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最終部:タワー・オブ・バベル

その296 兵器②

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 キュィィ……ン……

 「動かない……?」

 「……今の内にできるだけ接近するぞ! あれを取りこまれたら面倒なことになる、できればユウリも救出したい!」

 丸っこいやつはユウリを体に入れた後、鉄の箱……ヘリを取りこむ作業に入っていた。動きを止めている今がチャンスとノゾムは叫んだ。

 「俺達も行くぞ、破壊寸前まで持って行ったんだ、剣で倒せない相手じゃない」

 「じゃあみんなに≪クイック・シルバ≫を!」

 「わんわん♪」

 「ん……これは、一気に行きましょう、みなさん!」

 「行くわよ!」

 「俺が先に行く、ルーナとアイリは狙える時に狙ってくれ」

 射撃ができる私とアイリは後方へ回り、パパとレイドさん、そしてノゾムが前へ。中間に回復役のフレーレとセイラを走らせ、ファウダーは巨大化したまま空から丸っこいのに向かっていく。

 「ガウ」

 「きゅふん」

 「レジナ達は後からついてきて、いざとなったら回り込めるように」

 「ガオォォ!」

 レジナ・シルバ・ラズベの三匹は散開して別角度から攻める。賢い子達だから助かるのよねえ。と、それよりもアレを止めないと!

 「いきなりシューティングスター!」

 走りながら私は大技を狙う!

 バシュウ! 光の軌跡が一直線に丸いのに向かい、直撃した!

 ガゴン!

 体の後ろの方が吹き飛び、手ごたえを感じる。無敵ってわけじゃなさそ……

 「こら! 中にユウリが乗ってるんだ、無茶な技はやめとけ!」

 と思っていたらパパに怒られた。確かにあの大きさだと貫通した時が危ないか。

 「私のライフルなら範囲が小さいので、任せてください」

 「そうね、私は足を狙ってみる」

 アイリと頷き合い、左右に散る。丁度そのころ、レイドさんとノゾムが接近に成功していたところだった。

 「セッキンケイホウ」

 ダラララ……

 くぐもった声が響き、二人に向かって弾を発射してくる丸っこいやつ。だけど、レイドさん達も慣れたもので、攻撃をひらりとかわしていた!

 「レイドさん、俺がワイヤーで足を引っかける。バランスを崩したところに攻撃を」

 「分かった! 行くぞ!」

 左手からワイヤーを出し、足に絡めて引っ張ると思っていたとおりバランスを崩させることができた。その隙にレイドさんが前にある目玉のような丸い水晶のような場所へ剣を叩きつける。

 「でぇええい!」

 ガギン!

 「何!?」

 驚くレイドさんに、その後ろからパパが飛びかかっていった!

 「次は俺だ!」

 ガン!

 「かってぇぇぇ!? まだまだ!」

 ガゴン! ガン!

 「いいぞ、へこんでいる!」

 「ダメージ、ショウ、キキレベル、Sトハンテイ。ゲイゲキモードに……」

 「ダメ押しにもう一発行きますよ!」

 ノゾムがワイヤーを動かしながら動きを抑えていると、フレーレがメイスで体の横をぶん殴った。

 メキョ……!

 剣よりも鈍器の方がいいのかもしれない……そんな鈍い音がして、ユウリが入れられた場所の蓋が少し開いた。

 「……ハッチが動いたか! これならいけるかもしれない」

 ターン!

 バキン!

 「カメラは破壊したわ!」

 「アイリか、助かる。俺はユウリを助けるからそのまま攻撃を続けてくれ!」

 「任せておけ! うお!? つぅ……」

 ダラララララ! ヒュルル……

 「……! させないわ」

 カン、カン! ボン!

 よろけながらも、デタラメに銃を撃ち、背中から、ユウリも使っていた爆弾をばら撒いてくる。爆弾はこちらへ落ちる前に私が矢で弾き、丸っこいやつが自爆したような形になり、動きを止めた。

 そして目のようなものから光が消えた。

 「ついでに足を壊す!」

 ベギン! ズシャア……


 「ギ……ギギ……」


 「さすがルーナ、いい腕だ」

 「へへ、ちゃんとやる時はやるわよ! セイラ、レイドさんとパパの回復を!」

 「もちろんよ。≪リザレクション≫」

 セイラがレイドさんとパパのケガを治していると、ノゾムが左手のワイヤーを回収し、右手のワイヤーで開きかけたハッチとかいうところへ結び付け丸っこいやつの上に乗った。

 「よし、今助けるぞ」

 グググ……と、扉を開けようと力を込め、少しずつ扉が浮いていく。これならすぐに助けてこいつを破壊できる。そう思っていたのだけど、私の考えはすぐに打ち消された。

 「戦闘ヘリを回収完了。再起動。修復箇所をチェック……完了。修復を開始」

 ブルン……!
 

 「回復が早い……! うわ!?」

 <危ない!>

 後少しという所で振り落とされ、ノゾムはファウダーの背に着地する。 開けようとしていた扉がまたたくまに修復されていった。

 「くそ、目を覚ませユウリ! お前が止めればそれで済むはずだ」

 「……」

 「まだ気絶していますね……回復される前に壊しましょう」

 「フレーレちゃんの言うとおりだ、こっちの回復は済んだ。行こう」

 <オイラが上から抑えるよ。うまくいけば中にいる彼を助けてみる>

 レイドさん、パパ、フレーレ、ノゾムがそれぞれ別の方向から攻撃を仕掛けるために散開。ファウダーが上空から狙うということで動き始める。

 だが……!

 「対空迎撃を開始します」

 「あれってさっきのヘリの!?」

 「いつの間に!? ファウダーさん避けて!」

 <あ!?>

 丸っこいヤツはいつの間にかミサイルをヘリから奪い取り、己のものとしていた。垂直にミサイルが飛び、攻撃が来ないとふんでいたファウダーに直撃する!

 ひゅるる……

 「ファウダー! もう足も直りつつあるのか」

 「カメラもだ、一体どんな造りになってるんだこいつは!」

 キュイイン……

 「あなた達の戦闘力は先程把握しました。排除します」

 ドッ……!

 「ぐふ……っ!?」

 「レイドさん!?」

 丸っこいヤツが物凄いスピードであっという間にレイドさんへ体当たりし、吹き飛ぶ、すかさず銃を乱射し、レイドさんが文字通り蜂の巣になった。かろうじて頭を庇っているので死ぬことは無いけど、全身に弾を浴びて崩れ落ちる。

 「チッ……! セイラかフレーレちゃん、レイドへ……! な!?」

 パパが叫んだ時にはすでにフレーレへ、ミサイルを放っていた。

 「回復者を優先的に排除」

 「間に合え!」

 ミサイルに私がシューティングスターを放ち、破壊しようとするも、わずかに軌道が逸れただけでそのままフレーレへと向かう。

 「≪シャインウォール≫! ……きゃああ!?」

 ドゴン!
 
 かろうじて魔法壁でガードしたものの、衝撃が大きく吹き飛んで気絶してしまった。そして攻撃を仕掛けていたパパをスルーしてセイラへと向かう。

 「行かせるか……! う……!?」

 チュイン……カシャ

 「背後に熱を感知。後部機銃で迎撃します」

 「うおおお!?」

 「ノゾム!? こいつ、止まれ!」

 ノゾムもお尻から出てきた銃に撃たれ、ワイヤーを放して砂の上に倒れた。レイドさんと違って鎧が無い分、血の量が多い!

 「今度は私って訳ね? 補助魔法がかかってるから足は負けないわ!」

 「セイラ、援護するわ!」

 「こっちはダメです……ライフルが……効かない……!」

 セイラが銃の射線から外れながら円を描くように動き、丸っこいヤツに接近する。狙いは杖での攻撃のようだった。
 
 「捉えたわ! 魔杖フューネラルよ、眼前の敵を腐らせよ!」

 ゴン! と、固い物を叩いた音が響いた瞬間、体が錆び始めた! これは効いている!

 「状態……腐食。危険度SSS。ただちに離脱」

 「都合が悪くなった逃げる気? 逃がさないわよ……!」

 走りながら杖を押し付けるセイラを嫌がって逃げるが、セイラも食い下がる。

 「排除します」

 「……何なの? これは!?」

 体から、ユウリを掴んだ時につかった触手がセイラに巻きついた。

 「くっ……放しなさい……」

 「アタック」

 小さく呟き、セイラをアイリに向かって投げてきた!?

 「ハッ!?」

 「きゃあ!?」

 「ガオオオン!」

 ガシッ!

 間一髪の所でレジナがセイラを咥えて着地する。

 「わおわおーん!」

 「機銃、損傷」

 小さいシルバの死角からの攻撃は分からなかったのか、シルバの爪で左の機銃がボロボロになっていた。

 「ナイスよシルバ!」

 すると、丸っこいヤツに異変が起こった。

 ドンドンドン!

 「何だこれは!? 僕はなんでこんな所に居るんだ!? おい、誰か……あれは望か!? どうしてそんな血だらけで……? 愛理もいるのか! 愛理! これはどういうことだ! 何が起きている!」

 「ユウリ! 正気に戻ったのね?」

 「正気? ……そういえば最初に出撃してからの記憶が無いぞ! ええい、とりあえず脱出を……ハッ!? まずい、避けろ!」

 「え?」

 「修復完了……KILL YOU……」

 ユウリの叫びと同時に、先ほどフレーレに放ったものより大きいミサイルが、私達に向かって飛んできていた。 
 カッ!

 直撃は免れたものの、爆発の衝撃で私は意識が途切れた……。

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