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最終部:タワー・オブ・バベル
その364 続く仕掛け
しおりを挟む<バベルの塔:84階>
階段を登りきった後、84階の扉の前で私達は休息を取ってから足を踏み入れた。83階のように重力がかかるようなことは無く全員が迷宮を歩くことが出来ている。
「休息を取ったから少し楽になったわ」
「それは良かった。一緒に行けなかったから心配していたよ」
レイドさんが前の方から振り返って笑いかけてくれると、その後ろを歩いていたチェーリカが声をあげた。
「ルーナ達は下がってくださいね! ここはチェーリカ達が頑張りますから!」
「オレ達はあんまり戦ってないから、任せてくれよ! 勇者パーティ+1が戦いに応じるぜ!」
と、レイドさん・ソキウス・セイラ・チェーリカにニールセンさんが前で固まって歩いていく。こうしてみると前衛と後衛がハッキリしていて、かつセイラが属性魔法が使えるのでバランスがいいパーティだったんだなと思う。
「よろしくね。でも気を付けてよ?」
「はーい」
ま、相変わらずカイムさんが仕掛けを見破ってくれるので、この階は楽勝かな? そう思っていたとの時、先頭を歩いていたソキウスの姿がフッと消える! また!?
ゴイィィン!
「ぐあああ!?」
「ソキウス! きゃああ!」
追いかけたチェーリカも消えた! ……と思ったら、頭が天井に張り付いている状態で浮いていた。
「ソキウス、チェーリカ!」
「レイドさん、踏み込まないでください! ここを!」
カイムさんが助けに入ろうとしたレイドさんを止め、足元を指す。そこには分かりにくいが矢印が書かれていた。
「これ、あの時と同じ……」
「みたいだね。だけど今度は上に飛ばされる仕掛けってところみたい……だ!?」
フレーレに答えたユウリが上を向いて絶句し、慌てて下を向いた。それもそのはず……浮いたチェーリカの下着が丸見えだったからだ。
「ははは、色気のないパンツを穿いてるな、嬢ちゃん!」
「み、見るなです!?」
「ぐわ!?」
デリカシーの無い発言をしたクラウスさんが杖を投げつけられてひっくり返るのを見ながら私は二人が踏み込んだ床へ侵入する。
「ルーナ!?」
フワッ!
「っと……危ない危ない」
「大丈夫か!」
「うん、ちょっと怖かったけど平気よ! えっと……手で動けばいいのかな?」
天井に手を当てて動くと前にも後ろにも移動できた。そこにアイリがポンと手を打って口を開いた。
「ああ、これってもしかして重力が逆に働いているんじゃないですか? えい!」
アイリも床を踏んで天井へ。しかし、アイリは器用にクルリと一回転して天井に足をつけた。おお、華麗だ!
「ほら、私の髪の毛が垂れさがらないのが証拠です! お父さんのことだからこの状態で進まないとダメ、とかありそう……」
「……それはありそうだな俺は地上を歩いて行こう」
お父さんが矢印床をひょいっと避けて前に進むとフレーレがそれに続き、セイラ、シルキーさんが追う形になった。
「……下から見えるのはちょっと……」
「だよね……」
私はズボンだからいいけど、先程の三人はローブかスカートなので丸見えだ。チェーリカの二の舞は踏みたくないだろう。
「私はセイラさんと一緒に行きます」
「あ! セイラ、ニールセン! 勇者パーティはこっちだぞ!」
器用にその場でくるりと周り、天井に足をつけてソキウスが叫ぶとセイラが振り返ってため息を吐く。
「勝手にやってなさいよ。いいのチェーリカを助けなくて? パンツまだ見えてるけど」
「ああ!? ほら、チェーリカローブを押さえてろ。よっと……」
「はあ……助かったです……」
「レイドさんはどうするの?」
「ルーナは回らないのか……俺はそっちに行くよ。ヴァイゼさんにカルエラートとニールセンが下に居れば戦力は十分だろう」
クラウスさんもシルキーさんが下なので、そっちに行くと矢印床を飛び越えて下を歩き出す。ノゾムは上でユウリは当然下。カイムさんも下かな? そう思っていたけど、上に来てくれた。
「未知の通路は危険がありそうですからね」
「何かあったら私のライフルで一撃です!」
「未知の道を歩くカイムさん……」
「フレーレ、何か言った?」
「え? な、何でもありませんよ」
何か言ったっぽいフレーレがセイラに首を傾げられていた。
こっちはカイムさんの近くでアイリが鼻息を荒くして逆さになったレイドさん達と進んでいく。私も行こうかと思ったところでふと下を見ると、狼達がきゅんきゅんわんわん鳴いていた。
「きゅふん」
「わん!」
ラズベが躊躇してるのをシルバが顔を舐めて慰め、シルバは矢印床に飛び込む。体を捻ってシルバは無事(?)逆さまになり、得意気に鳴く。
「わんわん!」
「きゅふん!」
それに呼応したラズベもくるりんぱして着地。
「うんうん、偉いぞ二匹とも」
私はまだぶら下がった状態なので、逆さの二匹を撫でるのは難しい。後はレジナとシロップだけど……
「がう」
「きゅんきゅん」
私達に向かって鳴くと、矢印を飛び越えてフレーレの後を追って行った。二匹は地上に行くらしい。
「それじゃ行きましょうかシルバ、ラズベ!」
「わん!」
「きゅふん!」
何だか楽しくなってきたので、そのまま手を使ってレイドさん達に追いついた。
「……ルーナ、言っちゃ悪いけど気持ち悪いぞ……」
「ええ!?」
◆ ◇ ◆
<バベルの塔:100階>
『ぶえっくしょい!? ……くそ、誰か俺の噂をしているな……?』
神裂は座禅を組んだまま悪態をつき、全身にみなぎる力を放出する。
ゴゥ……!
周りに立たせていた人の形をした木……いわゆる木人が圧だけで粉々になり、神裂は目を開けて一人呟く。
『今の力で8割ってところだな。……あいつらは84階か。全力でやらないと意味がないんだが、間に合うか? こっちの手駒はあと一人……だが90階に回すわけにはいかねぇ……』
座ったまま腕を組んで考える神裂。しかし妙案は浮かばず、
『もう少し仕掛けを増やすか。破壊兵器でも置いとけば時間稼ぎにでもなるだろ……善は急げってな! おっと、俺は悪だったか? ぎゃはははは! そうと決まれば――』
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