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最終部:タワー・オブ・バベル

その347 因縁の戦い

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 「ル、ルーナ!? どうしてここへ!?」

 遠くでレイドさんが私を見てびっくりした顔で叫ぶ。他に倒れている人を見ると、今回はカイムさんとフレーレ、カルエラートさん達ヴィオーラ国のメンバーだったのね。さらに奥ではセイラが磔にされているのが見える。

 「セイラが攫われたって言うから慌ててこっちにきたの!」

 「ええ!? どうやって――」

 「レイドさん危ない!」

 レイドさんが訝しむ声をあげるが、悠長に話している暇はないようで、レジナを剥がした……剥がした……誰だっけあいつ……?

 ま、まあいいや、とりあえず敵がレイドさんへ斬りかかって行った! 態勢が整っていないレイドさんがピンチだ!

 「ガルゥ!」

 【狼ごときが生意気な! ごちゃごちゃうるさい、やはり男から先に始末してやる!】

 「そうは行くか!」

 ガキィン!

 身を捻って剣を受けたけど、力が入らないようでまた地面に転がされてしまっていた。そこへレイドさんの首を取りに誰だか分からないやつが剣を振るう。

 「くっ……まずい……!」

 「させない!」

 「フフ、ニールセンよ行かせると思うか?」

 「どけ……ストゥル! やめろホイット!」

 ガキィン!

 フォローに入ろうとしたニールセンさんがストゥル……確か国王だっけに阻まれ動けない。フレーレ達もまだ回復できておらず、ホイット(名前が分かった!)の攻撃からレイドさんを助けに行くのは難しい。そこへ狼二匹が足を止める。

 「ガゥゥゥ!」
 「わぉぉぉん!」

 【チッ! またお前達か! ならば先にあの世へ行け!】

 「わう!?」

 「シルバ避けて!」

 足に噛みついたシルバの背中に凶刃が迫る! 間に合わない――そう思ったその時だった。

 ドゴン……!

 【うぷぁ!?】

 「何と!? うおおおお!」
 
 ホイットの体が大きく吹き飛び、ニールセンさんと斬り合っていたストゥルを巻き込み壁に激突する。二人を弾き飛ばしたのは――

 「久しぶりだな、国王。それにホイットだな?」

 【き、貴様は……】

 「ヘスペイト……!」

 ダメージは無いようだが、ヘスペイトさんの顔を見て驚愕に染まる二人。当のヘスペイトさんは大きな金槌を持って二人を睨みつける。

 「覚えていたか。そうだろうな、アーティファを手に入れようと俺達を散々な目に合わせてくれたんだからな……で、今は子供達を酷い目に合わせてくれているとは、因果なもんだ」

 「……お前がさっさとアーティファを差し出せばよかったのだ。であればお前達の両親が死ぬことも無かったろうに」

 「お前みたいなやつにはそれこそ死んでもやれないさ。立てるかレイド?」

 ヘスペイトさんがレイドさんを立たせると、レイドさんはきょとんとした顔で声を出す。

 「父さん……なのか?」

 「ああ、そうだ。雪山の小屋で見たけど、改めて見るとでかくなったなぁ」

 ヘスペイトさんが笑いながらレイドさんの肩を叩くと、レイドさんは一瞬ポカーンとなったが、すぐに真顔に戻りヘスペイトさんに拳を振るった。

 「でかくなったじゃない! 俺達を置いてどっかへいきやがって!」

 スカッ!

 「うわ!? え!?」

 べしゃっと、レイドさんは空振りしてまた地面に転がってしまう。そういえば幽体なのは知らないんだっけ。

 「レイドさん! ヘスペイトさんは幽霊なの! セイラの中に入っているお母さん……アーティファさんと通じているみたいで、それでピンチだと分かったの」

 「そ、そういうことか……? いや、よくわからないけど……」

 ですよね……言ってる私も半信半疑だし……

 「とりあえず態勢を立て直そう」

 「あ、ああ……フレーレちゃん、大丈夫かい?」

 「は、はい……ちょっとびっくりしましたけど……あ! カイムさんを治療しないと! ≪リザレクション≫」

 パァ……

 フレーレが慌てて治療に走り、カイムさんの左腕とカームさんの傷が治って行く。カルエラートさんも立ち上がり、レイドさんの近くへと戻った。

 「はあ……はあ……フレーレさん、ありがとうございます……」

 <すまない>

 「まさか闇の剣でも死なないとはな」

 全員が磔にされたセイラを背にして、ストゥルとホイットの二人と対峙する。というか幽体ヘスペイトさんとレジナ、シルバが加わり戦力としては完全に圧倒出来ていると思う。しかし、二人の余裕はまだ消えていない。

 「回復は終わったか? ヘスペイトと狼が入ってくることは予想外だが、いくら増えようと我等には勝てんぞ?」

 【その通りですな。まとめて死ね≪ケイオス・フレア≫!】

 「上級魔法!? さっきのフレイムストライクといい、恩恵は持っていなかったはずだ!」

 ニールセンさんが叫ぶと頭上に巨大な火の玉を掲げたまま、ホイットが言う。

 【んー、そうだな。私は確かに持っていなかった……が、騎士の中には恩恵を持った者もいただろう?】

 「まさか……恩恵を吸収したのか? キメラとして融合する際に」

 「ま、そういうことだ。結構な騎士が一緒にいたからいい力になった。次はお前達もそうなるのだ」

 ストゥルが笑い、カイムさんがいつでも動けるように身構えていると、ヘスペイトさんがカバンから赤い玉を取り出す。

 「……ではこれを見てもその余裕が出せるかな?」

 【何を馬鹿な……ハッ!?】

 「馬鹿、動揺するな!」

 赤い玉を見たホイットが焦りながら声を出し、それをストゥルが諫めるがもう遅い。『それ』がなんであるかを自ら白状したに等しい。

 「それは何だ、父さん……?」

 「恐らくこいつらの命の欠片――だが、これを壊したところでまだ何にもならん。さっきルーナちゃんに隠れて10回くらい壊したけど、すぐに再生した」

 「私に憑いてそんなことしてたんですか……」

 どおりで自分で歩かなくなったわけだ。その言葉を聞いてストゥルが肩を震わせて口を開いた。

 「クク……そのとおり……それだけでは我等は死なん……その謎を解かれる前に消し去ってくれる……! ぬおおおお……」

 【国王も本気になられたか。では、再開と行こうか……!】

 ゴゥ!

 ホイットのケイオスフレアが戦いの再開の合図となった!
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