パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

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最終部:タワー・オブ・バベル

その188 役割

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 「こいつら……色が違うだけかと思ったが……!」

 「口を開く前に手と足を動かせ! 孤立したら一瞬で飲まれるぞ!」

 レイドさんがフォークのアークデビルの色違いの攻撃を受けながら叫ぶと、パパがやはり一つ目の巨人の色違いの首を落としながら言う。

 「これで……!」

 「フレーレ、一緒に行くわよ! 煉獄剣!」

 「聖魔光技、アストラルブレイク……!」

 ギィエエェェェェ!?

 私の剣技と、三ヶ月の修行で得たフレーレのオリジナル技が大猿の魔物に炸裂し消滅する。ちなみにフレーレの武器は新調したメイスで、前より小さくなったけど取り回しが利くとかで攻撃する手数が格段に多くなった。

 <麻痺弾じゃ! 止まれ!>

 「うまいですね! その首、貰った」

 <みんな頑張るぴょん!>

 <あんたも頑張りなさいよ!? おっと、当たらないわよ? フレイムサーキット>

 役に立っていないリリーを叱咤しながら、外のより一回り大きいアリの化け物を焼き払う。チェイシャは攻撃よりも状態異常の方が得意になっているわね。

 「ガォォォォォン!!」

 「わぉん!」

 ムカデのお化け……センチピードの背中に飛び乗るシルバ。身をよじって嫌がるムカデの足をレジナが引きちぎっていく!

 「きゅきゅーん!」「きゅふふん」

 雌の二匹も足に食らいついて行動を制限させると、レジナが首あたりに噛み付き、ゴキリと音がなる。そのまま絶命するかと思ったけど、ムカデはずるっと動き、レジナに尾の毒針を刺した。

 「きゃうん!?」

 「レジナ! チェーリカ!」

 「はいです! 《アンチドート》!」

 倒れてぐったりしたレジナに毒消しを使ってもらうと、すかさずママが回復魔法で癒していく。するとちょうどレイドさんがアークデビルの雷を避けてお腹に剣を刺したところだった。

 「これで……!」

 ヒキェェェェ……

 変な声を上げながら絶命すると、周りの魔物が一瞬動揺する。どうやらボスモンスターだったらしい。セイラがモーニングスターでムカデの頭を叩き潰しながら叫ぶ。

 「隙が出来たわ! 一気に行きましょう!」

 「任せとけ! 剛剣・斬鋼」

 「こっちもだ、魔王技:ブラックカッター」

 ソキウスがセイラの後ろに迫っていたゴーレムの足を切ると、バランスを崩して膝をつく。お父さんが飛び乗って首を切り落とし、強力な魔物はこれで全滅させることが出来た。

 『出番が無かったね、姉さん』

 『いいんじゃないかしら? ここで全力を尽くすようならとてもじゃないけど先に進める気がしないしね』

 万能な女神二人はしんがりで援護を担っていた。神裂との切り札になるため、戦闘はそこそこにしてもらっている。

 レジナ達が魔物のお肉を咥えてご満悦の顔をしていると、パパが手をぷらぷらさせながらママの所へ向かう。

 「いてて……アイディール、回復を頼む。あの巨人、攻撃力が高かったぜ……受けた手がまだ痺れてる」

 「<ヒール>! これでよし。でも想定よりちょっと強いくらいで良かったわね」

 「確かに……でも、10階ごとのボスは6人でしょ? 相手の数によってはちょっと心配かな……」

 私が呟くと、レイドさんが横に来て話しかけてくる。

 「最悪、もう少しここで鍛えるのもアリだと思う。まあ、この階にまた魔物が出るとは限らないんだけどな」

 <何にせよ外で待っているカルエラートと合流せねばなるまい、戻れるということであれば馬車を放置することもできまいて>

 大きかったチェイシャが小さくなりながら外に出ようと促す。開いたままの扉から外に出ると、カルエラートさん達が誰かと話しているところを目撃する。

 「あれって……!」

 慌てて近づくと、ブラックブレードのメンバーとシルキーさんだった! 向こうも私に気づき、驚きの声をあげる。

 「あ、あなたルーナじゃない!? え? フレーレにレイドも居るの?」

 「シルキーさん! それにクラウスさんも! 塔に登りに来たんですか?」

 「お前ら! 心配かけやがってぇ! 無事な無事って言えよ! ビューリックに行ったら居ないって言われるわ、アルファに帰る途中やたら強い魔物に襲われるわで大変だったんだぜ……まあ、でも助けられたんだな……」

 レイドさんの肩に手を置き、フレーレに目配せをするクラウスさん。ちょっと涙ぐんでいるみたい。

 「それよりあなた達もこの塔に?」

 「ええ、実は……」

 私は女神二人の事は伏せ、神裂との因縁を話した。クラウスさん達も最初はすぐに塔を目指そうとしたけど、あまりにも魔物が強すぎるためレベルアップと見たことも無い魔物との戦い方を見極めるのに時間がかかったそうだ。
 ちなみにアルファの町付近は魔王城と違い、獣系や竜、蛇が多かったらしい。やっぱり森のせいかしら? で、三ヶ月、ファロスさんやイルズさんといった手だれの冒険者がついて戦ったそうだ。

 それでも最初は死者が出る騒ぎになったとシルキーさんが嘆いていた。

 「他にも戦えそうなのは居るんだが、町に入ってこないとはいえ食料の調達も必要だからなあ……アントンも来ると叫んでいたんだけどよ、まだ俺達ほどじゃないから置いてきた。ただ、一ヶ月経って俺達が戻らなかったら、最低限の戦力を残して塔へ向かうようになっている。俺とタメを張れるのはファロスの旦那とイルズ、それとリーブルだな。他の国、それこそビューリックは騎士団を使うそうだ」

 「ビューリックも懐かしいわね、王様は結局どうしたのかな?」

 「まあ前王に比べたら誰でもいい政治はできそうですけどね」

 フレーレがそういうと、カルエラートさんが手を上げて発言を求めてきた。

 「どうしました?」

 「いや、少し提案があってな。今、中の状況はレイド達から聞いた。出発してから考えていたんだがやはり長期戦になると思う。私が聖騎士というのもあるが、こういった守りを固めた相手を崩すのはいつも以上に力も精神も使うものだから……ここに仮の拠点を作らないか? そちらの剣士が言うにはやはり町や村には入ってこないようだしここに柵を立てたりして村を作ればもしかしたら安全なキャンプ場ができる、そんな気がするんだ」

 「なるほど、魔物の特性を逆手にとってこちらの防衛に活かそうというのか。俺は賛成だ、どうせ馬車を捨てるわけにはいかないと思ってたからな」

 カルエラートさんの説明でお父さんが賛成の挙手をした。それに続いてクラウスさんがも口を開く。

 「その発想はアリだな……よし、俺達ブラックブレードがそれを任された! 見た所俺達よりあんた達のほうが強そうだ、しばらく塔の探索はお任せするぜ! シルキーはどうする?」

 「私は一度、塔に入るわ。魔物が強そうならこっちを手伝うかも」

 クラウスさんって結構スゴ腕の剣士なんだけど、こういう時あっさりと自分の実力を見極めて任せるというのは凄いと思う。冒険者ってプライドが高い人が多いから、意固地になって自分がーってなるんだよね。

 「それじゃこっちからは……提案者のカルエラートにソキウス、チェーリカ、それと足の速いバステトと力仕事ができるファウダー、いいか?」

 <ぴ。私もファウダーと一緒がいいわ>

 「分かった、ならジャンナも頼む」

 パパがメンバーを振り分け、残ったメンバーは少し休憩した後再び塔へアタックを仕掛けるという事になった。 
 拠点作りはまず丸太を組んで壁を作るところから始めるらしい。ファウダーの怪力とブラックブレードのシーフ、ブラウンさんの工作技術を中心に作っていくそうだ。

 カルエラートさんの提案がうまくいって、一階に魔物が出るならレベル上げもできそうね。

 そして私達は遅めの昼食を取った後、もう一度塔の一階へ足を踏み入れることにした。
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