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最終部:タワー・オブ・バベル
その283 捕縛
しおりを挟む「たぁぁぁぁ!」
「……う!? ……ぐあぁ!?」
ノゾムはフェンリル・アクセラレーターを使っているにも関わらず、私の攻撃であっという間にノゾムはボロボロになった。文字通り『目に見えない』攻撃をどうにかすることは難しく、一方的に攻めることができたのは大きい。
でもこの魔法。まだ慣れていないせいもあるけど、五分で効果が切れた。
「はあ……はあ……消耗も激しいわね、これ……。どう、降参する気になった?」
「ま、だだ……」
「まだ動けるの!?」
「こっちも時間が無いからな、悪いがトドメを刺させてもらう!」
セイラが叫んだ時、レイドさんがノゾムを後ろから剣で斬りつけようと振りかぶる! 動きが鈍くなったノゾムがこれを避けられるとは思えない……!
「……ダメか……」
何とか腕を上げるが、私がかなり打ちつけたため半分も上がっていない。レイドさんの剣が腕を狙ったその時、どこからか攻撃を受けていた。
チュイン!
「これは……!」
「この攻撃は、あの女の子の? どこから……!」
レイドさんの剣に当たったのはおそらくあの弾丸というやつだろう。剣の軌道を逸らされ、地面を斬りつけることになった。ノゾムへ追撃をしようとするが、その度に阻止され、レイドさんはノゾムから一旦離れる。
だけど、今度は、二回、三回と私達に飛んでくるようになった。
「建物の影に隠れましょうルーナ!」
「ダメよ、ノゾムから離れたら多分攻撃している子が助けに来るはず! ≪ドラゴニック・アーマー≫≪パワフルオブベヒモス≫!」
自分とセイラに補助魔法をかけた後、私は一直線にノゾムへと向かって走った! そして私は目で近くにいたニンジャさんに合図を送った。
「ルーナ!」
レイドさんが叫ぶと同時に私はノゾムの首根っこを掴む。その瞬間、私のアーマーに衝撃が走った!
ベキン!
何かが折れるような感じの音を立てたものの、まだ破られていない。パワフル・オブ・ベヒモスの力で、私はノゾムを連れて階段のある建物へと向かう。すると、またアーマーに衝撃が走った。
ガシャン!
「破られた! でも、攻撃方向は分かったわ! ニンジャさん!」
「承知! 追いつめるぞ皆の衆!」
<オイラも行くよ!>
目で合図を送っていたニンジャさんが私の意図に気付き、素早く動く。捕まえられなくても、この場を凌げればそれでいいので、ここは私の勝ちね。
「無茶をするな! 一回で破られていたらどうするつもりだったんだ!?」
「いやあ、セイラも居るし死ぬことは無いかなって……。それより、この人を確保する方がいいでしょ? 殺しちゃうと逆上しそうだし」
「それはそうだが……」
頭を掻きながらレイドさんが難しい顔をして呟いた。心配してくれるのは嬉しいけど、今回は許して欲しい。そうこうしていると、足元から声がかかった。
「……すまない、あまり叫ばないでくれるか? 傷に響く」
「自業自得だろうが!?」
レイドさんが怒りの良い矛先を見つけたといった感じでノゾムの頭をスコン! と叩いた。変な呻き声をあげてぐったりしたところで、ロープを使いぐるぐる巻きに。
「これでよし、と。あれ、この声は……」
一仕事終えたところで、聞きなれた鳴き声が聞こえてきた。
「わん! わんわん!」
「あ、シルバ! あれ? お父さん達は?」
私の胸に飛び込んできたシルバを抱きしめて撫でていると、上空から声が聞こえてきた。
『おーい! 無事かい?』
「ノゾムが倒れてるぞ、ルーナがやったみたいだ」
ジャンナがゆっくりと降りてきて、エクソリアさんが体を乗り出して手を振り、パパが適当な高さで飛び降りる。
そして別の通りから、アルモニアさんとニールセンさん、リリーとラズベも到着していた。
「やっぱりあの大きな音はルーナさん達でしたよ、アルモニア様」
『みんな無事みたいで何よりだわ。それに、敵を一人捕まえたみたいね』
<歩き疲れたっぴょん……>
「きゅふん♪」
「……もう一匹……!」
「わ!? もぞもぞしないでよ!? というか血だらけなんだから死ぬわよ!?」
ラズベの声に反応したノゾムが急に元気になり、私の足元でもぞもぞしてラズベへと向かっていく。その動きを見てラズベが怯えていた。
そして……
「きゅ、きゅふん……!?」
「……こっちは白い犬か……もっと近くで……!」
「わおーん!」
「……ぐあ……!?」
あと一息、というところでシルバに後頭部を噛まれ、ノゾムは気絶した。
「これで一息つけるか……」
「結局こいつは何がしたかったんだろうな?」
私達は五十四階へと至る建物の中に入り、休息を始めた。
今までもそうだったけど、このフロアとフロアを繋ぐ階段がある部屋は魔物が襲撃ができないようになっているみたいだから安心して休めるのだ。ノゾムも確保したから尚のことね。
「殺意はない。が、俺達が上に行くのは邪魔をしたい、というところだな。こいつが起きたら拷問して吐かせよう」
お父さんが物騒なことを言う。
「とりあえず回復魔法はかけたからじきに目を覚ますと思うわ。ファウダーが帰ってきたら起きるまで縛り付けておきましょう」
セイラの魔法で傷と出血は見た目なくなり、ノゾムはぐったりと眠っている。エクソリアさんが持っていたドッグフードのくだりを聞く限り、犬が好きなんだと思う。そこで私は一つ、いいことを思いついた。
「……ねえ、じゃあ拷問はこうしない……?」
◆ ◇ ◆
一方そのころ、スナイパーの女の子を追ったニンジャ達は――
「そこだ!」
ニンジャが地面を走る女の子へシュリケンを投げる。
「そのくらい……!」
それを女の子がハンドガンで撃ち落とし、尚も走り続ける。
<ブレスならどう?>
ヒュォォォ……
「くっ……」
ファウダーの氷のブレスが頭上から女の子を襲い、体に霜ができていく。ファウダーを嫌い、ハンドガンで攻撃をするも竜の鱗を貫通するだけの威力はハンドガンには無かった。
<その背中の長いやつじゃないとオイラにはダメージが通らないみたいだね! 悪いけど、君も確保させてもらうよ!>
「(兄さんを助けに来て私が捕まったら意味が無い!? ……仕方ない、もう一度使う!)」
ごそっと懐に手をいれ、女の子は再びスタン・グレネードを取り出した。
<あれは!? いけない、みんな! 耳と目を塞いで>
「遅い!」
カッ!
「う……!?」
「め、目が……!?」
囲みつつあったニンジャ達はモロに受けて動きを止める。一足先に上空へ飛んだファウダーは無事で、そのまま女の子に突っ込んでいく!
<それはさっき見たからね! 今度こそ!>
「そう来るでしょうね、でも今ので終わりじゃないわ!」
ピン……!
<何だ?>
女の子は手りゅう弾のピンを抜き、ファウダーへと投げつけた。爆発までしばらくかかるが、女の子はその手りゅう弾を……ハンドガンで撃ち抜いた!
ボン!
<うわああ!?>
丁度眼前で爆発する形になり、きりもみ落下をするファウダー。
「……今だわ……!」
女の子は隙をついて一気に走り去った。しばらく身を隠して誰も追ってこないことを確認した後、一人呟いた。
「……兄さんが捕まった今、下手に狙撃しても盾にされるかもしれない……。それにユウリが派手に見せたせいか、兵器に対する対応が早いわ……こうなったら、五十五階でユウリと迎え撃って兄さんを助けるしかない……」
息を整え、指標が決まると、女の子はスッと再び闇の中へと消えて行った。
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