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最終部:タワー・オブ・バベル
その349 救出の聖女とキメラ化のメリット
しおりを挟む<危ない!>
「きゃあ!? カームさん、わたしをカルエラートさんのところへ投げてください!」
<分かった!>
ブォン!
ストゥルの振った剣がフレーレの立っていた場所を空振りする。宙に浮いたフレーレに、舌打ちをしながら追撃をしようとしたところでカイムさんが背後に忍び寄り首を狙う。
【ちょこまかと! そっちもだ!】
ガキン!
「チッ! ちゃんと使えているのか」
<それ! これでカルエラートは大丈夫だ。死ね、ストゥル!>
「弱点はどこかな!」
【無駄だと言っている!】
<ぬ!?>
「わおーん!」
【畜生が生意気だぞ!】
カイムさんの刀を受けながら、カームさんの爪を剣で弾き、三本目の腕でカームさんを斬り裂く。シルバが首に噛みつくと、うっとおしそうに振り払おうとし、ヘスペイトさんに対しては完全無視だ。
不死身相手にどれだけもつか……その間にニールセンさんがセイラの救出を急いでいた。
「聖女様!」
「ニールセン! 私はいいからお兄ちゃんかストゥルを攻撃して!」
「そうはいきません! あなたが自由になれば向こうは飛び道具であなたを狙うこともできなくなります。いわば人質と変わらない状態なのですから、ここは助けさせていただきます!」
「う、わ、分かったわ……」
セイラが大人しくなり、拘束されていた手足の金具をニールセンさんが破壊して、すぽっとその腕におさまった。
「あ、ありがとう」
「お礼は後です。行きましょう!」
「うん!」
セイラとニールセンさんが駆け出し、近くにいるレイドさんと戦っているホイットへ攻撃を仕掛けた。
「≪ブリザーストーム≫!」
「ホイット、覚悟!」
【ぬお!? おのれ……聖女を解放したか……】
「ガウゥ!」
【腕を!? この狼めが……!】
ニールセンさんを切ろうと腕をあげたところ、レジナが噛みそれを阻止する。いいわよレジナ! そして一旦距離を取り、レイドさんが二人に声をかけた。
「助かったニールセン。セイラも無事か」
「問題ないわ。こいつを早く片付けましょう」
セイラがそう言うと、レイドさんが剣を構えながらニールセンさんに言う。
「こいつは俺とセイラがやる。お前はカーム達と国王を頼む。あっちの方が厳しそうだ。セイラと戦いたいかもしれんが――」
「いえ、賢明な判断です。ディクライン殿ならそうされたでしょう。この男はお二人にとって母君の仇。気持ちはわかります」
「……悪いな」
「お兄ちゃん……」
「では、死なないでくださいよ!」
ニールセンさんが走ると、ホイットがレジナを振りほどいて阻止に走る!
【舐められたものだ!】
「させんぞ! 『真空烈破』!」
【チィィ! ≪ゲイル・スラッシュ≫!】
また上級魔法!? あいつ一体どうなってるのよ!
「ならこっちもお見舞いしてやる! 『ディスタント・ゼロ』!」
私が驚いていると、レイドさんは両手で持っていた剣を片手に持ち、鞘に入っていた蒼剣ディストラクションを逆手に抜いて、そのまま必殺技を放った! そんなアレンジできるんだ!?
【うぐお!? 腕がはじけ飛んだだと!? だが、私は死なん、拾ってくっつければ問題は無い。じわじわとなぶってくれる】
焦りながらも余裕なセリフを吐くホイット。しかしその一瞬の隙が明暗を分けた。
「なぶる? それは私のセリフよ、動けないところをさらってくれてどうもありがとう! 修業の成果をくらいなさい! ≪アイスフロウ≫!」
ニールセンさんを止めようと手を伸ばすが、セイラの魔法が早く完成。セイラの頭上に巨大な氷塊が現れ、セイラガ振りかぶるように手を下げると、氷塊がホイットを押しつぶすため落下していく。
【う、うおお!?】
グシャ!
「ガオゥ」
レジナがタッっとレイドさんの元へ戻ってくる。ホイットはセイラの一撃で身動きが取れなくなり、氷塊の下でもがいていた。
【ぐぬ……動けん……!? 左腕を拾わねば……ええい、内臓が潰されたか……再生に時間がかかってしまう……後、冷たい……冷たすぎる……!】
「まだ余裕があるか。だが、しばらく動けまい……あっちは――」
レイドさんが動けないホイットから目を離し、ストゥルと戦うみんなを見る。人数はこちらが圧倒的に多いので倒せないまでも検討していると思っていたんだけど……
「かすり傷すら負わせられないとは……」
【もう終わりか? ならば早々に死んで私を喜ばせろ!】
「何を……!」
<焦るなカイム。カルエラートは大丈夫か?>
「ああ、心配をかけた。フレーレもありがとう」
「助けるのは当然です! でも、このままじゃこっちが先にやられちゃいますよ」
フレーレがチラリとヘスペイトさんを見て呟くと、ヘスペイトさんがぶつぶつと赤い玉とストゥルを見ながら呟く。その内、ニールセンさんが追いついて来た。
「お待たせしました! ……!? ストゥル、その腕は……」
【ふん、国王に向かって呼び捨てとは偉くなったなニールセン。腕? ああ、これか。そうか、お前はこいつらと同期だったか? こっちの腕は褐色だから分かるか? 察しの通り、ヨルドの腕だ。こっちの入れ墨にも見覚えがあるだろう?】
「……ザビ……下に居た騎士のみんなを肉塊にしたキメラはまさか……!?」
【そう。我等はキメラの副産物として個人の恩恵を奪うことに成功した。ホイットの魔法も恩恵を埋め込んだから使えるという訳だ。本来なら腕が四本あったところでお前達と戦うには私自身力不足だと思う。だが、恩恵を取りこめばこの通り……!】
ビュオ!
ホイットの振った剣圧でニールセンさんの腕と胴体、頬が斬られる。ツゥっと血が流れ、ニールセンさんが小さく呻いた。
「クッ……」
【そろそろ馴染んできたな。ウォーミングアップは終わりだ、殺しにかからせてもらうぞ?】
ゴキンと首を鳴らし、ニヤリと笑う。
「……小物っぽい物言いだな。ボスじゃなくて中ボスクラスだ」
ノゾムがあえて聞こえるように言うが、ストゥルはどこ吹く風で答えてくる。
【言っているがいい。仲間が死んだあと、次は貴様等だ。神裂の子供ならこの先障害になる。ここで始末する】
「くそ、やっぱり僕がいけばよかった。フレーレ、バカイム。そいつを早く黙らせてくれ」
あっちとこっちでぎゃーぎゃー言っている中、じっと話を聞いていたヘスペイトさんが口を開く。
「恩恵をね……ならこれは集合体か? 再生する……だが壊せはする……よし、これでいこう。すまないけど、あいつの動きを封じてもらえるかい? 少しでいい。足を止めてくれれば後は何とかする」
<……勝算は?>
「8割ってとこだ。騎士の彼が来たし行けると思うけど」
「少しと言わず、私が命をかけて止めて見せよう」
「わたしも殴ります!」
カルエラートが剣を掲げて言い、フレーレが鼻息を荒くしていた。しかし、話がまとまらない内にストゥルが襲いかかってきた!
【……死ね……!】
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