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最終部:タワー・オブ・バベル
その251 合流
しおりを挟む<バベルの塔:三十九階>
魔族達を倒し、私達はそのまま一気に塔を登っていた。それというのも、三十四階まではキレイな部屋に通路だったんだけど……。
「来た来た!? 右よ!」
「もう、何なのよこいつ!」
三十六階は一転して不気味な洞窟風なダンジョンへと変化したのだ。それだけならいいけど、定期的に魔物が襲ってくる恐怖のダンジョンだった。その襲ってくる魔物というのが口だけの蛇みたいなやつで、動きもかなり素早い。
「射ぬくわ!」
ドシュ! 私の弓が緑の鱗に刺さり壁に張り付けると、フレーレがメイスで叩き潰した。
「ふう……気持ち悪いですね。他に魔物もいないですし……もこもこして居た魔物が懐かしいですね」
「きゅんきゅん」
フレーレが呟くと、シロップがフレーレの服の裾を引っ張っていた。それなら自分を可愛がれと言うのだろう。
「動きが素早いからルーナの弓はありがたいでありますな。一匹ずつだからいいでありますが、まとめてかかられたらひとたまりもありません」
そう、何故か口だけお化けは一匹ずつしか来ない。これは私の推測だけど、あいつら三十五階で足止めできる気でいて、三十六階からは手抜き設計なんじゃないかなって思う。
「あら、終点みたいよ?」
何匹倒したか分からない口だけお化けを放置して歩いていると、ママが行き止まりの先に扉を見つけていた。洞窟に似つかわしくないあの装飾は確かにそれっぽい。
「早く行きましょう、私こういう場所苦手なのよね……」
「セイラにも苦手なものがあったんだ?」
「人を何だと思ってるのよ、地味なくせに」
「なによ!」
「なに!」
<まあまあ落ち着くっぴょん。愛が足りないっぴょんよ?>
私達が睨みあっていると、リリーが足元にきてそんな事を言う。
「……やめましょ」
「そうね、役に立ってないリリーに言われるとちょっと冷静になるわね」
<なんでだっぴょん! 差別ぴょんよ!>
<ええい、うるさいわい!>
べしっとチェイシャの尻尾に弾かれころころと転がって行くがレジナに咥えられ事なきを得る。するとラズベが私達が来た方を見ながら吠えだした。
「きゅふん! きゅふん!」
「また来たでありますか!? みんな、早く扉へ!」
『こっちよ、急いで!』
もう相手にする理由は無いとばかりに慌てて扉へ向かうと、すでにアルモニアさんが扉を開けて待機していた
いつの間に……!
バタバタとなだれ込むように入り、バタンと扉が閉まった後、ガリガリと扉を齧る音が聞こえていた……。
「怖……」
「噛まれたら腕一本は覚悟しないといけなかったかもね」
「お兄ちゃん達と合流できるかしら」
「向こうは丁度六人だからボスと戦っている可能性はあるわね」
みんな強いし、大丈夫よね。ボスを倒して待っているかも! などと笑いあっていたあの頃を返して欲しいと思う状況が広がっていた。
◆ ◇ ◆
<バベルの塔三十九階>
「むう……やはり調子が悪いな」
「くぅーん……」
イノシシ型の魔物を切裂いたレイドが少し重そうに剣を鞘へ戻す。重さを感じさせない剣だったはずだが、体調不良が引きずっているようだった。
『まだダメかい? ボクのせいとはいえちょっと長い気がするんだけど……』
「私も本調子ではありませんね、でもお腹が痛いという事はないですよ?」
ニールセンがエクソリアを擁護する形で話をしていると、ディクラインが眉を顰める。
「……臭いな」
「お腹の調子が悪いですか?」
カイムがディクラインにニンジャが携帯用に使う薬を差し出すが、それは受け取らずにカイムへと返す。
「いやそうじゃなくてな、嫌な感じがするんだよ。下の階と比べて空気が悪くないか?」
「そう言われれば……」
若干甘い匂いがしているとレイドは感じていた。この三十九階に登った時からではなかったか、と。
「急いだ方が良さそうだな。ガスの類は俺には分からんし、エクソリアも無意識に魔法障壁を体に張っているから気付かないだろうし」
「行きましょう」
レイドが合図し、早歩きで洞窟を進むと、奥に行くにつれて匂いがきつくなってくるのが分かった。
「きついな。恐らく匂いが濃い方がゴールに違いない……一気に行くぞ」
『ルーナ程はで無いけど少し使っておこうか≪マジックスクリーン≫』
エクソリアが中級補助魔法を使い、全員に薄い膜のようなものが体を覆う。
「少し楽になった、助かるよ」
『ボクはシルバを抱っこして行くから、魔物達は頼むよ』
「わふ」
さらに奥へ進んでいくとやはりどんどん空気が悪くなっていき、視覚でも分かる程だった。体を覆っていた膜が無くなった頃、ようやく扉を発見することができた。
「助かった……!」
転がり込むように中へ入り、エクソリアが急いで扉を閉めた。
「くう……頭が……」
「大丈夫か? む、顔色が悪いな」
ヴァイゼがディクラインを寝かすと、青い顔をして息が荒くなっていた。同じく、カイム、ニールセンも辛そうに座り込んでいる。
「レイドは大丈夫なのか?」
「え、ええ……少し気分が悪いですけど、倒れ込むほどでは……あ、階段がありますよ」
『ここの上がボス部屋で間違いなさそうだね……向こう側に扉があるから、ルーナ達も来るかもしれないね』
「先に行っている、ということは無いでしょうか?」
『無くはないけど、向こうは数が多いから、もし先に行ったとしてもここに誰かを残すんじゃないかな? 居ないと言う事はまだ到着していない、そういうことだろう』
「では申し訳ありませんが少し休ませてもらいましょう……」
ニールセンが鎧を脱ぐと、灰色に近い緑色をした斑点が体にできていた。
「……? なんだこれ……」
「俺にもあるな……」
ディクラインとカイムも腕を見ると斑点が広がっていた。そこにレイド達が入って来た扉とは逆の扉がガチャリと開き、アルモニアが入ってきた。
『姉さんか!』
しかし、扉との距離は離れているためエクソリアの聞こえていないらしく、続けて慌ただしくルーナ達が駆けこんできた。こちらに近づいてくる気配があり、
「お兄ちゃん達と合流できるかしら」
「向こうは丁度六人だからボスと戦っている可能性はあるわね」
「みんな強いし、大丈夫よね。ボスを倒して待っているかも!」
「水蒸気ですね!」
「何それ?」
「期待(気体)しているってことです!」
「あんたは……」
わいわいと女性陣が近づいて来た所で、全員無事のようだとレイドが安堵しながらルーナに声をかけた。
「ルーナ!」
「あ! レイドさん! って、ええ!? どうしたのパパ!?」
「カイムさんも、ニールセンさんも、ですか?」
フレーレとセイラが駆け寄り、容態を確認する。
「これってカビ……? フレーレ、状態回復魔法を使うわよ」
「は、はい! ≪キュア≫」
パァっと光が体を包み込み、少し容態が治った。
「これだけ……!? 何度もかけるしかないわね……!」
「だ、大丈夫……パパ?」
「ディクラインは私が治すわ、フレーレはカイム、セイラはニールセンを」
テキパキと治療を始めたママたちだったが、その直後どこからともなく声が聞こえてきた。
「フフフ、全員まだ生きているようじゃな? しかし時間の問題……男どもを助けるにはわらわを倒すしかないぞ? さあ、上がってくるが良い!」
「随分自信がありそうね、フレーレ、セイラ、ここを任せたわ。ママは回復役で一緒に来て」
「……そうね、さっさと倒した方が早そうだし、行くわ」
気を付けてください、とフレーレ達に見送られ、ルーナ達は四十階へと急いだのだった。
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