パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その320 森の中

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 <拠点:近くの森>



 「あなた達だけと行動するのも久しぶりね」

 「がう」

 「わんわん♪」

 「きゅんきゅん!」「きゅふん!」

 私は三匹を連れて、近くの森へとやってきていた。憂さ晴ら……もとい、訓練のためである。一つ気になっていたのはトリスメギストスと戦う前に、自分の偽物と戦った際、チェイシャの力を使えたこと。あの時は新しい技だったけど――

 「もしかしてこの女神装備ってそういうものなのかしら……? <魔弾>!」

 ゴゥ!

 チェイシャの得意技だった魔弾をイメージして繰り出すと、飛び付いてこようとしたシルバの頭を掠めて魔弾が飛んでいく。シルバの毛が少し焦げた。

 「くぅん……」

 「ああ!? ごめんごめん! 急に飛んでくるから……≪ヒール≫」

 ぽわっとフレーレ達とは比べ物にならないくらい薄っすい光がシルバの頭を照らすと、毛は戻らなかったが焦げた皮膚は元に戻った。

 「うん、まあまあ! ……ということにしておきましょう……」

 「わん」

 正直しょぼいヒールだと自分でも思う。けど、これで確信した。この女神装備、みんなの力を使えるんだ! そうと決まれば色々試すしかない。そう思っていると、後ろから私に声をかけてくるのが聞こえた。

 「おおーい、ルーナ!」

 「ルーナさん!」

 「あれ、ウェンディとイリスじゃない。どうしたの?」

 「『どうしたの?』ではないであります! エリック様に頼まれてルーナと行動を共にするように言い渡されていたのであります!」

 「と、思ったらチェーリカちゃんがルーナさんが外に出て行ったって言うから焦ったよ……」

 相変わらず声のかわいいイリスが肩を落としてがっくりしていた。そう言われてもエリックは何も言ってなかったから仕方ないと思うんだけど……

 「で、狼達と何をしていたでありますか?」

 「ちょっと訓練をね。ここなら拠点も近いし、試したいこともあったから丁度いいかと思って」

 「何か手伝えることある?」

 イリスの言葉に私は少し考える。レジナに攻撃を仕掛けてもらって模擬戦にしようと思ったけど、相手が人間の方が神裂相手にはいいわよね……?

 「それじゃ、模擬戦の相手をしてもらおうかしら! この装備のテストをしたいの!」

 「ほむ。承知したであります! そういうことなら私が! ビューリックでは力負けしましたが、今ならひけをとらないはずであります!」

 あー、あの時の力比べ……まだ覚えてたんだ……でもそういうことなら、気兼ねなくやらせてもらおうかな!



 ◆ ◇ ◆


 <バベルの塔:71階>

 
 「しつこいな!」

 「レイド殿、後ろです!」

 マンティスブリンガーを斬り伏せているレイドの後ろに迫るパイロンスネークに気付いたカイムが声をあげる。返す剣で、パイロンスネークの首を刎ねた。

 ガキン! ザシュ!

 「助かる! 後ろは大丈夫か!」

 「……問題ない、俺がカバーしている」

 近隣の森に酷似した森からあふれ出てくる魔物を倒しつつ先を目指すが、数が多すぎて進むことが出来ていなかった。

 「あ、ああ……デ、デッドリーベア……!?」

 ブオン!

 「危ない! なにやってんだフレーレ! こいつ!」

 パンパン!

 ガキン!

 グォォォォ!

 「固い!」

 デッドリーベアの剛腕からフレーレを助けつつ、銃で応戦するユウリ。フレーレはデッドリーベアの前で顔を青くするばかりで動けていなかった。それに気づいたレイドが叫ぶ。

 「ユウリ! フレーレちゃんは以前デッドリーベアに殺されかけたことがある! トラウマになっているのかもしれん、近づけさせるな!」

 「チッ、そういうことか。僕が片づけてやる。アイリ、ライフルで撃ち抜けるかい!」

 「やってみるわ」

 ターン!

 グォ!?

 アイリのライフル弾がベアの右足を撃ち抜くとぐらりと体が傾く。それでも四つん這いになってユウリに噛みつこうとするベア。

 「頭が下がれば……!」

 ユウリはナイフを横なぎに斬り裂き、ベアの両目を潰す。

 グォ……グォォォ!?

 「ぐえ!? ノゾム!」

 暴れ出したベアの腕にぶつかり吹き飛ばされるユウリ。その直後、ノゾムがベアの背後に姿を現す。

 「……任せろ……!」

 鉱質のワイヤーをベアの首に巻きつけ、拘束。そして――

 ターン! ビシッ……!

 ブシャァァ……

 グォォォ……

 アイリの放った弾がベアの喉を貫いて巨体を地に伏せさせることに成功した。

 「あ、ありがとうございます……」

 「苦手なものは誰にもあるし、無理をしなくてもいいよ……ってまだ来るのか……!?」

 デッドリーベアを倒したのも束の間、さらに魔物が押し寄せてくる。

 「やれやれ、いきなりハードすぎないかいー?」

 エリックもクレイジーフォックスを倒しながらため息を吐く。すると、エクソリアがレイドに声をかけた。

 『これ以上はこっちが不利だ。奥に逃げ込むぞ』

 「それはいいが、どうやって!」

 レイドが何匹めか分からない魔物を打ち倒しながら聞き返すと、エクソリアはアイリの元へ向かう。

 『アイリ、スタングレネードは持っているかい?』

 「ええ! 使いますか?」

 『よし。なら、群れの中央に投げて一気に駆け抜けよう。みんな、離脱の準備を!』

 各々が同意すると、アイリはスタングレネードを向かってくる群れへと投げつける。その軌道に魔物達が気を取られた瞬間、一行は走り始める!

 カッ!

 キィィィィン……!

 グギャ!?

 アォアォォォォン!?

 グルゥゥゥク!!

 「……いける! ニールセン、目の前のやつらだけ片づけるぞ!」

 「承知!」

 邪魔な目の前の魔物を片づけながら、森の奥へと走っていく。スタングレネードに巻き込まれなかった魔物が尚も襲いかかってくる。

 「か、数が多すぎます!? ま、またデッドリーベア……!? 三体も……」

 「マンティスブリンガーも厄介ね……凍らせるわ≪ブリザーストーム≫!」

 絶望に染まるフレーレの横で、セイラの魔法が炸裂し、カマキリ型の魔物は凍りつく。

 「砕けろ!」
 
 チャリィィンとカイムのシュリケンで粉々になると、道が開ける。深淵の森に似た場所まであと一息、その時レイドが技を放った!

 「どけぇ! ディスタントゼロォォォ!!」

 ゴゥ!

 衝撃波が前方へと飛び、魔物達を一気に吹き飛ばす。そして、深淵の森へと足を踏み入れることに成功した。

 「あ!」

 フレーレが何とかメイスでデッドリーベアを追い払っていると、森がざわざわと音を立て、まるで入り口を閉じるように、そして追ってくる魔物を排除するように木々が生い茂っていった。

 「はあ……はあ……に、逃げきれたか?」

 『ふう……どうやらそのようだけど……ここからも油断はできないね……』

 「……しかし最初のフロアから苛烈だな……向こうも本気ということか」

 みなが肩で息をする中、疲れないヴァイゼが剣を握ったまま森の奥を見ながら呟く。そこにエリックが口を開いた。

 「こう次々と出てこられたら進むのも難しいねー。早いところ階段を見つけないとー」

 「そうだな。ここはまだ安全のようだし、少し息を整えたらすぐ行こう。また魔物に襲われないとも限らない。フレーレちゃん、大丈夫かい?」

 「え、ええ……すいません……どうしてもデッドリーベアを見ると体が動かなくて……」

 「大丈夫です。このカイムがお守りします」

 「僕も居るから、こっちは気にしないで進もうじゃないか」

 珍しくカイムとユウリがいがみ合いをせずそんなことを言う。

 「そ、そうか? ならフレーレちゃんは頼むよ」

 程なくして一行は再び歩きはじめ、深淵の森に似た場所を歩く。階段は……まだ見つからない。
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