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最終部:タワー・オブ・バベル
その382 村
しおりを挟む「あおぉぉぉん……」
「レジナ……」
「わふ……」
「きゅきゅん……」
「シルバにシロップも……」
私はしばらく泣きながら拳を床に叩きつけていた。レイドさんとお父さんは気遣ってかそれを止めることは無く、突然レジナが遠吠えをし、シルバとシロップが私に身を寄せて鳴いた。
「……わかってる……こんなことをしても意味がないのは……」
「ルーナ……」
「言わないでレイドさん。フレーレもこうならない保障はどこにもなかったんだし、仕方ない、のよ」
レイドさんに支えられて階段を登り始めると、前に居たユウリがぼそりと呟く。
「ルーナ、父さんは僕達に任せてくれ。神と融合しようがなんだろうが、必ずぶちのめす……!」
アイリとノゾムはそんなユウリを追いかけて先へ進んでいく。明確な反逆の意思がある三人をこのまま残しておくだろうかと思いながら、私達も登っていく。
<ぴー。残念、だったわ……いい子だったのに。フレーレだけが犠牲になったわけじゃないけど、長く一緒にいたからなおのことね>
フレーレに返してもらったクロスからジャンナの寂しそうな声が響き渡る。そういえば私の誘拐事件の時はフレーレと一緒に学院へ行ってたんだっけ。そこへチェイシャが声を出した。
<悔いても仕方ない。全員『そうなるであろう』ことを踏まえて戦いに赴いたはずじゃ。そして今、喉元まで来ておる。となると、やることは一つ>
「そうだな。神裂にはどういう事情であれ償わせてやる」
『着いたみたいだよ』
私達の話を聞きながら前を歩いていたエクソリアさんが、99階に入るための扉の前で立ち止まり振り向いて言う。
恐らく、ここに最大級のボスが守っているに違いないとノゾムは冷や汗をかきながら罠を慎重に調べ――
ボン!
「うぐあ……!?」
「ノゾム兄さん!?」
ていた扉が爆発し、ノゾムの手が血だらけになった。
「フレーレ回復を……!」
と、叫んでそれはもうできないのだと痛感する。私はカバンからポーションを取り出してノゾムに手渡した。
「……すまない」
「ううん。回復魔法、使えれば良かったんだけどあいにくね」
『扉はちゃんと開いたから無駄なケガじゃなかったわ。失敗かと思ったけど』
アルモニアさんが扉を引くと、ギィ、と重い音を立てて二枚の扉が開く。ごくりと喉を鳴らし、私達が踏み込むとそこには――
◆ ◇ ◆
「あいつも死んじまったか……」
「そういえば、パーティを組んでいたことがあったんでしたね」
「俺みたいなのが生き残って、フレーレが死んじまうってのはやるせねぇな」
「……大丈夫よ、その恨みは神裂を倒せばいいだけ。そのために復讐をする権利があるあなた達を誘ったのだからね」
「ほっほっほ。感謝しますよ。ディクラインにアイディール、カルエラート。みんな良き人物でした……残ったのは私とベルダーだけというのも寂しい気はしますし、皆さんに顔向けできる働きはして見せますよ」
「師匠……」
「さて、99階みたいよ。油断しないように」
◆ ◇ ◆
<バベルの塔:99階>
99階へ足を踏み入れた私達が見た光景、それは……
「……村?」
「油断するな、エリックの友人がいたフロアを思い出せ、あの時みたいに村人がいるかもしれない……」
そう、ここはエリックの友人と戦った73階のような場所で、家々が立ち並び、畑があり、草木は本物の匂いを出していた。
「とにかく進みましょう。でもどうして村なんかを最後に? ここって父さんの故郷だったりして……」
「聞いたことが無いね。というかあのクソ親父に親兄弟や家族がいるって二人は聞いたことある?」
「……無いな」
三人はきちんと周囲を警戒しながら畦道を歩く。私とレイドさん、レジナ達も草むらに何もないか剣をがさがささせながら慎重に進んでいる。
すると黙っていたお父さんがふいに駆けだした。
「……間違いない……! ここは、この村は……!?」
「どうしたのお父さん?」
と、私がお父さんの横に立って聞いてみると、とある家から人が出てきた。
「敵……!」
私は剣を抜こうと手をかけるが、それをお父さんに止められ、顔を見上げるとお父さんは泣いていた。
「お前は……ルーチェ……!?」
「ルーチェ……って!?」
「久しぶりね、ヴァイゼ。ルーナも大きくなったわね!」
「お母さん……!?」
ウインクをして指を立てるその女性はなんと私の母親だった……!? 確かによく見れば私に似ているけど、どうなってるのよ……お母さんは死んだって言ってたのに……それとも罠なの……?
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