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第四章:ひとまずの解決
その66 ジュエリーサンゴ
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ゴルフのレクチャーが終わり、ペールセンさんとの話し合いも早々に済んだ。
パソコンでゴルフについてプレゼンをしたところ、その場にいた全員がスタンディングオベーションをし、涙ぐんでいる商人も居た。
プリンターと紙があったから資料を作って渡したんだけどそれも感動されていた。
「こっちの世界の紙はごわっとして書きにくいですからねえ」
とはサリアの言葉だ。
というか未開封の荷物もそろそろ打ち止めになりそうだ。電化製品系はもうちょいあるが、冷蔵庫みたいな大型家電がないのが残念である。まあ、もともと俺のではないけど。
世の中にはいろんなものを頼む人が多く、宅配や運送トラックは無くてはならない存在で、こっちの世界でもそれは浸透しつつある。
今はオンリーワンだが、いずれバスレイあたりが車を作ってくれるといいなと思う。
そんなこんなで東西南北を駆けるヒノ運送は今日も仕事を終えて自宅へ戻る。
「お疲れさん」
「うん、ヒサトラさんも! 明日は休みだけど、またオールシャンに?」
「だな。ジュエリーサンゴとキングサーモン、それとクロマグロを買いに行かないと」
「サンゴとマグロは分かるんですけど、サーモンはなんでなの?」
俺の背中に抱き着き、腕を首に巻きつけながら耳元で尋ねてくる。
薬の材料とシルバードラゴンの土産は認識しているが、サーモンについては不明なようだ。
「キングサーモンはこの後デッドリーベアの蜜を取りに行くのに使うつもりでな、ダイトなら交渉もできそうだから魚と交換してくれねえかなって」
<それはいい案だ。むやみに争う必要はないからな>
「だろ?」
意思疎通ができるならまずは交渉だ。
やはり熊には鮭がいいと思いキングサーモンをチョイスしたが、気に入ってくれるといいな。
とりあえず早々に就寝して早朝、それも陽が昇る前から出発して市場へと向かう。
◆ ◇ ◆
「おう、来たな兄ちゃん! ほれ、クロマグロとキングサーモン二匹だ」
「お、いいねえ立派なもんだ。クロマグロは解体してもらえるかい? キングサーモンはそのまま冷凍するよ」
「任せときな」
刺身でも食えそうなクロマグロ。解体中に見える大トロや中トロに目を奪われ、俺とアロンは釘付けになる。
「ヒサトラさんとアロンちゃん、涎出てますよ」
おっと、いかんいかん……ああ、骨についた中落ちをネギトロにして食いたい……だが、それはシルバードラゴンとの晩餐まで待ちだ。とりあえず魚をコンテナの冷凍室へ放り込んだ後、ジュエリーサンゴについて漁師さんから話を聞くことに。
「すまねえ、ジュエリーサンゴを採りたいんだけどどうすりゃいい?」
「ああ、ならワシが案内してやるよ、ついて来な」
市場にある店の一角を構える爺さんがもう売り切ったってことで連れて行ってくれるらしい。海岸沿いを進み、海水浴ができる砂浜を越え、岩が密集しているところへ到着。
「覗き込んでみい」
「どれ……」
「わあ、キレイ!」
2、3メートルくらい水中下に陽の光を浴びて色とりどりになるサンゴが連なるサンゴ礁が見えた。
水も透明度が高くはっきりと形がわかる。
「確かにいっぱいあるな……」
「好きなだけ持って行って構わんよ。ただ、空気に触れると色を失って文字通り死ぬっぽいがのう」
「ふむ……」
俺はパンツ一丁で爺さんから渡されたナイフ(ダガーか?)を握り海の中へもぐりこむ。
水中眼鏡と浮き輪、シュノーケルも積み荷に入っていて使うなら今でしょってことでフル装備だ。
(悪ぃな、一株もらうぜ)
岩の根元から切り離してゲット。
そのまま陸地へあがると――
「ああ……」
<わふ>
あっという間に灰色と化し「死んだ」と思える状態に変化した。
「薬に使えますかね?」
「どうかなあ、図鑑にはそこまで詳しく書いていたわけじゃねえし……」
「生きているのも持って行った方がいいかもですね。切り離しただけなら大丈夫そうですか?」
持ってくる間はきれいだったから恐らく大丈夫だろう。
だけど、折角生かして持って帰るならアクアリウムみたいにできないだろうか?
「爺さん、水槽……なるべくでかいやつが無いか? 売っているところでもいい」
「水槽か? そうだな、商店街にあると思うが……」
「オッケー。サリア、悪いけど台車を持って買って来てくれないか?」
「わかったわ。行こうアロンちゃん」
<わん!>
さて、と。
それじゃその間にサンゴを削り取る作業をするか――
◆ ◇ ◆
それから数十分。
俺は作業を終え、水面に顔を出してサリアを待っていると、ゴトゴト音を立てながらサリアが戻って来た。
<わぉーん!>
「買って来ましたよー!」
「助かる……ってでかっ!?」
なるべく大きいヤツとは言ったが、俺の胴体くらいあるアロンが三頭くらい余裕でいける水槽が出てきたらびっくりする。これなら二、三個持って帰れそうだ。アリーの親父さんの分も必要だからな。
「水槽を海につけてくれ」
そのまま海の中に沈めて、先ほど岩から削り出したジュエリーサンゴを三つ中に入れる。野球のグローブくらいの大きさなのでこれくらいあればいいだろう。
それを今度は砂浜まで泳いで引っ張り、浅瀬で水を桶で捨ててから軽くし、台車に乗せる。
「あ、さすがヒサトラさん! バッチリ!」
「だろ? 後はこの辺の砂を入れてっと」
「ほう、考えたね」
「ああ、チリュウさん。ちょっとサンゴを分けてもらうよ」
いつの間にか来ていた町長のチリュウさんに声をかけると、構わないと言って笑っていた。
乱獲に注意すれば水槽に入れて家に飾るのもいいと思うみたいな話をする。
チリュウさんと話しながら数時間待ってみたが枯れる様子もなかったのでこれでOKということだろう。
俺はアクアリウムのようにしたいという思いから、海藻を突っ込み、汚れを浄化してくれるエビ類、それと小さい魚を数匹入れ込んでおいた。形から入るのは重要だ。
「そんじゃ帰るか」
<うむ。魚を食いたいぞ>
トラックで留守番をしてくれていたダイトに苦笑しながら俺達は王都へ帰還。明日はデッドリーベアの蜜を手に入れるかな。
……その後サンゴが町のあちこちで飾られるようになったのは別の話である――
パソコンでゴルフについてプレゼンをしたところ、その場にいた全員がスタンディングオベーションをし、涙ぐんでいる商人も居た。
プリンターと紙があったから資料を作って渡したんだけどそれも感動されていた。
「こっちの世界の紙はごわっとして書きにくいですからねえ」
とはサリアの言葉だ。
というか未開封の荷物もそろそろ打ち止めになりそうだ。電化製品系はもうちょいあるが、冷蔵庫みたいな大型家電がないのが残念である。まあ、もともと俺のではないけど。
世の中にはいろんなものを頼む人が多く、宅配や運送トラックは無くてはならない存在で、こっちの世界でもそれは浸透しつつある。
今はオンリーワンだが、いずれバスレイあたりが車を作ってくれるといいなと思う。
そんなこんなで東西南北を駆けるヒノ運送は今日も仕事を終えて自宅へ戻る。
「お疲れさん」
「うん、ヒサトラさんも! 明日は休みだけど、またオールシャンに?」
「だな。ジュエリーサンゴとキングサーモン、それとクロマグロを買いに行かないと」
「サンゴとマグロは分かるんですけど、サーモンはなんでなの?」
俺の背中に抱き着き、腕を首に巻きつけながら耳元で尋ねてくる。
薬の材料とシルバードラゴンの土産は認識しているが、サーモンについては不明なようだ。
「キングサーモンはこの後デッドリーベアの蜜を取りに行くのに使うつもりでな、ダイトなら交渉もできそうだから魚と交換してくれねえかなって」
<それはいい案だ。むやみに争う必要はないからな>
「だろ?」
意思疎通ができるならまずは交渉だ。
やはり熊には鮭がいいと思いキングサーモンをチョイスしたが、気に入ってくれるといいな。
とりあえず早々に就寝して早朝、それも陽が昇る前から出発して市場へと向かう。
◆ ◇ ◆
「おう、来たな兄ちゃん! ほれ、クロマグロとキングサーモン二匹だ」
「お、いいねえ立派なもんだ。クロマグロは解体してもらえるかい? キングサーモンはそのまま冷凍するよ」
「任せときな」
刺身でも食えそうなクロマグロ。解体中に見える大トロや中トロに目を奪われ、俺とアロンは釘付けになる。
「ヒサトラさんとアロンちゃん、涎出てますよ」
おっと、いかんいかん……ああ、骨についた中落ちをネギトロにして食いたい……だが、それはシルバードラゴンとの晩餐まで待ちだ。とりあえず魚をコンテナの冷凍室へ放り込んだ後、ジュエリーサンゴについて漁師さんから話を聞くことに。
「すまねえ、ジュエリーサンゴを採りたいんだけどどうすりゃいい?」
「ああ、ならワシが案内してやるよ、ついて来な」
市場にある店の一角を構える爺さんがもう売り切ったってことで連れて行ってくれるらしい。海岸沿いを進み、海水浴ができる砂浜を越え、岩が密集しているところへ到着。
「覗き込んでみい」
「どれ……」
「わあ、キレイ!」
2、3メートルくらい水中下に陽の光を浴びて色とりどりになるサンゴが連なるサンゴ礁が見えた。
水も透明度が高くはっきりと形がわかる。
「確かにいっぱいあるな……」
「好きなだけ持って行って構わんよ。ただ、空気に触れると色を失って文字通り死ぬっぽいがのう」
「ふむ……」
俺はパンツ一丁で爺さんから渡されたナイフ(ダガーか?)を握り海の中へもぐりこむ。
水中眼鏡と浮き輪、シュノーケルも積み荷に入っていて使うなら今でしょってことでフル装備だ。
(悪ぃな、一株もらうぜ)
岩の根元から切り離してゲット。
そのまま陸地へあがると――
「ああ……」
<わふ>
あっという間に灰色と化し「死んだ」と思える状態に変化した。
「薬に使えますかね?」
「どうかなあ、図鑑にはそこまで詳しく書いていたわけじゃねえし……」
「生きているのも持って行った方がいいかもですね。切り離しただけなら大丈夫そうですか?」
持ってくる間はきれいだったから恐らく大丈夫だろう。
だけど、折角生かして持って帰るならアクアリウムみたいにできないだろうか?
「爺さん、水槽……なるべくでかいやつが無いか? 売っているところでもいい」
「水槽か? そうだな、商店街にあると思うが……」
「オッケー。サリア、悪いけど台車を持って買って来てくれないか?」
「わかったわ。行こうアロンちゃん」
<わん!>
さて、と。
それじゃその間にサンゴを削り取る作業をするか――
◆ ◇ ◆
それから数十分。
俺は作業を終え、水面に顔を出してサリアを待っていると、ゴトゴト音を立てながらサリアが戻って来た。
<わぉーん!>
「買って来ましたよー!」
「助かる……ってでかっ!?」
なるべく大きいヤツとは言ったが、俺の胴体くらいあるアロンが三頭くらい余裕でいける水槽が出てきたらびっくりする。これなら二、三個持って帰れそうだ。アリーの親父さんの分も必要だからな。
「水槽を海につけてくれ」
そのまま海の中に沈めて、先ほど岩から削り出したジュエリーサンゴを三つ中に入れる。野球のグローブくらいの大きさなのでこれくらいあればいいだろう。
それを今度は砂浜まで泳いで引っ張り、浅瀬で水を桶で捨ててから軽くし、台車に乗せる。
「あ、さすがヒサトラさん! バッチリ!」
「だろ? 後はこの辺の砂を入れてっと」
「ほう、考えたね」
「ああ、チリュウさん。ちょっとサンゴを分けてもらうよ」
いつの間にか来ていた町長のチリュウさんに声をかけると、構わないと言って笑っていた。
乱獲に注意すれば水槽に入れて家に飾るのもいいと思うみたいな話をする。
チリュウさんと話しながら数時間待ってみたが枯れる様子もなかったのでこれでOKということだろう。
俺はアクアリウムのようにしたいという思いから、海藻を突っ込み、汚れを浄化してくれるエビ類、それと小さい魚を数匹入れ込んでおいた。形から入るのは重要だ。
「そんじゃ帰るか」
<うむ。魚を食いたいぞ>
トラックで留守番をしてくれていたダイトに苦笑しながら俺達は王都へ帰還。明日はデッドリーベアの蜜を手に入れるかな。
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