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第一章:轢いたと思ったら異世界だった
その8 初仕事へ
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というわけで朝食を終えた俺はトラックへと戻っていた。
明るい内に積み荷のチェックと車の状態を確認しておきたいからだ。
しかし――
「……なぜついてきたんだ?」
「嫌ですよヒサトラさん。私達は運命共同体じゃないですか」
「面白そうですもの!」
――アグリアスとサリアがにこにこ笑顔で後に続いていた。企業秘密ってわけじゃないが仕事があるだろうに。
「サリアはメイドの仕事をしなくていいのか?」
「はい。本日づけでヒサトラさんのメイドとなりましたので問題ありません」
「ふーん、大変だな……って俺の!? どういうことだよ!?」
「フフフ、これはわたくしからのプレゼントですわ。この世界にきて心細いと思いますし、一人付き人が居れば便利ですわよ」
「お給金はアグリアス様から出ているのでご心配なく」
「俺はいいけど、お世話されるほどやることは無いと思うぜ?」
スカートをつまんでお辞儀をするサリアに肩を竦めながら返すと、トラックの荷台を開く操作をする。
木にぶつからない位置であることを確認して動き出すウイングに二人が目を輝かせていると――
「ぶるひーん……」
「うお!?」
寂し気に泣く馬をが顔を覗かせた。
「あら! そういえばシタタカを乗せていましたわね」
「そうだったな……よしよし、降ろしてやるから大人しくしてろよー」
「ひひん!」
馬は俺達に気づくと嬉しそうにいなないて大人しく待ってくれ、程なくして昇降機で下におろすと自由になった。
俺の顔に首を擦りつけてきたあと、アグリアスの前に寄り添う。
「後で厩舎へ連れて行くからその辺で休んでいなさいな」
馬はその場に座り込んでうとうとし始めたので、こいつはこれでいいだろうとトラックへ目を向ける。
「さて……」
結構な件数があったから積み荷は相当ある。
まだ一日しか経っていないし、冷蔵・冷凍機能が無いため腐りやすいものは無かったはずだ。
食い物はあったとしてもお菓子とか乾物系だろう。
「この箱、紙ですか? 凄く上等な紙を使っていますわね」
「ダンボールはこの世界には無いのか、俺の世界じゃそれほどでもねえけど……あ、いや、ダンボールで家を作るようなやつもいるし上等といえばそうなのか?」
とりあえず近くにあったダンボールをカッターで開けようとポケットから取り出したら今度はサリアが軽く拍手をしてきた。
「なるほど、やはり戦士ですね。小さいながらも武器を隠し持っているとは」
「いや、さすがにこれは無理だからな? っと、中はなんだ?」
カッターで事件を起こすやつもいるが、ダンボール程しっくりはこない。
さて、そんなことより出てきたものはというと――
「ほう、コーヒーセットか、それに高級なやつだぞこれ」
「高いやつ……!!」
「目の色を変えるな! おう、力強っ!?」
あんまり詳しくはないがNANAMEIというコーヒーメーカーでそこそこお高いくらいは知っている。
ドリップコーヒーなのでお湯さえあればすぐ飲めるのはありがたい。
「これは後で飲んでみようぜ。コーヒーって知ってる?」
「こーひー? いえ、わたくしは存じ上げませんわ。お父様なら知っているかもしれませんけど」
「朝食は紅茶だったし、知らないかもなあ。まあ男は結構好きだから親父さんにもご馳走するよ」
「いいですわね!」
他人の荷物なので気は引けるが、どうせ置いていても元の世界には戻れないとなれば無駄にするのも勿体ない。
そこから二つほど開封し、漫画とフィギュアが出てきた。まあ、よくある積み荷である。
「おーい、ヒサトラ君ー!」
「あ、親父さん……じゃなかったトライドさん。どうしました?」
「はっはっは、親父さんで構わんよ! 君の住む場所を探したから伝えに来たんだ」
早っ!?
食堂を出てからまだ二時間程度だぞ? そんな驚く俺にトライドさんは笑いながら続ける。
「では案内するので、私もその「とらっく」とやらに乗せてはもらえないだろうか?」
「え? そりゃ構いませんけど貴族の方が乗るにはちょっと汚れるんだけど……」
「わたくしは乗りましたわよ」
「あれは緊急事態だったからで……あ、サリア、さっさと乗り込むんじゃない。三人乗りだから俺とトライドさんとアグリアスが乗ったらもう無理だ」
「……寝床があるじゃないですか」
「違反になるだろ……」
とは言ったものの、別に元の世界じゃないし大丈夫か?
「オッケー、ならみんな乗り込んでくれ! トラックを動かすぞ!」
「おお、こりゃ凄いな!」
「ゴブリンもこれで体当たりすれば一撃ですわよ、頼もしいことこの上ないですわ!」
「……Zzz」
大興奮の親子に仕事をする気が無いメイドというメンツに苦笑しながら俺はトラックのアクセルを踏み込む。
すると俺とトラックが『繋がった』感覚があった。
「これが魔力を使うってことか?」
「魔力を使っているのかね?」
「えっと、この乗り物は俺の魔力で動く、らしいです」
「魔道具の類みたいですわね、こんな大きなものは見たことありませんけど」
「うむ。これは面白いぞ……」
親父さんが目を輝かせて車内を見まわし『これはなにかね?』と質問攻めに合いながら町中を進む。
それと住んでいる人に話をしていたのか、トラックが通る道は大通りなのにみんな端に寄ってくれており、スムーズに進む。
そして到着したのは――
「こ、これは……」
「どうかね? 『とらっく』を置くスペースがあるだろう? それにやはり家はあった方がいい。こちらもプレゼントしよう」
「いいですね、流石は旦那様」
「はっはっは、そうだろうそうだろう!」
――庭付き一戸建て、という向こうの世界なら夢のような物件だった。
ドヤ顔のトライドさんに満足気なアグリアスに褒めちぎるサリアという絵面に呆然としていたが、すぐにハッとなって口を開く俺。
「いやいや、さすがに一軒家はもらえませんよ!?」
「なあに娘を助けてくれたんだ、これくらいは安いよ。中古だし」
「ええー……」
「頂いておきましょう、ヒサトラさん。家があると仕事をするにも便利ですよ?」
「うーん……」
俺が悩んでいると、トライドさんが『では、仕事の話をしよう』と話題を切り替えてきた。
「仕事、ですか?」
「うむ。君のこのとらっくで娘を本来向かうはずだった隣の領へ送ってくれないだろうか? この家が報酬としてと言えば納得してくれるかな?」
「なるほど……」
親父さんはどうしても俺に譲りたいらしい。
仕事として請け負うならまあ、悪い話じゃないか?
明るい内に積み荷のチェックと車の状態を確認しておきたいからだ。
しかし――
「……なぜついてきたんだ?」
「嫌ですよヒサトラさん。私達は運命共同体じゃないですか」
「面白そうですもの!」
――アグリアスとサリアがにこにこ笑顔で後に続いていた。企業秘密ってわけじゃないが仕事があるだろうに。
「サリアはメイドの仕事をしなくていいのか?」
「はい。本日づけでヒサトラさんのメイドとなりましたので問題ありません」
「ふーん、大変だな……って俺の!? どういうことだよ!?」
「フフフ、これはわたくしからのプレゼントですわ。この世界にきて心細いと思いますし、一人付き人が居れば便利ですわよ」
「お給金はアグリアス様から出ているのでご心配なく」
「俺はいいけど、お世話されるほどやることは無いと思うぜ?」
スカートをつまんでお辞儀をするサリアに肩を竦めながら返すと、トラックの荷台を開く操作をする。
木にぶつからない位置であることを確認して動き出すウイングに二人が目を輝かせていると――
「ぶるひーん……」
「うお!?」
寂し気に泣く馬をが顔を覗かせた。
「あら! そういえばシタタカを乗せていましたわね」
「そうだったな……よしよし、降ろしてやるから大人しくしてろよー」
「ひひん!」
馬は俺達に気づくと嬉しそうにいなないて大人しく待ってくれ、程なくして昇降機で下におろすと自由になった。
俺の顔に首を擦りつけてきたあと、アグリアスの前に寄り添う。
「後で厩舎へ連れて行くからその辺で休んでいなさいな」
馬はその場に座り込んでうとうとし始めたので、こいつはこれでいいだろうとトラックへ目を向ける。
「さて……」
結構な件数があったから積み荷は相当ある。
まだ一日しか経っていないし、冷蔵・冷凍機能が無いため腐りやすいものは無かったはずだ。
食い物はあったとしてもお菓子とか乾物系だろう。
「この箱、紙ですか? 凄く上等な紙を使っていますわね」
「ダンボールはこの世界には無いのか、俺の世界じゃそれほどでもねえけど……あ、いや、ダンボールで家を作るようなやつもいるし上等といえばそうなのか?」
とりあえず近くにあったダンボールをカッターで開けようとポケットから取り出したら今度はサリアが軽く拍手をしてきた。
「なるほど、やはり戦士ですね。小さいながらも武器を隠し持っているとは」
「いや、さすがにこれは無理だからな? っと、中はなんだ?」
カッターで事件を起こすやつもいるが、ダンボール程しっくりはこない。
さて、そんなことより出てきたものはというと――
「ほう、コーヒーセットか、それに高級なやつだぞこれ」
「高いやつ……!!」
「目の色を変えるな! おう、力強っ!?」
あんまり詳しくはないがNANAMEIというコーヒーメーカーでそこそこお高いくらいは知っている。
ドリップコーヒーなのでお湯さえあればすぐ飲めるのはありがたい。
「これは後で飲んでみようぜ。コーヒーって知ってる?」
「こーひー? いえ、わたくしは存じ上げませんわ。お父様なら知っているかもしれませんけど」
「朝食は紅茶だったし、知らないかもなあ。まあ男は結構好きだから親父さんにもご馳走するよ」
「いいですわね!」
他人の荷物なので気は引けるが、どうせ置いていても元の世界には戻れないとなれば無駄にするのも勿体ない。
そこから二つほど開封し、漫画とフィギュアが出てきた。まあ、よくある積み荷である。
「おーい、ヒサトラ君ー!」
「あ、親父さん……じゃなかったトライドさん。どうしました?」
「はっはっは、親父さんで構わんよ! 君の住む場所を探したから伝えに来たんだ」
早っ!?
食堂を出てからまだ二時間程度だぞ? そんな驚く俺にトライドさんは笑いながら続ける。
「では案内するので、私もその「とらっく」とやらに乗せてはもらえないだろうか?」
「え? そりゃ構いませんけど貴族の方が乗るにはちょっと汚れるんだけど……」
「わたくしは乗りましたわよ」
「あれは緊急事態だったからで……あ、サリア、さっさと乗り込むんじゃない。三人乗りだから俺とトライドさんとアグリアスが乗ったらもう無理だ」
「……寝床があるじゃないですか」
「違反になるだろ……」
とは言ったものの、別に元の世界じゃないし大丈夫か?
「オッケー、ならみんな乗り込んでくれ! トラックを動かすぞ!」
「おお、こりゃ凄いな!」
「ゴブリンもこれで体当たりすれば一撃ですわよ、頼もしいことこの上ないですわ!」
「……Zzz」
大興奮の親子に仕事をする気が無いメイドというメンツに苦笑しながら俺はトラックのアクセルを踏み込む。
すると俺とトラックが『繋がった』感覚があった。
「これが魔力を使うってことか?」
「魔力を使っているのかね?」
「えっと、この乗り物は俺の魔力で動く、らしいです」
「魔道具の類みたいですわね、こんな大きなものは見たことありませんけど」
「うむ。これは面白いぞ……」
親父さんが目を輝かせて車内を見まわし『これはなにかね?』と質問攻めに合いながら町中を進む。
それと住んでいる人に話をしていたのか、トラックが通る道は大通りなのにみんな端に寄ってくれており、スムーズに進む。
そして到着したのは――
「こ、これは……」
「どうかね? 『とらっく』を置くスペースがあるだろう? それにやはり家はあった方がいい。こちらもプレゼントしよう」
「いいですね、流石は旦那様」
「はっはっは、そうだろうそうだろう!」
――庭付き一戸建て、という向こうの世界なら夢のような物件だった。
ドヤ顔のトライドさんに満足気なアグリアスに褒めちぎるサリアという絵面に呆然としていたが、すぐにハッとなって口を開く俺。
「いやいや、さすがに一軒家はもらえませんよ!?」
「なあに娘を助けてくれたんだ、これくらいは安いよ。中古だし」
「ええー……」
「頂いておきましょう、ヒサトラさん。家があると仕事をするにも便利ですよ?」
「うーん……」
俺が悩んでいると、トライドさんが『では、仕事の話をしよう』と話題を切り替えてきた。
「仕事、ですか?」
「うむ。君のこのとらっくで娘を本来向かうはずだった隣の領へ送ってくれないだろうか? この家が報酬としてと言えば納得してくれるかな?」
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