パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その249 魔族

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 「ヴァッサーシュナイデン!」

 「チッ、ロート頼む!」

 「嬢ちゃんの剣は届ないぜ!」

 ガキン! 竜の鱗のような皮膚に阻まれ、私の剣が赤髪の男に防がれる。

 「いいぞ、ロートそのまま抑えててくれ!」
 
 競り合いになったところで横から黄髪の男が長く伸ばした爪で私のお腹へ攻撃を仕掛けてきた。身をよじって赤いのを盾にするか考えたけど、その余裕は無くなった。

 「右からも!?」

 「こっちは五人居るんだ、ここで倒れてもらうよ♪」

 緑髪の魔族が細い目をさらに細めて、ダガーで突きかかってくる。一旦離れるしかないか! バックステップで爪とダガーを回避し、トトン、と、後ろに下がる。

 「ヒュウ、判断が早いな! でもまだまだ行くぜ!」

 だが、ロートと呼ばれた赤髪の魔族がバックステップをした私に追撃を仕掛けてきた。三人相手はやっぱりきついわね。とりあえず青は魔法、赤は剣が効かないのは分かったから、ここは黄色を狙ってみよう!

 「≪ドラゴニック・アーマー≫! 突撃ぃ!」

 「げ!? マジか嬢ちゃん!」

 補助魔法をかけてバックステップの着地と同時に赤魔族へと突撃する。そこは予想外だったのか、タックルをまともに受けて吹っ飛ぶ赤。反動を利用して左に居る黄色へと飛び、手首を狙うと手ごたえがあった!

 「こいつは効くみたいね!」

 「ぐ……舐めるなよ……!」

 「きゃ!?」

 すれ違い様に後頭部へ打撃を受け、私は思わずたたらを踏む。ドラゴニック・アーマーのおかげでダメージは殆どない。

 「ありゃ、固いね?」

 カン、カキン!」

 「早い!?」

 私が態勢を整えようと振り向くと、すでに緑髪がダガーを私に突きだしていた。アーマーが無かったら肩をやられていたかもしれない。カウンター気味に剣を突きだすと、緑の胸に突き刺さるが……。

 ぐにゃり……

 「気持ち悪い!?」

 「あはは♪ 僕の体に剣は効かないよ、この通り軟体だからね」

 こいつは魔法が効くかな? アルモニアさんと一緒に戦っているセイラに目配せをして声をかける。

 「セイラ! 緑のやつに魔法を!」

 「! 勿体ないけど新魔法よ! ≪極氷の槍≫!」

 セイラの声で魔法が完成し、氷で出来た槍が数本セイラの目の前に現れ、手をかざすと一斉に飛んで行った!

 「おっと!? へへ、これは効かないんだよね!」

 「ぐあ!?」

 と、緑魔族が得意気に言ったところで、その後ろから悲鳴があがった。

 「き、貴様……!?」

 「あんたには剣が効くみたいだったから、悪いけど便乗させてもらったわ」

 私はセイラの魔法が完成したと同時に回り込むように走っていた。ピンク以外はセイラの魔法へ釘付けになっていたので死角から左手を落としてやったのだ。青いヤツは自分に向かってくる魔法を打ち消していたので、こっちのフォローには回れまいとの判断だった。

 「下がれゲルプ! くそったれ、意外とやってくれる! グリューンは俺とこの嬢ちゃんを、ブラウはローゼとのとこへ行け」

 「承知した。今のは私の失態だ、魔法使いは必ず止めよう」

 ザザっと配置を変え、私の前には赤と緑。セイラの所へ青とピンクが立ちはだかった。仕切り直しにはちょうどいいかな。青とセイラが睨みあう中、アルモニアさんの槍がピンクを捉えていた。

 『攻撃は効くみたいね、何がお得意なのかしら?』

 「得意、と言うほどでもないがこういうのはどうだ?」

 ピンクが剣を振りながら、アルモニアさんに向けて口から煙を吐いた。

 『この甘い匂いは……! なるほど、あなたは状態異常が得意といったところかしら!』

 「チッ……やはり女神には効かないか、こうなったら……」

 『向かってきた!? 敵ながら度胸はあると言っておくわ! でもこの槍からは逃れられないわよ』

 カン! キキン! ドシュ! ブオン!

 「ぬう!?」

 アルモニアさんの攻撃を防ぎながら特攻するがピンクの攻撃は届かない。かろうじて薄皮一枚傷つけることができたが、槍の横薙ぎで大きく吹き飛ばされた。

 「ローゼ!」

 「心配するな、予定通りだ、こいつがどうなってもいいのか?」

 「予定通り……? あ!?」

 セイラが青魔族にメイスで殴りかろうとして急停止。それもそのはず、ピンク魔族がフレーレの頭を掴んで抱え上げていたからだ。

 「う……」

 「そっちの騎士は強そうだが、こいつなら頭がトマトみたいに潰せそうだ」

 「ダメだよ! その子は僕のだよ!」

 「やかましい!? だったらさっさとそいつらを始末しろってんだ!」

 ピンクがフレーレを抱え上げたまま叫ぶと、グリューンと呼ばれた緑魔族がポンと手を打って私にダガーを向ける。

 「それもそうだね♪ ……さあ、覚悟してもらうよ」

 「いい気はしないが、しかたねぇ。覚悟しな!」

 「くっ……!?」

 
 「お前も抵抗するんじゃないぞ?」

 「最低ね! きゃあ!?」

 私とセイラが攻撃を止めると、魔族は私達に攻撃をかけてくる。私はアーマーがあるけど、セイラにはかけていないからマズイ……!

 『セイラ!』

 「動くな! 女神しぶといらしいから全員で八つ裂きにしてやる、動いてもいいがこいつが先に死ぬことになるぞ? それとも見殺しにして俺達を全員倒すか?」

 ミシミシ……

 「あ、うう……」

 『フレーレ……!』

 
 「それそれ!」

 「ぐ……!? うあ……!」

 アルモニアさんも動けなくなり、私とセイラは一方的に攻撃される。何か考えないと……私の相手が一人なら振り切ってピンクにいけるのに!

 パリン!

 「割れた!?」

 「ひゃは♪ やっとだね!」

 「まだ……!」

 ドラゴニックアーマーを破られた私が剣で防御をしようとしたその時、それは起きた。

 「ふ、ふふ……」

 「ん? まだ動けたのか……? だが、身体は痺れて動けまい。仲間が死ぬところを見ておくんだな」

 「……本当にそう思っているんですか?」

 「何?」

 「わたしのジョブはアコライトです……そしてその前はビショップ。回復魔法は、得意なんですよ……!」

 ゴキッ!

 フレーレを掴んでいたピンク魔族の手から嫌な音が聞こえてきた! もちろんフレーレの聖魔光でへし折った音だ!

 「あが……!? き、貴様……!?」

 「強力な毒でしたから回復までに少しかかりましたが、もう平気です! 近づいてくるのを待っていました。えい!」

 ドゴン! メキメキ……! 

 「おぶぇぇぇ!?」

 えい! の掛け声は可愛いが、ピンク魔族の腹に突き刺さった拳の音は凶悪だった。

 「あれ、何かしら……?」

 フレーレの右手は光輝き、左手は漆黒の闇のように黒かった。右手で殴りつけた後、左手でサイド同じところを殴ると、勢いよく爆発してピンク魔族が吹っ飛ぶ!

 「聖魔光バージョンフレーレとでもつけましょうか。聖なる力と魔の力を交互にぶつける事で相反したエネルギーの塊を爆発させることができるわたしのアレンジ技です!」

 「おのれ、まさかこんな技を……! こうなったら……」

 「ローゼ!?」

 これも修行の成果、とばかりに鼻息を荒くするフレーレ。だが、ピンクの魔族はまだ息がある、そう思っていた次の瞬間……。

 「こうなったら何だ? 悪いが、ここで終わりだ」

 「ハッ!?」

 フレーレの魔法で回復したカルエラートさんがピンク魔族の真横に迫り、闇の剣を振り降ろす……!

 「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 瞬時に首を刎ね、胴を真っ二つにしてしまった。直後、ボソっと全身が砂に変化し崩れ去った。

 「ば、ばかな……!?」

 青魔族が驚愕した顔でピンク魔族が消えるのを見ていた。

 「余所見は危ないんじゃない?」

 「ごほ!?」

 セイラのメイスが青魔族の頬にヒットし、身体をよろけさせる。そしてアルモニアさんの槍がその胸を貫いた!

 『これで二人』

 「バ、カナァァァ!?」

 ザァ……っと砂になって消える青魔族。私も目の前の二人を力ませに剣を振って攻撃する。二人の魔族は急いで後退していった。

 「うわわ!?」

 「チッ……情報が違うじゃねぇか。おい、ゲルプいけるか?」

 「何とかくっついた。7割というところか」

 「まだやるつもり? 魔法はもう防げないわよ?」

 「言ってろ、逃げたところで殺されるだけだ。魔族ってのはそういうもんなんだよ」

 「では倒させてもらう。ここを通らないといけないからな」

 「それじゃ皆、一気に蹴散らすわよ!」

 私の合図で魔族へと攻撃を開始した!
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