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2巻
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一瞬、跳ね返されるような手ごたえを感じたけど、補助魔法のおかげで傷を負わせることができた。
「逃げて!」
「わ、わかった!」
私が叫ぶと男女の集団は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。蛇の注意も引いたから、標的は私になるはず!
「ルーナ!」
シャアァ!
「はっ!」
私の足に噛みつこうと蛇が身を躍らせて襲ってくる。それをかわしながら頭を切り裂くと、血がしたたり落ちた。少し浅かったかと間合いを離した瞬間、
「《マジックアロー》!」
シャァァァァ⁉
フレーレの放った魔法の矢が、蛇型の魔物にブスブスと刺さる。魔物は苦しみながらのたうち回った。
「ちょっと動きが鈍った、今ね!」
「わたし、頭を狙います! やあ!」
私の剣が大蛇の胴体を切り裂いて真っぷたつにし、フレーレのメイスが頭へ直撃! 蛇は少し痙攣した後、ピクリとも動かなくなった。デッドリーベアやダンジョンで経験を積んでレベルが上がったせいか、ふたりでもしっかり倒せた。
「ふう……」
「マジックバッグに武器を入れておいてよかったですね。皆さん、無事みたいです」
「まったくだわ。それにしてもこんなのが出るの? おちおち海にも入れない気がするんだけど……おや?」
突然のアクシデントに憮然としていると、遠くから軽装備をした人達が走ってきた。
「魔物が出たと聞いて急いで来たが、倒されていたか。君達が?」
褐色肌の男性が武器を持っていた私達を見て尋ねてきた。
「あ、はい。皆さんが危なかったので私達が倒しました」
私がそう言うと、彼は頭を下げて一度口を開く。
「すまない、ご協力感謝する。我々はアクアステップの騎士団。浜辺の警備を担っているのだが、今回は間が悪い時に現れたようだ」
「警備範囲が広いから大変ですね」
すると騎士団の人が私の顔を見た後、フッと笑いながら言う。
「そう言われると、ありがたいな。いつもはもっと早く来いと罵倒されることが多いからな」
「監視する人数が足りないのでは……?」
フレーレが尋ねる。
「それは否めない。でも海に魔法障壁を作ろうとか、ギルドで冒険者を警備として雇おうといった案が出ているから、今後はもっと安全に遊べるはずだ。さて、それはともかくこいつを倒した報酬を用意しておくから、ギルドで受け取ってくれ。名前は?」
おや、これは思わぬ収入。
「えっと、ルーナと言います」
「わたしはフレーレです」
「きゅんきゅん!」
「ルーナにフレーレだな。それと狼? 君達が飼っているのか?」
「ええ、腕輪もついているんで退治しないでくださいね!」
「覚えておこう。みんな、散ってくれ」
彼が合図をすると、同じ騎士団であろう日焼けしている人達は去っていった。
「では私もこれで」
話をしていた男性も蛇の死体を引きずりながら浜辺を出ていく。
「騎士も大変ねえ……」
「ですね……」
〈まあ、騎士とはそういうものじゃ。国のためや命令で働く者じゃからな〉
と、チェイシャが知ったようなことを言い、また浜辺に静けさが戻った。
その後は何事もなく、すっかり遊び疲れた私達はホテルに帰り、お待ちかねの夕食タイム!
テーブルにはエビやカニ、アワビなどの普段お目にかかれない食材がずらりと並び、
「くぅーん♪」
と、レジナがあまり普段は聞けない鳴き声を出すくらい満足のいく夜を過ごすことができた。
「これは贅沢だわ……自分のお金だといくらかかるかわからない……」
「そうですねえ……もうわたし食べられません……」
食べ過ぎでぐったりして、海での疲れもあって即就寝。狼達も小屋とは違うふかふかな毛布の上で丸まっている姿に癒された。
そして翌日――
私は早朝からみんなを引き連れて磯へと向かっていた。
「さあて、今日は釣りよ! 海釣りは初めてだから楽しみね!」
「わたし、釣りそのものが初めてなので緊張します……!」
今日は私の趣味である釣りを堪能しようと、砂浜から離れて磯辺に来ていた。昨日はかなり体を動かして遊んだから、体を動かさない釣りは体を休めるのにちょうどいいのだ。
「きゅん……!」
シルバが伏せの態勢でじっと海を凝視し、浮きが上下するたび、たまに鳴く。
獲物が来るのをじっくりと待つ狼の本能かわからないけど、狩りみたいな雰囲気を出していた。逆にシロップは興味がないのか、私の横で寝そべって日向ぼっこをしていた。
〈ふあ……〉
「がう……」
「むむむ……あ! き、来ました!」
釣りを始めてしばらくすると、フレーレに当たりが来る。
だけど、
「ああー、また餌だけ取られましたぁ」
と、釣れる気配はなかった。まあ初心者だし、難しいよね。
そして私にも当たりが来たので、お手本を見せる。
「ふふ、引いてもすぐに釣り上げようとしちゃダメなのよね。暴れさせて疲れたところを……」
バシャ!
「吊り上げるのよ!」
「きゅん!」
「ふえー凄いですねぇ」
ビチビチと暴れる魚をシルバが押さえて遊ぶ。それを見たフレーレが、パチパチと手を叩いていた。
釣れた魚は魚屋さんでもよく見る〝オツカレサンマ〟。脂がのっていて美味しい魚である。そして一匹目を釣ってから急に食いつきがよくなり、どんどん釣っていく私!
「やっぱり海はいろいろ釣れるのね、楽しいわ!」
〈むぐむぐ……鮮度はいいが、やはり調理をした方がいいのう〉
「がうがう……」
「あ! そのまま食べてる! これギルドに売りに行くんだからダメよ」
チェイシャとレジナが仲良くお魚をかじっていたので叱り、シルバとシロップが真似しようとしたのでお魚はマジックバッグへと入れた。
〈わらわは強欲の魔神じゃもの。好きな時に好きなものを食べるのじゃ〉
「じゃあ、今食べたからお昼は抜きでいいわね?」
〈ごめんなさいなのじゃ〉
「早いですね、チェイシャちゃん」
あっさり折れたチェイシャに苦笑しつつしばらく釣りを続けていた。その後お昼を回ったので、ホテルに帰って昼食を食べた。
やはり海鮮メインのご飯に満足した私達は少し休憩し、釣った魚を売るためギルドへと向かう。
アルファの町みたいに買い取ってくれるか不安だけど、それなら自分たちで消化するつもりだ。実のところ、ここに来たのはほかのギルドも見てみたいと言うのが本音だったりする。
「すみませんー。お魚の買い取りをお願いできますか?」
「こんにちは。ヘブンリーアイランドのギルドへようこそ! お魚ですか? えっと、依頼はありますから大丈夫ですよ。拝見しても?」
日に焼けたポニーテールの職員さんがにこっと笑い、査定テーブルへ案内してくれた。私はギルドカードを見せ、いくらでも入るマジックバッグからごっそりお魚を取り出し並べていく。
「こ、こんなに⁉ 少々お待ちください……モチアジ、ハラノナカマックロダイ……」
職員さんの査定が終わるのをテラスで待っていると、別の職員さんが声をかけてきた。
「ルーナさんですね? お待ちしておりました」
「はい?」
なんのことかわからず生返事をすると、私とフレーレのテーブルに布袋を置いて話し始めた。
「昨日、シーサーペントを倒しましたよね? ギジェさんから話は聞いています。こちらが報酬です」
なんだっけ……? シーサーペント……蛇……あ!
「あ、あー! そういえばそんなことがあったわね!」
「わ、わたしも海で遊ぶのが楽しすぎて忘れてました⁉」
そういえば報酬を用意しているから取りに来てくれ、と言っていた気がする。私達が困った様子で顔を見合わせていると、職員さんが話を続ける。
「あ、そうだったんですね。当日に来ないのでおかしいなと思っていました。では、こちらに渡したという署名をお願いします」
「あ、はい」
さらさらと用紙に署名をすると、にこやかにそれを持って受付へと戻っていった。
「銀貨七枚に銅貨八枚ですね」
「それはフレーレが使っていいよ。聖堂の修理代を出したからダンジョンで稼いだ分、なくなったんでしょ?」
「え、でも……」
「まあまあ、いいからいいから」
銀貨七枚はそれなりの大金だし、お父さんへの仕送りもある私としてはありがたいけど、孤児院と教会に寄付をしているフレーレの金銭事情を考えると、ダンジョンでの稼ぎが残っている私よりはフレーレに使ってほしい。
「ありがとうございます、ルーナ! 帰ったらしょうが焼きを奢りますね!」
「あはは、それじゃあまり意味ないじゃない」
他愛ない話をしながらお魚の査定を待ち、途中フルーツジュースを注文してシルバ達と遊んでいると、入り口からガチャガチャと装備の音をさせながら冒険者が入ってきた。
「森へ入る許可が欲しいんだけどいいかな?」
「あ、はい。ではこちらの依頼書に署名をお願いします」
声がする方にチラリと目を向けると、男性三人組のパーティが受付で依頼を受けていた。船でおじいさんが言っていた森の探索かな? その中のひとりが私達に気づいて笑顔で声をかけてきた。
「あ、君達! 昨日はありがとう!」
「?」
私達は首を傾げていたが、あとから来たふたりの顔をじっと見て思い出した。
「あ! 女の子に囲まれていたイケメン達」
「ああ」
まったく興味がない感じでフレーレがポンと手を打つと、最初に話しかけてきた男性が私の手を取って笑いかけてきた。
「そう! 思い出した? 俺はリュゼ。イケメンだなんて嬉しいね」
「あの時は助かりました。私はライアー。私達三人も見ての通り冒険者なんだが、あの時はバカンスを楽しんでいて装備がなくてね。申し訳ないけど逃げさせてもらったよ」
メガネの男性がそう言いながら頭を下げる。軽薄そうな感じがしたけど、意外としっかりしているのかな? そして最後にリーダーらしき人が声をかけてきた。
「それにしてもふたりの戦いは見事だった。ここで会ったのも何かの縁、どうだろう、その腕を見込んで依頼を一緒に受けてもらえないだろうか? あ、俺はクルエルという。よろしくな」
「依頼って……今受けていた森の?」
「そう! 探索だよ! どう? ……ここだけの話、お宝のある遺跡があるらしいよ?」
後半はリュゼさんが人目を気にしながらこそこそと話し、続けてライアーさんも声を潜めて言う。
「人数が増えれば取り分は減るものの、安全は格段に上がる。昨日の戦いを見る限り、信頼に足ると思った」
「ルーナ、どうしますか?」
フレーレが私の袖を掴んで聞いてきたので、私は腕組みをして考える。
うーん、せっかくバカンスに来ているんだし、お仕事は……それに男性ばっかりのパーティはちょっと怖い。申し訳ないけど断ろうか。
「すみません、今回はバカンスで来たので依頼はちょっと止めておこうかなと思います」
「そう? お宝で遊んで暮らせるかもよ? 美味しいもの食べ放題、好きなもの買い放題! 行こうよ!」
「う、うーん……」
リュゼさんの押しがすごく、私が困っていると、チェイシャが首元に巻きついてきてぼそぼそと話しかけてくる。
〈お宝、よいではないか。行こうぞ? 美味しいもの食べ放題……油揚げ食べ放題……何、危険があれば強欲の魔神であるこのチェイシャが守ってやるわい! じゅるり〉
「その体で何ができるのよ……仕方ないわね」
チェイシャの強欲が発揮され、私は渋々リュゼ達へ笑いかける。
「わかりました。でしたら今日だけお供させてください」
「お、本当! それは助かるよ! それじゃ早速手続きをしよう」
魚の査定が終わった後、クルエルさんと受付へ行って依頼の登録を済ませると、カバンから装備品を取り出し、別室で着替えて出発した。
ギルドを通して契約しているので、彼らが下手な行為に出ないと思いたい。まあ、アントンみたいなのは早々いないかな?
「いやあ、女の子がいるのは華があっていいね!」
「無理を言ってすまなかった。損はさせないよう頑張るとするよ」
「ううん、大丈夫ですよ! お宝があったら山分けしましょうね」
「ははは、そうだな! っと、ここから森だ、慎重にな」
「はい。レジナ達はフレーレについてね」
私達はクルエルさん達の後ろを歩き、森の中へと足を踏み入れる。せっかくだから一攫千金を狙いたいわね!
第二章
――森に入ってからしばらく進むも、周りは草木ばかりで同じような景色が続いていた。汗をぬぐいながら私はポツリと呟く。
「本当に未開の地って感じがするわね」
「そうですね、道らしきものがないですし」
ガサガサと草むらを剣で払いながら進む三人の後ろでフレーレと喋っていると、ライアーさんが口を開いた。
「ふたりとも怖がっている感じがないな。頼もしい限りだ」
「こういう森に入ると、ビビるヤツは男も女も関係ないんじゃない?」
リュゼさんが笑いながらそんなことを言う。
「最近は女性冒険者も多いですからね」
「……まあ人それぞれだ。それにしてもこの辺りは一段と鬱蒼としているな」
「ここに来るのは初めてなんですか?」
私が尋ねるとクルエルさんは前に進みながら答えてくれる。
「いや、実際は二回目なんだ。森は手付かずでこの有様だろう? この依頼は手の入っていない場所を適当にスタート地点として決めて、まっすぐ進んで地図と道を作るんだ。で、途中何かあればギルドに報告、というのを繰り返して森の調査を進めている」
なるほど、基本的にまっすぐ進むだけでいいんだったら楽かも。これで金貨三枚なら確かにおいしい依頼だわ。裏がなければ、だけど。
「この森って広いから足場を作るだけでも大変なんだけどねえ。さっき俺が言った遺跡もあるってことはわかっているんだけど、場所までは詳しく調べられなかったからこうやって足で探しているんだよね」
と、リュゼさんが言う。どうしてこんなことを三人が知っているのかというと、この島の開発を進めているアクアステップの出身らしく、図書館で見つけた文献で知ったとか。
で、文献によると『この地に災害が起きた際、若い娘を生贄にして神様の怒りを鎮める儀式』というのがあったそうだ。今探している遺跡はその生贄を捧げるための祭壇だったとか。
「まだ遺跡は見つかっていないし、情報を知っている人間も多くないから急いでいるんだよね。というか若い娘を生贄とかもったいないねー。ね、ふたりは彼氏とかいるの?」
そう言いながらリュゼさんが私達の方へ振り向いたその時だ!
ガゥア!
「がう!」
大きな牙を持った猫のような魔物が草むらから飛びかかってきた! リュゼさんに噛みつこうとしてきたみたいだけど、間一髪でレジナがそれを阻止していた。
「ブレードタイガーだな。しかし一頭だけなら……」
ライアーさんが驚きながら戦闘態勢に入るが、さらに茂みから二匹のブレードタイガーが姿を現し、威嚇をしてきた。
グルルル……
ガァァァァ!
「三頭か、少し面倒だな。だけど今日はルーナさんとフレーレさんがいるから問題はなかろう。行くぞ!」
クルエルさんが剣を抜き、ライアーさんが槍を構えると、リュゼさんは木に登り弓に矢をつがえて放つ。
「お見事ってね!」
グァァァァ!
リュゼさんの矢が足に刺さると怒りの咆哮を上げるブレードタイガー。そこで膠着状態だった場が動き、戦闘が始まる。
「はあ!」
まずはクルエルさんが自分に近いタイガーを狙うが、素早い動きでかわされてしまう。
その隙を見て、残った二頭が飛びかかった。そこへライアーさんのフォローが入り、一頭をクルエルさんから引き離していき、クルエルさんはもう一頭を相手に剣を振りかざす。
「とああ!」
グァァァ!
ガキン!
力では勝っているけど、タイガーは素早く、確実なダメージを与えるのが難しいみたい。
クルエルさんの攻撃をかわしたタイガーがリュゼさんの矢を回避しながらふたりの隙を虎視眈々と狙っている。
私はフレーレに合図し、補助魔法を使ってからその一頭へと向かう。
「フレーレ、足元に攻撃よろしく! 《ストレングスアップ》!」
「はい! 《マジックアロー》!」
ドン!
グルァ!
私達が攻めてくるとは思っていなかったのか、マジックアローの爆発に驚くタイガー。
「こっちよ!」
そこへ私の剣がタイガーに迫る。しかしタイガーは器用に剣を前足で打ち払った。
「いい勘をしているわね、でも――」
「がう!」
グゲェ⁉
そこで草むらに隠れていたレジナが喉元に噛みついた。レジナの牙から逃れようとタイガーは頭を振るものの離れず、メキメキと嫌な音を立てて血が噴き出していく。
「やああ!」
ビシュ!
ギャオゥ!
「痛っ! やったわね!」
レジナに噛みつかれているタイガーの顔を切り裂くが、反撃をされて私の顔を軽く引っかいた。だけど私は気にせず前に出てさらに攻撃を続ける。補助魔法をかけたレジナの噛みつきもさらに力を増していく。
「がううううう」
ついにレジナがタイガーを地面に叩きつけた!
「チャンス!」
ズシュッ!
レジナが引きずり倒してくれたおかげでタイガーの眉間を貫くことができ、剣を引き抜くと地面にじわりと血が広がる。
「残りは!」
ヒュ!
グォォォォ!
「まだ元気だな! はああああ!」
体に何本も矢が刺さったタイガー。それでも元気に飛びかかってくる。攻撃を槍で牽制し、タイガーの肩や足へ攻撃を当てていると、ほどなくして動きが鈍くなった。
「もらった!」
動きが鈍ったタイガーは、焦って飛びかかるもお腹を串刺しにされ絶命。一息ついたライアーさんの顔には、鎧に覆われていない部分にいくつかの引っかき傷があった。
ドサッ……
「ふう……」
何かが倒れた音がしたので、そちらを見ると、クルエルさんも最後の一頭を仕留め、冷や汗を拭っているところだった。
「いいね、ふたりとも! 上から見ていたけどバッチシじゃん!」
「ありがとうございます。リュゼさんの弓もお見事ですね。《ヒール》」
木の上から降りてくるリュゼさんに声をかけられ、それに返事をしながら私とライアーさんを回復するフレーレ。
「やはり回復があると助かるな……。こいつは安全なところから矢を射るだけだからいつもケガをするのは俺達ふたりなんだよ。君達を連れてきてよかった」
ライアーさんが珍しく笑いながらそういうと、
「俺は近接戦闘をしない主義なんだよ!」
リュゼさんが口を尖らせ、不機嫌に言う。その様子にみんなで笑う。
「狼もすごかったな」
「……がう」
レジナは撫でられるのが嫌なのか、ぷいっとそっぽを向いて私の後ろに隠れてしまう。
「おっと、嫌われたかな?」
「お前の顔が怖いんだよ!」
リュゼさんがライアーさんにさっきの反撃をして睨み合いになり、クルエルさんが肩を竦めてそれを諫めていた。
うん、男の人ばっかりで大丈夫かなと思ったけど、とりあえず問題なさそうね。これでお宝が見つかればパーティを組んでよかったかも。
というか……
「チェイシャも働きなさいよ」
〈あのくらいは脅威ではあるまい? わらわを倒したお主らならいけると思ったのじゃ〉
むう、しれっと減らず口を……まあいざとなれば上級補助魔法があるし、なんとかなるか。
「ルーナ、行きますよー」
「きゅんきゅん」
「きゅん」
「あ、待って、今行くわ!」
さて、それじゃ遺跡を探すため、目を皿のようにして歩きましょうかね。
「逃げて!」
「わ、わかった!」
私が叫ぶと男女の集団は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。蛇の注意も引いたから、標的は私になるはず!
「ルーナ!」
シャアァ!
「はっ!」
私の足に噛みつこうと蛇が身を躍らせて襲ってくる。それをかわしながら頭を切り裂くと、血がしたたり落ちた。少し浅かったかと間合いを離した瞬間、
「《マジックアロー》!」
シャァァァァ⁉
フレーレの放った魔法の矢が、蛇型の魔物にブスブスと刺さる。魔物は苦しみながらのたうち回った。
「ちょっと動きが鈍った、今ね!」
「わたし、頭を狙います! やあ!」
私の剣が大蛇の胴体を切り裂いて真っぷたつにし、フレーレのメイスが頭へ直撃! 蛇は少し痙攣した後、ピクリとも動かなくなった。デッドリーベアやダンジョンで経験を積んでレベルが上がったせいか、ふたりでもしっかり倒せた。
「ふう……」
「マジックバッグに武器を入れておいてよかったですね。皆さん、無事みたいです」
「まったくだわ。それにしてもこんなのが出るの? おちおち海にも入れない気がするんだけど……おや?」
突然のアクシデントに憮然としていると、遠くから軽装備をした人達が走ってきた。
「魔物が出たと聞いて急いで来たが、倒されていたか。君達が?」
褐色肌の男性が武器を持っていた私達を見て尋ねてきた。
「あ、はい。皆さんが危なかったので私達が倒しました」
私がそう言うと、彼は頭を下げて一度口を開く。
「すまない、ご協力感謝する。我々はアクアステップの騎士団。浜辺の警備を担っているのだが、今回は間が悪い時に現れたようだ」
「警備範囲が広いから大変ですね」
すると騎士団の人が私の顔を見た後、フッと笑いながら言う。
「そう言われると、ありがたいな。いつもはもっと早く来いと罵倒されることが多いからな」
「監視する人数が足りないのでは……?」
フレーレが尋ねる。
「それは否めない。でも海に魔法障壁を作ろうとか、ギルドで冒険者を警備として雇おうといった案が出ているから、今後はもっと安全に遊べるはずだ。さて、それはともかくこいつを倒した報酬を用意しておくから、ギルドで受け取ってくれ。名前は?」
おや、これは思わぬ収入。
「えっと、ルーナと言います」
「わたしはフレーレです」
「きゅんきゅん!」
「ルーナにフレーレだな。それと狼? 君達が飼っているのか?」
「ええ、腕輪もついているんで退治しないでくださいね!」
「覚えておこう。みんな、散ってくれ」
彼が合図をすると、同じ騎士団であろう日焼けしている人達は去っていった。
「では私もこれで」
話をしていた男性も蛇の死体を引きずりながら浜辺を出ていく。
「騎士も大変ねえ……」
「ですね……」
〈まあ、騎士とはそういうものじゃ。国のためや命令で働く者じゃからな〉
と、チェイシャが知ったようなことを言い、また浜辺に静けさが戻った。
その後は何事もなく、すっかり遊び疲れた私達はホテルに帰り、お待ちかねの夕食タイム!
テーブルにはエビやカニ、アワビなどの普段お目にかかれない食材がずらりと並び、
「くぅーん♪」
と、レジナがあまり普段は聞けない鳴き声を出すくらい満足のいく夜を過ごすことができた。
「これは贅沢だわ……自分のお金だといくらかかるかわからない……」
「そうですねえ……もうわたし食べられません……」
食べ過ぎでぐったりして、海での疲れもあって即就寝。狼達も小屋とは違うふかふかな毛布の上で丸まっている姿に癒された。
そして翌日――
私は早朝からみんなを引き連れて磯へと向かっていた。
「さあて、今日は釣りよ! 海釣りは初めてだから楽しみね!」
「わたし、釣りそのものが初めてなので緊張します……!」
今日は私の趣味である釣りを堪能しようと、砂浜から離れて磯辺に来ていた。昨日はかなり体を動かして遊んだから、体を動かさない釣りは体を休めるのにちょうどいいのだ。
「きゅん……!」
シルバが伏せの態勢でじっと海を凝視し、浮きが上下するたび、たまに鳴く。
獲物が来るのをじっくりと待つ狼の本能かわからないけど、狩りみたいな雰囲気を出していた。逆にシロップは興味がないのか、私の横で寝そべって日向ぼっこをしていた。
〈ふあ……〉
「がう……」
「むむむ……あ! き、来ました!」
釣りを始めてしばらくすると、フレーレに当たりが来る。
だけど、
「ああー、また餌だけ取られましたぁ」
と、釣れる気配はなかった。まあ初心者だし、難しいよね。
そして私にも当たりが来たので、お手本を見せる。
「ふふ、引いてもすぐに釣り上げようとしちゃダメなのよね。暴れさせて疲れたところを……」
バシャ!
「吊り上げるのよ!」
「きゅん!」
「ふえー凄いですねぇ」
ビチビチと暴れる魚をシルバが押さえて遊ぶ。それを見たフレーレが、パチパチと手を叩いていた。
釣れた魚は魚屋さんでもよく見る〝オツカレサンマ〟。脂がのっていて美味しい魚である。そして一匹目を釣ってから急に食いつきがよくなり、どんどん釣っていく私!
「やっぱり海はいろいろ釣れるのね、楽しいわ!」
〈むぐむぐ……鮮度はいいが、やはり調理をした方がいいのう〉
「がうがう……」
「あ! そのまま食べてる! これギルドに売りに行くんだからダメよ」
チェイシャとレジナが仲良くお魚をかじっていたので叱り、シルバとシロップが真似しようとしたのでお魚はマジックバッグへと入れた。
〈わらわは強欲の魔神じゃもの。好きな時に好きなものを食べるのじゃ〉
「じゃあ、今食べたからお昼は抜きでいいわね?」
〈ごめんなさいなのじゃ〉
「早いですね、チェイシャちゃん」
あっさり折れたチェイシャに苦笑しつつしばらく釣りを続けていた。その後お昼を回ったので、ホテルに帰って昼食を食べた。
やはり海鮮メインのご飯に満足した私達は少し休憩し、釣った魚を売るためギルドへと向かう。
アルファの町みたいに買い取ってくれるか不安だけど、それなら自分たちで消化するつもりだ。実のところ、ここに来たのはほかのギルドも見てみたいと言うのが本音だったりする。
「すみませんー。お魚の買い取りをお願いできますか?」
「こんにちは。ヘブンリーアイランドのギルドへようこそ! お魚ですか? えっと、依頼はありますから大丈夫ですよ。拝見しても?」
日に焼けたポニーテールの職員さんがにこっと笑い、査定テーブルへ案内してくれた。私はギルドカードを見せ、いくらでも入るマジックバッグからごっそりお魚を取り出し並べていく。
「こ、こんなに⁉ 少々お待ちください……モチアジ、ハラノナカマックロダイ……」
職員さんの査定が終わるのをテラスで待っていると、別の職員さんが声をかけてきた。
「ルーナさんですね? お待ちしておりました」
「はい?」
なんのことかわからず生返事をすると、私とフレーレのテーブルに布袋を置いて話し始めた。
「昨日、シーサーペントを倒しましたよね? ギジェさんから話は聞いています。こちらが報酬です」
なんだっけ……? シーサーペント……蛇……あ!
「あ、あー! そういえばそんなことがあったわね!」
「わ、わたしも海で遊ぶのが楽しすぎて忘れてました⁉」
そういえば報酬を用意しているから取りに来てくれ、と言っていた気がする。私達が困った様子で顔を見合わせていると、職員さんが話を続ける。
「あ、そうだったんですね。当日に来ないのでおかしいなと思っていました。では、こちらに渡したという署名をお願いします」
「あ、はい」
さらさらと用紙に署名をすると、にこやかにそれを持って受付へと戻っていった。
「銀貨七枚に銅貨八枚ですね」
「それはフレーレが使っていいよ。聖堂の修理代を出したからダンジョンで稼いだ分、なくなったんでしょ?」
「え、でも……」
「まあまあ、いいからいいから」
銀貨七枚はそれなりの大金だし、お父さんへの仕送りもある私としてはありがたいけど、孤児院と教会に寄付をしているフレーレの金銭事情を考えると、ダンジョンでの稼ぎが残っている私よりはフレーレに使ってほしい。
「ありがとうございます、ルーナ! 帰ったらしょうが焼きを奢りますね!」
「あはは、それじゃあまり意味ないじゃない」
他愛ない話をしながらお魚の査定を待ち、途中フルーツジュースを注文してシルバ達と遊んでいると、入り口からガチャガチャと装備の音をさせながら冒険者が入ってきた。
「森へ入る許可が欲しいんだけどいいかな?」
「あ、はい。ではこちらの依頼書に署名をお願いします」
声がする方にチラリと目を向けると、男性三人組のパーティが受付で依頼を受けていた。船でおじいさんが言っていた森の探索かな? その中のひとりが私達に気づいて笑顔で声をかけてきた。
「あ、君達! 昨日はありがとう!」
「?」
私達は首を傾げていたが、あとから来たふたりの顔をじっと見て思い出した。
「あ! 女の子に囲まれていたイケメン達」
「ああ」
まったく興味がない感じでフレーレがポンと手を打つと、最初に話しかけてきた男性が私の手を取って笑いかけてきた。
「そう! 思い出した? 俺はリュゼ。イケメンだなんて嬉しいね」
「あの時は助かりました。私はライアー。私達三人も見ての通り冒険者なんだが、あの時はバカンスを楽しんでいて装備がなくてね。申し訳ないけど逃げさせてもらったよ」
メガネの男性がそう言いながら頭を下げる。軽薄そうな感じがしたけど、意外としっかりしているのかな? そして最後にリーダーらしき人が声をかけてきた。
「それにしてもふたりの戦いは見事だった。ここで会ったのも何かの縁、どうだろう、その腕を見込んで依頼を一緒に受けてもらえないだろうか? あ、俺はクルエルという。よろしくな」
「依頼って……今受けていた森の?」
「そう! 探索だよ! どう? ……ここだけの話、お宝のある遺跡があるらしいよ?」
後半はリュゼさんが人目を気にしながらこそこそと話し、続けてライアーさんも声を潜めて言う。
「人数が増えれば取り分は減るものの、安全は格段に上がる。昨日の戦いを見る限り、信頼に足ると思った」
「ルーナ、どうしますか?」
フレーレが私の袖を掴んで聞いてきたので、私は腕組みをして考える。
うーん、せっかくバカンスに来ているんだし、お仕事は……それに男性ばっかりのパーティはちょっと怖い。申し訳ないけど断ろうか。
「すみません、今回はバカンスで来たので依頼はちょっと止めておこうかなと思います」
「そう? お宝で遊んで暮らせるかもよ? 美味しいもの食べ放題、好きなもの買い放題! 行こうよ!」
「う、うーん……」
リュゼさんの押しがすごく、私が困っていると、チェイシャが首元に巻きついてきてぼそぼそと話しかけてくる。
〈お宝、よいではないか。行こうぞ? 美味しいもの食べ放題……油揚げ食べ放題……何、危険があれば強欲の魔神であるこのチェイシャが守ってやるわい! じゅるり〉
「その体で何ができるのよ……仕方ないわね」
チェイシャの強欲が発揮され、私は渋々リュゼ達へ笑いかける。
「わかりました。でしたら今日だけお供させてください」
「お、本当! それは助かるよ! それじゃ早速手続きをしよう」
魚の査定が終わった後、クルエルさんと受付へ行って依頼の登録を済ませると、カバンから装備品を取り出し、別室で着替えて出発した。
ギルドを通して契約しているので、彼らが下手な行為に出ないと思いたい。まあ、アントンみたいなのは早々いないかな?
「いやあ、女の子がいるのは華があっていいね!」
「無理を言ってすまなかった。損はさせないよう頑張るとするよ」
「ううん、大丈夫ですよ! お宝があったら山分けしましょうね」
「ははは、そうだな! っと、ここから森だ、慎重にな」
「はい。レジナ達はフレーレについてね」
私達はクルエルさん達の後ろを歩き、森の中へと足を踏み入れる。せっかくだから一攫千金を狙いたいわね!
第二章
――森に入ってからしばらく進むも、周りは草木ばかりで同じような景色が続いていた。汗をぬぐいながら私はポツリと呟く。
「本当に未開の地って感じがするわね」
「そうですね、道らしきものがないですし」
ガサガサと草むらを剣で払いながら進む三人の後ろでフレーレと喋っていると、ライアーさんが口を開いた。
「ふたりとも怖がっている感じがないな。頼もしい限りだ」
「こういう森に入ると、ビビるヤツは男も女も関係ないんじゃない?」
リュゼさんが笑いながらそんなことを言う。
「最近は女性冒険者も多いですからね」
「……まあ人それぞれだ。それにしてもこの辺りは一段と鬱蒼としているな」
「ここに来るのは初めてなんですか?」
私が尋ねるとクルエルさんは前に進みながら答えてくれる。
「いや、実際は二回目なんだ。森は手付かずでこの有様だろう? この依頼は手の入っていない場所を適当にスタート地点として決めて、まっすぐ進んで地図と道を作るんだ。で、途中何かあればギルドに報告、というのを繰り返して森の調査を進めている」
なるほど、基本的にまっすぐ進むだけでいいんだったら楽かも。これで金貨三枚なら確かにおいしい依頼だわ。裏がなければ、だけど。
「この森って広いから足場を作るだけでも大変なんだけどねえ。さっき俺が言った遺跡もあるってことはわかっているんだけど、場所までは詳しく調べられなかったからこうやって足で探しているんだよね」
と、リュゼさんが言う。どうしてこんなことを三人が知っているのかというと、この島の開発を進めているアクアステップの出身らしく、図書館で見つけた文献で知ったとか。
で、文献によると『この地に災害が起きた際、若い娘を生贄にして神様の怒りを鎮める儀式』というのがあったそうだ。今探している遺跡はその生贄を捧げるための祭壇だったとか。
「まだ遺跡は見つかっていないし、情報を知っている人間も多くないから急いでいるんだよね。というか若い娘を生贄とかもったいないねー。ね、ふたりは彼氏とかいるの?」
そう言いながらリュゼさんが私達の方へ振り向いたその時だ!
ガゥア!
「がう!」
大きな牙を持った猫のような魔物が草むらから飛びかかってきた! リュゼさんに噛みつこうとしてきたみたいだけど、間一髪でレジナがそれを阻止していた。
「ブレードタイガーだな。しかし一頭だけなら……」
ライアーさんが驚きながら戦闘態勢に入るが、さらに茂みから二匹のブレードタイガーが姿を現し、威嚇をしてきた。
グルルル……
ガァァァァ!
「三頭か、少し面倒だな。だけど今日はルーナさんとフレーレさんがいるから問題はなかろう。行くぞ!」
クルエルさんが剣を抜き、ライアーさんが槍を構えると、リュゼさんは木に登り弓に矢をつがえて放つ。
「お見事ってね!」
グァァァァ!
リュゼさんの矢が足に刺さると怒りの咆哮を上げるブレードタイガー。そこで膠着状態だった場が動き、戦闘が始まる。
「はあ!」
まずはクルエルさんが自分に近いタイガーを狙うが、素早い動きでかわされてしまう。
その隙を見て、残った二頭が飛びかかった。そこへライアーさんのフォローが入り、一頭をクルエルさんから引き離していき、クルエルさんはもう一頭を相手に剣を振りかざす。
「とああ!」
グァァァ!
ガキン!
力では勝っているけど、タイガーは素早く、確実なダメージを与えるのが難しいみたい。
クルエルさんの攻撃をかわしたタイガーがリュゼさんの矢を回避しながらふたりの隙を虎視眈々と狙っている。
私はフレーレに合図し、補助魔法を使ってからその一頭へと向かう。
「フレーレ、足元に攻撃よろしく! 《ストレングスアップ》!」
「はい! 《マジックアロー》!」
ドン!
グルァ!
私達が攻めてくるとは思っていなかったのか、マジックアローの爆発に驚くタイガー。
「こっちよ!」
そこへ私の剣がタイガーに迫る。しかしタイガーは器用に剣を前足で打ち払った。
「いい勘をしているわね、でも――」
「がう!」
グゲェ⁉
そこで草むらに隠れていたレジナが喉元に噛みついた。レジナの牙から逃れようとタイガーは頭を振るものの離れず、メキメキと嫌な音を立てて血が噴き出していく。
「やああ!」
ビシュ!
ギャオゥ!
「痛っ! やったわね!」
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「がううううう」
ついにレジナがタイガーを地面に叩きつけた!
「チャンス!」
ズシュッ!
レジナが引きずり倒してくれたおかげでタイガーの眉間を貫くことができ、剣を引き抜くと地面にじわりと血が広がる。
「残りは!」
ヒュ!
グォォォォ!
「まだ元気だな! はああああ!」
体に何本も矢が刺さったタイガー。それでも元気に飛びかかってくる。攻撃を槍で牽制し、タイガーの肩や足へ攻撃を当てていると、ほどなくして動きが鈍くなった。
「もらった!」
動きが鈍ったタイガーは、焦って飛びかかるもお腹を串刺しにされ絶命。一息ついたライアーさんの顔には、鎧に覆われていない部分にいくつかの引っかき傷があった。
ドサッ……
「ふう……」
何かが倒れた音がしたので、そちらを見ると、クルエルさんも最後の一頭を仕留め、冷や汗を拭っているところだった。
「いいね、ふたりとも! 上から見ていたけどバッチシじゃん!」
「ありがとうございます。リュゼさんの弓もお見事ですね。《ヒール》」
木の上から降りてくるリュゼさんに声をかけられ、それに返事をしながら私とライアーさんを回復するフレーレ。
「やはり回復があると助かるな……。こいつは安全なところから矢を射るだけだからいつもケガをするのは俺達ふたりなんだよ。君達を連れてきてよかった」
ライアーさんが珍しく笑いながらそういうと、
「俺は近接戦闘をしない主義なんだよ!」
リュゼさんが口を尖らせ、不機嫌に言う。その様子にみんなで笑う。
「狼もすごかったな」
「……がう」
レジナは撫でられるのが嫌なのか、ぷいっとそっぽを向いて私の後ろに隠れてしまう。
「おっと、嫌われたかな?」
「お前の顔が怖いんだよ!」
リュゼさんがライアーさんにさっきの反撃をして睨み合いになり、クルエルさんが肩を竦めてそれを諫めていた。
うん、男の人ばっかりで大丈夫かなと思ったけど、とりあえず問題なさそうね。これでお宝が見つかればパーティを組んでよかったかも。
というか……
「チェイシャも働きなさいよ」
〈あのくらいは脅威ではあるまい? わらわを倒したお主らならいけると思ったのじゃ〉
むう、しれっと減らず口を……まあいざとなれば上級補助魔法があるし、なんとかなるか。
「ルーナ、行きますよー」
「きゅんきゅん」
「きゅん」
「あ、待って、今行くわ!」
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