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最終章:いつもどおり!
その82 安定し……ない日常の中で光るヒサトラ
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「構わんよ」
「即答!?」
王都へ戻ったのはもう日が暮れた後だったが、ドラゴン二頭は無視できるものではなかったらしく、騎士達が総出で門の外まで出て来ていた。
『やっぱりヒサトラさんか』という腑に落ちない発言はスルーし、ソリッド様に匿ってもらえるよう頼んだところ先ほどの回答を得られたわけだが……
「頼んどいてなんですけど、ドラゴン三頭ですよ?」
「まあ、今更だろう。シルバードラゴンは先日来ていて人気もある。ただ、まあ三頭が落ちつける場所が王都にはないから街の外に新しく建設する形になるだろう。その間は卵をヒサトラ君の倉庫に入れておいてもらえるかな?」
「もちろん。それでいいよな?」
<申し訳ないのだけどお願いしますね>
嫁ドラゴンが深々と頭を下げ、概ね指針が決まる。
すぐに行動が開始され、卵は丁重に倉庫へ運ばれ庭はプロフィアとポンチョによる警戒態勢になり、母親は居た方がいいだろうとダイトが庭から出て嫁ドラゴンがインする形を取った。
<いいのかしら……>
「子供が産まれたらすぐに母親の顔を見てもらわないと困るからね。刷り込みって怖いし」
「産まれそうになったらお前達も離れるんだぞ?」
<あ”ー>
<!!>
という感じだ。
運送の仕事中は母ちゃん・プロフィア達スライム・ポンチョが家に残り防衛に努めることとし、アロンとダイトは前と同じようにトラックに乗って俺とサリアの手伝いだ。
そして前回のシルバードラゴン訪問の時と同じく、町の外にドラゴン達が休める場所が建設されていく。
ちなみに俺の家があるのは壁の傍だが、今回はその壁を越えたすぐのところに作っている。
後は――
「ドラゴンに効く薬ってあるのか?」
「どうだろうな……ヒサトラさんの母親を治した薬は病気に効くがケガは違うらしいしな」
「そこ、喋ってないで動けー」
「「へーい」」
――息子ドラゴンのケガの問題が残っている。いつ治るかは分からないが死ぬことはないというので一安心か。
こっちはシルバードラゴンが常駐するし、待機している兵士たちがローテーションで見張りをしてくれるらしいのでこっそり討伐されたりはないだろう。
久しぶりに俺とサリア、それとアロンだけで遠巻きに建設風景を眺めていると不意に俺の手を握りながらサリアがポツリと呟く。
「……後は無事に赤ちゃんドラゴンが産まれてくるのを待つだけね」
「だな、どんどんおかしなことになっていくけど……」
「でもいいんじゃない? ヒサトラさんが優しい人だから集まってくるんだと思うし」
「どうだろうなあ。俺はそんなつもりはないんだけどな? まあ、母ちゃんもこっちに来たし、後は仕事を頑張ろうぜ。それで……」
「それで?」
ここで言うべきか悩むところだが、誰も……特に茶化す人間も居ない今がチャンスだと思いサリアを正面に向かせてから俺は言う。
「……色々と俺の事情は片付いた。だから、俺と結婚してくれないか? お前と家族になりたいと思っている」
俺は真顔でそう言い、顔が熱くなっているのがわかる。付き合っていると公言したとはいえ結婚はまた別だ。
こういうのはきちんと口にしないと『相手が分かっている』なんて自惚れは全てを終わらせてしまう。
返事は……どうだ?
「はい! 喜んで!」
「おっと……!」
<うぉふ♪>
少し涙ぐんでいたサリアが俺に抱き着いてきてキスをし、足元でお座りをしていたアロンが祝うように足元で吠えた。さて、母ちゃんに報告しないといけねえな。
◆ ◇ ◆
「……よし! よく言ったわ玖虎」
「なるほど、母上はそれで近づくなとおっしゃっていたのか」
「そうですよソリッド様。なんだかんだと周りに人が多いと言いだしにくいですからね。夜ひっそりと……というのも考えられましたが、ドラゴン夫婦と卵という連想させるシチュエーションなら、となるべく二人きりにさせたかったというわけですね」
「な、なるほど……」
「今日はお祝いかしらね? あの子の好きなハンバーグステーキでも作ってあげようかしら」
ウチの息子は高校時代に荒れていたけど、あれはよくある流行り病のようなものだ。人様に迷惑をかけていたことに関してはビンタくらいはしていたけど、自分もそういう時期があったからわからなくはない。
多分、父親が居ればそうはならなかったと思っているのであたしの親としての力不足だ。
まあ、元ヤンだったしね。
それでも、自分の親が嫌いでそうはならないよう努力してきた。で、あたしを助けるために奮闘してくれた玖虎は立派に育ってくれたと胸を張って言えるわ。
「ハンバーグとはなんでしょうか……?」
「うわ、びっくりした!? ……誰?」
「通りすがりの魔道具技師大臣です。ちょうど陛下を探しに来ていたら、知らないのになにやら心躍るワードが聞こえてきたもので」
「ああ、あたし達の世界にあるポピュラーな食べ物よ。材料があればすぐ作れるけど」
「是非」
「バスレイ、私に用があったのではないのか……?」
眼鏡の女の子はバスレイというらしい。なんでハンバーグに拘るかわかんないけど、食べたいというなら作ってあげてもいいかしらね?
「即答!?」
王都へ戻ったのはもう日が暮れた後だったが、ドラゴン二頭は無視できるものではなかったらしく、騎士達が総出で門の外まで出て来ていた。
『やっぱりヒサトラさんか』という腑に落ちない発言はスルーし、ソリッド様に匿ってもらえるよう頼んだところ先ほどの回答を得られたわけだが……
「頼んどいてなんですけど、ドラゴン三頭ですよ?」
「まあ、今更だろう。シルバードラゴンは先日来ていて人気もある。ただ、まあ三頭が落ちつける場所が王都にはないから街の外に新しく建設する形になるだろう。その間は卵をヒサトラ君の倉庫に入れておいてもらえるかな?」
「もちろん。それでいいよな?」
<申し訳ないのだけどお願いしますね>
嫁ドラゴンが深々と頭を下げ、概ね指針が決まる。
すぐに行動が開始され、卵は丁重に倉庫へ運ばれ庭はプロフィアとポンチョによる警戒態勢になり、母親は居た方がいいだろうとダイトが庭から出て嫁ドラゴンがインする形を取った。
<いいのかしら……>
「子供が産まれたらすぐに母親の顔を見てもらわないと困るからね。刷り込みって怖いし」
「産まれそうになったらお前達も離れるんだぞ?」
<あ”ー>
<!!>
という感じだ。
運送の仕事中は母ちゃん・プロフィア達スライム・ポンチョが家に残り防衛に努めることとし、アロンとダイトは前と同じようにトラックに乗って俺とサリアの手伝いだ。
そして前回のシルバードラゴン訪問の時と同じく、町の外にドラゴン達が休める場所が建設されていく。
ちなみに俺の家があるのは壁の傍だが、今回はその壁を越えたすぐのところに作っている。
後は――
「ドラゴンに効く薬ってあるのか?」
「どうだろうな……ヒサトラさんの母親を治した薬は病気に効くがケガは違うらしいしな」
「そこ、喋ってないで動けー」
「「へーい」」
――息子ドラゴンのケガの問題が残っている。いつ治るかは分からないが死ぬことはないというので一安心か。
こっちはシルバードラゴンが常駐するし、待機している兵士たちがローテーションで見張りをしてくれるらしいのでこっそり討伐されたりはないだろう。
久しぶりに俺とサリア、それとアロンだけで遠巻きに建設風景を眺めていると不意に俺の手を握りながらサリアがポツリと呟く。
「……後は無事に赤ちゃんドラゴンが産まれてくるのを待つだけね」
「だな、どんどんおかしなことになっていくけど……」
「でもいいんじゃない? ヒサトラさんが優しい人だから集まってくるんだと思うし」
「どうだろうなあ。俺はそんなつもりはないんだけどな? まあ、母ちゃんもこっちに来たし、後は仕事を頑張ろうぜ。それで……」
「それで?」
ここで言うべきか悩むところだが、誰も……特に茶化す人間も居ない今がチャンスだと思いサリアを正面に向かせてから俺は言う。
「……色々と俺の事情は片付いた。だから、俺と結婚してくれないか? お前と家族になりたいと思っている」
俺は真顔でそう言い、顔が熱くなっているのがわかる。付き合っていると公言したとはいえ結婚はまた別だ。
こういうのはきちんと口にしないと『相手が分かっている』なんて自惚れは全てを終わらせてしまう。
返事は……どうだ?
「はい! 喜んで!」
「おっと……!」
<うぉふ♪>
少し涙ぐんでいたサリアが俺に抱き着いてきてキスをし、足元でお座りをしていたアロンが祝うように足元で吠えた。さて、母ちゃんに報告しないといけねえな。
◆ ◇ ◆
「……よし! よく言ったわ玖虎」
「なるほど、母上はそれで近づくなとおっしゃっていたのか」
「そうですよソリッド様。なんだかんだと周りに人が多いと言いだしにくいですからね。夜ひっそりと……というのも考えられましたが、ドラゴン夫婦と卵という連想させるシチュエーションなら、となるべく二人きりにさせたかったというわけですね」
「な、なるほど……」
「今日はお祝いかしらね? あの子の好きなハンバーグステーキでも作ってあげようかしら」
ウチの息子は高校時代に荒れていたけど、あれはよくある流行り病のようなものだ。人様に迷惑をかけていたことに関してはビンタくらいはしていたけど、自分もそういう時期があったからわからなくはない。
多分、父親が居ればそうはならなかったと思っているのであたしの親としての力不足だ。
まあ、元ヤンだったしね。
それでも、自分の親が嫌いでそうはならないよう努力してきた。で、あたしを助けるために奮闘してくれた玖虎は立派に育ってくれたと胸を張って言えるわ。
「ハンバーグとはなんでしょうか……?」
「うわ、びっくりした!? ……誰?」
「通りすがりの魔道具技師大臣です。ちょうど陛下を探しに来ていたら、知らないのになにやら心躍るワードが聞こえてきたもので」
「ああ、あたし達の世界にあるポピュラーな食べ物よ。材料があればすぐ作れるけど」
「是非」
「バスレイ、私に用があったのではないのか……?」
眼鏡の女の子はバスレイというらしい。なんでハンバーグに拘るかわかんないけど、食べたいというなら作ってあげてもいいかしらね?
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