パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!

八神 凪

文字の大きさ
上 下
108 / 377
第六部:救済か破滅か

その130 晩餐

しおりを挟む

 
 「ふう……危なかった……」

 最後にキュキュっと首に頭をつけて、感触を確かめるお父さん。生きて……いや、死んで……なんて言ったらいいんだろう……私が困っているとお父さんが話を続けていた。

 「知っている人もいるかも知れないが……俺はヴァイゼ。命を落としてもはや魔王ではなくなったので、ただのヴァイゼだ」

 「そうか、ルーナに魔王の恩恵は移動したから……」

 パパが納得して頷くと、そのまま話を続けた。

 「というかそりゃアンデッドか? 部屋にあった遺言書に埋葬せず玉座に遺体をおけって書いてあったのはそのためか? 後、スケルトンが喋るってのはどういう事だ?」

 「落ち着け、一つずつ回答してやる……まず、玉座に遺体を置いてもらったのは、あの玉座は代々魔王の力を蓄えている魔力庫みたいなものでな、遺体でも魔力に中てられれば変異を起こす。そのおかげでこうしてリッチとなることができたわけだ。本来魂は……」

 『死ねばどんな魂でも一度はボクたちの所へ来るはずだけど、その玉座が魂を死体に留めておく役割を果たしているんだね? まったく、冒涜行為もいいところだ』

 エクソリアさんが腰に手を当ててため息をつく。

 「そうだ。だが初の試みだったから、上手くいくかは賭けだった。何とか成功したが、もうちょっと早く返ってこられれば骨だけになる事もなかったんだがな……ちなみにアンデッド死にきっていない者で正解だ」

 「喋れるのはどういうことなの?」

 「魔力を使って喋っている。『考えている事を声として認識』させる魔法だと思ってもらえれば早いか。魔王の恩恵はお前に託したが、魔力が減ったり、使えなくなるスキルがあるというわけではないからな」

 流石はお父さん、元魔王だけのことはある。

 「それでこのタイミングで戻ってきたってことは何かあるのね?」

 ママが目を光らせてお父さんに聞く。しかし、予想に反しその答えは意外なものだった。

 「このタイミングは……偶然だ。さっきも言ったが、もっと早く返れても良かったくらいだし、そのまま消えていたかもしれない。だから女神の抹殺をお前達に託したんだしな」

 「それじゃあどうして?」

 「……正直俺にも分からん。ルーナがここに来たから返ってこれたというのが一番予想として大きいところだな。謁見の間で成長したルーナを見た時、こうびびって……」

 「親バカね」

 「親バカだったか……」

 「親バカですねー」

 みんなに言われて私の顔が赤くなってしまう。お父さん……。

 「親バカで間違いないわね、さあご飯が冷めちゃうから食べましょう」

 ママがみんなを席に着かせて、食事を再開しようとしたところでお父さんが慌てて喋りだす。

 「え!? それだけ! おかえりとか頑張ったねとか無いのか!? ああ、多分ルーナの魔力が俺に干渉して蘇ったんだ、きっとそうだ! それと、死んでいる間に歴代魔王の記憶を探って……」

 ご飯が優先され、とってつけたような理由を述べるも、ママに「後でね」と一蹴されていた。

 そして……。

 「くぅ~ん♪」

 「わん♪」「きゅんきゅん♪」

 「あ!? こら、噛むんじゃない! 俺は犬のおやつじゃないぞ! ほら離れろ!」

 レジナ達に足をしゃぶられていた。やっぱり、い……狼も骨は好きらしい。
 何だか復活したのに可哀想な気がする。ここは娘の私がちゃんとしないと!

 とりあえずレジナ達を引き剥がしてお父さんに話しかける。

 「ほら、あんた達もご飯あるんだからそっちを食べなさい! ごめんねお父さん、多分いきなりだったからびっくりしてるのよ皆。私はこうして話が出来て嬉しいよ!」

 「おお……ルーナ、優しい子に育ったな……」

 腕で涙を拭く動作をするが、もちろん涙は出ていない。人間だった頃の記憶がそうさせるのかな? ……後、回想だとかっこいいイメージだったけど、どうも普通のおじさんみたいな感じだ。

 「ご飯を食べながら話しましょう、ほらこっちこっち」

 最初に座っていた席へお父さんを座らせ、ようやく落ち着く事ができた。偶然でも、アンデッドでもこうやって話すことができるのは私にとって僥倖だと思った。

 『(この人間達は今までと少し違う感じがするな……もう少し様子見をしてもよさそうだね?)』

 「それじゃ飲み物は手に取った? いろんな再会を祝してかんぱーい!」

 「「雑!?」」

 ママの音頭でわいわいと食事が始まる。ベルダーの寝起きはかなり悪いらしく、寝ぼけ眼でワインを……こぼしていた。それをカルエラートさんが頭を叩いて怒っていた。

 そしてお父さんはフレーレとチェーリカ、フォルサさんの神聖組に話しかけられていた。アンデッドが喋る、というのはやっぱり不思議なんだそうだ。フレーレの手がうずうずしているように見えたのは気のせいだと思いたい。

 レイドさんはセイラさん達と積もる話をしているようで、一人だけ歳を取ったのを冷やかされていた。ベタベタしているチェーリカは要注意ね……。

 周りを観察していると、私にはエクソリアさんが話しかけてきた。女神様がこうやって晩餐に居るのも変な感じするなあ……。

 『やあ、ゆっくり話をしたいところだけどとりあえず、君の意思と確認をしておきたいと思ってね』

 「どういうことです?」

 『和気藹々としているけど、もし作戦が何もなければ死ぬ……殺されるかもしれないって事は理解しているかい? このまま逃げてもいいんと思うんだけど? それと確認は姉の事。今は話しかけてきていない?』

 単刀直入すぎる……!

 「……みんなを信じてますから成功しないハズは無いと思っています。もしそれで死ぬ事になっても、一度死んでいますしね、その時は大人しくお父さんと眠りますよ? それとアルモニアさんはジャンナの所で体を使われましたけど、それ以降はそういえば出てきていないですね?」

 『そうか……ありがとう「参考」にさせてもらうよ』

 「?」

 何を確かめたかったのか良く分からなかったけど、何となく満足気なエクソリアさんだった。

 だが、ここで悲劇が起こる……

 『おや、これは……豚肉かい? さっきまであったかな?』

 ん? あの骨付き肉……見た事無いわね?

 「ねえ、フレーレ。あの骨付き肉フレーレが作った?」

 「ふえ? いえ、知りませんけど……カルエラートさんじゃないんですか?」
 
 「どうした二人とも?」

 フレーレと私がカルエラートさんに告げると、少し怪しい色をした骨付き肉を見てサっと顔が青ざめる。慌ててエクソリアさんに叫んでいた。

 「ま、待て女神! それを食べてはいけない!」

 『え?』

 ガブリと勢いよくかぶりつき、ごくんと飲み込んだ。

 「あ、ああ……」

 『どうしたんだい? この肉が……うげぇ!?』

 バターン! と勢いよく床に倒れ、泡を噴くエクソリアさん! 

 「何々? どうしたの? って、エクソリア!?」

 そこに現れるママ。そしてカルエラートさんがママに怒鳴る。

 「お・ま・え~! いつの間に料理をしてきた! この骨付き肉、お前が作ってきただろ!」

 どうやらママが作ってきた料理だったらしい。そういえば、小さい頃はお父さんで、引き取られてからはパパがご飯を作っていたけどまさか……。

 「あ、分かった? 今回のはよく出来たと思うのよ! ほら、こんなにキレイな紫色になったわ!」

 ビンゴ! 料理が出来ないんだ!?
 
 「ママ……どうやって作ったか分からないけど、豚肉の料理で紫になる料理は無いわ……」

 「わんわん♪」

 エクソリアさんが落とした骨付き肉をシルバが咥えて齧りはじめた。 毛布の柄に選ぶくらいだから骨付き肉はご馳走に見えたに違いない。

 「あ!? ダメよシルバ! ぺーっしなさいぺーっ!」

 「ぎょわうん!?」「きゅきゅん!?」

 しかしすでに飲み込んでしまったようで、シルバがあまり聞いたことも無い鳴き声をあげて倒れた。
 兄のあまりの様子に、横に居たシロップが驚いて私の足に隠れる。

 「フレーレ! 回復魔法! 回復魔法!」

 「女神様……これで死んだりしないでしょうか……」

 なんだか物騒な事を言うフレーレ。もしかして酔ってる……?

 そして、フォルサさんが骨付き肉を拾い上げていた。

 「あ、フォルサさんでもいいですから早く回復魔法を!」

 「骨付きの豚肉……これが本当の『スケルトン』……」

 「あ、いいですねそれ」

 「いいわけあるかー!? この酔っ払いたちーーー!」

 
 『ニ、ニンゲン……やっぱり滅ぼそうか、な……』

 エクソリアさんはそれだけ言って、気絶した。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。