パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
上 下
198 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル

その219 虚言

しおりを挟む
 
 転移陣を抜けた先はもちろん外。十階の転移陣の隣に新しく出来たものが二十階へ直通でいけるようになっている。
 
 「うう……ぐす……」

 「……」

 フレーレは泣きながら歩き、他の皆も言葉を発する事はなかった。一筋縄ではいかないであろうと覚悟してきたつもりだけど、その場面に遭遇すると割り切れるものじゃなかった。
 拠点へ戻ると、チェイシャとカルエラートさんが出迎えてくれた。

 <戻ったか>

 「うん……」

 「話はチェイシャから聞いている。とりあえず皆ゆっくり休んでくれ、ビューリック国のメンバーが増えたから拠点の拡張でうるさいかもしれないが……」

 「俺はアイディールを休ませてくる。セイラは?」

 「フレーレの使っていたベッドが空いているからそれを。セイラはたまに目を覚ますが……起きていてもぼんやりとしているな」

 様子を見に行くと言って、パパとレイドさんが小屋へと向かう。私とフレーレ、それに女神様姉妹は新しく建てられた少し大きめの小屋へと案内された。お父さんは二十階に残ると言って帰って来なかった。


 「ふう……」

 <アネモネの最後はどうじゃった?>

 ベッドへ腰掛けると最初に口を開いたのはチェイシャだった。私はカバンから袋を取り出し、チェイシャに言う。この袋はアネモネさんが崩れた欠片が入っている。

 「最後は……笑っていたわ。世界を頼むって……ねえ、チェイシャも……そうなの?」

 <……>

 チェイシャがチラリとエクソリアさんの方を見ると、エクソリアさんはコクリと頷き、チェイシャはまた私を見て話し始める。

 <うむ。思ったより早く使うことになったとは思うが、概ねアネモネに起こった事と同じじゃ>

 「……でもチェイシャの元の姿はただの王女じゃないか。今の姿の方が強いんじゃないのか」

 レイドさんやママと一緒にサンドクラッドへ行ったカルエラートさんがチェイシャを抱き上げながらそんな事を言う。そういえば元の姿の時はポンコツだとか言ってたっけ・

 <……そう、そうじゃな! わらわはこっちの方が強いんじゃ! 言われてみれば人化の法を使う必要は無いのう!>

 「本当に? まあ、リリーとかも役に立たなさそうだし……」

 <ぴょん!?>

 「ふふ……」

 『……』
 
 冗談を言い合い、何とか気を取り直し私達は一度仮眠を取る事にした。エクソリアさんが神妙な顔をしているのが少し気になったけど、カルエラートさんが晩御飯ができたら呼ぶということで、疲れがピークに達していたす私達はすぐ寝入ってしまった。


 ◆ ◇ ◆


 「では私は厨房へ行ってくる。今日はクラウスとシルキーが買い物に出ているから少しはマシなものが用意できると思う」

 そう言ってカルエラートはセイラ達が寝ている小屋へと戻って行く。残されたチェイシャ達が歩きながら話し始める。

 <ふう、誤魔化せたとは思わんがひとまず大丈夫かのう>

 『そうだね……騙しているようで気は引けるけどね』

 <大丈夫だっぴょん、主達はそもそもこの世界を壊すつもりだったんだから、今更だっぴょん>

 『そんな事を言うのはこの口か!』

 <い、痛いっぴょん!?>

 アルモニアがリリーの口を裂かんばかりに広げていると、チェイシャに向かってエクソリアが話しかける。

 『残り六人、できれば君達には戦って欲しくないけどね』

 <気にしないでいいのじゃ。主達が戦わないのは最後のために力を温存しておるからじゃろう?>

 『ああ。神の力に加え、恩恵を持っている神裂に対してルーナ達だけではどうしても切り札に欠ける。力押しだけで勝てるとは思えない。だけど今ならボク達と同じレベルの能力しかない……なら女神が二人いるこっちの方が有利だからね』

 それに呼応するようにアルモニアがリリーを放してから続ける。

 『酷なようだけど、最上階に行くまでにあなたたちを含めて盾になってもらう必要があるわ。いざって時に私達が動けないのはマズイからね」

 積極的に彼女らがボス部屋で戦わない理由はまさにそこだった。できるだけ力を温存しておかなければ神の力に対抗できる者が居なくなると最後の最後でしくじる可能性があるからだった。
 どちらか一人居れば何とかなる、と推測をしているものの確定ではないのでボス部屋では手を上げない。

 <なあに、人化の法を使えばボスの一人や二人けちょんけちょんじゃ。わらわはそういう調整をたのんだのじゃからな>

 チェイシャが晩御飯楽しみじゃのうと前を歩く姿をエクソリアは複雑な面持ちで見送るのだった。


 ◆ ◇ ◆


 <バベルの塔:最上階>


 『キルヤが死んだか、あの人化の法とやら、中々興味深いな……一匹手に入らないねぇかな……』

 「使ったと同時に死ぬのですから難しいのでは?」

 『いや、いいんだよ変身前でも。研究しがいがあるだろ? お前なら分かりそうだと思ったが?』

 「はあ、まあ、気にならないと言えば嘘になるんですがのう。それどころではありますまい? 二十階を突破されたのじゃが……」

 神裂と横にいる爺さんがモニターを見ながら話しをしていた。神裂はつまらなさそうにモニターを見る。

 『まあ無敵ってわけじゃねえし、俺が呼んだから文句は言えねえが、あれだな。性格悪かったなアイツ。道中はまあまあ面白かったんだが、キルヤ自身がしょぼすぎた』

 するとその言葉を聞いて一人の男が横に立った。

 「それでは次は僕が行きますよ。迷路は僕好みに変えていいんですよね?」

 『んあ? お前か、もう出るのか?』

 「ええ、中々面白いパーティみたいですし、メンバーがいっぱいいる時の方が楽しいじゃないですか」

 『物好きだな。迷路は好きにしていいぞ。足止めするもよし、エグイ罠を張ってもいい。ルーナを殺さなかったら何しても構わん。出来れば一匹何か連れて帰ってくれ』

 「了解。それじゃ早速行ってきますよ」

 ガチャガチャと鎧の音をさせながら、男は闇の中へ消えて行った。後姿を見て爺さんは神裂へと問う。

 「……強さはともかく、あれはどちらかと言えば向こう側の人間では?」

 『ま、そうだな。ただ、こっちへ呼んだ時に”変えてやった”から大丈夫だろ。裏切ったらそれはそれでおもしれぇしな! ぎゃはははは!』

 「左様ですか……(主……自分が不利になる事を恐れておらんのか? あやつらの連れている守護獣とやらのように我らは制約がない……不本意にこちらへ呼ばれた者が裏切る可能性も否定はできんというのに……)」

 爺さんは「何を考えている?」 と言わんばかりに、神裂へ目を向けるのだった。
 
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】 余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。 いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。 一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。 しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。 俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。