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ツィアル国
107.反逆の宮廷魔術師を追い詰めろ
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『ロラ!』
『グラディスにいちゃん!』
床に落とされたロラをグラディスが庇うように抱き上げ、まずは事なきを得る。
これは罠で、魔法でロラを攻撃するか呪いでもかけていると思ったが、カーランはブック・オブ・アカシックに釘付けだった。
そのため俺とグシルスはリスクなくヤツの懐に飛び込んでいく。
『グラディスは一旦下がれ! ここは俺とグシルスでやる!』
『承知……! すまん、アルフェン!』
さすがの身のこなしで俺達とは別の方向に距離を取るグラディス。
最悪、魔法で攻撃されても自分たちだけに攻撃を受けるように動いていた。
「とった……! くくく……これで『英雄』へ一歩近づいた」
「今から後退するけどな! 返してもらうぜ!」
「下がれ! <エクスプロード>」
「なりふり構わずかよ!?」
カーランが振り払うように手を動かし略式詠唱のエクスプロードをまき散らすと、グシルスが驚愕しながら回り込むように駆け抜けていく。
本チャンの魔法より範囲が狭いので、俺は姿勢を低くして回避し、まずは足を封じるため太ももに剣をぶっ刺した。
「ぐ……」
「ナイスだアル! ロッドが無いとガードは無理だな、もらうぜ」
「舐めるな、人族風情が!! 『敵を破砕せよ』<ファイヤーボール>」
「なんとお……! ぐはっ」
「チィ……!?」」
グシルスが左肩に剣を振り下ろすと同時に、目の前でファイヤーボールを腹に撃たれて吹き飛んでいく。
鎧を着こんでいるおかげで致命傷にはならないだろうがマントは端から黒焦げになった。
忌々しい相手が倒れこむのを見て口元に笑みを浮かべるが、それはまだ早いぜ!
「くらえ!」
「ぐう……大人しくしていろ……この本さえあれば……」
「そいつは持ち主を選ぶらしい、どうせお前が持っていても宝の持ち腐れ。本と誘拐した人たちを返してもらうぞ。後エリベールの呪いも解け」
「そんな我儘は聞けんなあ!! <ロックブラスト>!」
「岩が……!? 小賢しいぞカーラン!!」
砕けた壁や柱の岩を炸裂させて俺にぶつけてくる。
この期に及んでも俺の身体は実験に使居たらしいが、この程度なら少々痛いが我慢すればいいだけ。
「チェストぉぉぉ!」
「ぐあああ!?」
俺の剣がカーランの左胸を切り裂き、頬に血が返ってくる。そしてすぐにカーランの白いローブがじわりと赤く染まっていく。
魔法には詠唱が必要なので、攻め続けてその隙を与えなければ魔法使い相手の戦いは有利が取れるという理論が実証された瞬間だ。
その証拠にいくつか魔法を放ってきていたがエクスプロードですらグシルスを倒すまでにはいたっていないほど、略式詠唱で威力の落ちたものは直撃をしないかぎり致命傷足りえない。
「よし! ……って、こいつ!?」
「渡さんぞ! <アイシクルダガー>!」
「うわ!?」
まだ抵抗するか!?
氷の刃が肩と左足に刺さり、俺は動きを鈍くする。直後、カーランに首を掴まれて床に叩きつけられた。
「がはっ!?」
「つ、摑まえたぞ……く、くく……ちょうどいい……」
「な、にが……」
チッ、動けない……
体重差が大きすぎる。それにしてもちょうどいいとはどういう――
「な、なんだこの惨状は!?」
「カーラン様、ご無事ですか!」
「賊だ、大臣もやられた。こいつらを捕える手伝いを頼む」
「違う! こいつは――」
「喋るな!」
床に顔を叩きつけられ鼻血が出るのが分かった。血から放たれる鉄の匂いと味を感じながらどうするかと思考を巡らす。
『動くなよ、魔人族の男。死なない程度に痛めつけることはできるんだからな』
「ぐああ……!?」
『よせ!』
グラディスが片膝をついてロラを守るように抱いていると、カーランは別の人物に声をかける。
「大将、貴様も手伝え」
「あ? は、はい……!」
「げほ……。っと、そこまでだ。大将、今がその時だぜ? 聞け! 俺の名はグシルス。シェリシンダ王国の騎士の一人だ!」
「「「!?」」」
大将と現場に困惑している兵士達が剣を杖代わりにして立ち上がったグシルスが大声で自身の正体を明かし、全員が彼に注目。
ここで明かすのはリスクが高い気がするが、策があるのか?
「知っての通り隣の大陸にある国の騎士だが、ここに居るのはもちろん理由がある。……あのクソ宮廷魔術師が指示を出してとある子供を誘拐してんだが、
俺はその捜索に狩り出されたって訳。で、その子供はあそこで組み伏せられているヤツで、実行犯はそこの小太りのおっさん冒険者の大将だ」
グシルスが不敵に笑いながら血を吐いて告発する。
なるほど、大将が実行犯であることを突き止めていたのなら強気発言は可能か。
後は大将が自白して認めれば、この兵士達が逆に味方に……なるといいけど……
「くだらない……! おい、大将そんなことは無かった、そうだな?」
「わ、ワシは……」
俺と目が合うと慌てて逸らす大将。グラディスに仲間を殺されているから、嘘を吐く可能性は十分にあり得る。青い顔であわあわしている中、一人の兵士が一歩前へ出てカーランへ言う。
「カーラン殿、誘拐の事実が違うと言うのであればその子供を解放していただきたい。それからシェリシンダ王国の騎士殿と、そこの魔人族の二人にも話を聞くべきでしょう」
「必要ない」
「……その二人は王宮の工事に従事していたはず。魔人族の子供は今、初めて見ました。一体どこにいたんでしょうか?」
あ、この人、俺達を呼びに来た兵士じゃないか。
というか状況がカーランを追い詰めるような形になってきたな、確かにロラを守る魔人族と、子供に鼻血を出させている宮廷魔術師ではどっちの絵面が悪いかって言ったらそういうことだと思う。
「どいつもこいつも……私の邪魔をする……! 使いやすいと思ったがこの国はもういいか……」
「なにを――」
「『赤き熱、白き光が重なる時、眼前にある全てのものは形を無くす。燃え盛る業炎よ力を与えたまえ……』」
「……!? まずい! みんな逃げろ!」
「<エクスプロード>!」
俺の叫びと同時に、完全版のエクスプロードが完成し、片手を天井に掲げた――
『グラディスにいちゃん!』
床に落とされたロラをグラディスが庇うように抱き上げ、まずは事なきを得る。
これは罠で、魔法でロラを攻撃するか呪いでもかけていると思ったが、カーランはブック・オブ・アカシックに釘付けだった。
そのため俺とグシルスはリスクなくヤツの懐に飛び込んでいく。
『グラディスは一旦下がれ! ここは俺とグシルスでやる!』
『承知……! すまん、アルフェン!』
さすがの身のこなしで俺達とは別の方向に距離を取るグラディス。
最悪、魔法で攻撃されても自分たちだけに攻撃を受けるように動いていた。
「とった……! くくく……これで『英雄』へ一歩近づいた」
「今から後退するけどな! 返してもらうぜ!」
「下がれ! <エクスプロード>」
「なりふり構わずかよ!?」
カーランが振り払うように手を動かし略式詠唱のエクスプロードをまき散らすと、グシルスが驚愕しながら回り込むように駆け抜けていく。
本チャンの魔法より範囲が狭いので、俺は姿勢を低くして回避し、まずは足を封じるため太ももに剣をぶっ刺した。
「ぐ……」
「ナイスだアル! ロッドが無いとガードは無理だな、もらうぜ」
「舐めるな、人族風情が!! 『敵を破砕せよ』<ファイヤーボール>」
「なんとお……! ぐはっ」
「チィ……!?」」
グシルスが左肩に剣を振り下ろすと同時に、目の前でファイヤーボールを腹に撃たれて吹き飛んでいく。
鎧を着こんでいるおかげで致命傷にはならないだろうがマントは端から黒焦げになった。
忌々しい相手が倒れこむのを見て口元に笑みを浮かべるが、それはまだ早いぜ!
「くらえ!」
「ぐう……大人しくしていろ……この本さえあれば……」
「そいつは持ち主を選ぶらしい、どうせお前が持っていても宝の持ち腐れ。本と誘拐した人たちを返してもらうぞ。後エリベールの呪いも解け」
「そんな我儘は聞けんなあ!! <ロックブラスト>!」
「岩が……!? 小賢しいぞカーラン!!」
砕けた壁や柱の岩を炸裂させて俺にぶつけてくる。
この期に及んでも俺の身体は実験に使居たらしいが、この程度なら少々痛いが我慢すればいいだけ。
「チェストぉぉぉ!」
「ぐあああ!?」
俺の剣がカーランの左胸を切り裂き、頬に血が返ってくる。そしてすぐにカーランの白いローブがじわりと赤く染まっていく。
魔法には詠唱が必要なので、攻め続けてその隙を与えなければ魔法使い相手の戦いは有利が取れるという理論が実証された瞬間だ。
その証拠にいくつか魔法を放ってきていたがエクスプロードですらグシルスを倒すまでにはいたっていないほど、略式詠唱で威力の落ちたものは直撃をしないかぎり致命傷足りえない。
「よし! ……って、こいつ!?」
「渡さんぞ! <アイシクルダガー>!」
「うわ!?」
まだ抵抗するか!?
氷の刃が肩と左足に刺さり、俺は動きを鈍くする。直後、カーランに首を掴まれて床に叩きつけられた。
「がはっ!?」
「つ、摑まえたぞ……く、くく……ちょうどいい……」
「な、にが……」
チッ、動けない……
体重差が大きすぎる。それにしてもちょうどいいとはどういう――
「な、なんだこの惨状は!?」
「カーラン様、ご無事ですか!」
「賊だ、大臣もやられた。こいつらを捕える手伝いを頼む」
「違う! こいつは――」
「喋るな!」
床に顔を叩きつけられ鼻血が出るのが分かった。血から放たれる鉄の匂いと味を感じながらどうするかと思考を巡らす。
『動くなよ、魔人族の男。死なない程度に痛めつけることはできるんだからな』
「ぐああ……!?」
『よせ!』
グラディスが片膝をついてロラを守るように抱いていると、カーランは別の人物に声をかける。
「大将、貴様も手伝え」
「あ? は、はい……!」
「げほ……。っと、そこまでだ。大将、今がその時だぜ? 聞け! 俺の名はグシルス。シェリシンダ王国の騎士の一人だ!」
「「「!?」」」
大将と現場に困惑している兵士達が剣を杖代わりにして立ち上がったグシルスが大声で自身の正体を明かし、全員が彼に注目。
ここで明かすのはリスクが高い気がするが、策があるのか?
「知っての通り隣の大陸にある国の騎士だが、ここに居るのはもちろん理由がある。……あのクソ宮廷魔術師が指示を出してとある子供を誘拐してんだが、
俺はその捜索に狩り出されたって訳。で、その子供はあそこで組み伏せられているヤツで、実行犯はそこの小太りのおっさん冒険者の大将だ」
グシルスが不敵に笑いながら血を吐いて告発する。
なるほど、大将が実行犯であることを突き止めていたのなら強気発言は可能か。
後は大将が自白して認めれば、この兵士達が逆に味方に……なるといいけど……
「くだらない……! おい、大将そんなことは無かった、そうだな?」
「わ、ワシは……」
俺と目が合うと慌てて逸らす大将。グラディスに仲間を殺されているから、嘘を吐く可能性は十分にあり得る。青い顔であわあわしている中、一人の兵士が一歩前へ出てカーランへ言う。
「カーラン殿、誘拐の事実が違うと言うのであればその子供を解放していただきたい。それからシェリシンダ王国の騎士殿と、そこの魔人族の二人にも話を聞くべきでしょう」
「必要ない」
「……その二人は王宮の工事に従事していたはず。魔人族の子供は今、初めて見ました。一体どこにいたんでしょうか?」
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というか状況がカーランを追い詰めるような形になってきたな、確かにロラを守る魔人族と、子供に鼻血を出させている宮廷魔術師ではどっちの絵面が悪いかって言ったらそういうことだと思う。
「どいつもこいつも……私の邪魔をする……! 使いやすいと思ったがこの国はもういいか……」
「なにを――」
「『赤き熱、白き光が重なる時、眼前にある全てのものは形を無くす。燃え盛る業炎よ力を与えたまえ……』」
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