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最終部:タワー・オブ・バベル
その352 思惑
しおりを挟む「やった! やったわね!」
「わんわん!」
「ガウ」
ボスが倒され、私がみんなの元へ駆け寄ると、レジナとシルバが飛び込んできた。
「とと……うんうん、二匹ともちゃんと偉かったよー!」
二匹を撫でていると、レイドさんとフレーレがこっちに来ているのが見えた。
「ルーナ! 待っていろって言ったじゃないか!」
「あ、えへへ……その、ヘスペイトさんがセイラが攫われたって言うから慌てて……あ、パパのことは落ち着いたから大丈夫よ!」
「そ、そうか……? まあ、確かに焦っている感じは無いけど……というか父さんのせいか……ちょっと言ってくる」
「……俺も行こう」
レイドさんがくるりと振り返ってまたみんなのところへ戻ろうとし、何故かお父さんも一緒に着いて行った。私が愛想笑いをしながら見送っていると、フレーレが話しかけてきた。
「ひとまずカームさんのところへ行きましょう。もうあまり時間が無さそうです」
「……うん」
フレーレと一緒にカームさんのところへ行くと、すでにバステトがいて話しかけていて、それにカルエラートさんとニールセンさんヴィオーラの二人も加わっていた。
<うむ、そろそろ消えてしまうようだ>
<カームはしばらく休んでおくといいにゃ。後はこのバステトが引き受けたにゃ!>
「あなたのことは忘れない。偉大な聖騎士として、戻ったら汚名を返上させてもらう」
<ありがとうカルエラート。ヴィオーラの城下町から少し離れた墓地に家族の墓がある。すまないが報告してやってくれ>
「はい……必ず! あ、体が薄く……」
<どうやらここまでか……何、まだ完全にお別れになるわけでもない。ルーナ、俺の鎧を>
私が近づいたことに気付いたカームさんが振り向き、女神装備の鎧を所望してきたのでカバンから取り出す。
<少し休息するが神裂と相対するまでには帰って来よう。ありがとう、みんなのおかげで禍根を断つことが出来た――>
「カーム殿……!」
ニールセンさんが駆け寄ろうとしたけど、光となってカームさんは消えた。
<これで残るはバステトだけ。わらわ達のように死に急ぐではないぞ?>
チェイシャがそう言い、フレーレのクロスからもジャンナの声が聞こえてくる。やっぱり、みんな装備に入っているのね!
<ぴー。そうね。リリーがどうなったか分からないけど……>
「ま、ここまでくればすぐさー。とりあえず拠点に戻らないー? 割とくたくたなんだよねー」
「……俺達は戦ってないから疲れてないだろ? 腹は減ったけど」
エリックとノゾムがそんな会話をしている横で、ユウリとカイムさんが睨みあっていたり、シルキーさんがやれやれとセイラと一緒にため息をついている。とりあえずカームさんは残念だったけど、私はみんなが無事なことを嬉しく思いながら声をあげた。
「転移陣も出て来たし戻りましょうか! ほら、レイドさん、お父さんも!」
「待て、ルーナ。こいつとはじっくり話す必要がある」
「助けてくれたことは感謝するけど、言いたいことは山ほどあるからな。母さんも!」
「あら、山小屋でルーナちゃんのことをからかったこと?」
「そんな昔の話じゃないよ!?」
「まあまあ。ヘスペイトさんはレイドさんの剣を鍛えるんでしょ?」
同じアンデッドだからなのか、もしくはお父さんが特殊なのかは分からないが誰もダメージを与えられずすり抜けていたヘスペイトさんとお父さんが組み合い睨みあっていた。
「ほら、お父さん達、そんなことしてないで拠点に帰ろう?」
「ぐぬぬ……そ、そうだ……ヴァイゼ殿と言ったか。この続きは後ほどにしてもらえないだろうか……」
「ぬう……ルーナがそう言うなら……」
二人は取っ組み合いを止め、ふん、と鼻を鳴らして転移陣へ向かう。私達はその様子がおかしくって、笑いながら後を追うのだった。
◆ ◇ ◆
<バベルの塔:100階>
『ヴィオーラのクズ共を倒したか。そうでなくっちゃいけねぇよなあ』
モニターの前でほくそ笑む神裂がキィっと椅子を傾けて呟く。
『これで全ての下地は整った。後は俺の――』
すでに召喚したり、改造した部下は残る一人となっていた。その人物がとても悲しげに神裂へと問う。
「……これしか方法は無かったのですか? これではあまりにも――」
『言うなって。俺は俺のやりたいことをやっただけだ、恨まれこそすれ同情されるいわれはねぇよ。ぎゃはははは!』
「分かりました。では私は最後の役目を果たさせてもらいましょう。この運命とあなたに感謝します」
そう言って部屋を出て行く最後の人物。その後ろ姿を目で追いながら、神裂は椅子に座りなおしてポツリと呟いた。
『……だから言ってんだろぅ……恨まれこそすれ、感謝なんざいらねぇんだよ……それじゃ、最後のゲームといくか』
◆ ◇ ◆
<拠点>
「あ、戻ってきたです!」
「おう、全員無事……って訳でもなさそうだな」
すっかり暗くなった拠点の入り口付近でチェーリカとクラウスさんが出迎えてくれ、私達は拠点に入る。無事を報告すると言ってエリックやカイムさんが離脱し、カルエラートさんが騎士達に大層歓迎されていた。
「おお! カルエラートさん、よくぞ無事で……! ご、ご飯を……」
「馬鹿、帰って来たばかりだろうが! ささ、ゆっくり休んでください!」
「あ、ああ……? 一体どうしたんだ彼等は? 私が居ない間何かあったのか、ルーナ?」
「……さ、さあ……あ、あはは……」
……毎食生姜焼きを出していたとは言えない。
「あのでかいやつも居なくなったのか。とりあえず無事で安心したぜ」
「ええ、ありがとう。塔は――」
クラウスさんがカームさんが消えたことを残念そうに言いつつ、シルキーさんを心配する言葉を投げかけていた。あの二人、結構お似合いだけどどうなんだろうね?
で、結局カルエラートさんがご飯を作ると言い出し、戦闘に参加しなかったからと、アイリやシルキーさんも手伝い久しぶりにゆっくりと食事ができた。
「お風呂はやっぱりいいですね……」
「きゅんきゅん……」
「ガウ……」
さらに疲れを癒す為フレーレ達とお風呂に入りその日は終了した。
寝る前にどこかでお父さんとヘスペイトさんが争う声が聞こえて来たけど、その内おさまったようだ。
――そして翌日
ついにヘスペイトさんの工房が完成し、レイドさんの剣を鍛える時が来た! でも、それはあまりにも無情な決断だったことを私は、私達は知ることになる。
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