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最終部:タワー・オブ・バベル
その253 腐食
しおりを挟むギェャァァァァ!
「魔法!? 落ちなさい!」
ボン、ボン、ボン!
魔族の女王アサールが呼びだした二種類の魔物は空を飛び、さらに炎の矢のような魔法まで使ってくるとんでもないヤツらだった! 私はレイジング・ムーンの魔力矢で魔法を撃ち落としつつ魔物の頭を貫いていく。
「数が多い、孤立したら狙われるぞ!」
「ガウ!」
「わぉーーん!!」
レイドさんの言葉にレジナ達も応戦する。あの五人も動いていない所を見ると、こいつらで十分と判断しているのか、それとも……? そう考えていると、チェイシャがセイラに近づき、作戦を提案していた。
<セイラ、ブリザーストームでなぎ払えんか? あのオバサンに一撃食らわせたいのじゃが。おっと、お主らは黙っとれ!>
二人に近づくグレーターを、チェイシャが尻尾三本使って魔力を放出した大きい魔法弾で消しとばし、その隙にセイラが魔法を使う。
「やってみるわ≪ブリザーストーム≫!」
ヒュォォォォ……
<動きが鈍った! 今じゃ!>
「私が前へ出よう!」
吹雪による攻撃でレッサーとグレーターの動きが鈍くなり、カルエラートさんが盾を構えて突撃する! あまり効いていないグレーターがカルエーラートさんを襲うがそれは私が矢で撃ち落す。
「五人組に注意してください!」
「ルーナか、助かる! さっさとお前を倒して終わらせるぞ!」
<その顔を苦痛にゆがませるがいいわ!>
カルエラートさんが攻撃を仕掛け、チェイシャが悪役みたいなセリフを言いながら麻痺と火炎弾を発射する。
すると、アサールがニヤリと笑い五人を下がらせる。
「何だ? 攻撃させないのか?」
レイドさんがそれを見て呟いた瞬間、アサールが前進した! タイミングを崩されたカルエラートさんが急停止する!
「のこのこと来おったな? 魔杖フューネラルよ!」
<何と!? わらわの魔法弾を消した!>
「くっ……!?」
杖を振って魔法弾を消した後、そのままカルエラートさんへと杖が降り降ろされた。が、盾でそれを防ぐ。
「まさか直接攻撃とは……」
「ククク……運が良かったな……」
「何?」
「カルエラートさん! 盾! 早く捨てて!」
私の叫び声に反応し、カルエラートさんが盾を見ると、杖が触れたところから徐々に色が変わり始めたのだ!
「まさか!?」
……ぶじゅう……。
乾いた音を立てて床に落ちた盾は真っ黒な何かに変わり果て溶けてしまった……何これ!?
ギャアァァァ!
カルエラートさんが動揺していると、レッサーとグレーターが頭上から襲いかかってきた。それをママがマジックアローで攻撃しながら二人に叫んだ。
「二人とも下がって! あれはちょっとヤバイわよ」
<ぬう、仕方ない……! さりとてこのまま下がる訳にもいかん……これでも喰らえ!>
「無駄なことを……それ!」
キィン!
「軽い……! これなら!」
魔法弾はあえなく霧散し、再びカルエラートさんに襲いかかるが、今度は闇の剣で受け止めることができた! 金属音が鳴り響くだけだったので、そのままアサールを弾き飛ばし、距離を空けて下がるカルエラートさん。
「ほう、この杖を受けても腐らないとはな」
「腐る……?」
私が訝しげに呟くと、アサールは高笑いをしながら口を開く。
「ホーッホッホ! そう、この杖は魔力を帯びさせると触れたものを腐らせる性質があるのじゃ。下で男どもが苦しそうにしておったじゃろう? あれは空気の中にこの杖の腐らせる能力を使って細菌を散布しておったからじゃ! ……そこの男は忌々しくも効いておらんようじゃがな」
ジロリとレイドさんを睨みつけながらそんな事を言う。
「この部屋からそんな事が出来るのか……!?」
「わらわが直接手を下さずともよかろう? お主たちは三十五階で戦った者がおるじゃろう」
「あいつか……!」
<話は後じゃレイド! 時間稼ぎじゃこれは>
「クク、聡い狐じゃ。数時間かはたまた数日か……もしかしたらもう死んでおるかもしれんのう」
「こいつ……! シューティングスター!」
「ハッ!?」
私はムカっときたのでアサールに向かって大技を放つ。この技は早い、もう間に合わないわよ……!
パチン
「……」
バシュウ……!
「消した!?」
心臓に放たれた矢はアサールが指を鳴らした途端、何者かが影になって遮られた。
「黄魔族……」
「フフフ、こやつらは自由意志はない。こうやって盾に使う事もできるし……行って来い!」
「……!」
アサールの声と共に炎の剣を持った赤魔族がレイドさんを、緑魔族と青魔族がセイラとママへ向かって行った。黄とピンクは手元に置いておくつもりらしい。
「あのスピードの遠距離攻撃はわらわでも危ないからのう。さあやれ! はらわたまで食い尽くしてやれ!」
ギャォォォォン!!
アサールに鼓舞され、魔物達が一斉に吠えた。並の冒険者ならこの時点で萎縮してもおかしくない圧力を感じる……!
アサールを倒せばこの戦いは終わる。そしてあのオバサ……女王自体は防御が薄いんだけど、散開した魔族達に阻まれ前へ進むことが出来ないでいた。
「くそ、こいつ斬ってもまるで動じないぞ!?」
「レイドさん、そいつに剣は効かないわ! 抑えててくれたら私がレイジング・ムーンで……」
「後ろだルーナ!」
「え!? ひゃあ!?」
レイドさんが赤魔族と交戦している所に矢を放とうとしたが、グレーター二匹に腕を掴まれ空高くへと抱えあげられてしまった!?
<ルーナ! 落とすから踏ん張れ!>
「ありがとチェイシャ!」
ボン!
ギャ!?
チェイシャの魔法弾を受けて片方のグレーターが私の腕を取りこぼし、宙ぶらりんになる。左腕が自由になった
らこっちのものだ!
「剣が無いからって甘く見ないでね!」
シャコン!
ザクリ!
ギャオゥ!?
隻眼ベアガントレットから爪を引き出し、私を掴んでいるグレーターの腕を串刺しにする。
「トドメ!」
ビシュ! ビシュ!
落ちながらすかさず矢を放ち、翼に穴を開けて落下させる。
「わんわん!」「きゅんきゅきゅん!」「きゅふー!」
ギャ!? ギャギャ!?
落ちたグレーター二匹はシルバ達に噛みつかれ砂に変わった。ナイスよ!
……って、私どうやって着地しよう!?
「≪ウインド≫!」
「ガウ!」
直後、ママのウインドで私の体がフワリとして落下速度が和らぎ、レジナが私を空中で咥えて着地に成功した。
「ありがとうママ! レジナ!」
「気をつけなさい! 無事で良かったわ!」
ママに手を振った後、レジナと態勢を整え周囲を見るが、あまり状況は芳しくない。盾の無いカルエラートさん、魔法を打ち消す青魔族に、剣の効かない赤魔族と戦うレイドさんと、相性が良くない。
<くっ……!?>
ギャァァァ!
「チェイシャ! ≪ヒール≫」
<すまん! キリがないわい、あの青魔族のおかげでわらわの攻撃はまるで役に立たん>
「……」
「小汚い狐め、粘るじゃないか……だがどこまで耐えられるかのう? 出でよ……!」
アサールが杖を掲げるとさらにレッサーとグレーターが数体現れた! どれだけ出せるのよ!? じわじわと追い込まれていく焦燥感が私達を襲っていた。
一体一体は強くないけどアサールに行くには邪魔すぎる、それにあの杖を無効化して近づいて攻撃できるのは恐らくレイドさんとカルエラートさんの闇の剣だけ……どうする……!?
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