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第六部:救済か破滅か
その141 開始
しおりを挟む「こっちです! ベルダー殿が木に目印をつけてくれています!」
カイムに案内され、フレーレとセイラが林の中を駆けて行く。そしてベルダー達と同じく、洞穴へと到着した。
「はあ……はあ……ぜ、全然追いつけ無かったですね……」
「ニンジャは瞬発力も持久力も必要ですからね、仕方ないですよ」
「まあ私達は戦士系じゃないからね」
「それでもフレーレさんは冒険者だけありますよ。しっかり着いてきていたと思います!」
「そ、そうですか?」
キラキラした目でフレーレを見るカイム。
フレーレ限定で褒めている事には気づいていないんだろうな、とセイラは思いつつ洞穴へと向かう。
「神聖な空気ね……」
「セイラも分かりますか、流石ですね。でもここってエクソリアさんが作った封印ですよね? 何か空気が違いませんか?」
「そうなの? そこまでは分からないんだけど」
カイムを先頭に、二人が洞穴について意見を言い合う。神職であるフレーレの方がこういう場合鋭いようだ。しかしそれでもかろうじてというくらいなので、とりあえず今は進む。
「む! 声が聞こえます、お二人共ご注意を」
段々と、ベルダーらしき声や斬りつける音が聞こえてきた。そしてついに合流を果たす。
三人が見たのはとてつもなく大きな八つの頭を持つ大蛇であった。
「何これ!?」
「セイラ達か! すまんが手を貸してくれ! ぐあ!?」
<この、この! うにゃ……皮膚が硬いにゃ……目を狙うしかないけど、これじゃあ……>
ベルダーとバステトが蛇に絡みつかれ、脱出しようともがくが締め上げられて呻いていた。鳥居の影で師範が体に生えたような姿をしたユリに向かって手裏剣を投げる。
<無駄な事を!>
残りの首が手裏剣を跳ね返しつつ、師範へと向かう。
向かってきた首に乗り、ベルダーとバステトを巻きつけている首の目を切り裂いていた!
<小癪なジジイだね……!?>
「ほっと! なるほどのう」
「申し訳ない師範」
<フレーレとセイラも追いついたにゃ!>
「大丈夫ですか? 《リザレクション》」
一度集合し、フレーレにより回復で持ち直すベルダー達。師範が全員に告げていた。
「先程から様子を伺っておったが、ヤツの首には恐らく刃が通って無い。避けようともしないのはそのせいじゃろう。その猫の言うとおり、本体は一つ……ユリの中にいるに違いない」
幻影でもないが実体でもない、厄介なシロモノだと師範は言う。セイラがユリの体を見ながら師範へと問う。
「引き剥せるでしょうか」
「分からん。だがやるしかあるまい」
「俺が行く、援護は任せた」
ベルダーが走り、師範が後を追う。
「聖魔光……これで追い払ってあげますね!」
「それいいわね。私も教わろうかしら? そういえばこのトランクって何が入ってるの? 邪魔じゃない?」
セイラがフレーレの置いた荷物を見て気になっていた事を聞いた。トランクだけカバンに入れず持っていたのは何故か分からなかったからだ。
「開けていいですよ! フォルサさんからもらったものですけど、旅立った時から開けてないんです。もしかしたら役に立つものが入っているかもしれませんし!」
フレーレがチラリとセイラを見ながら二人を追いはじめ、慌ててカイムがそれを追う。
「あ! フレーレさん! 私も行きますよ!」
すると、頭の一本がフレーレへ大口を開けて迫ってきた!
<行かせるか!>
「それはこっちの台詞ですよ!」
光輝くメイスを握り直し、下から首にフルスイングをするフレーレ!
ガッ!!
<うごぇあぁぁぁ!? 馬鹿な! その細腕のどこにそんな力が……!?>
さらにジュウジュウと焼けたような匂いが立ちこめ、蛇の皮膚が焼け焦げていた。しかし尚もフレーレに食らいつこうとしていた。
「危ない!」
「あらら、火傷? なら冷やさないとね! 《ブリザーストーム》!!」
カイムが庇おうとしたその時、氷の吹雪が後ろから吹き荒れた。みるみるうちに凍りつき、ごとりと頭が地面へと落ちる。
<し、しまった……!? 氷属性が使えるヤツが居たとは……!>
「蛇は寒いのに弱いってのは、村人なら誰も知ってるわ、まあこんなに効くとは思わなかったけどね」
「ナイスです!」
「すぐ行くわ、気をつけてよね」
「分かってます! (ケルベロスと同じような感じなら足を狙えばバランスを崩せる……? やってみましょうか) カイムさん、すいませんけどベルダーさんの援護をお願いします!」
「え? あ、は、はい!」
フレーレがカイムにお願いをしたところで、セイラがトランクを開けていたところだった。横に居たバステトが呻く。
<……これは……本気かにゃ……>
「いいじゃない! 私のロッドより軽いし、しかもこの棘! 当たったらタダじゃすまないわよ?」
トランクから出てきたのは、フォルサがフレーレの卒業祝いとして送ったモーニングスターだった! 旅立つ時に勿体無いとフォルサがフレーレに持たせたのだ。
「きっと扱いづらいのが嫌だったんだ」と勘違いをしたフォルサが改良を加え、ご丁寧に柄の部分と先端を自由に振り回せるようになっていた……。
フレイルと言えばそうだが、伸ばす事も手元に収納してメイスのように使う事もできる恐るべき武器へと進化していたのであった。
<あ、頭が来るにゃ! 極殺爪! ……やっぱり硬いにゃ……>
蛇の噛みつきを爪で捌くが、逸らす事が精一杯でダメージを与えるには至らなかった。追撃のため再びバステトに狙いを定めて突っ込んでくる。そこにセイラが立ちはだかった。
<お前から食らってやるわ>
「任せて! それっ!」
ぶおん! と、先端が唸りを上げて伸び、頭へと向かう。しかしこれは外してしまった。
<どこを狙っているのやら、死ぬがいい!>
「あわわ……!」
あわやと言うところで、回避するがスカートを食いちぎられた。立ち上がって再びモーニングスター(改)を振り回す。
「うーん、いきなりだから慣れないわね。っと《アイスブレード》!」
<……チッ……>
蛇の攻撃を氷の刃で迎撃しながら、手の獲物をぶんぶん振り回すセイラ。感覚がもう少しでつかめそうだとかぶつぶつ呟いている。
<凄いにゃ、賢者は伊達じゃないのにゃ!>
「あ、そうか。こうすれば……」
<ぶつぶつと何を!>
何度か攻撃を防がれイラだった頭が、セイラを締め上げようと絡みつこうとする。
「こうね!」
モーニングスター(改)をメイスにして横薙ぎに振りかぶるセイラ。蛇の頭はそれを回避するが、直後に先端を伸ばし遠心力で横っ面に棘がヒットした!
<あが!?>
皮膚に傷はつかないが内部にはダメージが通るらしく、一瞬悲鳴をあげていた。
「《ブリザーストーム》!」
<くっ!?>
「やっぱり弱らせるか隙をつくしか当たらないか……バス、私達は遊撃でいくわよ。向かってくる頭は氷の魔法でけん制。懐に飛び込めば複数の頭で攻撃はできないでしょ」
<分かったにゃ!>
セイラがモーニングスター(改)を振り回しながら、バステトと共にベルダーの援護へ向かう。
一方、先行したベルダー達は……
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