンカの手を握る。

 「早いな!?」
 「それはそうですよアル。もっと連れて帰ると思ってたくらいですし」
 「ディアンネス様まで……じゃ、じゃあ、リンカも?」
 「問題なし、ですわ!」
 「あ、あはは……よろしくお願いいたします……」

 高らかに宣言するエリベールに俺とリンカは俺はずっこけて苦笑する。
 意外となんとかなったな……もう少しむくれると思ったけど……。

 挨拶を終えた俺達は今後のことを話す。
 爺さん達も城の敷地にある邸宅をもらいそこで暮らすことになり、一番理想な形で着地することになった。

 結婚式は俺の我儘で先延ばしにした。
 というのもラッドと話していてこのまま結婚するにはあまりにも国政などを知らなすぎるからだ。
 剣と魔法だけでなく帝王学的なものを学ぶこととなった。

 そして――
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