343 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル
その364 続く仕掛け
しおりを挟む<バベルの塔:84階>
階段を登りきった後、84階の扉の前で私達は休息を取ってから足を踏み入れた。83階のように重力がかかるようなことは無く全員が迷宮を歩くことが出来ている。
「休息を取ったから少し楽になったわ」
「それは良かった。一緒に行けなかったから心配していたよ」
レイドさんが前の方から振り返って笑いかけてくれると、その後ろを歩いていたチェーリカが声をあげた。
「ルーナ達は下がってくださいね! ここはチェーリカ達が頑張りますから!」
「オレ達はあんまり戦ってないから、任せてくれよ! 勇者パーティ+1が戦いに応じるぜ!」
と、レイドさん・ソキウス・セイラ・チェーリカにニールセンさんが前で固まって歩いていく。こうしてみると前衛と後衛がハッキリしていて、かつセイラが属性魔法が使えるのでバランスがいいパーティだったんだなと思う。
「よろしくね。でも気を付けてよ?」
「はーい」
ま、相変わらずカイムさんが仕掛けを見破ってくれるので、この階は楽勝かな? そう思っていたとの時、先頭を歩いていたソキウスの姿がフッと消える! また!?
ゴイィィン!
「ぐあああ!?」
「ソキウス! きゃああ!」
追いかけたチェーリカも消えた! ……と思ったら、頭が天井に張り付いている状態で浮いていた。
「ソキウス、チェーリカ!」
「レイドさん、踏み込まないでください! ここを!」
カイムさんが助けに入ろうとしたレイドさんを止め、足元を指す。そこには分かりにくいが矢印が書かれていた。
「これ、あの時と同じ……」
「みたいだね。だけど今度は上に飛ばされる仕掛けってところみたい……だ!?」
フレーレに答えたユウリが上を向いて絶句し、慌てて下を向いた。それもそのはず……浮いたチェーリカの下着が丸見えだったからだ。
「ははは、色気のないパンツを穿いてるな、嬢ちゃん!」
「み、見るなです!?」
「ぐわ!?」
デリカシーの無い発言をしたクラウスさんが杖を投げつけられてひっくり返るのを見ながら私は二人が踏み込んだ床へ侵入する。
「ルーナ!?」
フワッ!
「っと……危ない危ない」
「大丈夫か!」
「うん、ちょっと怖かったけど平気よ! えっと……手で動けばいいのかな?」
天井に手を当てて動くと前にも後ろにも移動できた。そこにアイリがポンと手を打って口を開いた。
「ああ、これってもしかして重力が逆に働いているんじゃないですか? えい!」
アイリも床を踏んで天井へ。しかし、アイリは器用にクルリと一回転して天井に足をつけた。おお、華麗だ!
「ほら、私の髪の毛が垂れさがらないのが証拠です! お父さんのことだからこの状態で進まないとダメ、とかありそう……」
「……それはありそうだな俺は地上を歩いて行こう」
お父さんが矢印床をひょいっと避けて前に進むとフレーレがそれに続き、セイラ、シルキーさんが追う形になった。
「……下から見えるのはちょっと……」
「だよね……」
私はズボンだからいいけど、先程の三人はローブかスカートなので丸見えだ。チェーリカの二の舞は踏みたくないだろう。
「私はセイラさんと一緒に行きます」
「あ! セイラ、ニールセン! 勇者パーティはこっちだぞ!」
器用にその場でくるりと周り、天井に足をつけてソキウスが叫ぶとセイラが振り返ってため息を吐く。
「勝手にやってなさいよ。いいのチェーリカを助けなくて? パンツまだ見えてるけど」
「ああ!? ほら、チェーリカローブを押さえてろ。よっと……」
「はあ……助かったです……」
「レイドさんはどうするの?」
「ルーナは回らないのか……俺はそっちに行くよ。ヴァイゼさんにカルエラートとニールセンが下に居れば戦力は十分だろう」
クラウスさんもシルキーさんが下なので、そっちに行くと矢印床を飛び越えて下を歩き出す。ノゾムは上でユウリは当然下。カイムさんも下かな? そう思っていたけど、上に来てくれた。
「未知の通路は危険がありそうですからね」
「何かあったら私のライフルで一撃です!」
「未知の道を歩くカイムさん……」
「フレーレ、何か言った?」
「え? な、何でもありませんよ」
何か言ったっぽいフレーレがセイラに首を傾げられていた。
こっちはカイムさんの近くでアイリが鼻息を荒くして逆さになったレイドさん達と進んでいく。私も行こうかと思ったところでふと下を見ると、狼達がきゅんきゅんわんわん鳴いていた。
「きゅふん」
「わん!」
ラズベが躊躇してるのをシルバが顔を舐めて慰め、シルバは矢印床に飛び込む。体を捻ってシルバは無事(?)逆さまになり、得意気に鳴く。
「わんわん!」
「きゅふん!」
それに呼応したラズベもくるりんぱして着地。
「うんうん、偉いぞ二匹とも」
私はまだぶら下がった状態なので、逆さの二匹を撫でるのは難しい。後はレジナとシロップだけど……
「がう」
「きゅんきゅん」
私達に向かって鳴くと、矢印を飛び越えてフレーレの後を追って行った。二匹は地上に行くらしい。
「それじゃ行きましょうかシルバ、ラズベ!」
「わん!」
「きゅふん!」
何だか楽しくなってきたので、そのまま手を使ってレイドさん達に追いついた。
「……ルーナ、言っちゃ悪いけど気持ち悪いぞ……」
「ええ!?」
◆ ◇ ◆
<バベルの塔:100階>
『ぶえっくしょい!? ……くそ、誰か俺の噂をしているな……?』
神裂は座禅を組んだまま悪態をつき、全身にみなぎる力を放出する。
ゴゥ……!
周りに立たせていた人の形をした木……いわゆる木人が圧だけで粉々になり、神裂は目を開けて一人呟く。
『今の力で8割ってところだな。……あいつらは84階か。全力でやらないと意味がないんだが、間に合うか? こっちの手駒はあと一人……だが90階に回すわけにはいかねぇ……』
座ったまま腕を組んで考える神裂。しかし妙案は浮かばず、
『もう少し仕掛けを増やすか。破壊兵器でも置いとけば時間稼ぎにでもなるだろ……善は急げってな! おっと、俺は悪だったか? ぎゃはははは! そうと決まれば――』
0
お気に入りに追加
4,221
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。