パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
上 下
250 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル

その271 事情

しおりを挟む
 

 「パパ、レイドさん!」

 「何とか倒したぞ」

 「セイラ、ニールセンを頼む」

 「うん」

 バッサバッサとファウダーとジャンナが降下し、背中から二人が降りると体を小さくしていた。

 <いたた……最後にいいのもらったよ……>

 <派手にいったな。だが、よくやってくれた。空を飛ぶ相手なら俺がいればもう少し楽だったかもしれん>

 こちらも同じく飛んできたカームさんがファウダーへと労いの言葉をかけ、ジャンナがファウダーへ寄り添う。

 <ぴー。ちょっと、大丈夫? ほら、治してもらいなさいよ>

 ジャンナに連れられて、ファウダーがママの所へ飛んでいくのを見ながら、私はフレーレを背負って近づいてきたお父さんに声をかけた。


 「どう?」

 「今は眠っている。勝利の余韻もいいが、フレーレは早く休ませた方がいい」

 チラリとお父さんが目をやった先には転移陣があり、拠点へ戻るよう無言で促していた。私は頷き、今度はレジナの元へ向かう。

 「……どう、レジナ?」

 「くぅん……」

 意識は戻っているみたいだけど、鳴き声はか細い。シルバとラズベが心配して寄り添っていた。そこにカイムさんが口を開く。

 「こいつら消えませんね……私が残りますから、皆さんは一度拠点へ戻ってください。フレーレさんをゆっくり休ませないと……」

 分かりやすい提案だけど、その言葉には一理ある。するとお父さんがカイムさんに並び立ち、残ると言いだした。

 「俺も残ろう。再び暴れ出さないとも限らないし、その時は引導を渡してやる」

 「わん!」

 「お前も疲れただろう、一晩休んでおけ。今後はお前も戦い続けることになんだからな」

 「わ、わぉん!」

 シルバも尻尾を振って残ろうとしたけど、お父さんに窘められて渋々私の所へと戻ってきた。

 「よっと……ニールセンは俺が連れて行こう。それじゃ、お父さんお願いします」

 「……う、うむ」

 「どしたの?」

 「……早く行け」

 レイドさんに声をかけられてからお父さんの様子がおかしかったけど、具合が悪い訳じゃないみたいだからいいかな? 転移陣に向かおうとしたところで、何とヴィントが目を覚ましてヨロヨロと伏せのポーズで話し出した。

 【ボーゼも負けたか、やはり人間は侮れんな】

 「まだやる気? 悪いけど私は全力でいけるから容赦しないわよ?」

 「ぐるるる……!」

 セイラが杖を突きつけながら言うと、ヴィントは大きく首を振ってゆっくりと口を開いた。

 【案ずるな、私達はもう戦う気は無い】

 『君達はどうしてこの塔に? ヴィントは南の大雪山、ボーゼは東の海を根城にしていたはずだけど?』

 【神裂だ。あやつに連れてこられたのだ。この世界は滅ぶ、が、自分に協力すれば人間の居ない楽園をやろうとな。逆らっても勝てんことは分かっていたから、この塔に来るであろうエクソリア殿達を待っていたのだ】

 『戦う必要はあったの?』

 もっともな意見をアルモニアさんが聞く。

 【私の後ろにある五十一階へ通じる洞窟、他の階だと扉になるのか? は、『私達と戦って勝つ』。そうすることで開くようになっていてな。こちらの目論見がバレていたのか、あるいは初めからそのつもりだったのか……三十階でも協力者と戦ったろう? あの男は修行の意味もあったようだが、お前達と戦ったのはその事情が一番大きいのだ】

 「なら手加減してくれても良かったじゃない。おかげでレジナがあんたのせいでボロボロになったわよ」

 「くぅん……」

 【それでも構わなかったが、私達に勝てないようでは神裂を倒すことなど夢のまた夢。神裂を信用することはできんが、ここで終わるようなら結果世界は滅ぶ。そうであれば、楽園とやらに賭けてもいいと思わないか?】

 あえて、ってことか……色々な結果を吟味したうえでの戦いなら仕方ない気もするけど、私はちょっと怒っていたりする。

 『とりあえず君達の事情は分かった。ボク達は一旦拠点に戻るけど、どうする?』

 【外の世界に興味はあるな……少し休ませてもらってから追いかけるとしよう。そこの娘、私の子を何と呼んでいたかな?】

 「え? ラズベのこと!? 勝手に名前をつけちゃったけど、本当の名前があるならそっちで呼ぶわよ!」

 急に話を振られて慌てていると、ヴィントは笑いながら私に言った。

 【フフフ、私の子に名は無かったのだ。だから『ラズベ』で構わない、私もそう呼ばせてもらおう。さて、話が長くなったな。また後ほどな……】

 そう言って目を瞑ると、すぐに寝息を立てはじめた。無防備だな、と思っているとエクソリアさんが誰にともなく言った。

 『眠って回復をはかるんだよ。ボク達は勝者だから、その辺りは割り切っているんだろうね。このままトドメをさされてもそれは、それってところかな? どうする?』

 「うーん……とりあえず保留で。事情があっても、レジナが死にかけたり、フレーレの具合が悪くなったのは許せませんし……」

 「はは、ルーナらしいな。こいつらも気にはなるけど早い所戻ろう。フレーレが心配だ」

 私が眉をへの字に曲げて口を尖らせていると、レイドさんが笑って肯定し、すぐに真顔に戻った。背負ったニールセンさんもぐったりとしているので、早く休ませたいようだ。

 「こいつらが攻撃しなくなったようだが俺はこのまま残る。カイムは?」

 「私も残りますよ、フレーレさんを頼みます」

 おじぎをして私達を見送り、カイムさんとお父さんを残して私達はひとまず五十階を後にした。

 
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。