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最終部:タワー・オブ・バベル
その199 推理
しおりを挟む転移陣から魔物が現われるという厄介な事態に私達は総出で対応にあたる。幸い何かを目標とできる町や村、人が居ないので出てくる端から倒せば問題は無い……けど、数はかなり多い上、塔の魔物は強い。
塔では狭い通路で優位を取って倒した魔物が、この広い外では違う動きをするため、苦戦する事も。なお九階で戦ったあのスライムなどもその中に居たりする。
「《マジックアロー》! ふふ、自分で借りを返すことが出来たわね」
「シューティングスター! これでスライムは全部!」
スライムにはコアがあり、近づくとフレーレのように飲まれてしまうので、私は弓、ママが魔法でコアを打ち抜き、十匹は居たスライムが沈黙する。
「わぉーん!」「きゅーんきゅ!」「きゅふぅん!」
「ほう、いい狼だな。そら動きを止めた、やっちまえ」
モルトさんがセンチピードを細い糸のようなものを使い動きを封じ、シルバとシロップ、それにラズベが一斉に襲い掛かる。しっかり働いているようで飼い主の私としては鼻が高い。
<チェイシャ頼むにゃ>
<任せるのじゃ、毒&麻痺弾を!>
グルゥォォォ!?
<こいつはおまけだにゃ! 刺突一閃……!>
<ぴ。で、わたしの炎で焼き尽くす、と>
たまに暴れられる機会のためか、チェイシャ達守護獣もそれぞれ協力しながら確実に仕留める。ブラックブレードのパーティやシルキーさんもここに来るだけの事はあり、やがて三十匹ほど出現した魔物は全滅。
そしてすぐにアルモニアさんとエクソリアさんは転移陣付近の魔物を蹴散らした後、調査を始めていた。すると一旦向こう側へ行ったエクソリアさんが戻ってきて私達に説明を始めた。
『……結論から言うと向こう側に魔物は居なかった』
「え!? あれだけポコポコ出てたのにですか?」
フレーレがそういった直後、転移陣が光り始め、エクソリアさんの後ろに触手のお化けみたいなの魔物、ローパーが出てきた。
「エクソリアさん後ろ!?」
『え!?』
『はいはい、妹ちゃんは油断しない』
近くにいたアルモニアさんが手にした槍でローパーをズタズタに切り裂き消滅させる。するとエクソリアさんがまた転移陣に入り、15分ほど経ったがまだ戻ってこない。
<戻ってこないわねぇ>
<見に行くですぴょん?>
『その必要は無いよ』
アネモネさんとリリーが呟いた瞬間ぬっと転移陣からエクソリアさんが出てくる。
「どうです?」
『向こうは静かなもんだったね。こっちはどうだい?』
私が聞くと、首を振りながらエクソリアさんが答えつつ、質問をされた。
「こっちも今の所は大丈夫ですよ。一旦戻りましょうか?」
『そうだね……とりあえず戻ろうか』
「しかしこれでは身動きが取りにくいな……」
レイドさんがため息をつきながら言うと、また転移陣が光り始めた。出てきたアークデビル(色違い)をパパが切り伏せると、口を開いた。
「時間で出るのか? ……みんなは戻ってくれ、俺はここで沸いてくる魔物がいたら倒す。一匹ずつなら問題ないだろう」
「俺は飯を食う必要もない、残るぞ」
『ならボクも残ろう。もう少し調べてみたい』
「では念の為回復役は私が。アイディールさんは準備をお願いしますね」
「俺は拠点側だからなぁ、手伝うぜ」
結局パパにお父さんとクラウスさん、シルキーさんとエクソリアさんを残して私達は一度拠点へ戻り、十一階以降へ登るための準備を始めた。
---------------------------------------------------
「フレーレはお留守番お願いね」
「……うう、分かりました……無事に帰ってきてくださいよ?」
今回のメンバーはセイラとフレーレが抜け、補充は無し。ボスまでの道中は人数が多い方が有利なので少しきつい戦いになるかもしれないわね。
フレーレと話していると、レジナが駆け込んできて私の服を引っ張り始めた。
「ガウワウ!?」
「ちょっとレジナ!? 分かった、行くから! 落ち着いて!?」
「どうしたんでしょうか?」
そのまま引っ張られると、セイラの寝ている小屋へ案内された。レジナがセイラのベッドへと私を連れて行くと、そこに身体を起こしたセイラがシルバ達に囲まれていた。
「わん♪」「きゅきゅん♪」「きゅふん!」
「ふふ、ありがとう。あ、ルーナにフレーレ、心配をかけてごめんなさい、何とか目が覚めたわ」
「よ、良かったぁ……もう目を覚まさないかと思ったわよ……」
「ぐす……レイドさんに伝えてきますね!」
フレーレが駆け出した後、セイラが困った顔して見送るが、すぐに真面目な顔になって口を開く。
「……ごめんだけど、しばらく魔力が回復しないと戦えそうにないわ……」
「それは仕方ないよ。今はゆっくり休んでね? 拠点も形になってきたし」
「うん。で、ちょっと気になった事があるんだけど……あのヴァンパイア? が、死ぬ時『まずは一人』って叫んでいたの覚えてる?」
セイラが急にそんな事を言い出す。確か消滅する直前にそんな事言っていた気がする……でも、セイラが現に戦闘不能になったから間違いじゃないと思うけど? そんな考えが顔に出ていたのかセイラが自分の考えを私に言ってきた。
「私も確証は無いんだけど、まずは一人って倒したって意味じゃ無さそうなのよね。ほら、フレーレもあの時戦えなくなったでしょ? だからあの時点では二人のはずなのよ。だからほかに意味があるんじゃないかって思ってね……ごめん、何言ってるか分からないよね……まだ本調子じゃないから疲れているかも……今のは気にしないで……」
そう言って横になり、フレーレが連れて来たレイドさんと少しお話をした後に寝付いたので、私達は静かに部屋を後にする。するとカルエラートさんが立っていた。
「行くのか? なら、これはお弁当だ。一回分だけど、無いよりはいいだろう」
「ありがとうございます! ふふ、もう料理番ですね」
「はは、楽しいが心苦しくもあるがな。次は私も塔へ行く。とりあえずセイラは任せておけ」
「セイラはわたしも見ておきますから、二人とも気をつけてくださいね」
カルエラートさんとフレーレに見送られ、再び転移陣へ赴くとすでに私達以外のメンバーは揃っていた。難しい顔をしたエクソリアさんが転移陣を出たり入ったりしていた。
「来たかルーナ」
「エクソリアさんはどうしたの?」
お父さんに聞くと、私達が去った後もやっぱり定期的に魔物は出てきていて、時間はまちまち。たまに二匹同時といったこともあるらしい。
倒しても出てくるので、出てきた直後にエクソリアさんが転移陣に入って確かめるが向こう側は静かなものらしく、悩んでいる。
『ううむ……フォルサなら分かるのか……? しかし……』
「このまま塔へ登るのはダメなんですか?」
カイムさんが手を上げて言うと、パパがそれに答える。
「正直それしかないと思う。だけど、ここに誰か残らないと常に魔物が増えるのはマズイ」
<もしかすると塔に他の者を近づけさせないためにやっておるのかもしれんのう。この先、転移陣が増えれば人手がどんどん減っていくし……>
「ん?」
チェイシャが呟いた一言に引っかかりを覚える私。今、なんて?
「チェイシャ、今なんていったの? もう一回聞かせて」
<む? 塔に他の者を近づけさせないため?>
「その後かな?」
<えーっと……転移陣が増えれば人手がどんどん減っていく……>
「それ!」
チェイシャの言葉に私はついチェイシャの首を絞めてしまった。
<おほう!? びっくりした!? どうしたのじゃ急に>
私はセイラの話とチェイシャの仮定で一つ思いついたことがあった。
この転移陣、恐らく……。
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