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中央大陸の戦い
161.彼と彼女
しおりを挟む「おう、無事だったか二人とも!!」
セロが俺の正面に抱き着いてきたので頭を撫でながら声をかけてやる。
コウと共に傷だらけだが元気そうなのでなにより。
上部で戦っていたから気になっていたんだよな……。
「ああ、人間達と一緒に魔物を蹴散らしてやったからな! 村に帰る土産ができた」
「お、おう」
コウはなんかの魔物の肉を口にしながら笑っていた。野性味あふれる種族である。
そこへザイクが豪快に笑いながら俺の肩を叩く。
「わっはっは! どうやら坊主も無事だったようだな! ぶっ倒れた時は驚いたが、ゴブリンの親玉の首を一撃で飛ばしたのはスカっとしたぜ! なあ!」
「あ、そういや俺のマチェットは?」
「わたしが持ってましたー♪ はい、返すね」
「サンキュー」
首を飛ばしたってあたりでマチェットのことを思い出したら、ロレーナが持っていてくれたらしくそっと手渡してくれた。
収納魔法で片付けてから再び兄弟とザイクに向き直り話を続ける。
「このまま森へ帰るんだな」
「もちろんだ。しかし、魔物増加の原因……というより、ゴブリンロードが集めていたのが分かって良かった。後はこちらでも警戒して、散らせるか討伐していこうと思う。人間達の通行にも邪魔にならんようにな」
「あんまり倒しすぎると一部の魔物が増えすぎたりするし、ちゃんと調査しないといけないんだ」
コウが生態系的な話をする。
動物から魔物に変化するとはいえ、動物状態で狩られまくるとバランスが崩れるのだそうだ。
食える魔物ばかり狩っていたら食い物がなくなるようなものだからなあ。
「それじゃ今度こそお別れだな、コウにセロ、元気でな」
「うん! ……ちょっと寂しいけど、また遊びに来てね! 今度は村で僕がご馳走するよ」
「はは、お前は食うことばっかりだなあ。俺のやることが終わった後にでも来るよ」
「はーい! あはははは、くすぐったいよ!」
「これはいいな……」
「きゅーん!」
セロの肉球をぷにぷにさせてもらっているとコウが握手を求めて来た。
肉球が好きだと思ったのか、手を犬モードにしてくれている。
「俺からも礼を言わせてくれ。船で匿ってくれて助かった。俺だけじゃセロを守り切れなかっただろうから」
「ま、成り行きだったけどな。いつかヴィダーとも会ってやって欲しいけど……その機会はないか」
「結局……なんだったんだろうな、この騒ぎ」
「……さあな」
蓋を開けてみるとすべてが繋がっていた事件。コウはそこが気になっていたようだ。
だけど、ヴィダーの誘拐やこの討伐は一つの意思にまとまっていたわけでもない。
偶然にしては出来すぎだが、真相はゴブリンロードが黒幕だったということで一旦は締めにするしかないだろう。
実を言うと『ジャンクリィ王国全域に魔物が増えている』はずなのだが、領土ではないアイゼンの森や山に踏み込んでいるのと、北に向かった部隊はどうなったのか……いや、なにと戦っているのかが気になっていたりする。
南にはゴブリンロードが居たが、全域となると他にも強力な魔物がいるのではと考えたのだ。
契約上はここまでなので、俺がこれ以上知る由はないだろうが、ツィアル国のような陰謀めいたものが頭にちらつく。
ま、それはともかくウォルフ族ともこれでお別れだ。
最後に華麗な投げや打撃を見せてくれたザイクが握手を求めてきて、応じる俺。
「ではな、小僧……いや戦士アルフェン。またコウとセロに会いに来てやってくれ、ジャンクリィ王国の者もこの地域を通る際は安全にいけるようアイゼンの森を通るといい。スリアン国の人間には先に伝えている。またいずれ」
「ありがとうございます。ジャンクリィ王国を代表して感謝を。いずれご挨拶に伺いたいと思っております」
「気にするな」
フェイバンとも握手をしたザイクが微笑み踵をかえして歩き出す。
コウとセロもついていき、時折こちらを振り返りながら手を振っていた。
「またねー!」
「また!」
元気な兄弟は親父さん達に連れられ、大量の魔物の素材や肉を引きずりながら山を下っていく。
それを見送っていると、リグレットが頭の中で声を響かせた。
<少し寂しいですね>
「あれ、ずっと黙っていたのに復活したのか?」
<寝てました♪>
「マジかよ……戦闘の時見ててくれると助かるんだけど……」
<今後は注意しますねー>
なんて信用できない言葉だろう。まあ、こいつはこんなものだろうが、戦闘で喋らなかったのは珍しいな?
「なに? ひとりごと?」
「おおう、びっくりした!? 急に耳元で話しかけるなよロレーナ……」
「あはは、ごめんごめん! わたし達も下山するから呼びに来たの。ウォルフ族、いい人ばかりだったね」
「だな。今度はなんか食い物でも持って会いに行ってみるよ、アイゼンの森も気になるし」
「おーい、行くぞ二人ともー」
オーフが遠くで俺達を呼び、駆け足で合流し山を下る。
今後もしばらくは山と森には人を派遣するらしいので、ウォルフ族たちと協力して引き続き調査となりそうだ。
はあ……これでようやくライクベルンへ帰れそうだな……俺は帰りの行軍で疲れた体を引きずりながらそう思うのだった。
◆ ◇ ◆
「……」
「どうしたリンカよ?」
「い、いえ、なんでもありませんワイゲル様」
「そうか? あの小僧のことでも考えていたのかと思ったのだがのう」
「! ち、違います!」
――とは言うものの、あのアルフェンという子には不思議と惹き付けられるとは考えていた。
もちろん、同い年であれだけ戦えるのもそうだし、助けてもらった恩もあるからちょっと格好よく見えていたかもしれない。
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「……ああ、そうか」
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