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最終部:タワー・オブ・バベル
その395 女神
しおりを挟む「やああああ!」
『数が増えたからと、いい気になるなよ!』
ガキィン、キィン! と、私の剣とズィクタトリアの光の刃が交錯する。
「いい気にもなるわよ! みんなが生きていてくれたんだから! みんながいたら負けないわよ!」
攻め続ける私に、前衛だった人達全てが加わってくる。
「クラウス、お前はもうちょっと寝ていていいんじゃないか? ニールセンに見せ場をやってやれよ」
「馬鹿言うな、俺がシルキーにいいとこを見せるのが先だろ? おらよ!」
『ぐぬうううう!? 傷をつけられるのか、この私が!』
ブシュ……!
レイドさんとクラウスさんが全くの同時に左右から仕掛け、紙一重で剣を回避する。だけどその後ろには黄金の鎧をまとったニールセンさんが待ち構えていた。
「名ばかりの神よ、この地にもはやあなたは必要ない!」
『人形が自己主張を語るなぁぁぁぁ!!』
ギィン! ガガガガ!
「すごい! 大剣をあんなに速く振るうなんて!」
私が感激していると、後ろに控えていたセイラが魔法を使う。
「そのままよニールセン……《アイシクルトマホーク》!」
ビキィン!
『うおおおわっぁぁ!? おのれらがああああ!』
「くっ……!?」
空中から急に現れた氷の斧がズィクタトリアの肩に落とされ血しぶきが舞う。逆上したズィクタトリアに弾き返されニールセンさんが数メートル後退する。
<畳みかけろ!>
「わかってるわ!」
「援護は任せて! <マジックアロー>!」
「シールド展開……! 守りは私とフレーレが請け負おう!」
チェイシャが叫び、シルキーさんの援護魔法と、何もないところから大楯を召還するという技を使いカルエラートさんも前へ出る。
カイムさんが飛び、レイドさんやクラウスさんが片膝をつくズィクタトリアへとどめを刺しにかかる。手を緩める必要はどこにもない!
<我等と女神の悲願、今こそ!>
「
『ぐお!? ぐおあああ!? ”破滅の光”をくらえええ!』
「きゃあああ!?」
「うおおおお!?」
「盾ごと吹き飛ばすとは……まだこんな力を……!」
『こんなところで死ねるか! 私は創造神だ、虫けらにやられ――』
「そう思っているから油断するんだよ! チェーリカ!」
「はいです! 《ホーリースタッフ》!」
『ぐぼあ!? き、貴様ら……!』
陰から出てきたソキウスに腹部を貫かれ、チェーリカが見知らぬ魔法を使い、巨大な戦鎚が顔面にめり込むと、そのまま床に串刺しとなった。
「あ! あの魔法いいですね!」
フレーレが興奮気味に叫ぶのと同時に神裂が馬鹿笑いをして叫ぶ。
「ぎゃはははは! 馬鹿が! がきんちょどもが調整中ってのを真に受けやがって間抜けが! ルーナ、とどめだ!」
『神裂ぃ!』
「ホントあんたって……。よし! みんな、最後の力を! 愛の剣よ!」
<愛が迸るっぴょんね! レイド、おかあさまの剣と一緒にルーナと!>
「あ、ああ! アーティファクトセイバー、これが最後の一撃だ、力を……!」
私とレイドさんが同時に走り、這いつくばるズィクタトリアへ向かう。これでようやく終わる、そう思っていた瞬間――
『ぐぶ……!?』
『妹ちゃん!?』
「エクソリアさん!?」
「なんだと……!?」
『くそ……! 貴様気づいていたか!?』
なんと、あと一歩で踏み込むその瞬間、ズィクタトリアが起き上がりカウンターで光の刃を突き出してきていたのだ! 私を突き飛ばし、私の代わりに光の刃を胸に受け吐血するエクソリアさんが口を開く。
『ぐ……お前に作られたんだ、それくらい当然だろう? ごほ……』
『苦しいか? ふん、このまま吸収してやろう。少し傷が癒えるかもしれん』
『させ……ない……よ!』
エクソリアさんは最後の力を振り絞り、ズィクタトリアを両足で蹴って刃から逃れ床に転がる。
『チッ……』
「エクソリアさん!? フレーレ!」
「はい!」
『い、いい、ボクはもう駄目だ……あいつとボク達は同室の存在……傷は恐らく塞がらない……そ、それより姉さん、こっちに……』
『ちょっとしっかりしてよ!? あんたがいなくなったら張り合いがなくなるでしょ!?』
『ふ、ふふ……ボクはもう……姉さんと争うのは……ごめんだ、ね……この力を、ルーナに……できれば自分たちの手でケリをつけたかっ……た……』
『これは……。妹ちゃん!? エクソリア!』
『……』
「そんな……」
フレーレが首を振り、エクソリアさんがこと切れたのが分かった。
「くそ……」
ここに来てまさかエクソリアさんが死ぬなんて……ズィクタトリアを睨むと、傷はあるもまだ気力は十分なようだった。
『ここまで追い込まれるとは思わなかった……終わりにするぞ人形ども……!』
「くっ……!」
『待って』
私がもう一度駆け出そうとしたが、それをアルモニアさんに引き留められる。すると目の前が真っ暗になった――
「あ、あれ?」
『ルーナ』
「エ、エクソリアさん!? 無事だったんですか!」
『クク……無事じゃないよ、ボクの体はもう使い物にならないし、この状況を作ったのも最後の力さ。姉さんを通じて話しかけている。さて、時間がない。ボクがこうなった以上、ズィクタトリアを倒す手段をルーナに託すことにしたよ』
「最後の手段……? レイドさんの勇者の力、それと愛の剣と魔王の力があればいけるんじゃ?」
『もちろん。だけど、アレはボクの想像以上の化け物だ。創造神にひとり知っている女神がいるんだけど、それに匹敵する。まあルアの方がさらに上なんだけど……結局勝てなかったな……。あー、それはいいか。ルーナ手を出せ』
なんかぶつぶつ言っているエクソリアさんが不意に手を出してきたので私はそれを握り返す。
「こう?」
『それでいい。……”デッドエンド”を覚えているかい?』
「え? う、うん。そりゃずっと使っていたし。でも使えなくなったでしょう?」
『そうだね。……あれは元々、魔王の力をボクが回収するための魔法だったんだ。使ったら魔力がゼロになるのはボクが吸収しているからだ。セイラの時もそうだった。ただ吸収するだけだと使ってもらえないからね、代わりに五分間、強大な力を得るメリットを付与したのさ』
そういう魔法だったのか……とすれば、今までの魔力を持っているってことになる? 私が考えを巡らせているとエクソリアさんは続ける。
『ボクの力を全部ルーナに渡す。そのための魔法を、君に』
ぽうっと私の体が光り、代わりにエクソリアさんの体が透けていく。
「エクソリアさん!」
『必ず、やつを……ズィクタトリアを……魔法の名は――』
「ハッ!?」
「どうしたルーナ、ぼーっとしてたぞ!」
「だ、大丈夫! ……私の後に続いてレイドさん、次で絶対にとどめを刺すから」
『魔王の力を持っているからとほざくな小娘が!』
激昂するズィクタトリアを冷静に見つめる私。そしてエクソリアさんに託された魔法を、使う。
「人間と魔王と……女神の力、思い知りなさいズィクタトリア! 《クライシスエンド》!」
「これって……!?」
「補助魔法が……また?」
――私が唱えた瞬間、その場にいた全員に、一度しかかけられない補助魔法が全て重ね掛けされた。そしてエクソリアさんの力を解放した私の髪は一瞬で銀色に。
「私達の……エクソリアさんの底力を思い知れ……!」
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