パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その195 強敵

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 ヴァンパイア二人と戦闘が始まってからすでに数十分の時が流れていた。相手二人に対してこちらは八人。それでも決定打になる一撃を加えることは出来ていなかった。

 「隙が無い……!」

 【ふはは、俺を馬鹿にしてくれた報いをくれてやる】

 どの角度から攻撃しても強固な守りがこちらの攻撃を全て受けきるという状態が続き、さらにカウンターまで仕掛けてくる。足払いや蹴り、手刀といった体術がメインのようだ。
 また、セイラの言葉もあり、爪の攻撃だけはしっかり避けていたがルドレイはそれを盾にお構い無しに突っ込んでくる。

 『ちょこまかとするわね!』

 「同時ならどうだ!」

 【へぼ女神が笑わせるな!】

 左右から槍を突き出したアルモニアさんと、剣を振りかぶったレイドさんの同時攻撃を爪ではなく手で掴み、固定する。

 「ぐ……ば、馬鹿力め……!? ルーナ!」

 「分かってる! ヴァッサーシュナイデン!」

 【ふん! 当たるものか!】

 私の剣技で胴を薙ぐつもりだったけど、ルドレイは両手に力を込め、垂直にジャンプし私の攻撃を回避した! でもまだこっちも終わりじゃないわ!

 「今考えた必殺技! スイフトスイング!」

 「聖魔光!」

 【何!? スーリア!】

 着地に合わせてセイラとフレーレが待ち構えており、フェンリルアクセラレータで加速されたトゲトゲモーニングスターと聖魔光で強化されたフレーレの右手が前後から襲う! ルドレイが叫んだ直後、パパ達と戦っていたスーリアを呼んだ。

 【後ろががら空きよお嬢ちゃん♪】

 「させない! 《マジックアロー》!」

 タン! と、パパに迫ろうとしたスーリアが軌道を変え、フレーレの背中へ血のように赤い刃をしたダガーを突き出す。しかもママのマジックアローを避けながらだ。

 「ここは避けるしかないですね」

 フレーレが間一髪、身をよじってダガーを避けるが、スーリエはニヤリと嫌な笑いを浮かべていた……マズイ、その先にはセイラが!?

 「!? こっちに来る!? でもそれならあんたに狙いを変えるだけよ!」

 【だろうな。だが、俺の攻撃はかわせまい?】

 すでに着地をしていたルドレイもセイラに迫る。アルモニアさんとレイドさん、私が止めに入るが間に合わなかった。

 ザシュ!

 「あう!? くっ……!」

 セイラの左肩がルドレイの爪で切り裂かれ、血が流れ始めた。スーリアの攻撃は幸い外れたため自分で回復を行う。

 【くっく……惜しい惜しい……む、こ、これは!?】

 ペロリとセイラの血を舐めたルドレイの体がビクンと震え、セイラとレイドさんへ目を向けると口を開いた。

 【この甘美な血……お前、聖女か何かか? スーリエ、舐めてみろ】

 【んー? ……へえ……力が湧いてくるわね……】

 「何のこと? あたしは賢者よ! 聖女なんて大層な恩恵は持ってないわよ!」

 「俺はこいつの兄だが勇者の恩恵だ。聖女なんて知らん……ぞ! ディクラインさん!」

 「おうよ!」 

 レイドさんとパパが斬りかかると、二人のヴァンパイアは羽を生やして空中へと逃げた。空も飛べるの!?

 【あは♪ まだ話してる途中よ?】
 
 【お前達は知らないだけだろうが……まあ、そのあたりはどうでもいいか。少なくとも俺達にとってお前らの血は極上のワインのようだという事実。飲めば俺達はさらにパワーアップをすることができるのだ】

 ギラリと、主にセイラへと二人の視線が向けられる。餌を見つけた喜びか、赤い目はさらなる輝きを増した。

 【眷属にして永遠にその血をいただく!】

 「セイラ下がれ! 狙いはお前だ!」

 「う、うん!」

 レイドさんが叫んで後ろへ下がるセイラ。でも空中からの奇襲は簡単に防げそうに無い……! レイドさんにはスーリアが襲い掛かかり、ルドレイは止められなかった。代わりにパパがセイラのフォローに入った。

 【お兄さんは私がいただくわね♪】

 「くそ……!」

 む。女性相手だからだと思うけど、レイドさんの動きが鈍い。そしてレイドさんに色目を使うとは許せない……!

 「煉獄剣! 離れなさいよ! フレーレ、手伝って!」

 「もう攻撃してます! さっきのお返しです!」

 ドゴっと空に舞おうとしたスーリアの背中に拳が刺さる。

 【痛っ!? 小娘共が調子に乗るなぁ!】

 「早い!?」

 少しは効いたみたいだけど、すぐに反撃に移るスーリア! 態勢を立て直そうとするフレーレの首にダガーが迫る。
 目を瞑るフレーレ。だけど、そのダガーが首に触れることは無かった。

 「ガウゥゥゥ!!」

 【つぅ!? お、狼!?】

 【何!? そうか、こいつらも人ではないから入ってこれるのか……! 忌々しい……】

 「わんわん!」「きゅきゅーーん!」

 レジナがスーリアの手に噛み付き、シルバとシロップはセイラの前に立ちはだかり、威嚇をしていた。嫌がっているところを見ると狼が苦手……?

 『ということでボクの出番だね』

 パパとシルバ達の攻撃を受け流して再び空へ逃げたルドレイ。それを見越したかのように、いつの間に消えたのか、背後からエクソリアさんが現われて光の刃を叩きつけていた。

 【どこから!? ぐあ!?】

 『浅い! ディクライン、トドメを! 心臓に剣を突きたてろ!』

 「了解! 死ね!」

 【何の……】

 ダサいマントから蝙蝠を撒き散らし、パパの視界を塞いだ。その隙に空へと逃げるルドレイ。だが足にはシルバが噛み付いていた。

 「わふん!」


 【おのれぇぇ……スーリアこっちに来れないか!?】

 【ダメ、狼がしつこいの! この、離しなさい!】

 「グルゥウゥゥ!!」

 レジナが食らいついて離さず、焦るスーリア。私達はレジナを避けながら攻撃を続ける。皮膚が固いとか、魔法防御が凄いといった事も無く、ダメージは入っていた。ただ、流石にしぶとい。噛み付かれながらもダガーで三人の攻撃を受け流してくるとは思わなかった。

 【このままじゃやられる……お前の血をいただくぞ……】

 「きゃあ!? ち、力が……抜けて……」

 【よし……! 離れろ畜生が!】

 「ぎゃいん!?」

 「フレーレ、レジナ!?」

 聖魔光を纏っているとはいえほぼ素手のフレーレ。手首を掴んで指をフレーレの柔肌に差し込み、スーリアが何か呟くと、フレーレはその場にへたり込んだ。

 【む、でかした! なら先にその娘の血を吸い尽くす……!】

 動けなくなったフレーレに標的を変えたルドレイが壁を蹴って差し迫る! 私がフレーレの前に立ちはだかろうとすると、スーリアが邪魔をしてきた。

 【行かせると思う? お前も吸い尽くしてやる……!】

 「しまった!?」
 
 肩に指が刺さった途端、体から力が抜けるのを感じる……血を抜かれている……の? ああ……寒くなってきた……。

 【うふふ……お兄さんは私が美味しくいただくから、安心して、ね?】

 「ルーナを離せ!」

 【あらん、まだ早いわ。まずはこの子からよ?】

 私を抱きかかえて空に逃げると、さらに吸収の速度を高め始めたスーリア。段々眠くなってきた……すると扉の向こうからお父さんの叫び声が聞こえた。

 「ルーナ! そいつの能力は吸収だ! 思い出せ、お前もそれに近い技を持っているぞ!」

 お父さんの声が遠くなりながらも、私は眠い頭で考える……近い……技……血……その意味を成す答えは……。

 「ブ……」

 【あら? 無駄な足掻きをまだ続けるの?】

 「ブラッディ……フロー……!」

 私は眠い頭を覚醒させ、肩に意識を集中した!
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