パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その243 分断

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 男性と女性に分断されてしまったルーナ達。

 むさくるしい男性パーティの様子をご覧いただきたい……扉をくぐったレイド達が見た迷路は……。


 「塔の中というより洞窟に近いな」

 「ああ、全体的にひやっとしているし、何より不気味だ」

 男性パーティが足を踏み入れた場所は、鍾乳洞のような作りの迷宮だった。ポタリポタリと突き出た岩肌からしずくが垂れる音が静かに聞こえていた。

 「俺は過ごしやすいと思うが……」

 ヴァイゼがなぜか深呼吸をしながら呟くと、それにディクラインが突っ込んだ。

 「お前はアンデッドだからそうだろうけど、普通は不気味に思うっての……とりあえず進むぞ」

 ディクラインの言葉で奥へと進んでいく一行。三十階まではきれいな整理されたフロアだったが、このフロアは捻じれた通路や、小さな坂といった天然自然の洞窟を模しているようで、どこをどう歩いたかが分かりにくくなっているようだった。

 「向こうはどうなっていますかね……フレーレさん達、無事だといいですが」

 「マッピング用の魔法板はルーナちゃんに持たせているから迷うことはないと思う。それに戦闘力も人数も向こうのほうが多いしな」

 『向こうは姉さんも居るし、問題ないだろうね。むしろこっちのほうが心配だよボクは』

 「こっちだって勇者二人に忍びに聖騎士に魔王がいるんだぞ?」

 「わんわん!」

 「お、シルバも頑張るって言ってるみたいだぞ」

 『いや、ボクが心配しているのはそういう意味じゃ……』

 と、エクソリアが口を開いたところでニールセンが叫んだ。

 「皆さん! 気を付けてください! お出ましのようですよ!」

 「珍しく正面からか、行くぞ」

 現れたのは洞窟に相応しいというべきか、スケルトンと巨大な芋虫型のモンスターだった。まずは発見したニールセンがアロンダイトで斬りかかると、硬そうな背中をしていた芋虫があっさりと真っ二つになり小さく呻きながら息絶える。そのまま二匹目も返す刃で横薙ぎに斬ると、何の抵抗もなく絶命した。

 そしてレイドとディクラインの前にはスケルトンが三体。預かった剣であるガラティーンを抜いてディクラインが先制を仕掛けた!

 「見た目より軽いな……! というかあれか、正午までは強くなる能力のおかげか?」

 ヒュヒュンと振り、バックステップでレイドのところまで戻ってくると、スケルトン二体は何もできずにぐしゃっと潰れるように朽ち果てた。最後の一体はカイムが天井からの奇襲で首を落とされ動かなくなる。

 「やるじゃないかニールセン」

 レイドが声をかけると、ニールセンが口元を緩めて答えた。

 「いえ……皆さんに比べればまだまだ……真にすごいのはこの剣ですよ。これならホイットの魔法剣ともやりあえそうです」

 <確かに。あの魔法剣は使い手によっては性能が大きく上下するから、恐らくヤツでは完全に使いこなせなだろう、そこに勝機はある>

 「ええ、道中で是非皆さんとの連携に慣れておきたいところです」

 「な、エクソリア。このパーティなら四十階まですぐだって。俺とニールセンで前衛を務めるから、ヴァイゼとレイドはサイドを頼む。カームは後方だな」

 「分かりました」

 『うーん、まあ一気にいけば大丈夫、かな?』

 エクソリアはあまり乗り気でない感じでつぶやくが、男性陣は気にせずに歩き始める。彼等はそのまま幾度かの戦闘を経て三十二階への階段を無事発見する。

 しかし、エクソリアの予想は的中し、この後レイド達は予想だにしない展開を迎えることになる……。


 ◆ ◇ ◆


 レイドさん達と別れて扉をくぐった私たち。少し歩くと、明るくなった場所へ辿り着いた。

 「ずいぶん綺麗なフロアですね? なんだかお城の庭みたいな……」

 「そうね、十五階にも小屋とか池があったから珍しくはないけど、これは出来すぎてるかも?」

 フレーレが言う通り、このフロアはまるで連続した箱庭のようなフロアだった。道はあるんだけど少し進むと部屋のようになっていて、その部屋に池や草むらがあるといった感じなのだが、扉のない部屋と部屋が通路で繋がっている、といえば伝わるかしら……。

 「何が出てくるかわからない、私が前を務めよう」

 カルエラートさんが楯を構えて前進し、そのすぐ後ろにウェンディがついた。私とチェイシャが一番後ろで、ママ、フレーレ、セイラ、リリーとレジナ、シロップにラズベを真ん中にして固まって動いていた。

 「あれビーバーではありませんか? 自分は初めて見ました」

 「こんなところに? でもよく見たら鳥なんかも飛んでいるわね」

 明らかに怪しい。もしかすると近づくと襲い掛かってくる罠かもしれない……女性しかいないと分かっているはずなので、かわいいものでおびき寄せようとしている、そんな気がしたが……。

 「シロップとラズベのかわいさには勝てませんねー! それに毛むくじゃらだしわたしは好きじゃありませんね」

 「まあ可愛くても塔の攻略が楽になるわけじゃないしね」

 「食料になるといいんだけど、ビーバーはねぇ……」

 散々な有様だった。私たちに女子力というものは……ないのだ……! すると初めて見たというウェンディが恐る恐る剣を持ったまま近づいていく。

 「やめておいたほうがいいわよ? ほぼ間違いなく罠よ」

 「うぬぬ……このつぶらな瞳に負けそうであります……な、撫でたい……」
 
 と、ウェンディが触ろうと手を出したところで、ビーバーの目が赤く光り、その体を大きくした!

 「ああ!? か、可愛くなくなったであります!?」

 「それみなさい! 私が先制するわ!」

 ギシャアアアア!

 ウェンディに巨大な爪を振り下ろすが、それをカルエラートさんの盾がしっかりガード! その隙に私の矢がビーバーの左目を打ち抜き、フレーレのモーニングスターがすねの当たりを直撃した。

 ギシャア!?

 「頭が下がったわね≪マジックアロー≫」

 <わらわも手伝うぞ! 毒魔法弾!>

 ドシュ! ボウン! と、それぞれ下がった頭にヒットしもだえるビーバー。そこにセイラのアイシクルソードが眉間を貫き、ウェンディが首を落とす。

 ズゥゥゥン……


 「ふう……申し訳ないであります……!」

 「ま、いい勉強になったってことで。次から気を付ければいいわよ!」

 そういって私たちは先に進む。似たような大きさの部屋が何度も続き、そのたびに可愛い動物や鳥が顔を出すが、シロップよりかわいい生き物が出てこない時点で引っかかることはなかった。

 そして、三十二階へとつながる階段を見つけるが、次の階から魔物の動きが不思議なことに気づくことになる。

 
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