異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
上 下
80 / 85
最終章:いつもどおり!

その79 狙われた卵

しおりを挟む
 「こっちの方でいいのね?」
 「ああ、サリアと一緒に地図を見ながら回ってくれ。護衛は頼んだぞお前達」
 <うぉふ!>
 <あ”ー!>

 俺の号令でアロンとポンチョ、スライム達がずらりと整列してそれぞれアピールをしサリア達の後を追う。
 さて、母ちゃんの召喚から2週間ほど経った。
 経過は順調で、癌だったころは薬も飲んでいて体がしんどかったそうだが、飲まなくても平気だしむしろその辺の冒険者よりも強い。

 もう金もあるし家でゆっくりしていて欲しいと思ったのだが、今日は自分も連れて行けと言いだしたのである。
 理由は暇だから、ともっともな理由かもしれない。
 アロンやポンチョ達も懐いているんだけど、仕事の時は留守番をしてくれないので寂しいらしい。

 「ジュエリーサンゴを見つめているだけの一日は地獄よ?」
 「買い物にでもいけばいいだろ……」
 「ならサリアちゃんを置いて行ってよー。あ、そうだ、あたしも仕事するわ! そしたらこの子達も一緒よね」

 という割とどうでもいい理由でついてきたというわけ。
 
 ……余談だが、ルアンが最後に気を利かせたらしく、目が覚めたら庭に一戸建てが増えていた。爺さんの持ち家だったから丸々ウチのなので向こうで消えるよりはと思う。
 俺の部屋もまんま残っていたので、漫画やらベース、野球のグローブにサッカーボールに自転車などなど……増えてはいけないものが増えた気がする。

 <サッカーボールは我とアロンで使わせてほしい>

 とはダイトの言葉だが、やはり追いかけるのが楽しいようだ。トランポリンに続くお気に入りが増えたアロン。
 ポンチョはスケボーが気に入ったようで、小さい身体を使って軽快に滑っていた。
 スライム達はこたつの上がお気に入り。

 そんな感じで母ちゃんは自宅、俺とサリアはソリッド様の建ててくれた家と差別化も図れているのも特徴的だ。庭が狭くなったから騎士達が集まってバーベキューは難しくなったけどな。


 ◆ ◇ ◆

 「ここがこの住所になりますね!」
 「なるほどねえ。きちんと配達できる仕組みになっているから成り立つのね」
 「はい! こんにちはー、お届け物でーす」

 私はお母さまと一緒に荷物配達をすることに。
 息子であるヒサトラさんと行くかと思ったけど意外なことに私と一緒に行きたいと言いだしたのだ。

 「ふう……サリアちゃんは可愛いわね……おばさん、娘も欲しかったのよ。いつ結婚するの?」
 「あ、その……ありがとうございます。お母さまがこっちに来てから考えたいってヒサトラさんが言ってましたから、そのうちじゃないかなと」
 「……ちなみにまだしてないの?」
 「……! はい。ヒサトラさん、そういうの全然なかったですね。そこが好きになった部分でもあるんですけど!」
 「あー、最初の事件ね」

 襲われてもおかしくない状況だったけどそうしなかった彼はやっぱり誠実なんだと思うなあ。
 それはそれとして――

 「私も両親が居ないので、お母さまが出来たら嬉しいです!」 
 「あら、嬉しいわね。ふふ、異世界だなんて驚いたけど、可愛い娘ができるならアリね」
 <わんわん!>
 <あ”ー!>
 「アロンちゃんにポンチョ、ナンパ師を撃退してくれたの? ありがと♪」

 最近だとみんながガードしてくれるのでナンパの心配もなかったりして。
 お母さまも私も強いから簡単に連れ去られたりしないけど、頼もしい子達だと思う。

 「はいはい、プロフィアちゃん達、顔にへばりついてないで行くわよー」
 <♪>
 「懐いてるなあ」

 ヒサトラさんもそうだったけど、ニホンジンって順応性が高いのかしら?
 でもお母さまに喜ばれてよかったな。孤児となんて結婚反対! って人も多いしね。

 「行くわよサリアちゃんー」
 「はーい!」

 早く結婚したいな、この三人なら私が欲しかった家庭がきっとできる。そう思えるから――

 ◆ ◇ ◆

 <遅いな、迎えに行かなくていいのか?>
 「まあ、ここが最後だし、アロン達もいるから平気だろ。母ちゃんには俺でも勝てるかどうかだぞ?」
 <確かに……む? ヒサトラ、空を見ろ>
 「星を見ろってか? お、ありゃシルバードラゴンか」

 久しぶりに見たな、どこかへ行っているのか? とか考えていると、くるっと方向を変えて急降下してきた!?
 珍しく大雑把な着地で風圧に耐えていると、シルバードラゴンが慌てた口調で俺達に話しかけてきた。

 <おおおお! ヒサトラではないか!! ここで会ったが一か月ぶり! すまん、助けてくれい!>
 「落ち着け、ホバリングで周囲の人が吹き飛んでいるだろ!? 丁度サリア達も帰って来たし、外で話を聞かせてくれ」

 と、いうわけで外に出て話を聞くと、結構大変な事態で驚いた。
 なんとドラゴンの卵が冒険者達に狙われているというのだ。
 有精卵は貴重で、生まれたばかりのドラゴンは全身素材となるので、ある程度成長させて殺し、売り飛ばされたりするらしい。

 <ワシが飛び回っていたからつけられたのかもしれん……頼む、卵と嫁さんを匿ってくれんか? 息子は人間を撃退したもののケガを負ってな。あやつも狩られる可能性が高い!>
 「いいぜ、でも卵を持って飛んでくりゃいいだろ?」
 <加減が難しいから持ち出すことはできんのだ。そのトラックとやらならいけるじゃろうと思ってな>

 なるほど、賢い選択だ。
 
 「ヒサトラさん、このまま行きましょう!」
 「よくわからないけど、友人? のピンチなら手助けするのが人間よね」
 <我達が要れば人間など容易い。ゆくぞ!>

 俺達も人間だけどな!?
 そんなわけで俺達はドラゴンの巣へと向かうことになった。
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...