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第一章:轢いたと思ったら異世界だった
その20 決意するということ
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「ん……朝か。なんか重いな……こ、これが金縛りというやつ――」
「くー」
「お前かよ」
いつの間にかサリアが上から降りてきて俺に半分覆いかぶさるような形で寝入っていた。
それで重かったようだが、彼女の名誉のために言っておくと布団よりも軽いくらいだ。
それにしても、寝顔が可愛い。
外人っぽい感じはするけど、顔が小さくサラサラの髪に柔らかそうな唇と全体的に整っている。
スラリとした足は白く――
「ごくり……」
――となるほど、キレイだ。
「……よっと」
俺は掴まれているジャケットからさっと腕を抜いて起き上がると、布団をかけてから外へ出る。
まだ陽が昇ろうとしている時間帯のようで、朝焼けがキレイだ。
遠くからニワトリの鳴き声も聞こえてくるあたり、魔法があり、少し生活様式が古い以外は前の世界とそれほど変わらないな。ルアンが出てくる前にサリア達と言語が通じたのは奇跡に近い。
屋敷に目を向けて建物を見た後に門の前まで歩いていく。
散歩というには短い距離だが、少し肌寒い空気を感じて歩くのは気持ちが良かった。
「はー……」
門から先は大通りとなっていて、早朝のため人は見えない。
真っすぐに伸びた道の左右にある建物や道路を見ると、改めて俺は別世界へやってきたのだとため息を吐く。
到着してからこっち、ほとんど誰かと一緒に過ごしていてゴタゴタが続いていたから考える余裕も無かったから、静かな朝は久しぶりだ。
「……っと」
少し陽が昇るのを見ていたら不意に涙が出ていることに気づいた。
もう向こうへは帰れないという事実が今頃になって胸を刺したらしい。
それでもルアンが母ちゃんをなんとかしてくれれば、未練は殆どないのが幸いか。
馬鹿をやっていた仲間は就職し、結婚して大人しくなった。
交流も少なくなり、たまの飲みも赤ちゃんが産まれればなくなっちまうそれが大人になっていくことなのだ。
で、母ちゃんはそういう遊びすらも全て捨てて俺を育ててくれていたのにあの体たらく……そして下手をすると会えても亡くなっちまう可能性の方が高い。
「最悪だよなあ……俺ぁ……。長生きさせたかったぜ」
「させてあげましょうよ」
「!」
不意に背中から抱き着かれて声をかけられドキッとする。声の主はサリアだった。
「できるのかねえ……」
「もしかしたらあるかもしれないじゃないですか。私、思ったんですけど、町同士じゃなくてあちこちの国を行き来できるようになったらそういう情報を得られるかも、って」
霊薬だかエリクサーとか……名前はどうでもいい。とにかく不治の病を治療する薬について情報を仕入れればいいのではとサリアは言う。冒険者ギルドというところへ登録して情報を募れば流れてくる冒険者がなにかを知っている可能性もゼロではないという。
「……そうだな、俺の母ちゃんのことで俺が諦めてたらダメだよな」
俺は振り返ってサリアの頭に手を乗せると、くすぐったそうな顔をして目を細める。
やれるだけやってみるか。幸いトラックの移動はほぼ無限で、場所によっては速度を上げても問題ないのだ・
「よし……トライドさんとジャンさんに話をしてみるか」
「ですね!」
そうと決まれば善は急げだ――
◆ ◇ ◆
「昨日の話、受けさせてください」
「おお、本当か! うんうん、その言葉を待っていたよ! 大々的に宣伝して、往復……金額を決めてという感じか?」
「そうですね。向こうだと荷物一個からでもやっていて、荷物の大きさで料金が変わるシステムを導入していました。貨幣の価値がちょっと分からないので、例えば商人や郵便屋がどれくらいで請け負っているかなど分かれば調整したいですね」
「ふむ、面白い! ベリアスの結婚も楽しみだがそっちも楽しみだな!」
運び屋も生活がかかっているだろうし、そこは住み分けをきっちりしておきたい。
俺は少しお高めの金額を取る代わりに速度を重視するといった別のサービスを提供すれば納得してもらえると思う。
期待値としてはガチの運送屋としての働きだな。
何十箱もの果物を別の町へ届ける、生物を急いで運搬する……そういう『他でできない』ことをやる。それで俺は金を稼げるはず。トライドさんとジャンさんが言うように冒険者や旅行客の運びも
金を稼ぐのと同時に名前が売れればお得意さんになってくれる人もいるだろうし、情報をたくさん得ることができるかもしれない。
そして俺はもう少し交渉を進める。
「できれば領地同士の町がうまくいくと判断できたらトラックの移動範囲を増やして欲しい。家はロティリア領で」
母ちゃんがこっちに来るかもしれない。そして不治の病に侵されているので情報ができるだけ欲しいことを告げる。
するとトライドさんとジャンさんが顔を見合わせて少し考えた後に口を開く。
「……ふむ、ならば君はもっと大きな場所に移住すべきだな。もちろん、すぐにとはいかんが」
「私とトライドで王都に住めないか確認してみようじゃないか。あそこなら情報も仕事もたくさん入る。だが焦ってはいかんな。まずは我々の領地で仕事を進めようじゃないか」
「トライドさん、ジャンさん……。ありがとうございます!」
「良かったですね、ヒサトラさん」
そこからさらに話を詰め、俺達はトライドさん一家を乗せて再びロティリア領へと戻っていく。
さて、俺の新しい生活だ、はりきってやるとしようかね!
「くー」
「お前かよ」
いつの間にかサリアが上から降りてきて俺に半分覆いかぶさるような形で寝入っていた。
それで重かったようだが、彼女の名誉のために言っておくと布団よりも軽いくらいだ。
それにしても、寝顔が可愛い。
外人っぽい感じはするけど、顔が小さくサラサラの髪に柔らかそうな唇と全体的に整っている。
スラリとした足は白く――
「ごくり……」
――となるほど、キレイだ。
「……よっと」
俺は掴まれているジャケットからさっと腕を抜いて起き上がると、布団をかけてから外へ出る。
まだ陽が昇ろうとしている時間帯のようで、朝焼けがキレイだ。
遠くからニワトリの鳴き声も聞こえてくるあたり、魔法があり、少し生活様式が古い以外は前の世界とそれほど変わらないな。ルアンが出てくる前にサリア達と言語が通じたのは奇跡に近い。
屋敷に目を向けて建物を見た後に門の前まで歩いていく。
散歩というには短い距離だが、少し肌寒い空気を感じて歩くのは気持ちが良かった。
「はー……」
門から先は大通りとなっていて、早朝のため人は見えない。
真っすぐに伸びた道の左右にある建物や道路を見ると、改めて俺は別世界へやってきたのだとため息を吐く。
到着してからこっち、ほとんど誰かと一緒に過ごしていてゴタゴタが続いていたから考える余裕も無かったから、静かな朝は久しぶりだ。
「……っと」
少し陽が昇るのを見ていたら不意に涙が出ていることに気づいた。
もう向こうへは帰れないという事実が今頃になって胸を刺したらしい。
それでもルアンが母ちゃんをなんとかしてくれれば、未練は殆どないのが幸いか。
馬鹿をやっていた仲間は就職し、結婚して大人しくなった。
交流も少なくなり、たまの飲みも赤ちゃんが産まれればなくなっちまうそれが大人になっていくことなのだ。
で、母ちゃんはそういう遊びすらも全て捨てて俺を育ててくれていたのにあの体たらく……そして下手をすると会えても亡くなっちまう可能性の方が高い。
「最悪だよなあ……俺ぁ……。長生きさせたかったぜ」
「させてあげましょうよ」
「!」
不意に背中から抱き着かれて声をかけられドキッとする。声の主はサリアだった。
「できるのかねえ……」
「もしかしたらあるかもしれないじゃないですか。私、思ったんですけど、町同士じゃなくてあちこちの国を行き来できるようになったらそういう情報を得られるかも、って」
霊薬だかエリクサーとか……名前はどうでもいい。とにかく不治の病を治療する薬について情報を仕入れればいいのではとサリアは言う。冒険者ギルドというところへ登録して情報を募れば流れてくる冒険者がなにかを知っている可能性もゼロではないという。
「……そうだな、俺の母ちゃんのことで俺が諦めてたらダメだよな」
俺は振り返ってサリアの頭に手を乗せると、くすぐったそうな顔をして目を細める。
やれるだけやってみるか。幸いトラックの移動はほぼ無限で、場所によっては速度を上げても問題ないのだ・
「よし……トライドさんとジャンさんに話をしてみるか」
「ですね!」
そうと決まれば善は急げだ――
◆ ◇ ◆
「昨日の話、受けさせてください」
「おお、本当か! うんうん、その言葉を待っていたよ! 大々的に宣伝して、往復……金額を決めてという感じか?」
「そうですね。向こうだと荷物一個からでもやっていて、荷物の大きさで料金が変わるシステムを導入していました。貨幣の価値がちょっと分からないので、例えば商人や郵便屋がどれくらいで請け負っているかなど分かれば調整したいですね」
「ふむ、面白い! ベリアスの結婚も楽しみだがそっちも楽しみだな!」
運び屋も生活がかかっているだろうし、そこは住み分けをきっちりしておきたい。
俺は少しお高めの金額を取る代わりに速度を重視するといった別のサービスを提供すれば納得してもらえると思う。
期待値としてはガチの運送屋としての働きだな。
何十箱もの果物を別の町へ届ける、生物を急いで運搬する……そういう『他でできない』ことをやる。それで俺は金を稼げるはず。トライドさんとジャンさんが言うように冒険者や旅行客の運びも
金を稼ぐのと同時に名前が売れればお得意さんになってくれる人もいるだろうし、情報をたくさん得ることができるかもしれない。
そして俺はもう少し交渉を進める。
「できれば領地同士の町がうまくいくと判断できたらトラックの移動範囲を増やして欲しい。家はロティリア領で」
母ちゃんがこっちに来るかもしれない。そして不治の病に侵されているので情報ができるだけ欲しいことを告げる。
するとトライドさんとジャンさんが顔を見合わせて少し考えた後に口を開く。
「……ふむ、ならば君はもっと大きな場所に移住すべきだな。もちろん、すぐにとはいかんが」
「私とトライドで王都に住めないか確認してみようじゃないか。あそこなら情報も仕事もたくさん入る。だが焦ってはいかんな。まずは我々の領地で仕事を進めようじゃないか」
「トライドさん、ジャンさん……。ありがとうございます!」
「良かったですね、ヒサトラさん」
そこからさらに話を詰め、俺達はトライドさん一家を乗せて再びロティリア領へと戻っていく。
さて、俺の新しい生活だ、はりきってやるとしようかね!
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