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最終部:タワー・オブ・バベル
その252 異界
しおりを挟む「見えた! 四十階の扉!」
「よし、とりあえず中へ入るメンバーを決めよう」
私とレイドさんを先頭に、カルエラートさん、ウェンディ、チェイシャにカームさんとママ、お父さん。それにアルモニアさんと元の姿にもどったエクソリアさんが追いついてくる。
<わらわは行くぞ! あの喋り方、宣戦布告と判断するわい>
「人数は少ないから私も行くぞ」
「では自分も!」
「ま、私は絶対いくわよ?」
私、レイドさん、ウェンディにチェイシャとママで五人。残り一人だけど……。
<俺も行くぞ、魔族とやらが何かは分からんが面白そうだ>
「俺も魔族とやらは戦った事は無いから連れて行って欲しい」
「そういえば……お父さんはアンデッドだからともかく、カームさんも無事なのね?」
<我等は女神の力で創られているからな。恐らくそのせいだろう、カイム達があの程度で済んでいるのは死ぬほどマズかったが主の料理のおかげかもしれん>
『まずくて悪かったね!? シルバはボクが抱っこしていたからその影響から逃れられた、か?』
「わんわん♪」
「きゅんきゅん」「きゅふん!」
久しぶりの再会でじゃれ合っているシルバ達がエクソリアさんの言葉に反応して鳴き、レジナがぺろぺろと一匹ずつ毛づくろいをしてあげていた。
『七人ね。誰か残らないと入れないわよ?』
『ちょっと待ってくれ、さっきのカームが言ったように女神の力で弱める事ができるならボクか姉さんをぶつけるのはアリだね。でもここで力を使うのは得策じゃない。だからここはフレーレかセイラが適任な気がするよ? ボクが回復に回るから、どっちかを連れて来よう。だからカームとヴァイゼは今回見送ってくれないか?』
<むう……>
「……チェイシャ、変わってくれんか?」
<断固断る!>
がっかりした様子の二人を置いて、エクソリアさんは階下へと戻って行く。それを見ながらレイドさんが呟いた。
「できれば女神のどちらかには戦ってもらいたかったが……」
『大丈夫よ。黄金の騎士が言ってたじゃない、ボスの強さはそれほど変わらないって。だから十分対応できるわよ。神裂に向けて私達は少しでも力を残しておかないといけないから、ごめんなさいね』
「分かりました。それじゃ、セイラかフレーレが来るまで待……」
と、私がそう言った時、扉が勝手に開いた!
「ふふふ、何をごちゃごちゃと話しておるのじゃ? さっさと殺されにくればいいものを……怖気づいたか?」
扉の向こうに、茶髪ロングの女性が杖を持って立っていた。部屋の中はまるで内臓の中のような気持ち悪い部屋をしていた。
「趣味が悪いわね……もう一人来るからもうちょっと待ってて」
「……まあいい、わらわが慈悲をくれてやろう」
ニタリと口を歪めてこちらを見て笑う。まだ来ないであろうと思い、私は魔族の女性に尋ねてみる。
「あなたが魔族の親玉ってことでいいのね? あの五人は中々だったけど、私達には勝てなかったわね」
「ふん、その程度で粋がってもらっては困る……その五人というのはこいつらの事か?」
ずにゅう……という感じで気持ちの悪い床からそれがせり出してきた。こいつら……!?
「ふ、ふふ。驚いたか? 女神にできるのじゃ、魔族の女王たる我ができぬはずがあるまい? まあ、こやつらはお前達が戦った五人とは少し違うがな。自我を持たぬ人形のような物じゃが、わらわが使うには丁度いい」
ほーっほっほと笑う魔族をよそに、レイドさんが私に聞いてくる。
「あいつらは?」
「私達が三十五階で戦った魔族よ。それぞれ魔法吸収とか剣が効かないとかの特殊能力をもってるわ。結構面倒だったの」
「ふふふ、何を話しているか分からんが、何を企んでも無駄じゃ。今度こそ貴様等人間を根絶やしにして魔族の楽園を作り上げる! 神裂とやらは元人間のようじゃが、わらわが崇拝する悪神様に良く似ておる……あの時は不覚を取ったが、聖女の居ないこの世界でわらわを倒すことはできまいよ」
「え? 居るけど?」
「え?」
魔族の女王とやらがきょとんとした顔で私を見てくる。
「確かレイドさんのお母さんそうよね? で、今はセイラがそうなってるのよね?」
「あ、ああ。一応そうらしい。ただ最近のことだから聖女の力とかは良く分からん」
「だって。もしかしたら今から上がってくる子がそうだからー」
「うぬ……よもやまた聖女と戦う事になるとは……! まあいい、最近目覚めたのなら大した力は持っておるまい、まとめて始末して憂いを断ってくれる」
<それはこっちの台詞じゃ! 女王でその喋り方とはお主喧嘩を売っておるのか! わらわは元サンドクラッドの王女チェイシャ! 名を名乗れ!>
「なんじゃ、その小汚い狐は? わらわと同じだと? ふん、獣如きに名乗る名などないわ!」
<にゃにおー……!>
「がう!」
「わんわん!」「きゅきゅん!」「きゅふん!」
チェイシャと言い争いを続け、狼達が抗議の声をあげていると階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた!
「待たせたわね! 本職のフレーレを残してきたわ。私が戦わせてもらうわね」
上がってきたのはセイラだった。回復魔法ならフレーレの方が上だろうと言う事であがってきたようだ。意図しなかったとはいえ、これはありがたい。
「それじゃ、お望み通り……」
「行かせてもらう」
<目にもの見せてくれる……!>
私とレイドさんが扉を抜け、カルエラートさん、チェイシャ、ママ、そしてセイラとレジナ達が抜けると、扉に魔法障壁が張られた。これでこいつを倒すまでここから出る事は出来ない。ザッと、向こうの五人組もそれぞれ配置についたようだ。
「さて、死ぬ準備はできたかのう? あの時の屈辱はお前等で晴らさせてもらおう! 出でよ! グレーター! レッサー!」
「え!?」
魔族の女王が持っていた杖を高く掲げると、ぐにゃりと空間が歪み、そこから羽の生えた奇怪な生き物が何体も現れた!
ギャアギャア……!
「何て数……!?」
「ホーッホッホ! いい顔だ! 今更命乞いは聞かぬぞ?」
<でくの坊が何匹増えても同じ事よ、逆を返せばお主を倒せば全てが終わる訳じゃしのう>
「ふん、小汚い狐がペラペラと……! この魔族の女王アサールを倒せると思うてか! かかれ!」
「結局名乗るの!?」
「ルーナそこはどうでもいいからな!? チッ、来るぞ!」
何体居るかも分からない翼の魔物達が次々と私達に飛び掛かってきた!
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