パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その388 掌の上

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 『結局残ったのはボク達だけ、か』

 エクソリアさんのボソリと呟いた言葉が私の背筋を寒くする。ノゾムとユウリは虫の息。アイリは……恐らくもうダメだろう。
 やっぱりこいつは人の命をなんとも思っていないのだと痛感する。倒すしかない、だけど反転術を破る手立ては見当たらず膠着状態に。

 『やるしかないわ! 妹ちゃんは私の攻撃に合わせて神裂に回復魔法をかけて!』

 『それしかないね。行くよ姉さん』

 『クック……』

 女神姉妹が飛び出し、神裂にアルモニアさんの槍が左肩に直撃するが微動だにせず槍を掴む。そこへエクソリアさんのリザレクションが発動すると同時に槍を引き抜き捨てるようにアルモニアさんを吹き飛ばした。

 パァァァァァ

 『おう、ありがとよ。傷が完全に塞がったぜ!』

 『うわ!? 攻撃と回復、同時ならどうだ……!』

 エクソリアさんとアルモニアさんは色々な策を講じて神裂へ攻撃を仕掛けるが、切り替えが瞬時にできる反転術に為す術が無いようだ。
 私達も参戦しないと、そう思い、手に持った剣に力を込めると同時にレイドさんへ目くばせをすると、レイドさんは首をトントンと叩きながら神裂を見据える。

 そして――

 「どけ、エクソリア! ”真空烈破”!」

 『うわわ!?』

 レイドさんが一気に詰め寄り技を叩きこむと、真空烈破を掻い潜りレイドさんへ踏み込む。

 『ハッ! ようやく本気か、ちょっとエンジンがかかるのが遅いんじゃねぇか? 女神共の戦いを見ていただろ? どうするつもりだぁ!』 

 「首と身体を切り離されても言えるかしら……!」

 <レイド、フォローを! 《コールド・ブレス》>

 「ああ!」

 ファウダーの声が響いた瞬間、私のつけている指輪から吹雪がほとばしり神裂の足元を凍らせていく。なるほど、これなら反転されても支障は無いし、足止めにもなる。
 
 『うお!? これくらいで!』

 レイドさんの剣が迫るより早く、私の剣が神裂の首へと振られる。すると、神裂は目を細めて間一髪回避したのだ。

 「やはりか……! だああああ!」

 『チッ、調子づくんじゃねえってんだ!』

 <させると思うか! ルーナ、踏み込め!>

 バックステップで私の剣を回避するが焦っているのか動きが一瞬鈍り、そこへ腕輪からチェイシャの魔法弾が飛び出し、レイドさんが斬り込んだ。しかしそこは神裂と言うべきか、魔法弾を片手で弾き、剣を手で握って止める。

 「しぶとい……!」

 『レイド、そのまま! やああ!』

 そこへアルモニアさんが槍で神裂の足を縫い付け、背中越しにエクソリアさんが首を狙う。もちろん、私も。

 『ボクは腕を! ルーナは首を!』

 「わかった!」

 握ったレイドさんの剣を無視できず、左手でエクソリアさんの方をブロックするが、私の剣を防ぐ手段が無くなる。これはもらった!

 ガキン!

 だが――!

 『ひゃんいふぁふらっふぁへ……!』

 「嘘でしょう!?」

 ことも有ろうに口で剣を防いだのだ!

 『ぺっ! おら、離れろ! ちょっと本気でぶっ飛ばしてやる、女だとて容赦はせんぞ?』

 「うおおおお!?」

 「レイドさん!?」

 神裂はレイドさんを剣ごと持ち上げて床に叩きつけ、同時にエクソリアさんを引き寄せて頬を殴りつける。

 『ぶっ……!?』

 エクソリアさんが吹き飛び、アルモニアさんが蹴られる。残った私は――

 「がおん!」

 『チッ……!』

 レジナの機転で掴みかかろうとした神裂から逃れることができた。

 「ありがと、レジナ! レイドさん、ふたりとも大丈夫!?」

 『ああ、《リザ――≫い、いや、止めておこう……』

 攻防の間に何を仕込まれているか分からないため、エクソリアさんはよろよろと立ち上がる。アルモニアさんは、

 『やってくれるわね……!』

 左腕が折れていた。

 神裂を睨みつけるも、脂汗が滲んでいて、プラプラと揺れる腕は激痛に違いない。頭を振りながらレイドさんも立ち上がり並んで構えなおす。すると小声でレイドさんが私にぼそりと呟く。

 「本気で恐ろしいヤツだ。これでまだ魔法を使ってない。だけど、あの様子からすると首は致命傷なのかもしれない……四人がかかりでこのザマだが狙いを絞って攻撃をすれば倒せるはずだ」

 「そうね……アルモニアさんはちょっと厳しいから三人と」

 「がう」

 「レジナね」

 『ふう、痛みも反転して快感に代わるのはあまり気持ちいもんじゃねぇなあ。さあ、続き、やろうぜ?』

 神裂は自分の喉を指で押さえながらニヤリと笑う。ノゾム達のことを考えとる時間が惜しい。私達は左右に分かれて攻撃を再開する!

 「やああああ!」

 「くらえ!」

 <今度はあたしが手伝うわね!>

 ジャンナの声で私の胸元から火球が飛んでいき、神裂の目を晦ます。その瞬間レジナが飛びかかり、神裂の腕に噛みついた。

 『やるなワン公! で、両脇からお前達か!』

 『後ろにもいるけどね!』

 私達の誰かが首を刎ねればそれで終わる! そう思い剣を振るうが、神裂はにやにやしたまま攻撃を華麗に回避していく。だけど、反撃はしてこず、レジナを振りほどこうともしない。どういうこと……!?


 『ちょろちょろと……!』
 
 『おっと……! さて、そろそろか……』

 「諦めたか? だが、容赦はしない!」

 エクソリアさんの攻撃を避けると、私の前へ転がってくる。飛び越えて攻撃しようとしたところで、レイドさんの剣が無防備な神裂の首へとめり込み、神裂の頭が斜めになって血を吐く。 

 <振り抜けレイド!>

 「ああ! ……なんだ!? 抜けない!?」

 見れば神裂は引きちぎれる寸前でレイドさんの剣を止めていた。そして頭を定位置に戻し、笑う。

 『はっはっはぁ! 首、首ねぇ……着眼点は悪くないが、俺が対策をとっていないとでも思っていたか? ごぼ……』

 「強がっても無駄よ、血を吐いているじゃない! 千切れたら終わりなん、で、しょ!?」

 ぶつん……

 神裂は自分の頭を掴んだ瞬間、レイドさんの剣から手を離す。直後、首と胴体は……切り離された……!

 『ま、こういうことでな? すぐくっつければ……問題ないのさ! ぎゃははははは! いやあ、ちょっと焦るふりをすれば首を狙いにくるとは、真面目なやつらで助かったぜ! で、俺が攻撃をしなかった理由な? 今から答え合わせだ……!』

 「ぐあ……!?」

 レイドさんが蹴り飛ばされ私の前まで吹き飛ばされる。すると神裂は目を大きく開き両手を前に掲げる。直後、私はあることに気付く。

 「まずい!? あいつの狙いは――」

 『遅ぇ! まとめて吹き飛べ! 《フレア・ショットガン》』

 私の足元にはエクソリアさんとレイドさん。そして後ろには、アルモニアさんにノゾムとユウリが居た。こいつの狙いは一網打尽に止めを刺すことだった……!

 ボゴォォォォン!

 「うわあああああ!?」

 炎の波が私達を襲い、とんでもない爆発をおこした。紙人形のように飛んでいくレイドさん達を見ながら意識を失いかける私。最後に聞いたのは――

 『安心しろ、次に目が覚めたら楽園かもしれねぇぜ?』

 と、言う声と、

 チーン

 という、音だった――
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