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異世界へ
3.家族のこと
しおりを挟む「だーう(よっと)」
「もうはいはいが出来るようになったの? この子もしかしたら天才かもしれないわね」
「そりゃマルチナの子だもの」
「あなたの子でもあるんだけど?」
「あはは」
「うふふ」
高級そうな毛布の上で俺は体を動かす訓練をしていた。
病院で覚醒してからすでに三日が経過しており、だいたい俺のおかれている状況が分かってきた。
まず俺の名前はアルフェン=ゼグライト。
様相からするに結構なお金持ちの家で、親父のことを『ライアス伯爵』と呼ぶ客が居たので恐らく貴族という中世にあった位がこの世界にもあるらしい。
それとあの神と名乗っていたヤツのせいか分からないが、言語や文字はきちんと把握できる。俺を膝に置いて本を読む母親のおかげで発覚した。
……それとただの中世時代とは違い【スキル】というものがある。
これは言語が認識できていることと関係があるが、頭の中に【言語把握:初】というものが浮かんできたのだ。他にもあるのかもしれないけど、今のところはそれだけ。
それと美人な母親に授乳されているのだが、特に性欲のようなものは起こらず。頭のどこかで母親だときちんと認識しているみたいだ。
後は……赤んぼうだから下の処理だけはお任せすることになるんだけどこれは恥ずかしいという感情は沸きあがってくるので不思議なものである。
そんなわけで父、ライアス=ゼグライトと母、マルチナ=ゼグライトの間に生まれた俺は両親はもちろん、使用人にも大層可愛がられている。
「アルフェン様、マイヤですよー♪」
「ふふ、マイヤはアルのお世話が好きね」
「そりゃあもう! こんな可愛い子、好きにならずしてどうすると言うのですか! ああ、こんな弟が欲しかった……子供を作るにもまだ12歳ですし……早く大人にならないですかね」
「しっかりしていると思うけどね。さ、お乳の時間だからアルを返してね」
「はーい! またねアルフェン様」
その筆頭がメイド見習いのマイヤである。青い髪をツインテールにした元気の塊といった感じの娘で、同じくメイドであるイリーナという人の子供だったりする。
他にも庭師のルックという男性や、コックのフォルネンといった使用人たちも見れば必ず笑いかけてくれるいい人達で、頼りなさげな親父は慕われているのだと分かった。
前世の俺も、家族が居なくなるまではこんな感じだったなと思いながら今日もお乳を飲んでのんびり寝るのだった。
そして一か月ほど経ったころ――
「あーぶ!(よっ!)」
リビングでくつろいでいた俺は物凄く退屈しており、母親は昼寝。構ってくれるマイヤは買い物で出かけていた。
それなら、と退屈しのぎのためここから移動すべく、ついに立ち上がることに成功した!
「あぶぶ……(何度も転んでその度に母親に心配されていたけどな)」
それはともかくリビングを歩き回り感覚に慣れようとするが、
「あー!?(うお!?)」
やっぱりなにかに掴まりながらでないと転んでしまうのだ。
元々歩けていた俺がこのザマなので、ガチの赤ん坊が歩けるようになるのは本当に凄いことなんだと痛感する……
そんな感じで練習を繰り返し、いざ俺は家の探検を開始することにした。
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