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第六部:救済か破滅か
その129 魔王
しおりを挟むママによる二度目の攻撃を受けてパパは気絶した。自業自得なので心配はしていないが、昔からそうだったなと記憶が蘇る。
掃除は明日からで、とりあえず今日は各自、適当に休もうという話になった。ベルダーも言っていたけど、ビューリックのクーデターが終わってから直後にこの城へ来て、さらに私の過去、レイドさんのパーティメンバー再会といっぺんにイベントが起こったので精神的にも肉体的にも疲れていた。
朝早くにビューリックが決着したのに、もう昼を過ぎていた。
「お腹すいたな……」
「そうですね、何か食べましょうか。一応材料はバッグに入っていますし」
フォルサさんとエクソリアさんが待つ部屋へ戻る途中、フレーレが私にバッグを見せながら言う。足元でもレジナ達が弱々しく鳴いた。
「わふ……」
「わん……」「きゅんーきゅんー」
なんだか毛づやが少しくたびれている気がするので、ご飯を食べた後ブラッシングをしてあげようと思う。とりあえずご飯だけど……。
「ねえママ、ここって台所あるの?」
「あ、あるわよ。そうね、久しぶりに手料理をルーナに作ってあげようかしらね!」
するとカルエラートさんとセイラさんがびくっとした。
「い、いやアイディールは旅で疲れているだろうし、私が作ろう!」
「お、お兄ちゃんに手料理を久しぶりに作ってあげたいから、わ、わたしも手伝いますよ!」
「セイラの料理か……久しぶりだな」
汗を噴出しながらママに言う二人と、パパを背負ったレイドさんがのんきな返事をしていた。
まあみんなでやれば早いわよね! とりあえず人数が増えてきたので、何人分必要なのか把握しておく事にした。
<男性陣>
パパ、レイドさん、ベルダー、ソキウス
<女性陣>
私、フレーレ、フォルサさん、ママ、セイラさん、カルエラートさん、チェーリカ、エクソリアさん
<ペット>
レジナ、シルバ、シロップ、チェイシャ、ファウダー、ジャンナ、バステト、名無しの猫ちゃん
人間だけなら12人ね。
そんなことを考えていると、ちょいちょいと私の足をつつくチェイシャが居た。抱きかかえて顔の前に持ってくる。
<……わらわ達はペットじゃないのじゃ……>
「……なんで分かったのかしら……」
<ぴー。チラッと私達を見た時の目が、レジナ達を見たときと同じ眼差しだったからよ。まあこの姿だから私は気にしないけど>
<オイラも!>
<私はペットじゃないにゃ! ふぎゃぎゃ!>
初めて話したバステトが足元で暴れていたが、シルバに体当たりされ吹っ飛び、レジナに咥えられて身動きが取れなくなっていた。
<なんにゃ!? 離すにゃ! あ、あ、尻尾をかむんじゃないにゃ……!>
わいわいとしながら、私達は台所を目指した。今回は起きたばかりのセイラさんとチェーリカは外れてもらい、ママも旅から帰ってきたばかりということで、私とフレーレ、カルエラートさんが作る事にした。
謁見の間を通り、台所へ向かう。
玉座には白骨化した遺体が座っていた。近づいてその姿見る。
ママが言うにはあれが本当のお父さん、か……思い出した記憶と話からするに、優しくて威厳のあるお父さんだったみたい。
お父さんと私が死ぬ事になった元凶のゲルスと神裂は倒したわ。後は私に埋められた水晶と女神をどうにかするだけだから、ゆっくり眠って、見守っていてね!
「行きますよールーナ!」
「あ、はいはい」
カタン……
---------------------------------------------------
「あ、美味しい!」
フレーレがカルエラートさんの作ったソースを味見しながらそんな事を言う。
台所には氷の魔道具を利用した冷蔵庫があり、食材も豊富にあった。私は海の幸を使ったペスカトーレのパスタを。フレーレはコーンをしっかり裏ごししたスープを。そしてカルエラートさんはステーキを焼いた。
ただのステーキだが、ソースが絶品で、にんにくと東方の調味料である醤油、ワインと砂糖を混ぜて作った特製ソースだった。
「これなら男性陣は満足だろうし、疲れた体にもいい。にんにくは生がいいのだが、火を通した方が吸収が良くなるから疲れているときにはこっちだろう」
カルエラートさんとは料理をしながら話を聞いていた。
重戦士なんだけど、できれば料理屋をやりたいそうで、お店を開くのにお金が必要……それで報奨金が出る魔王退治に目がくらんで参加したそうだ。
「お金は貯まったが、世界が滅ぼされては店が出来ないからな! こうして手伝っているというわけだ、そしてディクラインを巡ってアイディールはいいライバルなのだ……いつでもママと呼んでくれて構わないからな?」
「あ、はは……」
とまあハッキリとモノを言う、裏表の無い性格はさっぱりしていて気持ちがいい。
準備が整い、食堂に料理を並べてから全員を呼ぶ。
食堂というよりパーティルームみたいに広いので、チェイシャ達も席だ。レジナと猫ちゃんは床に料理を運ぶ。
寝ぼけ眼のベルダーが中々来ず苦戦したが、カルエラートさんが首根っこを引っ張って連れてきた。
フォルサさんとエクソリアさんが端に座り、まだ何か話していた。仲良くなっている……?
いいことだけど、何となく不安なのは気のせいかしら?
ま、いいか。
「さ、揃ったわね! ちゃんとみんな来たわよね? ええっと……」
私は人数を数える。
1、2、3……
パパ、ママ、フレーレと順番に数えていき、そして……
「12、13……と、みんな居るわね」
ん? 13? 確か人間は12だったはず……。
「あ、あわわ……」
フレーレがお誕生席を指差し、冷や汗を出していた。
私がそっちを見ると……
カタカタ……
骸骨が私に向かって手を振っていた。
「いやああ!? ほねほね人間が居るーーーー!!!」
「ふえ!?」
「出たな悪霊!」
フォルサさんがサッと近づき、骸骨の頭にパンチを炸裂させる!!
スコーンといい音を立てて、壁にぶつかった!
「あいた!?」
頭が悲鳴を上げ、骸骨の体が頭を探してウロウロし始めた。かなりシュールな光景だ。
あれ? あのローブ……もしかして……!?
するとパパも気づいたのか、声をあげる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! そいつは……!」
「トドメよ」
フォルサさんの手が光り輝き、落ちている頭を振る抜こうとした。
私は慌ててフォルサさんを羽交い絞めにして動きを封じる。
「ま、待ってください!? その骸骨は……私のお父さん、魔王ヴァイゼです!!」
「「え!?」」
そういわれればあのローブなど、ざわざわし始めた頃、頭を取り戻した骸骨……お父さんが向き直り……話し始めた。
「大きくなったな、ルーナ! お父さんだ!」
まるで面影の無い骸骨がカタカタと顎を鳴らして私を抱きしめていた。
「……お父さん……」
「ルーナ……!」
「やっぱり怖いぃぃぃぃ!!」
「うが!?」
私は補助魔法を使って思いっきり突き飛ばしてしまった……。
そのまま壁にぶつかりガラガラと崩れるお父さん。
「あ!? ご、ごめんなさい!?」
「い、いや……いいんだ……この姿では無理も無い……」
するとパパが近づき、話しかけていた。
「ヴァイゼ、お前生きて……」
「いや、死んでるからな」
真面目なお父さんの返答が、場の空気を冷たくしていた。
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