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最終部:タワー・オブ・バベル
その187 到着
しおりを挟む私とレイドさんが気持ちを伝え合うと、どうもみんなそれを聞いていたらしく、すごく気を使われた……。ご飯や寝る時もなるべく一緒になるように組まれたりとかね。
なので一度聞いてみたんだけど……。
「ねえ、もしかして……あの夜、聞いてた?」
「なななな、何の事でふか!? あ、わたしはご飯の用意があるから行きますね!?」
フレーレに聞こうとしてもこの通り。
<わらわは何も知らんぞー! ふひひ……>
「……まだ何も言ってないのに……」
とまあ、こんな感じだった。からかわれたりする事はないんだけど、普通にして欲しいかなと思ったり。
まあその内話そうと思っていたから別にいいんだけどね。
その後も魔物を倒しながら突き進む私達はついに塔の入り口まで辿り着いた! 塔の高さはともかく、横の大きさもかなりのもので、一周するのに一時間くらいはかかりそうなほど大きいものだった。
そしてぐるりと回っているとようやく入り口を見つけることができた。
「……入り口が開いているな」
パパが言うと、カイムさんが目を細めて扉を盾にそっと中を覗く。ここに来るまでカイムさんの気配察知能力にはかなりお世話になった。
「敵の気配は無し……少なくとも一階は大丈夫です。入りますか? ただ、暗くて見えませんが、血の匂いがすごいです……」
「行こうぜ、ここまで来て怖気づいても仕方ないだろ」
ソキウスがそう言うと、チェーリカが袖を握りコクコクと頷いた。
「です……魔物が違うなら強さを調べるのもアリだと思うです……」
「そうね、なら全員が入った後、扉が閉まらないようにつっかえ棒を置いておきましょう。あ、何か大きな石でもいいわね」
ちなみに扉は私達側……つまり外に向かって開いている。中に入らずつっかえることが出来るので、その案はすぐに採用された。
<オイラが扉を押していようか?>
<ぴ。そしたら中に入れないじゃない! その巨体を活かして大岩でも持ってきなさいよ>
<俺も手伝おう>
ファウダーとカームさんが重い岩を探しに行き、残ったメンバーで扉を固定するため四苦八苦する。壊せば、と思ったんだけど何か不思議な力が働いていて傷一つつかなかったのよね。
「では、俺が先頭で行こう。アンデッドだから簡単にはやられんしな」
お父さんを先頭に、パパ、カイムさん、明かり役でママが入る。カルエラートさん、バステト、ファウダーにカームさんは馬車を見張るために外で待機だ。特にファウダーは大きいので威嚇の意味合いも強い。
「《ライティング》」
「これは……!」
明かりが灯り、中へ入ると中には数人の遺体があった。カイムさんが血の匂いがすると言った理由は分かったけど、魔物の姿はどこにも居なかった。
「損傷が酷いな、だけど装備は悪くない……よほど強い魔物と戦ったのか……?」
レイドさんが乾いた血がついたギルドカードを見ながら呟く。他にも何か無いか探していると……
パアァァァァ!
急に明かりが差し、部屋全体が見渡せるようになる。奥はかなり広く、隅っこに階段が見えていた。それでも魔物が出てこないので先に進むため足を動かすと、笑い声が響き渡る。
『ぎゃーはっはっは! バベルの塔へようこそ、愚かな冒険者! 月並みだが、ここがお前達の墓場となる』
『神裂!』
目の前にフッと現われたのは何と神裂本人だった! 悪役そのものの言い回しを笑いながら語っているとエクソリアさんが光の刃を出して斬りかかった。
ぶわん……
『なんだと?』
しかしエクソリアさんの攻撃はヒットしない……というより、もやがかかったみたいに歪んだだけだったのだ。
『エクソリア、ホログラフよこれ』
ホログラフ……? 気になる言葉を発するアルモニアさんだが、神裂はそんな考えを吹き飛ばすかのように続けて話す。
『さて、ここまで来た勇敢なお前達に素敵なごほうびと行こうか。扉が閉まったと思うが、あれはこちら側から開くことは出来ない。先に進むしかないということだ』
「「……」」
後ろを振り向くが、扉はめちゃくちゃ開いている。ママの予想は正しかったみたいね、ガッチリ固定されているから閉まる気配は無かった。
『しかし安心しろ? 俺は優しい神だ、ちゃぁぁぁんと救済措置は作ってある。この塔は99階作ってあってな? 10階ごとにボスを用意した。そのボスを倒せば地上に戻れる転移陣が作動する。しかも次からは……』
塔の説明を話し続ける神裂。概要はこうだ。
・10階ごとにボスが居る
・ボスを倒せば地上に転移して道具の補充や装備を整えることが可能
・再度、設置される転移陣に乗ればその階へ戻る事ができる
・ただし、ボスの部屋は6人までしか入れない
・倒すか死ぬ以外ボスの部屋から出る事はできない
『……という訳だ、100階には俺がいる、俺を殺せばお前達の勝ち……簡単だろう? さて、長くなったがまずはこの塔を登る資格があるかな? では期待しないで待っているぞ』
『完全にゲーム感覚か、これだから異世界の人間は……』
「……消えた……」
『あれは、恐らくこの塔に入った者へ向けて必ず現われるんだと思うわ、一度外に出て……と、その前にお客さんみたいね』
「グルルルル……!」
「わん!」「きゅんきゅん!」「きゅふ!」
レジナ達が吼え始めると同時にゆっくりと近づいてくる魔物たちの姿があった。
「どこから!?」
今立っている所から見逃すなんて有り得ない、どこからか沸いてくるように出てきたみたい……。
「ここは神裂の作った塔だ、これくらいはやってくるだろ」
レイドさんがセイクリッドセイバー(この前聞いた)を構えると、ママが近づいてくる魔物を見て呟いた。
「あのフォークをもった魔物……外にもいたわよね?」
「そうですね、でも色が違いますよ?」
フレーレの言うとおり、外の魔物は紫っぽかったけど、目の前にいるのは白っぽい感じ……よく見れば見たことの無い魔物も多数いた。
「まずは倒すぞ、ここで勝てないようじゃ神裂どころかボスとやらも怪しい。全力で行くぞ!」
お父さんが合図をして、戦いが始まった。
---------------------------------------------------
その頃、外では……
<この辺は塔が近いせいもあるのか魔物が多いな>
<まあ、オイラとカームで何とかなるけど、これじゃ馬車を守る人が必要じゃない?>
「実はそれについて一つ考えがあるんだ、正しいかどうかは分からないが……」
カルエラートが二人に言うと、少し周辺を捜索していたバステトが戻ってくる。足が速いので斥候には最適なのだ。
<戻ったにゃ! 何匹か狩ったからお肉にして食べるといいにゃ。それと、この塔を登りに来た冒険者を連れて来たにゃ>
「それは心強いな!」
<こっちにゃー>
バステトが連れて来た冒険者とは?
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