パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その289 破壊

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 「……本当に来るとは……あんた、頭おかしいんじゃないか……?」

 「ぎゃっはっは、そいつは褒め言葉だ。才能あるぞお前」

 神裂と望は今、テロリストのアジトへとやってきていた。服はテロリストから奪った服に着替えて顔を隠していた。襲う時の格好ということで好都合だったのは僥倖というほかない。


 「で、捕虜兼使い捨ての駒はどこにいる?」

 神裂の不遜な言葉に若干困惑しながらも、アジトの門をくぐりながら声をひそめて言う。

 「(……あまり口を開くな。一応、ジャックが捕まったってことにしておく。その後、俺の部屋で相談だ)」

 ノゾム達がゲートを抜けようとした時、黒人の男に引き止められる。

 「ヘイ、ノゾム。収穫は? ……一人足りないようだし、しくじったか?」

 「……ああ、ついてない。食料はこれだけで、ジャックのやつは捕まった」

 「マジかよ!? ……アジトを割り出されたらたまらんな……こりゃボスが荒れるぞ……お前もとばっちりがあるかもな」

 「食料は確保したから大丈夫だろ?」

 「(……馬鹿、喋るな!?)」

 「あーん? スティル、お前いつからそんな口を聞くようになった?」

 「……疲れているんだ、休ませてくれ」

 すると黒人はチッっと舌打ちをして顎で行け、と合図し、望たちは中へと入る。

 「……あまりそんなことをしていると報告するぞ。それより英語がうまいな……」

 「その時はその時だあな。お、若い姉ちゃんもいるのか、ハローなんてな! 俺は仕事柄何か国か話せるようにしているからな。あれくらいは余裕だ。さて、お前の部屋へ連れてってくれ」

 「……やれやれ……俺の寿命もここまでか……?」

 疲れた様に呟きながら望は部屋へと案内した。



 「……さて、行くか」

 「……急に真面目になるなよ……アジト内の地図はさっき見せた通りだ」

 「おーけー、問題ないぜ。お姫様を助けに行こうじゃねぇか、なあ? ぎゃははは」

 この男はなぜこうも楽しげにしていられるのか、と望は困惑する。自ら死ににいっている、そんな感じすらある。
 見張りはそれほど多くない上に顔見知りも多い。望がトイレに行く、とすれ違い後ろから昏倒させて神裂が後を追う、それだけで十分先へ進むことができた。

 「……愛理……愛理……」

 コンコン、とドアをノックするが返事が無い。おかしいと思い、ドアノブを回すとそこには誰もおらず、二匹の子犬が尻尾を振りながら望に駆け寄ってきた。

 「きゃんきゃん!」「わふ」

 「クワイトにジョセフィーヌ、愛理はどうした……?」

 もちろん答えてくれるわけもなく、足に擦り寄ったり匂いを嗅いだりと忙しい動きをしてるばかりだった。そこに、隣の部屋から少年が一人出てくる。

 「あー? 望兄ちゃんか? 愛理ならボスに連れて行かれたけど……? ふあ……今日はあまり殺せなかったから僕もさっきまで説教さ。愛理はそれにもまして人を殺せないから長引くんじゃない? あれ、そのおっさん誰?」

 「……勇利、それはいつだ」

 「十分くらい前だっけかな、僕トイレに行きたいんだけどもういい? で、おっさんは誰なのさ」

 「……まずい、あの男、愛理を手籠めにするつもりだ……!」

 「おいおい、まだガキだろ? さすがにヤバいやつだぞそりゃ。それと俺はまだ26だ、おっさんじゃねぇ。ガキ、支度をしろ」

 「痛っ!? 支度?」

 「おう、ここから逃げる準備だ! さて、ロリコン野郎をぶっ飛ばしにいくぞおらぁ!」

 「……しょ、正気か!? ボスには護衛もいる、死ににいくようなもんだ」

 「人間死ぬ時は死ぬわな。お姫様が危ないんだろぅ? 行くしかないじゃねぇか。まあ俺達が死んだら残念でしたになるけどな! ぎゃっはっは!」

 「おい、望。こいつなんなんだよ!? イカれてるにも程があるぞ!」

 勇利に言われるまでもない、こいつは本物のアホだ。しかし、このままでは愛理は手籠め。もし一晩様子を見たところで心に傷を負うのは間違いない。ならば行くしかないと望は覚悟を決めた。

 「……こっちだ、勇利、愛理を助けてここから逃げるぞ」

 「……望も大概だよね。仕方ない、死んだら責任取ってくれよ」

 「きゃん!」「わん!」

 「……お前達も来るのか? あ、いや……愛理もその方がいいか……」

 「おーおー、人に慣れてるなお前等。シベリアンかこいつら? カバンに入ってろ」

 「わん!」

 二匹をカバンに詰め込み神裂が真っ先にボスの部屋へと走る! そして、すぐに部屋近くの角へと到着する!

 「大して広くもねぇからなっと……見張りは二人か」

 「――や! 助けて! 誰か!」

 「……愛理の声だ、まだ無事か……あ、おい!?」


 「やれやれ、ガキ相手によくやるわウチのボスは」

 「まあ日本人は貴重だからな、飽きたら回ってくるかもしれんぜ?」

 「マジで? もっとこうプリンプリンのお姉ちゃんの方がいいじゃんね?」

 「俺はそうだが……って、誰だお前ー!?」

 「ほい、お休み」

 ドッ!

 「てめぇどこから入ってきやがった!?」

 「え? 入り口からに決まってんだろ? いい夢みろよ?」

 ドガ! グシャ!

 ドサリ……

 「い、いつの間に接近したんだよ……!?」

 勇利が冷や汗を流しながら見張りを縛っていると、神裂は特に気にした様子も無く扉を開けて中に入った。

 「……あ、愛理がいるんだぞ!?」

 
 「よう、ロリコン! 元気か! ……元気そうだな! ぶふ!」

 神裂はある一点を見てから噴き出す。全裸の男はポカーンとして扉から入ってきた男を見るが、すぐに気を取り直して叫ぶ。

 「な、何だ貴様!? 見張りはどうし……」

 パン!

 乾いた音が一発。それがボスと呼ばれた男が聞いた最後の音だった。

 「そんなこと聞く前に撃たないとなあ? おい、大丈夫かガキ?」

 「ひっ……!?」

 「きゃん♪」

 近くに居たのでボスの返り血を浴びた愛理が壁に張り付くが、カバンからジョセフィーヌが飛び出し、それを見て愛理が少しほっとした表情になった。

 「ジョセ! ……あ、お兄ちゃん! このおじさんは?」

 「……無事でよかった……この人は俺達をここから逃がしてくれる偉い人だそうだ。一緒に行こう。これに着替えて」

 「う、うん!」

 しかし、銃声を聞きつけたアジト内のテロリストがバタバタと向かってくる気配がした。

 「お、おい、どうするんだよ!」

 「任せておけ」

 「?」


 神裂は三人を連れて出口へ向かう。すぐに数人のテロリストと鉢合わせになった。

 「お!? ノゾムか!? 今の音は何だ!?」

 「……ボスがやられた。部屋に遺体があるから、見に行ってみてくれ、俺はそいつを追う」

 「お、おう……マジか!?」

 「じゃあな!」

 スチャッと手を上げて走り出したところで、テロリストがはた、と止まる。

 「てめぇは誰なんだ!? まさか……!」

 「ちっ、意外と賢いな」

 タタタタタ!

 「ぎゃ!?」

 「うが!? だ、脱走だ! ノゾム達が逃げる……ぐへ……」

 「すげぇ……おっさん殺しの経験あるのか?」

 「ん? ……銃で殺したのはさっきのヤツが初めてだな」

 「……急げ、集まって来るぞ!」

 神裂達はあの手この手を使って脱出を図る。ある時は脱走に協力すれば町で匿ってやると言って味方につけ、またある時は謎の格闘技で呻き声一つ出させずに倒し、さらにまたある時は金をチラつかせる……そうこうしている内に出口へと到着した。

 「よし、車はすぐだ。エンジンかけて待ってろ!」

 「おっさんは!?」

 「仕上げだ、アジトは潰しとく」

 ニヤリと笑った神裂の手には手りゅう弾。そしてどこで拾ってきたのかFGM-148……通称ジャベリンと呼ばれる対戦車ミサイルを担いでいた。

 「……正気じゃない……!」

 望が呟いた瞬間、手りゅう弾が爆発し、ミサイルがアジトの一番大きな建物を直撃した。崩れ落ちる建物から逃げるため、神裂達を追うどころではなくなったテロリストたちを見て神裂は大爆笑する。

 「ぎゃーはっはっは! すげぇ威力――」

 そこで油断があった。完封して戦意を失わさせていたと思っていたが、信念に基づいて活動する彼等はそこまで甘くなかったのだ。よろけながら向けられた銃口は……愛理を狙っていた。

 「やべぇ!? 伏せろガキ! 間に合うか……!」
 
 「クソがあ! 死にやが、れふぇぇ!?」

 パン!

 神裂が一気に近づいて蹴りを叩きこむが、一足早く弾丸は発射された。このままいけば愛理の頭に直撃するであろうコース。だが、そうはならなかった。

 「きゃん!?」

 「ジョセ!? ジョセフィーヌ!?」

 犬のジョセフィーヌが愛理を庇ったのだ! 力なく横たわるジョセフィーヌを抱えて愛理が叫ぶと、少しだけ目を開けてか細く鳴いたあとまた目を閉じた。

 「きゃうん……」

 「……おっさん! 早く!」

 「おお!」

 ブロオン!

 何人かの無理矢理テロリストにさせられた人間を荷台に乗せ、神裂達は脱出に成功した。
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