パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その392 時間

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 「よくも……レイドさんを……!」

 『来たか、ルーナ。それと――』

 神裂が私と目を合わせた後、私の背後に目を移す。そこには女神姉妹が立っていたのだ。

 『お目覚めか』

 『おかげさまでね。片腕になったお前ならボク達でも倒せる。今度こそ覚悟をしてもらうよ』

 エクソリアさんが光の刃を手から出し、真剣な表情で構える。私も剣を握り直し間合いを詰めようと動き出した。だけど、神裂はくっくと笑って片手で私達を制止する仕草をして喋り出す。

 『まあ待て。レイドは死んじゃいねぇ、かろうじてな』

 「あのケガだったら死ぬかもしれないじゃない! そこをどきなさい!」

 涼し気に言う神裂に、私はカッとなって斬りかかる。神裂はニヤリと笑いながらそれを受け止めた。片腕でなんて力をしているの……!

 『さて、ついに勇者は倒れて女神と魔王だけになった。後はお前等を倒せば俺の勝ち……だ!』

 「きゃ……!?」

 『ルーナ!』

 弾き飛ばされ尻もちをつく私に駆け寄って助けてくれるエクソリアさん。そこへアルモニアさんも槍を構えて近づいてくる。

 『殊勝なこった。ルーナを殺されちゃたまらないからか?』

 『……それはそうだろう? この世界で唯一とも言える戦力だ。それを作り出した僕達が共闘すれば神を殺すことは……可能なはずさ』

 『本当にそうか?』

 『なんですって……?』

 アルモニアさんが訝し気に聞き返すと、神裂はニヤリと笑い、続ける。

 『姉ちゃん女神の方は妹に封印されていたんだよな? その間、妹のエクソリアが世界を見ていた。間違いないな? 俺がゲルスをの身体を使いお前の水晶をルーナに埋め込んだ』

 『なにが言いたいの?』

 『……』

 「エクソリアさん……?」

 私を抱えているエクソリアさんの顔が険しくなるのが分かり背筋が寒くなる気がした。神裂は気にせず、エクソリアさんに目を向けたまま衝撃の発言をした。

 『おめぇ、水晶の行方が分からない、とか言っておきながら実は知っていただろ? それを知りながら俺に水晶をルーナに埋め込ませたな。女神の力を持った魔王を作るために』

 「え!?」

 私は慌ててエクソリアさんを見る。すると、顔をゆがめたエクソリアさんが口を開いた。

 『……いつからだい?』

 『気づいたのは、か? この塔に入ってからだな。お前がルーナと姉ちゃんを気にかけていることが多かったからなぁ。それに自分たちの力を温存して俺を倒す、とか言っていたしな。どうやらお前も気づいているようだな?』

 『……そうだね。ボクの目的は一つさ、そのために積み重ねてきた。女神の装備品もその賜物』

 『何を言っているの妹ちゃん!? 神裂、あなたは一体何を知っているの!?』

 アルモニアさんが困惑して冷や汗をかく。私も今の会話の流れを聞いてある結論が出てくる。

 「エクソリアさん……まさか、私を神様と戦わせるために……?」

 『神裂のたわ言だよ。ボクがそんな頭のいいことはできない』

 「それはそうですけど……」

 『否定して欲しかったね! 色々あった。だけどボクの目的は神、ズィクタトリアを倒すことだ。それは間違いない。だから姉さん、ルーナ、だからそれを取り込んだ神裂を倒す手伝いをお願いしたい』

 『どっちにしても、か。妹ちゃん、終わったら話してもらうわよ』

 エクソリアさんはこくりと頷くと、私を残し二人で神裂へ突撃を開始する。

 『来い! てめぇらも今までのやつらと同じところへ送ってやる! 女神の魂は残らねぇがな』

 ガッ! キキキキン!

 「速い!? エクソリアさん!」

 『このために力を蓄えてきた! そのために人間を犠牲にしてきたんだ、ここでお前を倒さないと彼らに申し訳が立たない!』

 『ぎゃははは! ずいぶんと人間大好きになったじゃないか!』

 『ルーナ、隙を見て攻撃を!』

 「はい!」

 『そらそらそら!』

 『ぐ……! まだまだ!』

 返事をしたものの恐るべきは神裂。片腕で女神二人の攻撃を回避し、反撃をするその姿は底がどこにあるのか分からない。

 「それでも……!」

 『ぐあ!? やるな、ルーナ!』

 「その腕なら三人相手は無理でしょう! 覚悟しなさい!」

 <畳み掛けろルーナ!>

 チェイシャの魔法弾が腕輪から飛び出し、神裂の顔にヒットする。その瞬間、アルモニアさんの槍が太ももに刺さり持ち上げられて床に叩きつけられる。神とはいえ体力までは回復しないのだろうか?

 『こっちだ!』

 『ぐあ!?』

 床に倒れた神裂に追撃をかけるエクソリアさんの攻撃で胸に穴が開く。しかしすぐに傷が回復する。

 『再生を……! 流石に三人相手はきついぜ……!』

 『まだだね!』

 「はああああ!」

 休まずに攻撃をかける私達に流石の神裂も肩で息をして片腕を振るう。

 『チッ、片腕で三人は無理か――』

 そこへスッと別の陰が現れ、神裂の背中に手を当てて口を開く。

 「いいえ、四人よ。《リザレクション》」

 『あがあああああああ!? て、てめぇ……!?』

 「フォルサさん!」

 いつの間にかレジナやノゾム達の治療を終えこちらに来たみたい! リザレクションを受けて反転術で回復魔法がダメージになるため神裂は初めて、本気の悲鳴を上げた。

 「その剣、確実に心臓を貫いているわね。アントン、いい仕事をしたわ」

 隅で気絶しているアントンに目を向け、フォルサさんが笑う。神裂は苦しみ、膝が震える。勝てる、そう思ったが、

 『ま、まだだ……! まだ早い……』

 抵抗の意思を見せてきた。その目は私の持っている愛の剣を見ているようだった。

 「何がまだなのか分からないけど、もう一撃……リザレクションをかけて終わりにさせてもらうわ」

 『……』

 そう告げるフォルサさんに、エクソリアさんが見守っている。額に冷や汗をかきながら。

 「神裂、あなたいったい何を考えているの……?」

 『へへ……お前等を倒すことだよ……!』

 神裂がそう呟いた瞬間――

 パァァァァ……

 「なに!?」

 愛の剣が光り輝き、光沢が無く白かった刀身が見事な銀色に変化した。

 そして――

 <待たせたっぴょん! 愛の戦士リリーただいま戻りましたっぴょん!>

 「リリー!?」

 <帰ってきたか!>

 チェイシャが歓喜したところで、神裂が胸の剣を抜いて叫んだ。

 『レイド! 今だ! 反転術、解除……! ごぼ……』

 何故か、レイドさんの名を!

 すると、ぐったりしていたはずのレイドさんの目がカッと見開き私に向かって駆けてくる。

 「レイドさん!?」

 「話は後だ! 愛の剣を神裂に!」

 「え、ええ!?」

 レイドさんが愛の剣を掴み、私の肩を抱いて神裂へ向かう。

 「何がなんだかわからないけど! 神裂、覚悟……!」

 『へ……』

 ドシュ……

 何の抵抗もなく神裂の心臓に突き刺さった――
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