パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その277 遊戯

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 パンパン! タタタタタ!

 ユウリは銃を撃ちながら迫ってくる。発射された弾丸は早いけど、連射速度以外なら矢と変わらず真っ直ぐ飛んでくるため、私達は軸をずらしながらジグザグに動いて的を絞らせず迫る。

 レイジング・ムーンでは足が止まるため、愛の剣で対抗する。

 「レイドさん! ≪ドラゴニック・アーマー≫!」

 「助かる、そこだ!」

 「アレを見てもビビらないのは流石だね!」

 連射が早い銃を迫るレイドさんへ向けて撃ってくるが、その程度ではアーマーを剥がすことはできないわよ! 案の定、カンカンと乾いた音を立てて弾丸をはじき返した。

 「うわ、魔法ってやつか!? これは厄介……危なっ」

 「素早い!」
 
 「はは! お互い様だよ!」

 剣をヒラリと避けて背中の長い銃を構えようとしたところで背後からパパが斬りかかる。

 「その武器が強力なのは分かったが、一人でこの人数相手に使えると思うなよ?」

 「怒ってる? ねえ、怒ってるの? あはは、ニンジャ達をこんなにしたから怒ってるんだ!」

 背中の銃を持つのを止め、ナイフでパパの剣を受け止めると、攻撃を仕掛けていったレイドさんの足を引っかけるため姿勢を下げて蹴りを見舞う。

 「うお……っと!」

 ブン! と、レイドさんはバランスを崩しながらも剣を振るが、ユウリはそれを髪一重……いや、紙一重で避けた。

 「とっ、と……危ない危ないってね。でも見たことのない武器相手によく踏み込んでくる……素直に感心したよ」
 
 トントンとバックステップをし、建物を背にしてそんなことを言う。……ちなみに回り込んでいたお父さんを回避する形になっていたので、適当に襲ってきているようで考えて行動しているみたい。

 「おや、これはマズイかな?」

 「逃げ場は無いぞ」

 お父さんに言われながらも、笑ってこちらを見据えるユウリ。

 「みんなにもかけておくわね」

 私は集まってきた人達に補助魔法をかけ、能力をあげる。この人数なら抜けることはできない……そう思っていると。

 「追いつめたつもりが実は逆だった、ってよくある話じゃない?」

 『スタン・グレネードに気をつけるんだ。こいつも持っているはず……』

 「そんなの無くても逃げ道ならいくらでもあるのさ」

 そう言って背中の銃を構えたので身構えると、エクソリアさんが再び叫ぶ。

 『このショットガンは近づけば強いがこの距離なら弾が散るからアーマーがかかっている今ならさして強くない! ルーナ、矢を撃て!』

 「分かりました!」

 「知識があるやつがいるのは厄介だなあ。よし、じゃあ最初に殺すのはあっちにしよう」

 「撃つ気? こっちも!」

 私はそのまま矢を放とうとするが、ユウリは構えたままくるりとうしろを振り返って銃を撃った。

 ガシャン!

 「え!?」

 後ろの建物はガラス張りで、人型の人形が何体も立っているところだ。それを突き破りユウリは建物の中へ逃げ込んだ。

 「俺とディクラインが追う。お前達はここで待っていてくれ」

 お父さんズが素早く駆け、中へ入る。クイック・シルバのおかげで足が速い。すぐに追いつく、そう思った瞬間ユウリが飛び出てきた!

 「な、何で!?」

 「ありゃ、あんまり釣られなかったのか。まあいいや……よーい……どん!」

 『こいつ逃げたと見せかけて角で待っていたな……!?』

 ユウリの視線の先は……セイラ! そして地に足をつけて走りだした瞬間、私達の横を抜けて行った!

 「な……!? 速い!?」

 「逃がさないわよ!」

 一番近くに居た私が追いかけてすぐ後ろにつく。幸い、回復のためママとセイラは離れていたけどこいつには遠距離からの攻撃がある。範囲に入られたらアウトだと、全力で追う。


 「へえ、君も速いね!」

 パン!

 「当たらないわよ!」

 「おっと!? いい手だと思ったんだけどなあ。回復魔法を使う人から殺すのはやっぱり常套手段でしょ? 狙われたらこうやって助けに行かないといけないし」

 左手のナイフで私を牽制しつつ、右手の銃でママに狙いをつけるユウリ。そこに救援がやってきてくれた。

 「ルーナさん、手伝います!」

 <足を凍らせてやるよ!>

 ナイフで私の剣を受けていたユウリに、同じく追いついたニールセンさんと、上空からファウダーが降下してきて囲んでくれた。

 「これはいけない」

 「きゃ!?」

 足を凍らされるのは流石に脅威を感じたのか、真顔で私を蹴り飛ばしてその場を離れようと身を翻す。だが、ニールセンさんの一撃はユウリの肩を斬り裂いていた。

 「やるね。蹴った感じ、アーマーも厄介だ。だけどゼロ距離でも効果はあるのかな?」

 「!?」

 斬られながら小さい銃を地面に落とし、長い銃に持ち替えてニールセンさんの顔の前に突きつける。

 ドラゴニック・アーマーは強力な防御魔法だけど、密着状態だと威力の高い攻撃はそこまでの効果を発揮しない。特に点の攻撃は。
 知っていたのか勘なのか、このまま撃たれればニールセンさんの顔は吹き飛んじゃう……!

 <やらせないよ!>

 「おっ!?」

 バァン!

 「くっ!?」

 私が剣で銃を叩き落とそうと動いたけど、その前にファウダーが強引にユウリの身体を引き、銃は上を向いた状態で発射された。少し掠ったかもしれないけど、吹き飛ぶより全然いい。

 「やっぱり数が多いと殺しにくいねえ。ここは一度退却させてもらうかな」

 「逃がさないって言ったら?」

 「はは! このフロアは僕たちの庭だよ? ……さて、お迎えがきたみたいだ」

 瞬間、上から何かが降ってきてユウリがそれを掴むと、まばたきをする前に引き上げられた!

 「どこから……」

 視線を動かすと、二階建ての建物屋根の上にまた新しい人影が見えユウリが着地するのが見えた。

 「ありがとうノゾム。助かったよ」

 「……」

 ノゾムと呼ばれた長身の男性は私達を一瞥した後、無言でユウリへと顔を向ける。

 「相変わらず無口だね。とりあえずだいたいの戦力は分かったから、アイリの所へ戻ろう。それじゃあまたね! ……すぐ会えると思うけど……」

 ニヤリと笑いながそう言うと、ノゾムはコクリと頷き、ユウリを抱えて建物の裏へと姿を消した。


 ◆ ◇ ◆

 
 「居ない、か……」

 『この穴、マンホールって言うんだけどここから逃げたみたいだね。これを使われたら奇襲し放題じゃないか、あいつらの庭とは良く言ったもんだ』

 私達が慌てて二人を追うも、地面にあった蓋が空き、どうもそこから逃げていったらしいとエクソリアさんが言う。

 「くそ、あいつ建物に逃げ込んだフリをしていただけとは」

 後ろで毒づくのはパパだった。少し建物の階段を登った所でおかしいと気付き返ってきてくれたものの、時すでに遅しというやつで悔しがっていた。

 『仕方ない。あれも一つの戦術だからね。だまし討ちみたいだから嫌悪するけど、向こうも命がかかってるからね。今後気を付けていくしかない』

 「それに三人目が現れたし、この先大変そうね……」

 「それでも向こうから襲ってくるならやりようはある。ボス部屋なら6人までしか戦えないけど、わざわざ出て来てくれるなら全員で倒せばいいわけだしな」

 「あ、それもそうか……」

 確かに、とレイドさんの言葉で私はポンと手を打つ。しかも相手は現状三人。数では圧倒的有利だ。

 「手の内はまだあるかもしれないが、こっちも情報はもらった。次は倒すぞ」

 お父さんが珍しく不満げにしながらもみんなにそう言って腕を組んだ。


 後、ニンジさん達はなんとか死者は出なかったけど、先行していたサムライさん達は……という状況で、50人ほど居たはずだけど、見た感じ半分も残っていない。守られていたからか、サムライのリーダーは並べた亡骸を前に呆然としていけど、しばらくしてから私達の前にやってきた。

 「……すまぬ、助かった。そういえばあの時名乗っていなかったな。ワシは蒼希サムライ衆の大将、ザイチと申す」

 「いえ、わずかに間に合いませんでした。申し訳ない」

 「ワシらがサイゾウの言うことを聞いておればこんなことにはならなかったのだ、頭を上げてくれ。醜態をさらすことを許してくれ。今からサムライ衆には亡骸を運んでもらい、寺院で蘇生を試みるのでここからワシ一人随伴させてもらう」

 「何を言いますか!? ザイチ殿こそこのような危険な所から戻るべきです!」

 「馬鹿者! 命惜しくてここに来たわけではないわ! ……準備を整えてまた追いついて来い! いいな」

 「は、はは……」

 激昂され若いおサムライさんはすごすごと下がり、亡骸を運び始めた。肩を落とし、力なく戻って行く姿はもの寂しいものがあった。
 寺院での蘇生率は五分と考えれば気持ちが分からなくもない。

 蘇生魔法は流石にセイラもママも、今はいないフレーレも持っていないので私達は見送るしかできない。


 そして、ユウリ達は本当に撤退したようで、ザイチさんを仲間に入れた後は魔物が出ることも無く五十三階の階段をすぐに見つけることができた。
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