パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
上 下
142 / 377
第六部:救済か破滅か

その163 成功

しおりを挟む
 

 <魔王城:庭>


 「で、出来た! お父さんできたー!」

 「流石は俺の娘、飲み込みが早いな」

 歓喜の声をあげる私に、お父さんは手放しで喜んでくれた。ついに私は魔力の底上げに成功したのだ! いやあ、疲れた……。

 「わふ♪」

 「わんわん!」「きゅんきゅーん♪」

 「あんた達もお祝いしてくれるの? ありがとね!」

 レジナ達も私の足元でぐるぐると回りながら祝福してくれる。三匹の背中を撫でながら休憩していると、エクソリアさんが庭へとやってきた。

 「あれ? どうしたんですか?」

 『今やっている事に飽きてね。調子がどうか確かめに来たんだよ』

 「あ、そうなんですね。私は丁度、魔力の底上げに成功した所です! やっと次のステップです!」

 『(ふうん、この短期間でモノにするとはいい素質じゃないか。魔王の恩恵はあくまでも『スキルを使えるようになる』というだけで、それなりに努力は必要だからね。案外姉さんを引き剥がすのも難しくないか……?)』

 「どうしました?」

 『いや、何でもない。ところで、その髪はどうしたんだい?』

 考え事をしていたエクソリアさんに声をかけると、逆に私の髪の毛、ヘヤーについて質問されてしまった。ちなみに今の私は髪の毛が真っ白になっており、お父さんと同じ状態だったりする。

 「パパが偽装魔法をかけてたんですけど、もうその必要も無いかって事でお父さんが解除したんです。まだ鏡を見ると違和感がありますけど、こっちが本当の色ですしね」

 「きゅんきゅん」

 シロップが私の髪を咥えて引っ張っていた。レジナとシルバは白い髪の私に比較的早く馴染んだけど、シロップはたまにこうして甘噛みをして確認をしてくるのだ。

 「べたべたになるから手にしてね?」

 「きゅーんきゅん……♪」

 抱っこすると、あむあむと私の手を噛み始めた。やっぱり人によって噛み心地が違うのかしら……?

 「わん!」

 シロップばかり可愛がっているのに嫉妬したのか、シルバが頭をぐりぐりと押し付けてくる。少し大きくなったけど二匹抱きかかえられないほどじゃないので、シルバも抱っこしてやると、嬉しそうに目を細めた。

 「甘えん坊なんだから……で、お父さん。次は何をするの?」

 「そうだな。次は魔王の固有スキルを覚えようか、魔法とは違う固有のスキルがいくつかあるんだ。魔力の底上げが出来たなら、魔力が回復したあとに使えると思うよ」

 固有スキルか……攻撃系なら嬉しいわね。今は補助魔法と剣だけだもん。
 レイドさん達と一緒に居る時から思っていたけど、私自身の攻撃力はパワフルオブベヒモスで上げるだけだから火力は無いのがね。
 フレーレは回復魔法もマジックアローも使えるし、最近はフォルサさんから聖魔光って技を教えてもらってたみたい。

 そんな事を考えながら休憩のため城へ戻ると、私達以外の話し声が聞こえてきた。この声は……。

 「フレーレ! セイラさんにバステトも!」

 「あ、ルーナ! ただいま戻りましたよ!」

 「にゃーん♪」

 <疲れたにゃー……セイラに追い回されてクタクタにゃ。お風呂、入りたいにゃ>

 一体何があったのか? バステトの毛はボロボロだった。キューティクルなどあったものではない……。

 「きゅんきゅーん!」

 「わんわん」

 <お前達は優しいにゃー……>

 涙をぬぐうバステトはシルバとシロップに任せて、私は二人に向き直った。

 「早かったわね? どうだった?」

 私が二人に質問すると、セイラさんがマジックバッグから小ぶりの盾を取り出しながら答えてくれた。あれが女神のアイテムかな?

 「場所があまり遠くなかったから往復が早かったのよー。これ、おみやげねとりあえず、慈愛の盾ね、後は……」

 「あ、あのセイラ? 先に紹介をした方が? ベルダーさんのことも……」

 「確かにそうね。フレーレ、よろしく!」

 「私ですか!? もう……アネモネさん、こちらへ」

 <はいはい、すまないね。アタシはアネモネ。嫉妬のアネモネさ。よろしく頼むよ>

 白い蛇がにょろりとフレーレの足元へ来て鎌首をもたげてぺこりと頭を下げた。私もそれに習って頭を下げる。

 「私はルーナです! 女神の守護獣ですね、こちらこそ」

 <アタシには敬語は要らないよ、肩が凝るからね>

 肩……?

 「あ、分かったわ。私もルーナって呼んで!」

 あいよ、とバステトのところへ戻っていくアネモネ。次に妙に爽やかな男性が前に出てきた。

 「彼はカイムさんです。諸事情でベルダーさんが国から出られなくなったので、代わりに着いてきてくれました!」

 「初めまして、カイムと言います。フレーレさんからお話を伺っています。ベルダーさん程ではありませんが、役目を務めさせていただきたいと思います」

 礼儀正しいお辞儀をして、ルーナと握手をするカイム。

 「ルーナです! 一応魔王の娘をやってます! って、ベルダーどうしたの?」

 「うーん、蒼希ってベルダーの故郷なんだけど、置いてきた婚約者と結婚する事になったのよ。で、10年放っておいたのもあって、ユリさん……あ、婚約者の人ね? その人の傍にいたいって事」

 「それはそれはおめでたい……そういう事なら仕方ないかな。全部終わったら会いに行けばいいしね」

 ベルダーもいい年だからここは祝福してあげたい。そう思っていると、フレーレから髪について質問が来た。

 「そういえば髪、真っ白ですけどデッドエンドを使ったんですか?」

 「ううん。元の髪色はこっちだから、今後はこれでいくの。私もまだなれてないけど、よろしくね」

 二人で笑っていると、セイラさんが紹介終わった? と話しかけてくる。私が頷くと、手を叩いてバッグから色々と取り出し始めた。

 「じゃあおみやげを出していきましょう! 食べ物が多いんだけど……」

 大量のお菓子や食べ物が出てきて面食らってしまう私。この後、お茶になるんだけどつい長話をしてしまい慌てて庭へ戻る私。

 「あ、特訓ですか? ガンバルーナですね!」

 相変わらずのフレーレにこけつつも安心する私。とりあえずみんな無事で帰って来た。それが何よりも嬉しい。

 さて、人が増えたから特訓に幅が広がるかもしれないわね!

 レイドさんとパパはどうしてるかなあ……?





 ---------------------------------------------------



 <水と森の国:アクアステップ>


 少し時は遡り、ディクライン達の様子はというと……。



 「なー、まだ着かないのかよ?」

 ソキウスが魔物を倒しながらディクラインへ聞く。歩き始めて早二日、まだ森を抜けれていないからだ。

 「もう少しだ。森の中は何があるか分からないから、転移陣は遠くに設定してる」

 <この先を抜けると湖に隣接した町があるんだよね>

 <ぴー。そうそう……プレジの町よね確か>

 ソキウスとチェーリカの肩にそれぞれ乗っているファウダーとジャンナがぼやくソキウスに言うと、フォルサが
会話に参加してきた。

 「私は初めてだけど詳しいわね?」

 <オイラ達はこの国出身だからね>

 <あたし達がここ出身だって知ってたから選んだんじゃないの?>

 「私は違うわね。守護獣の割り振りはエクソリアが決めたから、そういうことなんでしょう」

 「よっ……ほっ……うーん難しいです……」

 一番後ろを歩くチェーリカはフォルサに道中、聖魔光についてレクチャーを受けており、色々試しながら歩いていた。

 「移動中はやめとけよ。ほら……」

 「大丈夫です! ソキウスも修行しながらの方がいいですよ? レイドさんに比べたらまだまだなんですし」

 「ぐう……」

 やれやれ、とディクラインが方を竦めていると、ぽつ、っと雨粒が降ってきた。水の国と呼ばれる所以は雨量が多いためということもある。

 「おっと、これは急いだ方が良さそうだな。少し走るぞ」

 ディクラインが言うと、全員が頷きバタバタと走り始める。やがて森を抜けるとそこには湖に隣接した町が見えた。

 入り口には通行を取り仕切る警備隊がおり、そこで身元を確認するタイプの町のようだ。ファウダーはソキウスの懐に隠れる。

 <オイラは流石にトカゲっていうには無理があるからね。ちょっと隠れるよ>

 他に並んでいる者もいないので、すぐ手続きに入ると、警備隊の人間がディクラインのギルドカードを見て驚いた。

 「あ、あなたは魔王討伐の……」

 「シッ。あまり公にしないでもらえると助かるかな? まあ、しばらく居るからよろしく頼むよ」

 「は、はは! それではどうぞごゆっくり滞在ください!」

 無事、プレジの町へと入る事ができた一行。雨をしのぐため宿を目指ざして歩いていると、突然通りから凄い勢いで馬車が走ってきた!

 「うわ!? あっぶねぇな! 気をつけろ!」

 ソキウスが間一髪すると、馬車は急停止して中から身なりのいい男が顔を出して謝ってきた。

 「申し訳ない! 娘が危険な状態なものでね! もしケガがあれば先の病院に居るから来てくれ、治療費は私が払おう! すまないが急いでいるので失礼する!」

 慌しく発進する馬車をボーゼンと見送るソキウスとディクライン。

 「あの馬車……というより人、かしらね……? ねえチェーリカ、さっきの馬車で何か気づいた事はある?」

 「ふえ!? な、何かありましたか!? ……うう、何も分からなかったです……」

 おもむろにチェーリカへと質問するが、特に気になる事はなかったと返答する。フォルサはそれを聞いて頷き、再び歩き出してから言った。

 「それじゃ、病院へ行きましょうか」

 <ぴー。別に誰も怪我してないし、行かなくていいんじゃない? 何しに行くのよ>

 「それはもちろん。恩を売りに、よ♪」

 不適に笑うフォルサにディクライン達の頭に「?」が浮かぶのだった。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】 余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。 いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。 一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。 しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。 俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。