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最終部:タワー・オブ・バベル
その326 国王、グラオベン
しおりを挟む「……大丈夫、こっちの通路にはいません」
「よし、あの角まで走るぞ」
タタタ……と、レイド一行は結界の部屋から出て城の廊下を駆け抜ける。
グラオベンがブレスを吐きながら移動をしているようで、壁や床が凍りついていた。それならと、あえて凍りついた場所を移動していた。これなら後を追う形になり、発見される確率は少ないだろうとの予測を立てたからだ。
「大丈夫ですかね……? これが罠の可能性もありますよ?」
氷漬けの廊下を走りながらフレーレが不安そうに言うと、隣で走っていたユウリが横で口を開く。
「その時はきっちり倒すしかないね。僕達は階段を見つけるのが先決だけど、出会ったらどうしようもない。結界を張れば別だろうけど」
チラリと女神姉妹を見るユウリに気付いてエクソリアが答えた。
『……ボク達は君の父親と戦うために力を残しておかないといけないんだ。できるだけ君達で対処してほしいね』
「余力を残して、それで全滅したら意味が無いと思うけどね」
ふんと鼻を鳴らすユウリにフレーレがたしなめる。
「あまりいじめたらダメですよユウリさん。エクソリアさん達も大変なんですから」
『い、いじめられてないもん!?』
「静かに! 止まってください! ……ここで氷が途切れている?」
フレーレ達の会話をカイムが制し、みんなに立ちどまるよう言う。カイムの言うとおり、床の凍った部分がきれいに途切れていた。
「……おかしいな、すでにここを通ったあとなら氷漬けになっていてもおかしくないと思うが……」
ヴァイゼが顎に手を当て呟く。
「戻って来たなら鉢合わせをしますし、ブレスを吐くのを止めたのでは?」
「そうかもしれないな。結構走ったし、一旦マップを見てみよう」
レイドがニールセンの言葉に賛同しながら魔法板を取り出す。マップはかなり埋まっているが、部屋にははいっていないのであちこちが空白になっている。
「うーん、外周は殆ど歩いているわね。もしかして部屋の中にあったりするんじゃない? ほら、下の階も変な感じで隠されていたし」
「セイラの言うことは分かるな。このマップだと、後はフロアの真ん中付近が少し開いているのでその辺りを探索した方がいいか。このまま追う形を維持しながら、脇道の部屋を開け――」
【その必要はないぞ?】
レイドがそう言った瞬間、壁から声が聞こえてきた。即座に反応したのはアルモニアだった。
『危ない! 壁から離れて!』
アルモニアが声をかけ、近くに居たアイリとノゾムを壁際に引っ張ると、扉が破られ、氷で出来た剣がさっきまでアイリとノゾムが立っていたところを通過していた。
「あぶな!? あのまま立ってたら私の首が飛んでたわよ!? ありがとう女神様!」
<喜ぶのは早い!>
<にゃ!>
【チィ……!】
追撃で倒れた二人とアルモニアへブレスで追撃しようとしていたグラオベンがカームの飛び掛かりと、バステトのレイピアで阻まれる。顔を蹴飛ばし、間合いを離すカームと入れ違いにレイドとヴァイゼが斬りかかる。
【ぬ、猫にこんな力が……!】
<猫じゃないにゃ!? 虎だにゃ! 氷の剣は私が抑えるからやっちまうにゃ!>
「助かる! ディストラクションならどうだ!」
ザシュ!
【むう!? ドラゴンスレイヤーか!】
「少し違うが、似たようなもんだ。奇襲をかけたつもりのようだが、残念だったな。出会ったなら……ここで倒させてもらう」
剣を構えるレイドに、ヴァイゼが前へ出てグラオベンに話しかける。
「……待てレイド。一つ聞きたい。あなたはエクセレティコの国王で間違いないか? シルキーの話だと、あえて亡くなったと聞いている」
すると、ピクリと眉を動かしバステトを弾き飛ばしてから口を開く。
<あいた!? 何するにゃ!>
【……そういえば、そこの娘はあの時戦った記憶があるな。その通り、私は国王だった。だが、それがどうした? お前達を倒すことが神裂の命令だ、もはやこの体はそれを遂行するだけの存在。それ以上でもそれ以下でもない】
「記憶はあるんですね。私達は神裂を倒しに行っているんです。この世界を救うために。あなたもこの世界の王だった一人なら、ここを通してくれませんか?」
ニールセンがグラオベンに言うと、目を細め、ニールセンに答える。
【お前は……ヴィオーラの聖騎士か。なるほど、見ればビューリックの騎士もいるようだ、これが狙いか神裂】
「?」
ニールセンが首を傾げていると、今度はエクソリアが質問をする。
『もしここを通してくれるなら、このまま現世で神裂を倒した後に復活させてあげるけどどうだい? ボクは女神エクソリアで、こっちは姉のアルモニアだ。今は無理だけど、神界へ帰れば――』
【女神……なるほど、確かにお前達ならできるかもしれん。が、恐らく無理だろう】
『どういうこと?』
アルモニアが不思議そうに聞くと、フッと笑い、グラオベンが答えた。
【私がそれを望まないからだ。ここを通りたければ……私を倒すのだな】
「待ってください! せっかく蘇ったのですから、王子に会ってあげてください」
【……娘よ、私はあの時死んだ。さあ、話はここまでだ! 階段はこの通路の先にある部屋だ。まあ、通す気はないがな!】
「きゃあ!?」
「シルキーさん!」
フレーレが庇うようにシルキーを引っ張り、氷の剣を回避する。
「……やるしかないか!?」
レイドが剣を構えるとノゾムとカイムがそれぞれ移動を始めた。
「大丈夫、準備はできている」
「ノゾム殿、引いてください!」
「おう!」
【何!? いつの間に!?】
ノゾムが腕を引くと、ワイヤーがグラオベンの足に絡みついた!
「首はもらいますよ!」
【させん! うお!?】
カイムもワイヤーを仕掛けており、氷の剣で攻撃されそうになったところで、ノゾムが持つ手を操作し、氷の剣はカイムを斬ることが出来なかった。
「もらう!」
首を刀に当てるが、致命傷には至らなかった。
【逃がすか!】
「ぐあ!?」
「カイムさん!」
すれ違い様に蹴られ、壁に叩きつけられるカイム。フレーレが回復に向かい、レイドとニールセンが隙のできたグラオベンへ攻撃を仕掛ける。
「国王とて、邪魔をするなら悪いが倒させてもらう!」
【先程まで苦戦していた者が言うことか!】
ゴォォォ!
ブレスを吐き、足を止めようとするグラオベン。レイドは我慢しながら前へと進む!
【馬鹿な!? そんなことをしたらあっという間に……】
「その前に倒せば問題ない! 『ディスタントゼロ』!」
【この体は再生する、生半可な攻撃で倒せると思うな!】
レイドのディスタントゼロと、ブレスがぶつかり、さらに氷の剣で追撃をかける。グラオベンの体は皮膚が剥がれ落ち人間の肉体が少しずつ出てきていた。
「ぐ……!」
「レイド殿!」
レイドの肩に氷の剣が食い込み、呻く。ニールセンが手首を切り落とすと、グラオベンが後ずさりをした。
【うぬ……だが、これくらい……】
シュウウゥゥ……少しずつ手や皮膚が再生していく。だが、そのスピードはかなり遅かった、
【……何故だ!? もっと速く再生しろ!】
「ディストラクションはディクラインさんの持っていたリヴァイブと対を為す破壊の剣だ、それで再生が遅れている! トドメだ……!」
【ぐぬ……! フッ……これなら……】
ドス……!
グラオベンは残った左手でレイドの剣を防ごうとしたが、吸い込まれるように、手を貫通しグラオベンの心臓を貫いた……!
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