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最終部:タワー・オブ・バベル
その250 打倒
しおりを挟む「二人の仇だよ、死んじゃえ!」
「三人になったからって俺達が弱くなったわけじゃねぇからな」
「先ほどの礼はさせてもらおう」
三人になった魔族達が襲いかかってくる! 私と一緒に先頭に出ているカルエラートさんに緑の魔族が立ちはだかった。即座に反応し、剣で突き刺す。
「カルエラートさんダメ! 緑のヤツは柔らかくて剣での攻撃が効かないです!」
「む!?」
カルエラートさんの剣が胸に突き刺さるが、ものともせず剣が刺さったまま笑う。
「あはは♪ これはどうかな?」
ずるり、と体が崩れ足元に水たまりのようになり、床を移動してカルエラートさんの横へ出て死角をついて攻撃をしていた! こいつ……液体になるの!? ならここは……!
「助けにはいかさん。お前はここで殺す」
一旦カバーへ入ろうとしたけど黄の魔族が私に攻撃をし、動きを封じられる。だったら私はこいつの足止めをしてやるわ!
「アルモニアさん、赤いのを頼みます! 緑のやつにはセイラの氷魔法で!」
「そうか……! カルエラートさん離れて! ≪ブリザーストーム≫で!」
緑魔族の素早い攻撃を打ち合っていたカルエラートさんがセイラの声に飛びのくと、ブリザーストームが緑魔族に直撃をした。
「あはは! 狙いはいいけど良ければ問題ないよね? ざーんねん♪」
緑魔族は吹雪の範囲外に逃げようとしたが、残念ながらそれは出来なかった。こっちは人型だけがパーティではないからだ!
<ふっふっふ、甘いのう。ラズベ、押し込むぞ!>
「きゅふぅん!」
「いつの間に!? くたばっていたんじゃ……!」
<やられたフリは常套じゃろ? それ、凍りつくがよい!>
ラズベとチェイシャが緑魔族に体当たりをして吹雪の方へと押し返す。完全には凍らなかったけど、半身は動かなくなった。
「ぐうう……ぼ、僕がこんなところで……!」
<砕け散れ! 散魔弾!>
ガガガガガ!
チェイシャの魔法弾がいつもの一発ではなく、何発もの小さい弾となって緑魔族の体を射ぬいていく。半身が粉々になり床に倒れ込んだ。
「グリューン!」
『分かれて攻撃したのは失敗だったわね?』
「ほざけ、俺に槍の攻撃はきかねぇぞ!」
言葉通り、赤魔族はアルモニアさんの槍を片手で御しながら剣を振っていく。ダメージは取れていないがうまく助けには行けないよう立ち回っている。
そして……
「氷漬けになって砕かれても生きていられるかしら! ≪コフィン・オブ・アイス≫」
「くそ! くそっぉぉ!! クソ、ォ……」
ビキビキビキ……
床までも凍らせるセイラの上級であろう魔法が緑魔族の体を包み込む。抵抗する間もなくあっという間に氷漬けとなったところでセイラが駆け出した。
「トドメよ、チェイシャ!」
<任せておけ 特大の魔法弾じゃ!>
「≪アイシクルブレード≫!」
「きゅふきゅふ!」
チェイシャの魔法弾が頭を粉々に吹き飛ばし、氷の剣が胸に突きたてられた。ラズベはぴょんぴょん飛び跳ねて二人を応援する。セイラの一撃が入った直後、ガラス細工のように緑魔族の体は粉みじんと化した。
<これで復活はできまい>
「残り二人……!」
「グリュゥゥン!! くそ、全力で戦って勝てねぇとは……! こうなったら……」
「む、ロート!? それは!?」
『何をする気かしら!』
槍を握ったまま離そうとしない赤魔族を見て黄色魔族が驚愕の声をあげる。魔力が収束している……まさか自爆!?
アルモニアさんを巻き込まれたらマズイ!?
「ゲルプ、後はまかせ……ぐあああああ!?」
「何をするつもりか分かりませんけど、聖魔光をまとったモーニングスターならどうですか!」
がら空きのお腹にフルスイング! 槍を手放して後ろへ吹き飛ぶ赤魔族にすかさずママの魔法が串刺しにする。
「≪マジックアロー≫! 単純だけど威力は十分あるわよ」
ドスドスドス! 吹き飛びながらマジックアローが体に突き刺さった。
「うぐぐ……こ、ここまでか……人間ごときに……うお!?」
ドッ! という爆発と共に爆散する赤魔族。フレーレが吹き飛ばしてなかったら巻き込まれていたかもしれない爆発だった。
「残りはあんただけね……!」
「せめて貴様だけでも……!」
ギリギリ……私の剣と黄魔族の爪でお互いを押し合う。あれ? フレーレと違って地味じゃない私?
「ルーナ!」
「大丈夫、こいつの動きはさっきのでもう見切ってるから! 煉獄剣!」
「ハッ! こちらとてその技は見切っているわ!」
「でしょうね! でもそれが命取りよ!」
黄魔族が煉獄剣の横なぎに素早く反応して下がるが、それを読んでいた私はすぐに剣を捨て、弓に持ち替えていた。
「わざと避けさせた……だと!?」
「力押しだけじゃ勝てないって教わったばかりだからね! ここは進ませてもらわ!」
ヒュ……!
「だが俺に飛び道具は効かん……ぞ!?」
私の放った矢を打ち消そうと手を前に突き出し、ニヤリと笑ったところで黄魔族の首が胴体と別れた。後ろに居るのは大剣を振り抜いた……ウェンディだった。
「で、ありますな。だから自分がその首を頂戴するのでありますよ」
私の矢は囮。こちらに目を向けさせてウェンディの移動を妨げるのが目的だったのよ。
「い、いつの間に!? ……魔族の世界を……!」
ボヒュ……
音を立てて砂に変わり最後の魔族も倒す事が出来た。
「やりましたね!」
「ありがと。でもとどめはウェンディだし、どちらかと言えばフレーレの方が凄いんだけど……」
「地味だからって腐らない腐らない」
セイラが笑いながら私の肩に手を置いてそんな事を言う。地味……私魔王の娘なのに……。
「何とかなったな。こっちは魔王のルーナや女神アルモニアにセイラが居たからいいようなものの、通常の騎士や冒険者ではかなり犠牲が出てもおかしくないな……」
「確かにそうね。少なくとも神裂のいる百階までは潰しておかないといけないかもしれないわね」
カルエラートさんとママが魔族達の成れの果てを見ながら言う。確かに私達は少し特殊な装備や能力を持っているから戦えるけど、通常の剣や魔法だけでは搦め手に対してかなり苦戦すると思う。
<ともあれ先へ行こう。しかしここでレイド達と合流ができなんだとは……もしかするとボスも二人いる可能性があるのう>
「四十階か……魔族の親玉ってやつかしらね?」
「だとしても負けるつもりはないけどね」
レイドさんと無事再会できるまで、と願いながら私達は三十六階へと向かうのだった。
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