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最終部:タワー・オブ・バベル
その267 傀儡
しおりを挟むシロップが叫んだと同時に、ホーゼと名乗った蛇も行動を開始した。それをファウダーとパパ、ニールセンさんが迎え撃つ。
【さあ、先程の続きと行こうか】
「その余裕はすぐに消えることになるぞ? ルーナ、お前はシロップを頼む。レイドとカイムはジャンナとでかい狼を攻撃してくれ」
「私は?」
どちらのメンバーにも入っていないママが呟くと、パパが蛇の方を向いたまま叫んだ。
「見ていて面倒そうな方へ行ってくれりゃいい! 行くぞ!」
<ここなら最大まで大きくなって問題なさそうだ。今度は逃がさない>
パパが号令を出し散開する。蛇一匹だけなら全員でかかってもいいけど、どうも嫌な予感はあのヴィントからする。恐らくあれが本命のボスに違いない。レイドさんとカイムさんがヴィントの前に立ちはだかっていた。
「近くでみると大きいですね……!」
「なに、その分当てやすいと思えばいいさ。ジャンナ、上からの奇襲頼むぞ」
<ええ、隙があったらどんどん行くわよ>
【威勢は良し、か。さて、我が娘よ下がっておれ】
「きゅふん……」
ヴィントがラズベを自分の後ろに下がらせると、ゆっくり前へでてきた。
「ガウゥゥ……!」
【ふむ、返せと言われてもこれは私の子供だがな? では、殺ろうか】
レジナが何かを言ったようだが、意にも介さず構えを取るヴィント。私はここまでとっておいた補助魔法をみんなにかけていく。
「一気に倒すわよ! ≪ドラゴニック・アーマー≫≪パワフル・オブ・ベヒモス≫≪フェンリル・アクセラレータ≫」
【……フ、フフ……】
「?」
私が魔法をかける様子を黙って見つめながら笑うヴィント。だが、その笑みの答えをすぐに知ることになる。
「シロップは私が誘い出すわ! 行くわよ! ……え? あれ!?」
「どうした、ルーナ!」
シロップ目がけて走ろうとしたけど、まったくスピードが上がっていなかった。これ、まさか魔法がかかっていない? 走りかけた足を止めて考えているとヴィントが笑いながら言葉を放つ。
【ふははは! 私の名を借りた魔法を使わせると思ったか? 頼りにされるのは悪くない気分だが、今は貸し与えてやる訳にはいかんな……!】
「まさか……!? そんなことがあり得るの!?」
『フェンリルのイメージはボク達の記憶と経験を元に、君達に与えている! 残念だけど、使うのは難しいと思う』
――直後、ヒュン……という風切音を残し姿を消し……。
ガキン!
「うお……!?」
【いい勘だな、腕の一本は貰うつもりだったが! それ!】
「ぐっ!」
ザザザザ!
噛みつきを剣で弾いたレイドさんだったが、すぐに爪での攻撃に切り替え、それも何とかガードできた。しかし、威力が高いようで受けた剣ごと後ろにバックさせられていた。
「シッ!」
レイドさんに攻撃を仕掛けた隙をカイムさんが見逃さず、刀で首を狙って斬りかかった!
【フッ……】
「消え……!? うわ!?」
カイムさんの攻撃は決して遅くは無かった。だけど、それを上回る速さで即座に脇へ回り込み、後ろ足でカイムさんを蹴り飛ばしていた!
【どうした、まだ始まったばかりだぞ? ……む?】
「シロップ!」
「きゅきゅーん!!」
シロップから離れたのを見計らって私はシロップへと駆け寄った! 滑り込みながらシロップを抱き上げると、私の首を狙って牙を剥いていた。
「わんわん!」
「きゅきゅーん!」
それをシルバが防いでくれたが、衝撃でシロップを取り落としてしまう。
【いいぞ、元主人を噛み殺してやれ! 無駄だ!】
「チッ、余所見とはいいご身分だな!」
レイドさんとカイムさんが休まずに攻撃を仕掛けるが文字通り目に見えない速さで動くのでダメージは無いに等しい。
「私はギリギリ、ですね。ベルダー様なら勝負になるかと思いますが……申し訳ありません」
「なら、今ベルダーを越えるチャンスだぞ!」
カイムさんが力不足の恨みごと言い、レイドさんが発破をかけ、何とか突破口を模索していた。一方、こちらはこちらで殺すわけにはいかないシロップをどうするか考えあぐねていた。
「きゅきゅーん!」
「シロップ! 目を覚まして! 痛っ!?」
ガチガチを歯を鳴らして私に飛び掛かってくるシロップを捕まえようと手を伸ばした瞬間、手の平をガブリを噛まれてしまった。
「うあ!? ああああ!?」
「ふっ……ふっ……」
鼻息を荒くしたシロップは噛みついたまま離そうとせず、無理に引っ張るとさらに牙を食い込ませてくるようだ。
「わん! わんわん!」
「ひゅひゅーん!」
シルバがシロップの尻尾を噛んで、引きはがそうとするがビクともしない。すると、シルバはヴィントを睨みつけてから一声鳴いた。
「……わん!」
「ガウ? ……ウォォォォン……!」
「何……? どうしたの……?」
苦痛に顔を歪めながらレジナとシルバを見ていると、おもむろに二匹はヴィントへと向かって行った。まさかヴィントを倒して正気に戻すつもり!?
すると、その時ママが駆け付けてくれた。
「大丈夫ルーナ?! ≪ヒール≫」
「あ、ありがとうママ……シロップ……お願い元に戻って……!」
「きゅ、きゅきゅーん!」
噛みついたままで構わないので、私はシロップを抱きしめて逃さないようにした。もがくシロップは困惑しているようだった。
今はとりあえずこうするしかない。
ひとまずシルバ達の様子を見ようと目を向けると、二匹は凄まじい勢いでヴィントへと襲いかかっていた!
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