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最終部:タワー・オブ・バベル
その348 つけ入る隙を探せ
しおりを挟むドゴォン!
「きゃ!?」
「凄い爆発……! ロケットランチャーみたい……」
爆音がレイドさん達の前で炸裂し煙が上がる。近くの柱が崩れ、フレイムストライクとは比べ物にならない威力に私とアイリが驚いていると、さらに意外な状況が始まる。
「くそ、大盾が壊れたか……」
カルエラートさんがケイオスフレアを大盾で受けたようで、見事にゆがんで溶けかかっている大盾を捨てながらぼやいていた。だけど、すでにレイドさん達は動いていた。
この80階、城の構造を模しているのか柱や壁がそれらしい造りになっていて、煙に紛れて柱に隠れることは可能だった。ちなみにセイラは謁見の間だったら玉座がありそうな通路の中央に掲げられている。
「後は任せておけ! ニールセン、セイラを頼むぞ!」
「わ、分かりました!」
<上から仕掛ける。乗れ、カイム>
「承知!」
レイドさんが剣を両手に構えて煙の中から飛び出し、続いてカームさんに、腕がすっかり治ったカイムさんが出てくる。ニールセンさんは煙で見えないが、磔にされたセイラを救出するのだろう。
【二人とは舐められたものですな】
【一人ずつ確実に殺せばよかろう?】
異形の化け物に変化をしたストゥルとホイットが迎撃のため剣を構える。ホイットはレイドさん狙い……ストゥルはカームさんとカイムさんを笑いながら目で追う。ストゥルが上を向いたその瞬間、煙の中から魔法が飛んできた。
「≪マジックアロー≫!」
【む!? 僧侶の娘か! 小賢しい!】
ストゥルがマジックアローを剣で叩き落とす。そこへカイムさんのシュリケンが飛びかい、両肩に刺さる。
「カーム殿!」
<魔法を弾くか。だが、その隙は命取りだぞ!>
【国王!】
カームさんが牙を剥きストゥルに襲いかかるのをホイットが止めようと振り向く。だが、すでにレイドさんも踏み込んでいた。
「余裕があって羨ましいよ! 食らえ!」
【ぐあ!? おのれ!】
「ガウゥ!」
「わおん!」
レイドさんとレジナ達が入れ替わり立ち代わり攻撃を仕掛けていく。あいつらの話だとコアとやらを壊さないと死なないようだけど痛みはあるようね? 見ればストゥルもカームさんに斬り裂かれた胸からは血が出ている。
「首を刎ねれば流石に行動はできまい!」
【蒼希のニンジャが馬鹿の一つ覚えのように! 一人と一匹で何ができ――】
「いんや、二人だぞ。これはアーティファに毒矢を当ててくれた分だ」
【なに!? うお!?】
ガツン!
「うええ!? ヘスペイトさん!?」
「ヘスペ……? うわあ!」
私が叫ぶと、いつの間に乗ったのか、カイムさんの後ろで大型の金槌をストゥルの頭に振り下ろしていた。後ろを振り向き驚くカイムさん。あの人気配ないもんなあ……
<いいから追撃だ!>
「は、はい!」
「このコアを押し当てたらどうなる……!」
ザン! ゴキン!
カイムさんの刀が、カームさんの牙が、ヘスペイトさんの赤い玉がストゥルを攻撃していく。何気にヘスペイトさんの攻撃は冗談のように見えるけどかなりエグイ。
【うっとおしい! そんなもの効かぬわ!】
<チッ……>
「はっ!」
剣を振り、三人を吹き飛ばすストゥル。しかし、ヘスペイトさんは尚も赤い玉を押しあてながらぶつぶつと呟いていた。
「これでもない……なら、やっぱり……」
【き、貴様!? 吹き飛ばんか!】
スカッ!
衝撃波のようなものを飛ばしながら激昂するストゥル。だけど、シルバ達が困惑していたように攻撃は全てすり抜けていった。
【馬鹿な!?】
「……お前達はアンデッドになって死なない、みたいなことを言っていたようだけど、その実『殺す方法』はある。それに引き替えお前達の攻撃は俺には届かない。不死を謳うなら俺のように幽体になるのが一番なんだぞ。コアが壊されなければ不死身だなんてお笑いだな。はっはっは!」
ヘスペイトさんが得意気に笑うと、ストゥルが忌々しい目を向けていた。そして私の横で口をへの字に曲げてすごく不機嫌な顔をした人がいた。
「……」
「あ!? ち、違うわよ、ヘスペイトさんが言っているのはあの二人のことで、お父さんのことじゃないから!」
「……やはりレイドとの交際は許可できんか……」
「えええ!? ちょっとヘスペイトさん! お父さんに謝ってください!」
ドンドンと魔法壁を叩きながら抗議の声をあげると、ヘスペイトさんがこちらを不思議そうに振り返る。
「え? 何がだい?」
全然聞こえてない!?
「都合の悪いことは聞こえない人みたいだな……」
「父さんにちょっと似てるけど、こっちの人は本当に聞こえていなさそうだ」
「それより、あの幽霊さん攻撃が効かないなんて反則ですよ! でも、このまま一気に倒せそう!」
ユウリ達三人が呆れたような感じで言い合っていると、ストゥルがふと真顔になり息を吐く。
【ふう……怒りで我を忘れるところだった。別にお前に攻撃が当たらなければそれでいい。後からゆっくり考えればな。まずは目障りな者達を排除せねばな!】
「ハッ!?」
カキン!
「カルエラートさん!」
前を向いたまま横の柱を剣で斬ると、斜めに柱がずるりと崩れ落ちる。その向こうに、近くまで迫っていたカルエラートさんが腕を裂かれて小さく呻く。剣で咄嗟に弾いたものの完全には受けきれなかったようだ。
【そっちもだな?】
「……まずい! フレーレさん!」
<待て、カイム!>
【と、そう来るだろう? 馬鹿者めが】
柱の向こうにフレーレが居る。それは私達も分かっていて、それを逸らす為のあの会話だったが、気付かれていたようだ。カイムさんがフォローに入るが、むしろそれを狙っていたストゥルがゴキゴキと有り得ない方向へ体を曲げ、カイムさんへ急襲した。
「その態勢から!?」
【遅い】
踏み込み過ぎた、恐らくカイムさんはそう考えたと思う。刀がストゥルを通り越し、逆にカイムさんのお腹に剣が刺さっていた。
「くぅ……!?」
「カイムさん! 後ろからなら!」
フレーレが飛び出し、メイスを頭めがけて振り下ろす! 光っているので聖魔光のおまけつき……死なないまでも時間稼ぎはできる!
と、思っていたんだけど――
ガシッ!
「ええ!?」
なんと……背中を見せていたストゥルにメイスを止められてしまったのだ。しかも――
<背中から腕が生えてきた!?>
【醜いので使いたくは無かったがな。本気にさせたことを後悔するがいい!】
ブン!
「きゃあ!」
「危ない!」
【チッ、ヘスペイトめが……!】
フレーレが全力で柱に叩きつけられようとした瞬間、ヘスペイトさんが上手くキャッチしてくれていた。あ、危なかった……フレーレに何かあったら回復もできないし、何より悲しい。
「……おい、ヘスペイトとやら。早いところ謎を解明しろ。お前の息子も危ないぞ!」
「おお……お父さんの風当たりが強い……でも、レイドさんをちゃんと心配してくれているのはやっぱりお父さんだ」
お父さんがヘスペイトさんに発破をかける。確かにレイドさんも死なないホイットに苦戦を強いられていて、ダメージよりも体力的に厳しい様子だ。
「……ふむ。誰かは分からないが、言ってくれるじゃないか。少し分かりかけてきた、もう少しだ……」
【だが、その前にこいつらは全滅だ……!】
四本の腕に剣を持ち、ストゥルが吠えた。この戦い、勝敗はヘスペイトさんにかかっている! というかもっと頑張って! ボス部屋に入れない私はやきもきしながら壁を叩いていた。
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