パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その345 実力差

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 <バベルの塔:78階>


 「そ、そろそろ……80階になるんだけど……追いつかないわね……」

 「わおん!」

 「きゅんきゅん!」

 「ガウ!」

 「きゅふん!」

 補助魔法をかけて一気に駆け抜けてきたけど、上級補助の効果は一時間。とっくの昔に切れており、中級魔法で移動しているためそろそろ体力的にもきつくなってきたのだ。しかし狼達はどこ吹く風で私の前を平然と走っていた。79階で休憩をしていてくれると合流できるんだけど……

 「セイラが攫われたから、休憩なしでもう80階に行ってるのかもしれないね、急ぐんだルーナちゃん」

 「あの、私がずっと走ってるんですけど……いや、もういいです……」

 わざとかしらと言いたくなるくらい、ふよふよしているヘスペイトさんが段々恨めしくなってくる。フレーレに頼んで少し苦しめたい……ま、そんなことはしないけど。

 「ん? ルーナちゃん、ストップだ!」

 「え!? 成仏させたりしませんよ!?」
 
 そんな負の感情を露わにしていると、突然ヘスペイトさんが叫びだし、私はびっくりして急ブレーキをかける。
 
 「わふーん!?」

 なにごとかと振り向いたシルバがきゅっと立ちどまれなかった私に撥ねられ、宙を舞った。

 「ご、ごめんねシルバ! ……もう、急に大声出すからびっくりするじゃないですか」

 「ごめんごめん、ちょっとアレをね……」

 ヘスペイトさんが浮遊から地上へ降り、自分の足で「アレ」とやらを拾いに行き、私のとことへ戻ってくる。また赤い玉が落ちていたみたい。

 「何ですかね、これ」

 「……あまりいいものじゃない……気がする」

 「気がする!? 随分不特定な……」

 「まあまあ。さ、レイド達を追いかけよう」

 「……?」

 何となく急かす様に言ってくるヘスペイトさんに違和感を覚えつつも、今は前に進むしかないと、私達は78階を突き進んだ――


 ◆ ◇ ◆


 「たああ!」

 【ふん、そんなものが効くか!】

 「ぐぐ……片手で受け止めるとは……レイド!」

 「これならどうだ!」

 前衛のカルエラートが闇の剣で斬りかかるも、それを素手で受け止めるホイット。そこへレイドが剣を掴んでいる手を狙って振り下ろす。

 【何か強い力の剣のようだが、恐れるに足りんな!】

 「俺の剣も片手で受け止めるのか!?」

 レイドとカルエラートそれぞれの剣を両手で受け止めてニヤリと笑う。そこへニールセンが正面から突きかかる!

 「これは防げまい!」

 【くっ……両手がふさがっていてはやられる……ならば!】

 「何!?」

 なんと、ホイットは両足でニールセンの剣を白刃取りした。かなり格好の悪い態勢だが、すぐに両脇の二人を吹き飛ばして着地し、ニールセンを蹴り飛ばした。

 「ぐあ!?」

 【フッフッフ、動きが止まって見えるな。どれ、お前達が武器を持って私が素手なのは不公平だな】

 チャキ……

 腰の剣を抜いて、床に転がっているレイドを見下ろした後、逆手に持ち替えて首を狙い振り下ろす。

 「レイドさん! ≪マジックアロー≫!」

 ヒュヒュン!

 【無駄だ】

 「チッ! これならどうだ!」

 ザシュ!

 寝そべったまま紙一重で剣を回避し、カウンター気味に目を突き刺すレイド。皮膚は硬いが、目までは硬くなるまいと考えての一撃だった。

 【狙いはいいぞ? だが、そう見え見えではな】

 しかしホイットも寸前でレイドの剣をよけた。頬に一筋の赤い血が流れ出すが、紙一重同士であれば立っている方が有利。ホイットは床に突きたてた剣を横に振り、レイドの首を斬り裂いた。

 ブシュ……

 「くっ……!?」

 「お兄ちゃん!」

 【じわじわとなぶり殺してやろう……聖女をさらった男の息子……ここで死ね!】

 返す刀でレイドの頭を狙うホイット。そこで外から様子を見ていたヴァイゼが呟いた。

 「……なぶり殺すのかすぐ殺したいのかどっちだ」

 「今それどころじゃないですよ!」

 アイリが突っ込みを入れていると、すぐに事態が変わっていた。カイムが刀でホイットの剣を防いだのだ。

 「レイドさん、フレーレさんの元へ!」

 「す、すまん!」

 「すごい血!? ≪リザレクション≫!」

 ゴロゴロと首を抑えながら転がり、フレーレと合流したレイドは傷を治療することに成功し、再び立ち上がる。

 【ははは、いくらでも回復するがいい。魔力は無限ではない。それが尽きた時がお前達の最期だ】

 「その前にお前を倒すさ! 『闇の剣』! 私の力を使え!」

 「カルエラート何を!?」

 カルエラートが叫ぶと、真っ黒な魔力を吹き出させながら闇の剣の刀身が伸びた! そのまま、ホイットへ突き進んでいく!

 「あああああああ!!」


 

 カルエラートがホイットに斬りかかる一方で、レイド達の戦っている場所へ国王を動かすまいと対峙するカーム。睨みあいが続く中、ストゥルが口を開く。

 「苦戦しているなホイット! 私も手伝おうか?」

 わざとらしく言うストゥルに、カームが言う。

 <自分の心配をした方がいいんじゃないか?>

 「フッフ……お前も女神の守護獣とやらのようだが、私の足元にも及ばんぞ?」

 <では本気とやらを見せてみるがいい。ねじ伏せてやるぞ>

 「本気が必要かな?」

 スッ

 <!?>

 ブン!

 「今のを避けたか、いい勘をしている」

 姿が消えた、と思った瞬間カームの目の前にストゥルが現れ剣を振ってきていた。とっさに避けたが、瞼の上を斬られツゥ……と血が流れる。

 <見えなかった――>

 「どこを見ているのだ」

 <ぐぁ!? だが、まだだ!>

 態勢を立て直している間に、背後に回られざっくりと背中をやられる。だが、そこはカーム。タダでやられはしなかった。

 「む」

 尻尾で巻きつけ離脱できなくし、その場で地面に叩きつける。そして、ストゥルに顔を向けてソニックウェーブを発射した!

 「ぬう、脳が揺れる……!?」

 <はあ! それ!>

 ガッ! グシャ!

 カームの右手が顔面を殴り、ストゥルの顔が大きくゆがむ。鼻血を出しながらそれでもニヤリと笑うストゥルの心臓へカームの爪が突き刺さった!

 ズム……

 <獲った!>

 「ク、クフフ、ハハハハ!」

 <死なない!? どうしてだ>

 「いい顔だ、それが見られれば私は満足だ。聞けばお前は、100年前に私の国で騎士団長をやっていたそうだな? ……我が先祖がお前に失脚させられてから、ここまで復興させるのにどれだけ苦労したか……報いを受けよ!」



 ブシュ……!


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