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2巻

2-2

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「本当か? もしそうなら相当運がいい。始まって二週間程度だけど、まだ白玉が多いはずだ」
「そうなんですか? シロップは一回で出しましたけど……」
「きゅんきゅん?」

 何? と言わんばかりに首を傾げて尻尾を振るシロップ。

「無欲の勝利か……? それで楽しそうだったのか。確かペアチケットだっけ? フレーレちゃんと行くのかい?」
「ええ、ダンジョンの件もあるからレイドさんとも行きたかったんですけど、あいにくチケットが二枚しかないので謝っておこうかと」
「律儀だなあ。レイドはちょうど徹夜で単独の生態調査の依頼に出たところだ。帰るのは明日の朝だから、あいつが帰ったら俺から言っておくよ」
「あ、本当ですか? なら明後日から三泊四日、ヘブンリーアイランドへ行くって伝えておいてください! 明日は私達も依頼で近隣の森へ出てると思いますし」
「わかったよ、いいなあ、リゾート地……俺も休みたいぜ」
「あはは……じゃ、お願いしますね! また明日!」

 本気で呟くイルズさんに挨拶をしてギルドを出ると、バイト先の〝山の宴〟へ歩き始める。
 おかみさんにリゾート行きを伝えないとね!
 だけど、このリゾート地で私達はとんでもない目にあうことになる。そんなこと、この時はまだ思いもしなかった。


   ◆ ◇ ◆


「さて、午後はなんとか休みが取れた。ルーナをディナーにご招待といこうか」
「大丈夫ですかフォルティス様。なんだか偽伯爵みたいになっている気がしますけど……」
「何を言う、私は紳士だぞ? 襲うような真似は断じてしない! そう、少しずつ心を通わせてだな――」
「(そこじゃないんですけどねえ……)」

 主人の行動は少し度が過ぎていると思い、執事のパリヤッソがやんわりと注意をするが、フォルティスはどこ吹く風で持論を展開する。そうこうしているうちにフォルティス達が乗る馬車がルーナの下宿先である〝山の宴〟に到着した。

「すまない、ルーナはいるだろうか?」
「はい、いらっしゃい……って侯爵様でしたか。えっと、ルーナはいませんよ」
「むう、すれ違いか……帰ってくるまで待たせてもらってもいいだろうか?」
「構いませんけど、帰ってくるのはしばらく先ですよ? 商店街のクジで一等が当たって、今朝から……なんだっけ、あんた」
「……『ヘブンリーアイランド』だ」

〝山の宴〟のマスターがボソリと呟き、フォルティスは驚いておかみさん達へと尋ねる。

「ヘブンリーアイランドだって⁉ いつか私がルーナを誘って行こうと思っていた場所じゃないか! 商店街のクジ……あ、あれは確かペアチケットのはず……だ、だ、誰と行った? もしかしてレイドか⁉」
「フレーレちゃんと行くって言ってたっけね。あとは狼達と狐も連れて行きましたよ。ルーナちゃんは『レイドさんが行けなくて残念』だとぼやいていましたけど」

 おかみさんは意地悪くレイドの名前を出したが、フォルティスは『フレーレと行く』という部分を聞いて安堵する。しかし、すぐに別の不安が脳裏によぎった。

「リゾート地……アバンチュール……見知らぬ男女の淡い恋……」
「フォルティス様、口に出てますよ……というか発想が古いですね……」

 パリヤッソが呆れながら呟くと、フォルティスがぐわっと顔を上げて叫んだ。

「情報提供感謝する! 行くぞ、パリヤッソ!」
「ああ、お待ちください! すみません、失礼いたします!」

 バタバタと出ていくフォルティスを追ってパリヤッソが馬車へ乗り込むと、今度はギルドへ向かえと御者に指示を出していた。

「ど、どうするおつもりですか⁉」
「知れたこと……私も行くのだ……!」

 ギルドに到着すると、フォルティスは転がるように馬車から降りた。その勢いのまま、ギルドの扉を開けて中へ入る。そして目当ての人物を見つけて声をかけた。

「見つけたぞ、レイド!」
「あれ? フォルティスじゃないか。ルーナちゃんならいないぞ?」
「知っている! リゾート地だろう? ……なあレイド、お前も行ってみたいと思わないか?」
「? リゾート地にか? というか、どこでルーナちゃんが行ったことを知ったんだ? まあ、ダンジョン疲れもあるし、少しゆっくりしたいとは思うけど」

 レイドがそう言うと、フォルティスはニヤリと笑い、肩を組んで耳元でささやく。

「行こうじゃないか」
「は?」
「行こう、私達もリゾート地に!」
「い、いや、俺は金がないし……」
「構わん! 私には貯金がある。お前ひとりくらい余裕だ。明日の早朝出発だ、準備を怠るなよ!」

 それだけ言うと、ギルドを出ようと歩き出す。

「俺はまだ行くとは――」

 レイドが引き留めようとするが、パリヤッソが前に立ち口を開く。

「申し訳ない、レイド殿、ここはひとつフォルティス様についていってはくれまいか?」

 レイドに懇願するパリヤッソを見て一息つき、レイドは腕組みをして尋ねた。

「ルーナちゃんが好きなのはわかるけど、それならひとりで行けばいいんじゃないか? どうして俺なんだ」
「……恐らくですが、ルーナさんの顔見知りであるレイド殿がいれば、邪険にはされないだろうという打算と、フレーレさんの相手をレイド殿にさせようという魂胆かと……」
「マジか……」

 いつもならこんな無茶は言わないが、ルーナが関わっているとダメになるな、と思いながら、パリヤッソへ返答する。

「わかった。あの調子なら断っても宿の前で待っていそうだし、行くことにするよ。それにバカンスに年頃の娘がふたりというのも心配だしな」
「お、やっぱり心配なんだな?」

 にやにやと笑いながら言うイルズ。その彼を睨みながらレイドは口を開く。

「ゴホン! 茶化さないでくれ、イルズ。そういうことになったから、すまないけど依頼は中止だ」
「おう、侯爵様の頼みとあっちゃ仕方ねぇ、ほかのパーティに頼む。そういや、向こうにもギルドがあるらしいぞ。面白い依頼があったら受けてみたらどうだ」
「気が向いたらな」

 イルズの依頼をキャンセルし、雑談をしているとパリヤッソがレイドへ話しかける。

「それでは明日、お迎えに上がります」
「ああ、よろしく頼むよ」

 パリヤッソを見送り、その後すぐにレイドも準備のためギルドを出た。しばらく歩いてから一度立ち止まり、逡巡する。

「(リゾート地か……海は危険だし、いろいろ準備をしないといけないかな。フォルティスはあんな調子だから期待できないし)」

 胸中でそう思いながらレイドの足は商店街へと向いた。


   ◇ ◆ ◇


 ピィィィィ!

〈うわ⁉ な、なんじゃ⁉〉

 けたたましい警笛の音で目を覚ましたのは、私の腕でずっと眠っていたチェイシャ。

〈船か……わらわは初めて見たのう。ふあ……〉

 チェイシャは私の手から飛び出して甲板に着地しながらあくびをする。先ほどの笛は船が離れるという合図だったみたい。

「チェイシャちゃんはいつからあのダンジョンにいたんですか? 船を見たことがないということはかなり昔?」

 いつもの白いローブから装いを変え、水色のワンピースを着たフレーレが屈みこんで尋ねると、チェイシャはフレーレの胸に飛び込んで疑問に答える。

〈そういうわけではないのじゃ。わらわの国では必要なかったからのう〉
「国……?」
〈まあ気にするでない。それにしてもいい天気じゃのう〉
「そうね、晴れてよかったわ」

 アルファの町の近くには海に続く湖があり、そこからリゾート地であるヘブンリーアイランドまで向かう。ここから丸一日かかるので、船で一泊する形だ。

「うーん! いい気持ち! あら?」

 大きく伸びをしていると、視線の先に狼達がお座りしているのが見えた。

「きゅん……」
「がう」
「レジナ達は何してるのかしら?」
〈落ちたら助からないと言い聞かせておるようじゃ。お母さんも大変じゃて〉
「確かに落ちたら助ける方法がないわね。おいでシルバ、シロップ! こっちで日向ぼっこしましょう」
「きゅん♪」
「きゅんきゅん♪」

 私が呼ぶと二匹は喜んでこちらへ駆けてきて、レジナもゆっくりと歩いてくる。腰を落ち着けてフレーレと雑談をしながら日向ぼっこをしていると、おじいさんが声をかけてきた。服装を見ると船員さんのようだ。

「どうだい船旅は? 今日は天気がいいから波も静かだし、お嬢ちゃん達、運がよかったよ」
「潮風がすごく気持ちよくて、のんびりできています!」

 私の返事に、おじいさんはうんうんと笑顔で頷き、話を続ける。

「ヘブンリーアイランドには遊びに行くのかい?」
「ええ、たまたまクジが当たって遊びに行くんです」
「いいのう。わしらも休息で降りることがあるが、海も砂浜もとてもきれいじゃ。美人なお嬢ちゃん達にピッタリじゃ」
「えへへ、そうですか?」

 フレーレが照れていると、おじいさんはふと真顔になって言う。

「あの島は確かにリゾート地じゃが、まだ未開の部分が多くてな。開発が済んだ場所は問題ないが、それ以外の場所には近づかんことじゃ。ギルドで道を切り開く作業や、魔物退治。はたまた洞窟や森の探索などの依頼を出しておるくらいじゃからな」
「リゾート地なのにギルドってあるんですね?」

 私が首を傾げて聞くと、おじいさんはポケットから煙草を取り出し、火をつけて紫煙を吐いてから喋り出す。

「開発には人手が必要じゃからのう。だからギルドを設置して冒険者をあちこちから募っておるようじゃ。遊びに来たお客に危険がないように配慮もしておるようじゃ」

 魔物が出るなら冒険者がいないと危険だよね。まあ今回は遊びに行くわけだし、危険な場所に近づくことはないだろう。
 私がそんなことを考えていると、おじいさんの口から衝撃的な情報が飛び込んできた。

「無人島だと思われていたが、どうやら人の暮らしていた形跡が見つかったらしい。人が掘った洞窟も見つかっていて、お宝があったという話もある。まあ、お嬢ちゃん達には関係ないかのう」

 そう言っておじいさんは煙草をふかし私達の前から立ち去っていく。その後ろ姿を見ながらフレーレが呟いた。

「お宝……わたし達も依頼を受けて洞窟探検しますか?」
「なんでワクワクしてるのよ……。今回はダンジョン攻略の慰労! だから全力で休むわよ! レイドさんには申し訳ないけど」
「まあまあ、レイドさんならわかってくれますよ。お宝をお土産にしますか?」

 うふふ、と笑うフレーレはお宝話に興味津々なよう。私もお宝に興味はあるけど、滞在期間中に見つかるとは思えないから遊び倒す方が先決かな?
 その後、もちろん船旅は順調に進み、船の中で海の幸を使った食事を堪能した後、波に揺られながら眠りについた。
 そして――

「着いたー!」
「がうがう!」
「きゅーん!」
「きゅきゅん!」
〈むう、まだ眠いのじゃ……〉
「チェイシャちゃんはわたしが抱っこしますね。うわあ、海がきれいですね」

 下船した私達は海沿いを歩き、朝日を浴びながら宿に向かう。フレーレの言う通り海はとても澄んでいて、ここで泳いだらさぞ気持ちよさそうだ! 気温も暖かいし、絶好の海水浴日和ね。

「先に泳ぎます? チェックインは夕方までに行けばいいみたいですけど」
「……なんとなく忘れそうな気がするから先に宿に行くわよ。ここまで来て野宿は嫌よね、フレーレ」
「は、はい」

 私の気迫に押されたフレーレと一緒に、宿に向かう。到着した宿は、宿とは言いがたい豪華なホテルだった! もっと民宿みたいなのを想像していただけにフレーレと共に呆気にとられる。

「お、おはようございますー……」

 中に入るときれいなロビーが目に入り、若干委縮してしまうが、すかさずホテルの従業員が声をかけてきた。

「おはようございます! お早い到着ですね。あら、ワンちゃん達もご一緒ですか? ではお部屋はペットと同じ部屋ということでよろしいですか? でしたら一泊銀貨六枚になります!」

 お高い! しかし今の私には魔法のチケットがある……!

「えっと、これでお願いします」

 受付カウンターに案内されたので封筒からチケットを二枚、女性従業員に渡すと真剣な顔でじっとチケットを睨む。

「……あの?」
「……ふむ、エクセレティコ王国のチケットですね、確認いたしました! いやあ、偽物を作ってくる輩もいますので、きちんと鑑定をしないといけないんですよ。それではお部屋へご案内いたしますね。あ、ワンちゃんもそのまま入ってきていいですよ。ペット連れのお客様用のお部屋がありますので」
「ありがとうございます。よかったわね、みんな」
「がうがう」
「きゅん!」
「きゅきゅん」
〈コ、コンコン……〉

 抱っこされたままのチェイシャが妙な声を上げていたけど、従業員さんは気に留めなかったようだ。

「ごゆっくりどうぞー。夕飯は十九時で、お部屋にお持ちします。その時間までには部屋に戻っていただけると非常に助かります」
「はい! 楽しみですねえ……」

 フレーレがうふふと目を細めて夕飯に思いを馳せていると、従業員さんは微笑みながら出ていった。ご飯も楽しみだけど、ここはやっぱり……

「それじゃ、早速海に行きましょう!」
「そうですね!」
〈わらわは行かんぞ。まったく強欲の魔神が海ではしゃぐなどありえんわい〉

 私達が水着に着替えていると、チェイシャが悪態をついて丸くなって寝ていた。魔神は関係ないと思うんだけど……
 それはともかく遊ぶぞと、水着に着替えて海へと向かった。
 そして――

「うひゃあ、気持ちいいー!」
「それ!」

 バシャ!

「あ、やったわね、フレーレ! えい!」
「きゃあ! あはは! 楽しいですね!」
「最近ずっと戦ってばかりだったから、たまにはね。シロップに感謝だわー」
「きゅん……きゅん……」

 当のシロップは浅瀬でぱちゃぱちゃと犬かきをして泳いでいる。シルバはヤドカリをおもちゃにして砂浜で遊び、レジナは大人しく寝そべって子供達の様子を見ていた。
 そんな中――

〈にょほほほ! 冷たいわい! これは気持ちええのう! ほれシロップ、追い抜くぞ〉
「! きゅんきゅん!」

 あれだけ嫌そうにしていたチェイシャが海で一番はしゃぎまくっている。

「結局遊ぶんじゃない。意地を張らなきゃいいのに」
〈なんじゃー? 聞こえんぞー、ふぉっふぉ……がぼごぼ⁉〉
「ふっ、成敗」
「ああ、チェイシャちゃんが⁉」

 とまあ、初めての海水浴だったけど楽しく遊べていた。このヘブンリーアイランドは南の島だけあって気温が高く、海に入るくらいがちょうどいい。

「ふう、はしゃぎすぎちゃいましたね!」
「休憩する? シロップの面倒ありが、と、ね……」

 シロップと泳いで遊んでいたフレーレが、浜辺へ上がってきた。彼女に声をかけるが、どうしてもある一点に目がいってしまう。

「フレーレって着痩せするタイプよね……」
「? なんですか?」

 ローブと同じく白色のワンピースタイプの水着がよく似合ってる。
 でも、どことは言わないけどとても大きいので、フレーレにはビキニの方がもっと似合いそう。しかし、少し前にデッドリーベアにやられた背中の傷を隠すため、しっかりと肌を隠すタイプの水着を買っていた。
 曰く『遊びに来ている人が自分の傷を見て嫌な思いをしなくていいように』とのこと。
 そんなことを考えていると、フレーレが私の水着を見て呟く。

「そういえばルーナの水着、可愛いですね。わたしもそういうのにすればよかったです」
「ありがとう。でも実はちょっと子供っぽいかなって思ってるんだけどね」

 私はフレーレの逆で胸に傷があるため、胸元を隠す水着にした。寝間着のような水着なのですごく可愛いんだけど、デザインがやや子供っぽいかな。

「まあ、誰かに見せるわけでもないからいいんだけどさ」
「レイドさんが来れば見てもらえたんですけどね」
「え⁉ フレーレ、もしかしてレイドさんのこと……」

 ダンジョンで一緒だったし、頼りになるからそれもあり得る……い、いや、別にフレーレが誰と付き合ってもいいじゃない……アントンの件で嫌な目にあったし、それでも好きな人ができるなら祝福してあげるべき……と勝手に妄想を膨らませていると、フレーレが首を傾げて私に言ってきた。

「え? 男性の意見も聞きたくないですか?」
「あ、ああ、そういう意味ね!」
「?」

 私のピンク色をした妄想など知る由もなく、フレーレはにこっと笑ったまま首を傾げて私を見ていた。ちょっと恥ずかしくなったので、話題を変えることにする。

「それにしてものんびりできていいわね。人は多いけど、浜辺が広いからレジナ達がいても気にしないで使えるし」
「シロップのおかげですからね。よしよし♪」
「きゅきゅーん♪」

 フレーレが背中を撫でると、シロップは嬉しそうに濡れた体をぶるぶる振って水を飛ばす。

「もうひと泳ぎする?」
「そうですね、わたし泳ぐの苦手なので、もっと練習したいです!」
「きゅんきゅん!」
「ふふ、シロップが教えてくれるみたいよ? ちなみに私は故郷にいる時、川でよく遊んでいたから教えられるかも」
「あ、ぜひ! ……おや? あれはなんでしょう?」

 早速海へ入ろうと思ったその時、フレーレが人だかりを発見する。目を凝らしてよーくみると、三人の男性が大勢の女性に囲まれているようだった。さらに目を細めて観察すると――

「三人ともイケメンね。それを狙って女の子達が取り合いをしている、そんなところかしら」
「よ、よく見えますね……。そういえば『恋人同士で幸せな休みを楽しむ』みたいな触れ込みがありましたし、デートするにはいいかもしれないですね。わたしにはしばらく無理そうですけど」

 アントンの件がまだ尾を引いているらしく、困ったように笑うので、私も肩をすくめて口を尖らせる。

「ま、そこはお互い様よね。私もお父さんを養わないといけないし」
「そういえばそうでしたね。わたし達には彼氏なんて夢のまた夢ですねえ」

 私とフレーレは遠巻きに人だかりを見ていたけど、すぐに飽きて海に入る。チェイシャは寝そべってレジナと一緒に波打ち際で休憩するようだった。そんな二匹を尻目にフレーレの手を取って泳ぎの練習を始める。

「そうそう、その調子よ、フレーレ! あ、シルバ、気を付けなさいよ?」
「きゅん⁉」

 おっと遅かったみたい。浜辺でカニをおもちゃにしていたシルバがカニの反撃にあい、鼻を挟まれてしまったのだ。頭をぶんぶん振ってカニを振り払おうとするがカニは離れない。

「きゅきゅん!」

 するとそれを見ていたシロップがカニを叩いて落としシルバの鼻を舐めていた。

「ふふ、シロップはお兄ちゃん大好きですね」

 フレーレが微笑むとチェイシャが伸びをしながら口を開く。

〈くあ……流石さすがに疲れたわい……む! おい、ルーナ、魔物じゃ!〉
「え⁉」

 浜辺でチェイシャが叫び、その視線を追うと、

「きゃああああ!」

 どこから現れたのか、大きな蛇のような魔物が先ほどの集団へ襲い掛かろうとしていた。

「フレーレ!」
「はい!」

 私はレジナの首にかけていたマジックバッグからフレーレのメイスと自分の剣を取り出し、補助魔法を使う。

「《フェンリルアクセラレータ》《パワフルオブベヒモス》!」

 スピードとパワーを上げて一気に近づき、蛇の背中へ剣を振り下ろす。
 シャァァァ⁉


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