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第三章:最強種と

その37 レストランか食堂か

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 「さあさ、この店は観光客からも人気の声が高い食堂となっておりますぞ」
 「ほう、悪くないな」
 「オシャレですわね」

 リーザさんの言う通りオシャレな海辺のレストランって感じで、女性に人気がありそうだなと感じる。横を見ればサリアが目を輝かせていたのでやはりこういう場所は女の子は好きらしい。

 「雰囲気がいいですね、海を見ながら食べたいかもです!」
 「だな、ソリッド様と席が離れても窓際がいいな。……ん?」

 ソリッド様や騎士達が入っていくのを横目で見ながらサリアとどこがいいか、なんて話をしていると下の方から袖を引っ張られる感覚があった。
 
 視線を下げるとみすぼらしい恰好をした兄妹が口をへの字にして見上げていた。

 「お、なんだ坊主?」
 「どうしたの?」

 俺とサリアが声をかけると、兄貴の方が力強く俺の袖を引っ張って口を開く。

 「う、ウチの店に食べに来てくれよ! 魚はウチのが美味いんだ!」
 「おねがいまーす!」
 「お願いします、かな?」
 
 サリアが屈みこんで6歳くらいの妹の頭を撫でながら尋ねると、兄のズボンを掴んでサッと後ろに隠れた。恥ずかしがり屋さんのようだ。
 どうもこの兄妹の家も食堂みたいだがどうしたものか? 少し考えていると、ソリッド様達は中へ入り、レストランの従業員が声をかけてきた。

 
 「どうかされましたか? ……あ、お前達! また邪魔してるのか!」
 「ち、違う! まだ店に入ってないから声をかけるのはいいだろ……」
 「汚い風貌で店の周りに寄られちゃたまらないんだよこっちは。ささ、陛下がお待ちですぞ」
 
 という話を聞いて俺は頬をかきながら従業員と子供たちを見比べる。
 ソリッド様はもう中なので本来ならついていくべきだろう。

 「あー、ソリッド様にはあんたから言っておいてくれるか? 俺はこいつらの店に行ってみるよ。ソリッド様と一緒にいるけど庶民だしな。サリアはレストランに行っていいぜ」
 「もう、ヒサトラさんが行かないなら私がそうすると思いますか?」
 「ええ……? こいつらの店、汚いんだぞ」
 「店はそうかもしれないけど、味はいいんだぞ!」
 「だぞー!」

 兄妹が激高すると、従業員は肩を竦めて俺に耳打ちしてくる。怒っているって感じじゃなさそうだが?

 「まあお客さんが店を選ぶから俺は強くいえねえし、こいつらも必死だから止めないよ。でもウチの方が多分いいと思うから、また寄ってくれ」
 「ああ、そうさせてもらうよ。とりあえソリッド様にはよろしく言っておいてくれると」

 従業員は片手を上げながら店に入っていき、それを確認してから俺は坊主の頭に手を乗せて歯を出して笑いながら答えてやる。

 「よし、お前の店に案内してくれ! 美味く無かったら承知しねえぞ?」
 「……! おう! 絶対うめえんだからな!」
 「なー!」

 手を繋いでいない方の拳を振り回す妹が微笑ましいなと思いながらサリアと一緒についていく。
 すぐ傍には浜辺があり、だんだんと石垣へ変化しているのが海だなと感じさせてくれる。テトラポットみたいなものは無いので、津波が来たら大変そうだ。

 「釣りか、俺はやらないけど動画とか見ていると楽しそうなんだよな」
 「どうが、ですか?」
 「ああ、まあ向こうの世界の娯楽だな。あればっかり見ているのもどうかと思うし、釣りみたいなアウトドアな趣味もいいと思うぜ」
 「釣ったお魚はそのままご飯になりますしね」

 サリアとそんな話をしながら歩く中、俺は子供たちに話しかける。折角なので名前くらいは聞いておこう。

 「俺はヒサトラってんだ。お前達の名前は?」
 「ハアタだ! よろしくなあんちゃん!」
 「ミアだよ!」
 「私はサリアです」

 握手をしながらミアを抱え上げて肩車してやると、きゃっきゃっしながら俺の頭をガシっと摑まえて大喜び。
 兄妹揃って元気は元気なんだな。

 「きゃー♪」
 「あ、ミアいいなあ。でも、人見知りするこいつがこんなに喜ぶのは珍しいな」
 「そうなんだ?」
 「うん。まあ、あんちゃん達いい人そうだもんな。まさか本当に来てくれるとは思わなかった」
 「まあ、あっちは気を使いそうだからな。で、店はまだか?」
 「えっと、あそこ!」

 ……へえ。

 そう思わずつぶやきそうになるくらい、確かにぼろかった。雨風はしのげそうだが、見た目は完全にダンボールハウスレベルと言っていいかもしれない……。

 しかしこういう場所の方が飯は美味い、というのがお約束なので期待したい。
 大丈夫だよな……?

 少しドキドキしながら近づいていく……サリアには変なものを食べさせるわけにはいかないので毒見役を俺が務めるつもりだ。しかしあいつら、クソみたいなテンションだったけどこんな気持ちでやってたと思うと尊敬に値するのかもしれない。

 「ただいまー! 父ちゃんお客さんを連れて来たよ!」
 「かあちゃんただいまー!」
 「お、どこ行ってたんだハアタ!! おお、町の人間以外の客、か?」
 「なんか無理いったんじゃないだろうね?」
 「だ、大丈夫だよ……。ほら、ミアも懐いているだろ?」

 チリュウさんと同じくらいのマッチョな男性が俺を見て目を細め、ミアに目を向けると笑顔で俺の肩を叩きながら言う。

 「おお! すげえなアンタ。ミアが俺達以外に肩車なんてさせるの初めて見たぜ!」
 「そうだねえ。こっちの女の子もキレイだし、どこのいいところから来たんだかね。悪いね、ウチの子が無理言ったんだろ? こんなボロ店で食わなくてもいいだろうし、遠慮してくれていいんだよ」

 おかみさんって感じの人が自虐ネタみたいにして笑うが、この一家は仲がいいんだろうなって思う。
 きっと料理も美味い……ような気がする。

 「いや、ここでいただくよ。二人、おススメを頼む」
 「オッケー、おもしれえ兄ちゃんだ! 腕によりをかけてやるぜ!」 
 
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