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第三章:最強種と
その36 港町オールシャン
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「おおー、やはり速いな」
「風が気持ちいいですわね」
急ぎ旅ってわけでもないのでゆっくりトラックを走らせて港町へと向かう。
俺達の居るビルシュ国の王都から北へ数十キロで海辺に到着する。馬車なら泊りだろうけど、トラックなら日帰りは余裕。
「そういやこの世界にフライってあるのか?」
「ふらい?」
「ああ、食材に小麦粉卵にパン粉をまぶして油で揚げるやつだが……ないのか?」
「私は聞いたことが無いですね」
サリアがあっさりそう言ったのでどうやら無いらしい。
横目で見ると、国王様夫妻も首をひねっているので、間違いないようだ。
「揚げ物って簡単そうだからありそうだと思ったんだけどなあ」
「揚げ物はありますよ?」
「む、そうなのか……?」
俺が訝しんでいると、肉や魚、または野菜を『素揚げ』することはあるらしいが、小麦粉とかそういう『料理』として揚げ物は無いらしい。
「フライ……異世界の料理か、見てみたいものだな」
「飛びそうですね」
確かに。って、類義英語は通じるのか……?
そういや言語問題って解決しているけど、どうなってんだろうとは思うがルアンのせいで全て片付いてしまいそうだからあまり考えなくて良いだろう。
そんな調子で昼ご飯は魚料理一択だなと俺の腹もその心づもりになっていた。
フライが無くても刺身は……いや、生物は無理か?
焼き魚でもいいけど、それなら白い飯が食いたいな。こっちにも米はあるが、もちっとはしてないのが少し物足りない。
そして山間に差し掛かり、少し荒れた道を登ってからまた下り始めると海が見えてきた。
「おー、キレイだな」
「わたくしは初めて来ましたわ、とらっくとは便利なものですわね」
途中で魔物の姿があったので馬車だと襲われるからよほどのことが無い限り遠距離の移動はできないのだそうだ。
だが、トラックなら魔物に襲われる心配が殆んどないのは実証済みなので、こうしてソリッド様も連れてきたという訳である。
やがて港町へ到着するが町の門で止められた。
「お、おーい、止まれ!」
「こんちは、町に入りたいんだけどいいかい?」
「おお、人間……か?」
「人間だよ!? これは――」
と、俺が説明しようとしたところでコンテナから降りて来た騎士が前に出てくれた。
「こちらに乗られているお方はこの国の王であるソリッド様だ。この乗り物も特に問題ないので、安心していい」
「うむ、私がソリッドだ」
「陛下のお顔を拝見したのは初めてですが、確かに騎士殿の鎧にある徽章などもそうですね。一応、町の長を連れて挨拶をお願いしたいのですがお待ちいただけますか?」
「もちろんだ。町長なら知っているだろうしな」
ソリッド様が寛大な態度で許可をすると、別の門番が慌てて呼びに駆け出して行く。まあ、国王様とはいえ、怪しい乗り物に乗っているわけだから訝しむのも無理はない。
しばらくアイドリングしていると、白髪交じりで日焼けした筋肉だるまが歩いてくるのが見えた。あー、漁師って感じがする風貌だ。歳のころは40代後半って感じかな?
「おお、間違いなく陛下だ。誕生パーティに呼ばれておりました、オールシャン町長のチリュウと申します」
「そういえば昨年の誕生パーティの人選に入っていたか」
「はい。それにしても……凄いですね、車輪があるということは移動するものだと思いますが」
「うむ、異世界の乗り物でトラックというらしい。それで、中へ入っていいか?」
「おっと、そうですな。ではこちらへ」
門が完全に開かれてトラックを先導してくれるチリュウさん。
港町とはいえ家屋の造りはそれほど変わらないけど、窓は少ない気がするな。潮風とか関係あるのかね?
王都などと違って普通の町なので道は狭い。
慎重にならなければと、黙ってハンドルを操作し、奥まで行くとようやく広い場所に出ることができた。
「ふう……」
「お疲れ様、ヒサトラさん」
「ありがとうサリア。それじゃ、降りますか」
「そうだな。久しぶりに魚料理にありつけるな、楽しみだ」
心底嬉しそうに笑うソリッド様に苦笑しながら俺も降りると、背伸びをしている騎士、総勢20人と毒見役二人が見えた。
「サリアは魚、好きなのか?」
「川魚なら食べますけど、海の魚は高級ですから食べたことないですね」
「そっか、そういう意味でも来て良かったな」
「ふふ、ありがとうございます」
どうせ忙しくなるだろうし、今の内に休ませておくのもいいと思う。
そんな会話をしていると、チリュウさんが近づいてきて話しかけてきた。
「それで、本日はどのようなご用が?」
「なに、新鮮な魚を食べたいと思ってな。トラックならここまですぐ来れると思ったのと、これが国の各町へ運送するという事業も始まるから、そのテストケースでもあるのだ」
「……確かに、荷台が大きいですな。あれなら相当数の荷物が運べるのは明白。移動スピードが速いなら、海魚も遠くへ運べる、ということですかな?」
「うむ。王都からここまで数時間だぞ?」
その言葉にチリュウさんが目を丸くして立ち尽くすが、すぐに笑みを浮かべ――
「これは商売が捗りますな」
「そうだろう? さて、早速で悪いが美味い魚が食いたい。どこかいい店は無いか?」
「ははは、陛下の頼みとあらば案内しないわけにはいきませんな! では、こちらへ」
気さくな人だがすぐにトラックの有用性に気づくあたり、筋肉の割に賢いのかもしれない。
いや、ごめんなさい偏見です……
そんなことを考えながら俺達はチリュウさんの後をついていくのだった。さて、異世界の魚ってどうだろうね?
「風が気持ちいいですわね」
急ぎ旅ってわけでもないのでゆっくりトラックを走らせて港町へと向かう。
俺達の居るビルシュ国の王都から北へ数十キロで海辺に到着する。馬車なら泊りだろうけど、トラックなら日帰りは余裕。
「そういやこの世界にフライってあるのか?」
「ふらい?」
「ああ、食材に小麦粉卵にパン粉をまぶして油で揚げるやつだが……ないのか?」
「私は聞いたことが無いですね」
サリアがあっさりそう言ったのでどうやら無いらしい。
横目で見ると、国王様夫妻も首をひねっているので、間違いないようだ。
「揚げ物って簡単そうだからありそうだと思ったんだけどなあ」
「揚げ物はありますよ?」
「む、そうなのか……?」
俺が訝しんでいると、肉や魚、または野菜を『素揚げ』することはあるらしいが、小麦粉とかそういう『料理』として揚げ物は無いらしい。
「フライ……異世界の料理か、見てみたいものだな」
「飛びそうですね」
確かに。って、類義英語は通じるのか……?
そういや言語問題って解決しているけど、どうなってんだろうとは思うがルアンのせいで全て片付いてしまいそうだからあまり考えなくて良いだろう。
そんな調子で昼ご飯は魚料理一択だなと俺の腹もその心づもりになっていた。
フライが無くても刺身は……いや、生物は無理か?
焼き魚でもいいけど、それなら白い飯が食いたいな。こっちにも米はあるが、もちっとはしてないのが少し物足りない。
そして山間に差し掛かり、少し荒れた道を登ってからまた下り始めると海が見えてきた。
「おー、キレイだな」
「わたくしは初めて来ましたわ、とらっくとは便利なものですわね」
途中で魔物の姿があったので馬車だと襲われるからよほどのことが無い限り遠距離の移動はできないのだそうだ。
だが、トラックなら魔物に襲われる心配が殆んどないのは実証済みなので、こうしてソリッド様も連れてきたという訳である。
やがて港町へ到着するが町の門で止められた。
「お、おーい、止まれ!」
「こんちは、町に入りたいんだけどいいかい?」
「おお、人間……か?」
「人間だよ!? これは――」
と、俺が説明しようとしたところでコンテナから降りて来た騎士が前に出てくれた。
「こちらに乗られているお方はこの国の王であるソリッド様だ。この乗り物も特に問題ないので、安心していい」
「うむ、私がソリッドだ」
「陛下のお顔を拝見したのは初めてですが、確かに騎士殿の鎧にある徽章などもそうですね。一応、町の長を連れて挨拶をお願いしたいのですがお待ちいただけますか?」
「もちろんだ。町長なら知っているだろうしな」
ソリッド様が寛大な態度で許可をすると、別の門番が慌てて呼びに駆け出して行く。まあ、国王様とはいえ、怪しい乗り物に乗っているわけだから訝しむのも無理はない。
しばらくアイドリングしていると、白髪交じりで日焼けした筋肉だるまが歩いてくるのが見えた。あー、漁師って感じがする風貌だ。歳のころは40代後半って感じかな?
「おお、間違いなく陛下だ。誕生パーティに呼ばれておりました、オールシャン町長のチリュウと申します」
「そういえば昨年の誕生パーティの人選に入っていたか」
「はい。それにしても……凄いですね、車輪があるということは移動するものだと思いますが」
「うむ、異世界の乗り物でトラックというらしい。それで、中へ入っていいか?」
「おっと、そうですな。ではこちらへ」
門が完全に開かれてトラックを先導してくれるチリュウさん。
港町とはいえ家屋の造りはそれほど変わらないけど、窓は少ない気がするな。潮風とか関係あるのかね?
王都などと違って普通の町なので道は狭い。
慎重にならなければと、黙ってハンドルを操作し、奥まで行くとようやく広い場所に出ることができた。
「ふう……」
「お疲れ様、ヒサトラさん」
「ありがとうサリア。それじゃ、降りますか」
「そうだな。久しぶりに魚料理にありつけるな、楽しみだ」
心底嬉しそうに笑うソリッド様に苦笑しながら俺も降りると、背伸びをしている騎士、総勢20人と毒見役二人が見えた。
「サリアは魚、好きなのか?」
「川魚なら食べますけど、海の魚は高級ですから食べたことないですね」
「そっか、そういう意味でも来て良かったな」
「ふふ、ありがとうございます」
どうせ忙しくなるだろうし、今の内に休ませておくのもいいと思う。
そんな会話をしていると、チリュウさんが近づいてきて話しかけてきた。
「それで、本日はどのようなご用が?」
「なに、新鮮な魚を食べたいと思ってな。トラックならここまですぐ来れると思ったのと、これが国の各町へ運送するという事業も始まるから、そのテストケースでもあるのだ」
「……確かに、荷台が大きいですな。あれなら相当数の荷物が運べるのは明白。移動スピードが速いなら、海魚も遠くへ運べる、ということですかな?」
「うむ。王都からここまで数時間だぞ?」
その言葉にチリュウさんが目を丸くして立ち尽くすが、すぐに笑みを浮かべ――
「これは商売が捗りますな」
「そうだろう? さて、早速で悪いが美味い魚が食いたい。どこかいい店は無いか?」
「ははは、陛下の頼みとあらば案内しないわけにはいきませんな! では、こちらへ」
気さくな人だがすぐにトラックの有用性に気づくあたり、筋肉の割に賢いのかもしれない。
いや、ごめんなさい偏見です……
そんなことを考えながら俺達はチリュウさんの後をついていくのだった。さて、異世界の魚ってどうだろうね?
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