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最終部:タワー・オブ・バベル
その305 表と裏
しおりを挟む<バベルの塔:64階>
リリーの案内は相変わらず正確で、フレーレ達が消えたフロアからすぐに上階へと足を運んでいた。
<ふんふん……こっちだっぴょん>
「匂いで分かるのかしら……」
私が訝しげに呟くと、アイリが沈んでいるのに気付いたので、声をかける。
「どうしたのアイリ? ユウリが心配?」
「あ、ルーナさん。いえ、私ここでは役に立っていないなと思って……武器もこれだけしか使えないから……」
あー、そういうこと。うまく戦えないから足手まといみたいになっているように感じている訳ね。
「んー、でもこのフロアってアイリの銃は仕方ないからいいんじゃない? とりあえず私やレイドさん、お父さんみたいに立ち回れる人がいるしね。で、必要な時に活躍すればいいんじゃないかしら? ほら、私なんて弓も剣も中途半端だけどこんなに元気よ!」
腕を振り回してアピールすると、アイリがクスクスと笑っていた。ちょっと恥ずかしい……かも。
「ありがとうございます。適材適所、ですね。でしたら私は捕まらないよう、動きますね!」
少し元気が出てきたようで、ノゾムのところへ行き話しかけ始めた。入れ替わりにレイドさんが私のところへやってくる。
「いいことを言ったな。ルーナは人を元気づけるのがうまいな、山の宴でウェイトレスをしていたころを思い出すよ」
「いやー、今でこそ私も魔王の能力を持ってますけど、操られるわ攫われるわで申し訳なく思っていた時期もあったから」
「ま、そういうのを含めてルーナなんだろう」
<愛の匂いがするっぴょん>
「うわ!?」
フフっと微笑むレイドさんの横にいつの間にかリリーが立っていて呟いていた。怖いよ……すると、エクソリアさん達が立ちどまり、私達に声をかけてきた。
『……また来たみたいだよ』
「ウウウウ……」
レジナが唸りを上げ、鏡に映る私を見ていた。すると、その姿がぐにゃりと歪み、私が出てきた。
「ジャァァァ!」
「わんわん!」
シルバが偽物に襲いかかると、今度はレイドさんの偽物も出てくる。
「ルー……ナ……」
「俺か。そんな虚ろな目は……していたこともあったけど、今は違うぞ!」
私に掴みかかって来ようとする偽レイドさんを、レイドさんが斬りかかる。すると偽レイドさんが反応してパンチを繰り出した。それをレイドさんが……ああ、もうややこしい!
「……さっき攫って行ったやつらより能力が低いな、さっきディクライン達を攫ったことと関係があるのか?」
「どうですかね、それ……!」
「ウォォォォン……」
お父さんとノゾムがそれぞれ自分の偽物を倒し、アイリの偽物も消滅させた。私もカームさんと協力して自分の偽物を排除することができた。しかし角から今度は魔物が迫ってきていた。
<むう、今度は魔物か。回復魔法が使える者を攫ったのはこれが目的か?>
「かもしれないな」
カームさんとレイドさんが迎え撃つ態勢になる。
「心配だけど、今は進むしかないからね……」
魔物達を倒し、私達は尚も進む。
◆ ◇ ◆
「もう、放してくださいよ!」
「ケケケケ……」
「動かないでくださいフレーレさん! せい!」
「ぐぎゃ!?」
シュゥゥゥ……
カイムの一撃で、フレーレを掴んでいた偽フレーレが消滅し、その後ろではユウリが自分とカイムの偽物を排除していた。
「まったく、面倒なことこの上ないね。で、ここはどこだい?」
「分からん。鏡の中だと思うけど、こんなのは初めてだし……」
二人が周囲を見渡しながら口を開く。先程まで壁は鏡だったが、今は白い壁がずっと続いているフロアへと変わっていた。そこでフレーレが指を口に当てて考える。
「んーさっきの迷路のようですし、先に進んでみましょうか? もしかしたら階段や出口があるかもしれませんし。ね、シルバ」
「わん♪」
するとユウリがコンコンと、引きずり込まれた側の壁を叩きながらフレーレに言う。
「でも、もしかしたら助けてくれようとしてくれているかもしれないじゃないか。動かない方がいいんじゃないのか?」
「確かにその意見も分かる気がするな」
フレーレに関することでなければカイムもいちゃもんをつけたりはしないため、ユウリの意見に頷く。しかしフレーレは笑いながら二人に言う。
「フフ、ルーナは多分もうそこにはいないと思いますよ?」
「ええー……薄情だな……」
「いいえ、違いますよ。先に進んでボスを倒そうとしていると思います。ここで無駄な時間を使うより、ボスを締め上げる! とか言ってるかも?」
「あー……ルーナさん達ならありそうですね」
ハハ……と乾いた笑いをしながらカイムが肯定する。フレーレは歩き出し、話を続ける。
「でも、助けられるのを待つのはちょっと違いますよね? だからわたし達はわたし達で脱出できる方法を探しましょう!」
カイムとユウリは顔を見合わせて、やれやれと言った感じで笑い合い、フレーレを追いかけはじめるのだった。
◆ ◇ ◆
<バベルの塔:65階>
「到着したな」
「まだフレーレ達を助ける手がかりは無かったわね」
「……下の階での俺達みたいに話の通じる相手なら制圧して吐かせたいところだ」
ノゾムが扉に手をかけながらそんなことを言う。
「ひ、広い場所なら任せてください……!」
<高さがあれば俺に乗るといい>
「……ノゾム、開けてくれ」
「分かりました」
ギィィィ……ノゾムが扉を開けて、転がり込むように中へ入る。
「……大丈夫だ」
ノゾムが合図をし、私達も中へ入る。そこは迷路になっていない、鏡張りの部屋だった。
「距離感がつかめないな」
「中ボスは……?」
私が呟くと、鏡からぬぅっと人影が出てきた。複数いるその姿は――
「よう、ルーナ! 帰って来たぜ!」
「パパ!」
「いやあまいったわ……ね、ニールセンさん」
「聖女様は無事です、レイド殿」
「セイラにニールセンか、無事で良かった」
鏡に囚われていたパパとママ、それとセイラにニールセンさんだった! 無事で良かった! 私とレイドさんが近づこうとしたが、ノゾムのワイヤーで引き寄せられてしまった。
「な、何よ!?」
「あれは……違う」
『やるわねノゾム。その通りよ……』
ノゾムとアルモニアさんが鏡から出てきたパパ達を睨みつけると、パパがニヤリと笑い、剣を抜いた。
「ほう、完全に見分けがつかないと思ったがいい勘をしているヤツも居たな」
「まあいいじゃない」
すっごい悪い顔をした二人が迫ってくる。みればセイラもニールセンさんも目つきがやばい!?
「さ、お前達も鏡に突っ込んで入れ代わらせよう。あ、でも安心しろちゃんと神裂を倒してやるから。そしてトリスメギストス様を神にするのだ」
うわ、小物っぽい発想……
「あなた達を倒したらみんな戻ってきそうね? ノコノコ出て来たことを後悔しなさい!」
「……ルーナは本物だよな?」
「どういう意味よ!?」
「しゃらくさい、大人しく倒されろ!」
レイドさんの言葉を返していると、偽物たちが襲いかかってきた……!
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