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最終部:タワー・オブ・バベル
その313 贋作には無いもの
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「いよいよですね」
「ええ、この後アイリ達の偽物が来る可能性もあるし、手早く片づけたいわね」
フレーレがメイスを構え、セイラも杖を握りしめて一言呟く。
「どうしてそんなにやる気なのよ……」
それはともかく、今までの傾向から『抑圧された心』の具現化だということは分かっている。口が悪いのか、性格が悪いのか……私が色々考えていると、ゆっくりと剣を持って偽物が歩いてくる。
よく見ればあくびをしながらだらんとした感じで、いかにもやる気が感じられない。その時、レイドさん(偽)が口を開く。
【あー、めんどくせぇ……何で俺がこんなことしなくちゃならないんだよ……】
【ダメですよレイド。トリスメギストス様の命令を遂行せねばなりません】
【いいじゃないか、あんなジジイのことなんてよ……あーあ! ルーナとイチャイチャしたいなぁ!】
【終わったらいくらでもイチャイチャさせてあげます。さ、しゃんとして】
【へいへい……】
「くぅーん……」
「……」
「……」
いくつかのやりとりを見た私とレイドさんは固まってしまい、レジナが困った顔をしていた。わ、私はともかく、レイドさんが……と思っていると、フレーレが真顔で呟き始めた。
「あれは……やさぐレイドさんですね……本当なら恋人同士、色々したいはずなのに、この戦いのせいでそれらしいことは何も無いですからそれが抑圧されたんだと思います」
「い、いや、そんなことは……というか同じ顔をしたヤツがこんなのとは……」
がっくりと肩を落とすレイドさんに、偽物が怒声を浴びせてくる。
【こんなのとは何だ! てめえがさっさと神裂を倒さねぇからルーナと遊べないんだろうが! 仲間も何人か消えたしな! ええ?】
「う……!? それについては耳が痛い……」
【レイド、それは私達が達成すればいいことです。さあ、本物を倒して、成り代わりましょう!】
私の偽物が愛の剣に似た武器を構えて凛と叫ぶ。な、何かかっこいいんだけど……?
「ルーナの偽物は冷静ですね……もしかして、あっちがオリジナルーナなんじゃ……!」
「んなわけないでしょ! いつ変わったってのよ!」
「えへへ、つい……」
フレーレが冗談ですと言った後、今度はセイラが喋り出す。
「一応念のため……あ! あんなところに金貨袋が!」
「え!? ど、どこに!」
【そんなものがここにある訳がないでしょう?】
きょろきょろと金貨袋を探す私とはうらはらに、偽物は本当に冷静だった。すると、フレーレとセイラが私の肩に手を置いて言う。
「こっちが本物ね」
「……」
「わんわん♪」
「きゅんきゅん♪」
ぐうの音も出なかった……
【茶番は終わりですか? では行きますよレイド!】
【へーい】
「相手は二人だ、一気に叩くぞ!」
ようやく間合いに入ったと、一気に踏み込んできた偽物二人! だらけているとはいえ、流石はレイドさんの偽物、動きは素早い!
<頑張るっぴょん!>
リリーと、女神姉妹、お父さんは後退して様子見だ。ボス部屋でこの人数が入れたのは初めてだけど、トリスメギストス本人が出てきても余裕だと思う。
【そーれ! ほいっと『剛剣乱舞』】
「俺の技を……! こいつ!」
「動きを止めろレイド、俺がいく!」
レイドさんとパパでレイドさん(偽)を叩くため攻撃を仕掛ける。偽物とはほぼ互角なので、誰か一人居れば難なく倒せそうな感じで、のらりくらりと動きながらも、ダメージは取れていた。
「≪マジックアロー≫」
【いてぇ!? 三対一ってのは卑怯じゃないかねぇ『ディスタント・ゼロ』!】
「させるか! 『ディスタントゼロ』!」
ドォォォン!
お互いの大技が打ち消し合い、轟音が響き渡る。ママの魔法も効くし、回復も出来るから問題なさそうだ。
で、こっちはというと――
【はああ!】
「やああ!」
キンキン! カン! ガキン!
「剣筋が速いわね!」
【でもこれについてこれるなんて、流石はオリジナルーナね】
「うるさいわね!」
ブオン!
【何事も柔軟にこなさないと疲れるわよ? そこ!】
ガキン!
喋りながらも、フレーレの攻撃をしっかり受け止める私の偽物。そこへセイラの魔法が襲いかかる!
「≪ブリザーストーム≫!」
【何の! 『マジックブレイク』!】
「やっぱり私の技を使えるのね。そんな使い方をするなんて」
マジックブレイクで魔法を切り払い、ブリザーストームが霧散する。この子、抑圧されているんじゃなくて、逆に解放しているような……
【あたりまえでしょう? でも私には無いものをあなたは持っている。私を倒したければそれを使うことね!】
「くっ……!」
「メイスじゃ追いつけません!?」
さらに速くなる攻撃に防戦一方になってしまう。フレーレとセイラも攻撃の手を緩めずに動いてくれているので、ダメージは向こうの方が受けている。けど、ここぞと言うときの一撃はきちんと躱してくるのでトドメには至らなかった。
「つ、強いですね……」
「はあ、はあ……偽物になくて私にだけあるもの……?」
【そう。この先の戦いでもきっと必要になるわ。でも、気付かなくてもいいの、私が引き継いであげるから……!】
「まだよ!」
ツルッ!
「あ!?」
「ルーナ!?」
迎撃しようと力んだ瞬間、足を滑らせて転んでしまう。やられる! そう思ったけど、私には小型の盾があることを思い出す。
ガキン!
【チィ!】
「あなたに無いもの……女神の装備ね」
普段から身に着けているから忘れていたけど、これはアネモネさんの盾だ。腕輪はチェイシャで、指輪はファウダー……
「愛の剣はリリーだったっけ? みんな消えてしまったけど、装備は残っている……」
<わ、わたしは消えてないっぴょんよ!?>
<俺もだぞ>
「あ、ごめん! と、とりあえず、そういうことよね!」
【そうよ。でも、装備しているだけ。私ならうまく使えるわ】
ガキン!
「でも、みんなと一緒に旅をしてきたのはあなたじゃない。それに神裂を倒すのを託されたのも私。だから、負ける訳にはいかないのよ!」
その時、腕輪が輝きはじめ頭の中に声が響く!
<そのとおりじゃ! わらわ達はいつもお前と共にある! さあ、使うのじゃ! 時に必要な”強欲”の力を>
「チェイシャ!? この力……!」
【させない……!】
「ルーナ、危ないです!」
一瞬聞こえた声に気を取られた隙に、斬りかかってくる偽物。
だけど――
「終わりよ。『グリードブレイク』!」
【手から光が……!?】
チェイシャの得意技だった魔弾。その最上位ともいえる攻撃が私の左手から放たれる! 威力はもちろん、他に相手の欲を失わさせる効果がある。チェイシャの声が響いた時、頭に浮かんできた技だった。
【う、ま、まさかこんなことで……申し訳ありませんトリスメギストス様……!】
ドドド……
私の放った魔弾が偽物をふき飛ばし、着ていた隻眼ベアーマーをもずたずたに引き裂き、私の偽物は倒れた。
「ふう……」
「やりましたねルーナ!」
「ありがとうフレーレ。残るは……」
レイドさん(偽)だが、あちらも決着がついたようだった。
【ルーナぁ!? くそ、多勢に無勢か……!? クソジジイめ、どうしてアイリとノゾムのコピーは出さなかったんだよぉ!】
ザン!
「悪いな、俺。こんな情けない俺でも、ルーナが居てくれるから成り代わらせるわけにはいかないんだ」
【へっ……かっこつけすぎなんだ、よ……】
ドサッ……
「終わったか。こいつの言うとおり、人数がいるから余裕だったなー」
パパが気絶したレイドさん(偽)にハイポーションをかけながら言う。そこにノゾムが声をかけていた。
「……お疲れ様でした。しかし俺と愛理の偽物は出てきませんでしたね。カイムさんと周囲を警戒していたんですが」
『こいつらで終わりとも思えないから、警戒は正解だよ。トリスメギストス! レイドとルーナの偽物は倒したよ! 次はお前か? それとも他の偽物を総動員でもしてくるか?』
エクソリアさんが天井に向かって叫ぶと、トリスメギストスが語りかけてきた。
「なるほど、完全にコピー出来ている訳ではないようだのう。今ここで成長した分はカウントされんから、今日深い結果じゃ」
「出てきなさいよ。ボス部屋に全員入れたことを後悔させてやるんだから」
ママも便乗して言うと、トリスメギストスは愉快そうな声で私達を嘲笑する。
「そやつらは時間稼ぎじゃからそう粋がられてものう。ほれ」
パチン、という音がした瞬間、私達の偽物の口からシューシューと煙が噴きだしてきた! 何、これ……?
『何かやばい気がするわ、離れま、しょう……』
ドサっとアルモニアさんが膝をついた。続いて、レイドさんが口を押えてうずくまる。
「か、体が痺れて……」
「ね、眠くなって、きました……」
「フレーレ!? アイリも!」
「……ガスか……? う……」
「クソジジ、イが……」
「がう……」
「わぉん……」
「きゅんきゅ、ん……」「きゅふん……」
<ぐう、俺達に効くだと……>
<ぐぬぬ……気合い、だっぴょん……>
「みんな! ……う、頭がくらくらする……」
お父さんと私、レイドさんとパパ、それと女神姉妹以外は体が動かなくなったり、眠ったりしている。私も意識が朦朧としており、歩くことがままならない。パパやお父さんも頭を押さえて呻いていた。
「ほう、流石は勇者と魔王の恩恵を持っているだけのことはあるのう。まだ動けるとは」
苦しむ私達の前に、トリスメギストスがスッと姿を現した。それを見て私は口を開く。
「な、にをしたの……!」
「ちょっとした神経ガスと睡眠ガスをな。ボス部屋に全員入れたことを後悔させてやるじゃと? 馬鹿め! ここで一網打尽にしてくれる! 『我が手により造られしその扉は黄泉への道しるべ。生者を亡者に変えるべく、開け、冥界の門』」
トリスメギストスがぶつぶつと何か呪文のようなものを唱える。すると、トリスメギストスの背後に、大きな扉がどこからか現れたのだった。
「ええ、この後アイリ達の偽物が来る可能性もあるし、手早く片づけたいわね」
フレーレがメイスを構え、セイラも杖を握りしめて一言呟く。
「どうしてそんなにやる気なのよ……」
それはともかく、今までの傾向から『抑圧された心』の具現化だということは分かっている。口が悪いのか、性格が悪いのか……私が色々考えていると、ゆっくりと剣を持って偽物が歩いてくる。
よく見ればあくびをしながらだらんとした感じで、いかにもやる気が感じられない。その時、レイドさん(偽)が口を開く。
【あー、めんどくせぇ……何で俺がこんなことしなくちゃならないんだよ……】
【ダメですよレイド。トリスメギストス様の命令を遂行せねばなりません】
【いいじゃないか、あんなジジイのことなんてよ……あーあ! ルーナとイチャイチャしたいなぁ!】
【終わったらいくらでもイチャイチャさせてあげます。さ、しゃんとして】
【へいへい……】
「くぅーん……」
「……」
「……」
いくつかのやりとりを見た私とレイドさんは固まってしまい、レジナが困った顔をしていた。わ、私はともかく、レイドさんが……と思っていると、フレーレが真顔で呟き始めた。
「あれは……やさぐレイドさんですね……本当なら恋人同士、色々したいはずなのに、この戦いのせいでそれらしいことは何も無いですからそれが抑圧されたんだと思います」
「い、いや、そんなことは……というか同じ顔をしたヤツがこんなのとは……」
がっくりと肩を落とすレイドさんに、偽物が怒声を浴びせてくる。
【こんなのとは何だ! てめえがさっさと神裂を倒さねぇからルーナと遊べないんだろうが! 仲間も何人か消えたしな! ええ?】
「う……!? それについては耳が痛い……」
【レイド、それは私達が達成すればいいことです。さあ、本物を倒して、成り代わりましょう!】
私の偽物が愛の剣に似た武器を構えて凛と叫ぶ。な、何かかっこいいんだけど……?
「ルーナの偽物は冷静ですね……もしかして、あっちがオリジナルーナなんじゃ……!」
「んなわけないでしょ! いつ変わったってのよ!」
「えへへ、つい……」
フレーレが冗談ですと言った後、今度はセイラが喋り出す。
「一応念のため……あ! あんなところに金貨袋が!」
「え!? ど、どこに!」
【そんなものがここにある訳がないでしょう?】
きょろきょろと金貨袋を探す私とはうらはらに、偽物は本当に冷静だった。すると、フレーレとセイラが私の肩に手を置いて言う。
「こっちが本物ね」
「……」
「わんわん♪」
「きゅんきゅん♪」
ぐうの音も出なかった……
【茶番は終わりですか? では行きますよレイド!】
【へーい】
「相手は二人だ、一気に叩くぞ!」
ようやく間合いに入ったと、一気に踏み込んできた偽物二人! だらけているとはいえ、流石はレイドさんの偽物、動きは素早い!
<頑張るっぴょん!>
リリーと、女神姉妹、お父さんは後退して様子見だ。ボス部屋でこの人数が入れたのは初めてだけど、トリスメギストス本人が出てきても余裕だと思う。
【そーれ! ほいっと『剛剣乱舞』】
「俺の技を……! こいつ!」
「動きを止めろレイド、俺がいく!」
レイドさんとパパでレイドさん(偽)を叩くため攻撃を仕掛ける。偽物とはほぼ互角なので、誰か一人居れば難なく倒せそうな感じで、のらりくらりと動きながらも、ダメージは取れていた。
「≪マジックアロー≫」
【いてぇ!? 三対一ってのは卑怯じゃないかねぇ『ディスタント・ゼロ』!】
「させるか! 『ディスタントゼロ』!」
ドォォォン!
お互いの大技が打ち消し合い、轟音が響き渡る。ママの魔法も効くし、回復も出来るから問題なさそうだ。
で、こっちはというと――
【はああ!】
「やああ!」
キンキン! カン! ガキン!
「剣筋が速いわね!」
【でもこれについてこれるなんて、流石はオリジナルーナね】
「うるさいわね!」
ブオン!
【何事も柔軟にこなさないと疲れるわよ? そこ!】
ガキン!
喋りながらも、フレーレの攻撃をしっかり受け止める私の偽物。そこへセイラの魔法が襲いかかる!
「≪ブリザーストーム≫!」
【何の! 『マジックブレイク』!】
「やっぱり私の技を使えるのね。そんな使い方をするなんて」
マジックブレイクで魔法を切り払い、ブリザーストームが霧散する。この子、抑圧されているんじゃなくて、逆に解放しているような……
【あたりまえでしょう? でも私には無いものをあなたは持っている。私を倒したければそれを使うことね!】
「くっ……!」
「メイスじゃ追いつけません!?」
さらに速くなる攻撃に防戦一方になってしまう。フレーレとセイラも攻撃の手を緩めずに動いてくれているので、ダメージは向こうの方が受けている。けど、ここぞと言うときの一撃はきちんと躱してくるのでトドメには至らなかった。
「つ、強いですね……」
「はあ、はあ……偽物になくて私にだけあるもの……?」
【そう。この先の戦いでもきっと必要になるわ。でも、気付かなくてもいいの、私が引き継いであげるから……!】
「まだよ!」
ツルッ!
「あ!?」
「ルーナ!?」
迎撃しようと力んだ瞬間、足を滑らせて転んでしまう。やられる! そう思ったけど、私には小型の盾があることを思い出す。
ガキン!
【チィ!】
「あなたに無いもの……女神の装備ね」
普段から身に着けているから忘れていたけど、これはアネモネさんの盾だ。腕輪はチェイシャで、指輪はファウダー……
「愛の剣はリリーだったっけ? みんな消えてしまったけど、装備は残っている……」
<わ、わたしは消えてないっぴょんよ!?>
<俺もだぞ>
「あ、ごめん! と、とりあえず、そういうことよね!」
【そうよ。でも、装備しているだけ。私ならうまく使えるわ】
ガキン!
「でも、みんなと一緒に旅をしてきたのはあなたじゃない。それに神裂を倒すのを託されたのも私。だから、負ける訳にはいかないのよ!」
その時、腕輪が輝きはじめ頭の中に声が響く!
<そのとおりじゃ! わらわ達はいつもお前と共にある! さあ、使うのじゃ! 時に必要な”強欲”の力を>
「チェイシャ!? この力……!」
【させない……!】
「ルーナ、危ないです!」
一瞬聞こえた声に気を取られた隙に、斬りかかってくる偽物。
だけど――
「終わりよ。『グリードブレイク』!」
【手から光が……!?】
チェイシャの得意技だった魔弾。その最上位ともいえる攻撃が私の左手から放たれる! 威力はもちろん、他に相手の欲を失わさせる効果がある。チェイシャの声が響いた時、頭に浮かんできた技だった。
【う、ま、まさかこんなことで……申し訳ありませんトリスメギストス様……!】
ドドド……
私の放った魔弾が偽物をふき飛ばし、着ていた隻眼ベアーマーをもずたずたに引き裂き、私の偽物は倒れた。
「ふう……」
「やりましたねルーナ!」
「ありがとうフレーレ。残るは……」
レイドさん(偽)だが、あちらも決着がついたようだった。
【ルーナぁ!? くそ、多勢に無勢か……!? クソジジイめ、どうしてアイリとノゾムのコピーは出さなかったんだよぉ!】
ザン!
「悪いな、俺。こんな情けない俺でも、ルーナが居てくれるから成り代わらせるわけにはいかないんだ」
【へっ……かっこつけすぎなんだ、よ……】
ドサッ……
「終わったか。こいつの言うとおり、人数がいるから余裕だったなー」
パパが気絶したレイドさん(偽)にハイポーションをかけながら言う。そこにノゾムが声をかけていた。
「……お疲れ様でした。しかし俺と愛理の偽物は出てきませんでしたね。カイムさんと周囲を警戒していたんですが」
『こいつらで終わりとも思えないから、警戒は正解だよ。トリスメギストス! レイドとルーナの偽物は倒したよ! 次はお前か? それとも他の偽物を総動員でもしてくるか?』
エクソリアさんが天井に向かって叫ぶと、トリスメギストスが語りかけてきた。
「なるほど、完全にコピー出来ている訳ではないようだのう。今ここで成長した分はカウントされんから、今日深い結果じゃ」
「出てきなさいよ。ボス部屋に全員入れたことを後悔させてやるんだから」
ママも便乗して言うと、トリスメギストスは愉快そうな声で私達を嘲笑する。
「そやつらは時間稼ぎじゃからそう粋がられてものう。ほれ」
パチン、という音がした瞬間、私達の偽物の口からシューシューと煙が噴きだしてきた! 何、これ……?
『何かやばい気がするわ、離れま、しょう……』
ドサっとアルモニアさんが膝をついた。続いて、レイドさんが口を押えてうずくまる。
「か、体が痺れて……」
「ね、眠くなって、きました……」
「フレーレ!? アイリも!」
「……ガスか……? う……」
「クソジジ、イが……」
「がう……」
「わぉん……」
「きゅんきゅ、ん……」「きゅふん……」
<ぐう、俺達に効くだと……>
<ぐぬぬ……気合い、だっぴょん……>
「みんな! ……う、頭がくらくらする……」
お父さんと私、レイドさんとパパ、それと女神姉妹以外は体が動かなくなったり、眠ったりしている。私も意識が朦朧としており、歩くことがままならない。パパやお父さんも頭を押さえて呻いていた。
「ほう、流石は勇者と魔王の恩恵を持っているだけのことはあるのう。まだ動けるとは」
苦しむ私達の前に、トリスメギストスがスッと姿を現した。それを見て私は口を開く。
「な、にをしたの……!」
「ちょっとした神経ガスと睡眠ガスをな。ボス部屋に全員入れたことを後悔させてやるじゃと? 馬鹿め! ここで一網打尽にしてくれる! 『我が手により造られしその扉は黄泉への道しるべ。生者を亡者に変えるべく、開け、冥界の門』」
トリスメギストスがぶつぶつと何か呪文のようなものを唱える。すると、トリスメギストスの背後に、大きな扉がどこからか現れたのだった。
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