パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
上 下
185 / 377
最終部:タワー・オブ・バベル

その206 暗闇

しおりを挟む
 

 戦力を分断された私達は容赦なく襲ってくる黒ずくめの集団……忍びを相手に奮闘していた。ここは向こうのフィールドだけあって、数もさることながら苦戦を強いられていた。私も弓での援護は厳しいため、久しぶりに剣を抜いて対応にあたっていた。
 
 「ガオォォン!」

 「うわああああ!?」

 ザッパーン!

 「ナイスよレジナ、シルバこっちも!」

 「わん!」

 「ま、前が見え……ぐああ!?」

 レジナが相手の首を噛んでそのまま池へと放り込んだり、シルバが顔に取りついて私が斬るといった連携がうまく決まり、少しずつだが数を減らしていく。
 チェイシャも素早さとシロップとの連携で麻痺・毒に加えて目つぶしを使い動きを封じていく。それでも攻撃を加えてくる猛者もいるので油断はできないのだ。

 「小癪な! もらったぞ!」

 「させるか!」

 私の背中から斬りかかってきた忍びをレイドさんがその後ろから剣でばっさりと攻撃していた。

 「ありがとうレイドさん!」

 「背中は任せろ、死角をなくして対応するぞ。カイムは……まだ倒せていないか、やるようだな……」

 少し目線を泳がすと、先程偉そうな態度を取っていた男とカイムさんがかなりの速さで交錯し、すれ違いざまに剣戟の火花が何度も散る。手練れのニンジャとしてのカイムさんの戦闘を見るのはもしかしたら初めてかもしれない。

 「貴様、主が気に掛けるだけあってやるではないか……」

 「何の……ことだ!」

 カキィィン!

 「はっ!」

 「若いな、射線が見え見えだぞ……む」

 刀と刀の競り合いをカイムさんが嫌い、突き放してからシュリケンを投げるが無駄の無い動作でスッと回避する男。

 「それくらいは分かっている」

 カイムさんはシュリケンを投げたと同時にすでに前に出ており、偉そうな男へと斬りかかっていた。

 「なるほど、油断はできんらしいな。土遁」

 「!? 足元が!」

 男がなにやら呟くとカイムさんの足元に穴が空き、咄嗟に別の方向へ進路を変えた。しかし、それを見越していた男がすぐ横に迫っていた!

 「マズイ……!?」

 「俺の名はサカキ……地獄に落ちても……」

 サカキと名乗った男の刀がカイムさんの首へと向かう、無理に穴を避けた態勢からさらに軌道を変えるのが難しいのか焦りの声を上げた。

 <そうはいかないってね!>

 「チィ、あと一歩のところで! ぐほ!?」

 しかし、そこにアネモネさんがしゅるりとサカキの足へ絡みつき、間一髪で刀はカイムさんの肩を切裂いたのみにとどまった。隙を見て刀の柄でサカキの鳩尾へ柄で一撃を加えるとお互い距離を取った。

 「ふう……ありがとうございます……」

 <ヤツは強い、一人で無理するんじゃないよ>

 
 「カイムさん、こっちももう少しで終わるから持ちこたえて! この、しつこいのよ!」 

 私が叫ぶと無言でうなずき、じりじりとサカキと間合いを取っているのが見えた。その時、お父さんたちを攻撃していた集団が爆発と共に宙へ舞い、全滅した。

 「この程度で囲んだ気になったとは舐められたものだな。『元』がつくとこんなもんか」

 「いや、というかお前死んでるし……」

 『神裂がこちらをどこまで把握しているか分からないからね。ボク達や実際に戦ったディクライン、ルーナ達と違い、ヴァイゼはあの時居なかったからね』

 「な!? 早……」

 そんな事を話しながら、素早く私達を囲んでいた忍びの集団を挟み打ちの形にして攻撃していく。流石に後ろからの攻撃には対処できなかったか、サカキを残して忍び達は次々と倒れて行った。

 <後はあなただけですぴょん!>

 特に何もしていないリリーがサカキを指差し高らかに宣言する。まあ実際その通りなので別にいいんだけど、何かもやもやする……。あ、シロップに噛まれた。

 「雑魚共め、足止めもできんとは」

 「その間に私を倒せなかったお前にも責はあるのでは?」

 「言うわ! これで終わりではないぞ!」

 パァンとサカキが手を叩くと、辺りが一面真っ暗になった!? 

 「古臭い手ね<ライティ……>」

 ママが明かりを灯そうと魔法を唱えようとしたところでサカキの声が響く。

 「させると思うか?」

 「危ない……!」

 キィン、と火花が散り、一瞬ママのすぐ横にサカキがいるのが見えた。カイムさんが弾いてくれなければもう少しで死んでいたかもしれない。

 「ここか!」

 「……フッフフ……若造は見えているようだが、勇者共は見えておらんようだな……部下もこの暗闇では動けんので封印していたが、俺一人なら問題ない……いつまでもつかな?」

 「ガウ!」

 「きゃあ!?」

 「ルーナ!? チッ……どこだ……」

 「浅かったか、狼もやるものよ……」

 どもう私が狙われていたようだったけど、レジナが何かしてくれたのか、私は腕に軽い痛みを覚える程度ですんだ。レイドさんが声を頼りに近くに来てくれ、剣を振るが手ごたえは無かったみたい。

 ガッ! キィン! 

 「わん!?」「きゅんきゅーん……」

 「こう暗くっちゃ何も見えん……痛っ!? くそ!」

 その後も暗闇の緊張の中、相手が見えているレジナやシルバにシロップ、それにカイムさんが私達に迫るサカキを退けてくれているが完全に相手が有利のまま数十分が経過。致命傷は無いが、太ももや関節など防具の隙間をぬってじわじわとダメージが蓄積されていった。

 「ふう……はあ……」

 「ガウゥ……」

 「どうしよう……何かいい手は無いかしら……」

 カイムさんもレジナ達も消耗が激しい、何度かママがライティングを試していたけどその度に阻まれていた。私が考えを巡らせていると、サカキがどこからともなく呟いた。

 「フフフ、そろそろトドメと行こう。まずは若造、貴様からだ」

 「くっ……!?」

 この暗闇で私達を守る事を想定していたのか、疲弊したカイムさんをまず狙いにはしろうとするサカキ。カイムさんがやられたらここはおろか、先に進んでも罠を解除できる人が居なくなってしまう……!

 するとそこで、突然エクソリアさんが叫んだ!

 『光刃よ!』

 「気でも違ったか? 自殺行為とはこのことだぞ女神……!」

 手に光の剣を出して、辺りを光らせるエクソリアさん。当然サカキは狙いをエクソリアさんにつけ、恐らく向かっているに違いない。
 やられる、と思ったけど、その後とんでもない光景を目にすることになった!

 「まずはお前から死ね」

 『見えた! 牛!』

 「はいぃぃ! ブモフォ!!」

 「何と!? うおおおお!?」

 何と、光の刃を出したエクソリアさんはそのまま動きもせず、じっと立っていた。サカキが斬りかかろうとしたその時、どこで待機していたのかアステリオスがサカキに体当たりを仕掛け、そのままサカキを押してしばらく突進。そして雑木林の木へと叩きつけた。

 「ぐほっ!? この裏切り者め、よくも……」

 「貰った!」

 シュピン……!

 サカキがアステリオスの頭に刀を差そうとしたが、それはカイムさんによって阻まれた。

 「ぬかった……この俺が!? し、しかし俺に苦戦しているようではキルヤ様にはとう、て、い……」

 息絶えたのか、サカキが喋らなくなるとフロアが再び明るくなる。見渡すと、お父さん以外はケガが酷い。私も例外ではないけど、レイドさんが守ってくれていたので血だらけという事は無い。

 「<リザレクション>!」

 「た、助かりました……」

 「わぉーん♪」「きゅんきゅん♪」
 
 一番ケガが酷かったカイムさんと狼達を回復させ、他のメンバーも癒されていく。痛みは消えたが、どっと疲れが押し寄せてきた。

 『私はまだ動けるけど……ここで休んだ方が良さそうね。あの小屋、使わせてもらいましょう』

 アルモニアさんの提案により、小屋で一泊する事になった私達。キルヤ、というのがボスらしいけど、サカキでこれだけ苦戦したのにどれだけ強いのか……そう思わずには居られなかった。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。