222 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル
その243 分断
しおりを挟む男性と女性に分断されてしまったルーナ達。
むさくるしい男性パーティの様子をご覧いただきたい……扉をくぐったレイド達が見た迷路は……。
「塔の中というより洞窟に近いな」
「ああ、全体的にひやっとしているし、何より不気味だ」
男性パーティが足を踏み入れた場所は、鍾乳洞のような作りの迷宮だった。ポタリポタリと突き出た岩肌からしずくが垂れる音が静かに聞こえていた。
「俺は過ごしやすいと思うが……」
ヴァイゼがなぜか深呼吸をしながら呟くと、それにディクラインが突っ込んだ。
「お前はアンデッドだからそうだろうけど、普通は不気味に思うっての……とりあえず進むぞ」
ディクラインの言葉で奥へと進んでいく一行。三十階まではきれいな整理されたフロアだったが、このフロアは捻じれた通路や、小さな坂といった天然自然の洞窟を模しているようで、どこをどう歩いたかが分かりにくくなっているようだった。
「向こうはどうなっていますかね……フレーレさん達、無事だといいですが」
「マッピング用の魔法板はルーナちゃんに持たせているから迷うことはないと思う。それに戦闘力も人数も向こうのほうが多いしな」
『向こうは姉さんも居るし、問題ないだろうね。むしろこっちのほうが心配だよボクは』
「こっちだって勇者二人に忍びに聖騎士に魔王がいるんだぞ?」
「わんわん!」
「お、シルバも頑張るって言ってるみたいだぞ」
『いや、ボクが心配しているのはそういう意味じゃ……』
と、エクソリアが口を開いたところでニールセンが叫んだ。
「皆さん! 気を付けてください! お出ましのようですよ!」
「珍しく正面からか、行くぞ」
現れたのは洞窟に相応しいというべきか、スケルトンと巨大な芋虫型のモンスターだった。まずは発見したニールセンがアロンダイトで斬りかかると、硬そうな背中をしていた芋虫があっさりと真っ二つになり小さく呻きながら息絶える。そのまま二匹目も返す刃で横薙ぎに斬ると、何の抵抗もなく絶命した。
そしてレイドとディクラインの前にはスケルトンが三体。預かった剣であるガラティーンを抜いてディクラインが先制を仕掛けた!
「見た目より軽いな……! というかあれか、正午までは強くなる能力のおかげか?」
ヒュヒュンと振り、バックステップでレイドのところまで戻ってくると、スケルトン二体は何もできずにぐしゃっと潰れるように朽ち果てた。最後の一体はカイムが天井からの奇襲で首を落とされ動かなくなる。
「やるじゃないかニールセン」
レイドが声をかけると、ニールセンが口元を緩めて答えた。
「いえ……皆さんに比べればまだまだ……真にすごいのはこの剣ですよ。これならホイットの魔法剣ともやりあえそうです」
<確かに。あの魔法剣は使い手によっては性能が大きく上下するから、恐らくヤツでは完全に使いこなせなだろう、そこに勝機はある>
「ええ、道中で是非皆さんとの連携に慣れておきたいところです」
「な、エクソリア。このパーティなら四十階まですぐだって。俺とニールセンで前衛を務めるから、ヴァイゼとレイドはサイドを頼む。カームは後方だな」
「分かりました」
『うーん、まあ一気にいけば大丈夫、かな?』
エクソリアはあまり乗り気でない感じでつぶやくが、男性陣は気にせずに歩き始める。彼等はそのまま幾度かの戦闘を経て三十二階への階段を無事発見する。
しかし、エクソリアの予想は的中し、この後レイド達は予想だにしない展開を迎えることになる……。
◆ ◇ ◆
レイドさん達と別れて扉をくぐった私たち。少し歩くと、明るくなった場所へ辿り着いた。
「ずいぶん綺麗なフロアですね? なんだかお城の庭みたいな……」
「そうね、十五階にも小屋とか池があったから珍しくはないけど、これは出来すぎてるかも?」
フレーレが言う通り、このフロアはまるで連続した箱庭のようなフロアだった。道はあるんだけど少し進むと部屋のようになっていて、その部屋に池や草むらがあるといった感じなのだが、扉のない部屋と部屋が通路で繋がっている、といえば伝わるかしら……。
「何が出てくるかわからない、私が前を務めよう」
カルエラートさんが楯を構えて前進し、そのすぐ後ろにウェンディがついた。私とチェイシャが一番後ろで、ママ、フレーレ、セイラ、リリーとレジナ、シロップにラズベを真ん中にして固まって動いていた。
「あれビーバーではありませんか? 自分は初めて見ました」
「こんなところに? でもよく見たら鳥なんかも飛んでいるわね」
明らかに怪しい。もしかすると近づくと襲い掛かってくる罠かもしれない……女性しかいないと分かっているはずなので、かわいいものでおびき寄せようとしている、そんな気がしたが……。
「シロップとラズベのかわいさには勝てませんねー! それに毛むくじゃらだしわたしは好きじゃありませんね」
「まあ可愛くても塔の攻略が楽になるわけじゃないしね」
「食料になるといいんだけど、ビーバーはねぇ……」
散々な有様だった。私たちに女子力というものは……ないのだ……! すると初めて見たというウェンディが恐る恐る剣を持ったまま近づいていく。
「やめておいたほうがいいわよ? ほぼ間違いなく罠よ」
「うぬぬ……このつぶらな瞳に負けそうであります……な、撫でたい……」
と、ウェンディが触ろうと手を出したところで、ビーバーの目が赤く光り、その体を大きくした!
「ああ!? か、可愛くなくなったであります!?」
「それみなさい! 私が先制するわ!」
ギシャアアアア!
ウェンディに巨大な爪を振り下ろすが、それをカルエラートさんの盾がしっかりガード! その隙に私の矢がビーバーの左目を打ち抜き、フレーレのモーニングスターがすねの当たりを直撃した。
ギシャア!?
「頭が下がったわね≪マジックアロー≫」
<わらわも手伝うぞ! 毒魔法弾!>
ドシュ! ボウン! と、それぞれ下がった頭にヒットしもだえるビーバー。そこにセイラのアイシクルソードが眉間を貫き、ウェンディが首を落とす。
ズゥゥゥン……
「ふう……申し訳ないであります……!」
「ま、いい勉強になったってことで。次から気を付ければいいわよ!」
そういって私たちは先に進む。似たような大きさの部屋が何度も続き、そのたびに可愛い動物や鳥が顔を出すが、シロップよりかわいい生き物が出てこない時点で引っかかることはなかった。
そして、三十二階へとつながる階段を見つけるが、次の階から魔物の動きが不思議なことに気づくことになる。
0
お気に入りに追加
4,221
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。